始めて小説を書きますので、拙い面が多々あると思います。
また、現在私は仕事と通信制大学の2つを両立しているため、時間があまり取れません。
どうかご容赦いただけますと幸いです。
薬草の白兎
──夢を見た。
──僕がぼんやりと思い浮かべていた憧憬が、形を成して目の前に現れたあの日の出来事を。
──倒れ伏す僕に心配そうに顔をゆがめ、けれどその中に死んでいないことに対する安堵を浮かべながら、回復薬や包帯、回復魔法を駆使して僕の怪我を治していく、小柄ながらも美しい妖精。
──生命の危機から抜け出して、安堵やら恐怖やら──憧れの感情やらで早鐘を打つ心臓に対し、僕の口は衝動のまま、勝手に動いていた。
『⋯⋯僕を、貴方の弟子にしてください』
───
懐かしい夢を見た、と目覚めた少年は思う。
深紅の瞳を暫くぼんやりと揺らしたあと、体を伸ばす。
起きたそこは、僕が所属するファミリアのホーム、『青の薬舗』のカウンター机。
顔を上げると、どうやらレポートをまとめていた最中だったようで、自身の涎で字がにじんでしまった紙が、腕の下から姿を現す。
「これは書き直しになるな」、と少年は深いため息を一つ吐き、周囲を見渡す。
西日が窓から差し込む店内は少し寂れた──少し、だよ?別にお客さんが皆無なわけじゃない…最近はベルのおかげで知名度も少し上がってるし…といつものゆったりとした口調を忘れたのか少し流暢に喋る犬人の女性の幻影が見えた──様子で、僕が寝ている間も盗人の一人すらも来ていないようで、商品もお金も減っていなかった。
それに少しの悲しさと安堵を覚えつつ、着ていた白衣を脱いで椅子に置くと、カウンター横から店内に躍り出て店仕舞いを始める。
扉の看板をOPENからCLOSEへと裏返し鍵をかけ、窓も閉め、お金は金庫の中にしまい込んで、戸締まりが完了していることを確認し、裏口からホームを出る。
今日はミアハもナァーザも用事があって今日は帰らないので、裏口の鍵も閉めて帰路につく。
戸締まりを始めた時には茜色に染まっていた空も、今ではそのほとんどが暗闇に包まれていて。
道行く人の殆どが冒険からの帰りなのか、体や装備品に傷や血でボロボロになった状態で歩く"冒険者"だった。
その殆どを流し見しつつ、あまりにもボロボロの冒険者や以前お店を訪れたことのある人には、格安、若しくはタダで自身の携帯しているポーションを売ったり治癒魔法を使用したりし、傷を癒す。
宣伝活動を兼ねたそれらを終えると、感謝の言葉を背に、改めて帰路への道を歩く。
その脳内では新たなポーションの考案やその実現に必要な素材、値段などの構想を練り、良さそうなものはメモをとる。
オラリオへ来てからは日常になりつつあるそんなことを繰り返しながら、歩をゆったりと進めていく。
───
メインストリート西の中でも特に目立つそこに、今の僕とお義祖父ちゃん*1が共に暮らしている家兼お店は存在する。
初見の人に見せてもお店とは思えない、とは僕のお得意様との世間話の中の言葉。
森の中の一角をそのままここへ移動した、と言われれば納得してしまうような、沢山の木々が塀のように立ち並んでいた。
その中の一角だけ木がないトンネルの様なそこは、地面も他の緑色とは異なる茶色となっている。
そんな道をゆっくりと、静かに進んでいく。
先ほどまでの帰路とは異なり木々によって月の光がかすかにしか届かない道を、暗闇に慣れてきた目を凝らしながら進んでいく。
都市にいるとは思えない程の深い静寂に包まれているここは、まさに森の中にいるかのような綺麗な空気が流れていた。
不意に吹いた風に揺れる植物の香りとともに美味しい料理の匂いが鼻に届くと同時に、ひっそりとそびえ立つ『家』の姿が現れた。
