「もう少しで『送還』されるところだった・・・」
と割と本気で命の危機を感じてました。
多分チラチラ見てたあなたに若干の苛立ちがあったからですよ。反省しなさい。
ちなみに『砲撃』の威力・・・威力?撃てる事実?にビックリしてる方がいたのですが、ここのベル君は『魔力』のアビリティがこの時点で原作のLv2なりたての時よりも500くらい上で、なおかつ『高純度の魔法石』があるため、そもそもの素の火力が高いです。
本来──Lv1の何のアビリティ等も存在しない状態──なら、炎と雷の総量は原作の『ファイアボルト』とそう変わらないです。
アビリティと魔法石様々ですね。
炎雷の『極光』が放たれ、食人花が灰に変わった後。
暫く呆然としていた少年が、突然ガクッ!と膝を折る。
その胸は激しく上下し、呼吸が荒い。まるで激しい運動をしたあとのようだ。
「ゲ、ホ!ゲッホ!!ゲホゲホ!!」
咳が出る。額には玉のような汗が浮かび、背中にも冷や汗が。
顔は上気し、まるで高熱にうなされるかのように頭がボーッとする。
ひとまず。激しく拍動する心臓を落ち着かせるため、深呼吸をする。
吸って、吐いて。吸って、吐いて──
心臓がある程度落ち着いたところで一旦やめ、周囲の状況を確認する。
一般の人々の姿はなく、代わりに冒険者、ないし武装している人の姿が見受けられる。
ヴェルフやミアハは既にガネーシャ・ファミリアによって連れられて行ったのは、戦闘中に視界の端で捉えていた。
戦えない人達は避難が完了しているだろう。
そう結論付け、今度は自身の装備を確認する。
純白だったはずの白衣が、炎雷の影響でその殆どが穴が空いていたり,もしくは黒か茶色に染まり、焦げ付いていた。
幸い中に来ていた服は魔法への耐性がある──義祖父作──ため、燃やされることはなかったようだ。
武器も目立った損傷はなく、先程の現象を起こした短杖も、ロングナイフも無事。
身体も、炎雷の重ね掛けを行っておらず,また攻撃も直撃していないからだろう。火傷も怪我もない。
そうなってくるとやっぱり気になるのは、全身を襲う倦怠感と虚脱感。
それまでは疲労感など感じていなかった事を考えると、先程の『砲撃』によって、この『