2階建てのログハウス調のそれは、佇まいから何まで、まさしくエルフ向け──まるで故郷の森に似ている、との感想を漏らすエルフがとても多い──のそれであった。
隙間から漏れ出る暖かな黄色い光を浴びながら扉開け、小声で「ただいま」と呟いた。
───
扉を開けると、控えめなリン、という控えめな鈴の音が鳴る。
静かに店内に入りながら見渡し、左側のカフェスペースの座席を見る。食事を摂るもの、紅茶を嗜みながら本を読むもの、静かに筆を走らせるもの、などがちらほら。
かなりの人数がいるにも関わらず静寂に包まれているそこは、そのほとんどが見目麗しいエルフであることも相まり、それこそ『エルフの森の中に迷い込んでしまったのではないか?』と錯覚してしまう。
───それほどまでに幻想的で、美しい光景が広がっていた。
それとは反対の右側のカウンターを見ると、そこには杖や魔道具が、ところ狭しと棚に飾られていた。
カウンター奥の戸棚には、魔導書──本物、それも数冊──が普通の本の様に並べられていた。
この家はお店も兼ねており、カフェと魔導具店が併設している。
宣伝は一切しておらず、口伝で伝わる知る人ぞ知る名店。・・・・・・たまに『森に迷い込む』かのようにやって来るお客さんもいるが。
杖や魔道具の修理を頼みつつ食事を取れて、その上で美味しく、また作業の終わりも早い。
中には『修理が終わる前に食べ終えて出られるか?』と試したものがいるらしいが、食べ終えて出ようとしたときには杖を差し出された、と怯えていたとのこと。
───そんなお店のカウンターイスに腰掛けている人物もまた、エルフであった。
髪の色は黒紫色。一見すると黒髪に見えるが、光が当たると美しい紫色が透け、まるで絹のように滑らかで、綺麗だ。
そんな髪色とは反対に、瞳の色は深緑。輝きを反射するそれは、宝石のようにそれ単体が輝いて見える。
それらを携え、本を覗き込みながら薄暗く微笑みを浮かべる顔には皺が一切存在せず、雪のように白い。
それぞれの色は全く混ざり合わず、不自然なはずなのに、それすらも吹き飛ばす程に、彼の容姿と佇まいは美しい。
見た目の不自然さを自然なものだ、と錯覚させるほどに綺麗な彼の名は───フォス。
僕の保護者であり、便宜上は『義祖父』、ということになっている人物である。
お母さんを子供の頃から面倒をみていた『義父』だったから、何だとか。
僕はお義祖父ちゃん、と呼んでいる。
──なお、椅子に座っているにしては口から下がカウンターに隠れているが、背が低いのか?とか、チビ!だとか、やーい140C代〜!などとは言ってはならない。ダメゼッタイ。死にたくなかったら。
お義祖父ちゃんはカウンターに手を伸ばして栞を取り出してそれを本に挟むと、バタン、と静かな音を立てると共に、顔をあげる。
「おかえり」、と静かにこぼすと、微笑みを浮かべながらカウンターを抜け、こちらへやってくる。
その手にはグラタンがあり、「さっき見たエルフが食べていたものと同じかな?」と考えながら受け取り、席に向かう。
椅子に腰掛けながらちら、とメニューを見ると、小さなメモ紙に『今日の日替わりメニューはタケノコ入りグラタン』と記されていた。
お盆に乗っているおしぼりで手を拭いて、木製のスプーンで食べ始める。
優しいミルクとチーズの香りが漂うグラタンの表面は、所々が焦げ茶色に染まり、白いミルクの色とコントラストを作り出していた。
タケノコを発見し、スプーンで掬うと、チーズがタケノコに絡まりながら、糸を引いて伸びる
それを頬張れば、ホワイトソースの乳製品の香りと、タケノコのシャキシャキとした食感が口内で踊る。
もう一度掬い頬張ると、今度はほろほろと口内で崩れる鶏肉が現れた。
まるでチーズの大地とホワイトソースの海に隠された宝探しでもするかのように、次々と食べ進めていくと、あっという間にグラタンは姿を消した。
ご馳走様、と手を合わせてお盆をカウンターへ持って行く。
食べ終えたそれをカウンターにいるお爺ちゃんに渡すと、嬉しそうに微笑む。
僕が完食するといつもこうなのだ。
僕はそのままカウンター奥の扉を開け、居住スペースへと向かう。
───
拝啓、お義母さん
今日は特筆すべきことはありませんでしたが、その日常の尊さを噛み締める時を過ごすことができました。
ここで暮らし始めて半月ほどが経ちましたが、もうすでにこちらでの暮らしに慣れ始めてきました。
明日はダンジョンに潜る日なので、怪我や窃盗に気をつけます。
今回もポーションを数本同梱しますので、役立ててくれると嬉しいです。
最後に。
体には気をつけて、何かあればすぐに知らせてください。
フォスお爺ちゃんと共に飛んでいきますので。
───絶対に、死なないで。
大好きだよ、お義母さん。
ベル・クラネルより
インクのついたペンを一度置き、改めて文を確認し、問題がなければ封筒にポーションと共に入れる。
ここに来る前にお義母さんと話し合って決めたルールで、週に一度に手紙を送ることになっている。
最近は手紙に字を書くごとに、会えない寂しさを感じてしまう。
お義母さんとおじさんはオラリオに来るには問題があるらしくて、一緒には行けないと言われた。
それを言われた時は涙が止まらず、いつもは表情を崩さないお義母さんが戸惑っていた。
その時に宥めるために撫でられた感触を思い出して、つい自分で頭を撫でて、恥ずかしくなって引っ込める。
手紙を便箋に入れて、見えやすい場所に置く。
そして、涎で駄目になったレポートを新しい紙へと書き写していく。
時々新しいポーションの発想が出るたびにメモを取りながら、ゆったりと進めていく作業を、心の底で楽しんでいく。
────
オラリオでは、ある噂が流れていた。
兎のような風貌をした少年が、ダンジョンの上層で現れるというものだ。
当然、人が現れた程度のものであれば、噂など早々になくなっているだろう。
その内容が、何でも怪我をした冒険者の元へすぐに駆けつけ、魔法で治してくれるというのだ。
それも最初に噂になった時は5層での目撃情報だけだったのが、日を経るごとに6層,7層・・・とどんどん下へ行き。
現在では、12階層に出るなどという話だ。
その少年──ヒューマンは、何でも鐘の音色がする回復魔法を使うというのだ。
そのことから、人々は彼を『鐘兎』と呼んでいるそうだ。
──これは、そんな少年の物語。
ベル・クラネル
Lv1
所属:ミアハ・ファミリア
力:B 769
耐久:A 896
器用:B 799
敏捷:S 950
魔力:SS 1017
《魔法》
【アンジェラス】
・速攻魔法
・音属性
・回復魔法
・浄化魔法
【ファイアボルト】
・速攻魔法
・付与魔法
・炎属性
・雷属性
《スキル》
【救命一筋】
・早熟する
・救命への信念が続く限り継続する
・救命への志の丈により効果向上
【草噛白兎】
・薬品の調合時、発展アビリティ『調合』を一時的に得る
・発展アビリティ『幸運』を得る
〜軽く人物紹介〜
●ベル・クラネル
・ヒューマン
・皆さんご存知主人公
・この世界では別の道を歩んでいる彼ですが、辿る道はそこまで変わらないかも・・・・・・いや、もっと大変になるかも?
・実は■■■■あり
●フォスお義祖父ちゃん
・エルフ
・今作のベルくんの『戦闘(護身術)』はもちろん、『薬師』としての師匠でもある
・実は身長が140Cしかなく、指摘されるとキレる
・実はアルフィアの躾係というか、親代わりだった・・・という設定もあり。多分本編でそこまで言及しないかも
・それと、実は彼のせいでとあるキャラが生存することになってしまって、さらには『暗黒期』が・・・・・・可笑しいな?私はダイスを楽しく振っていただけのはずだ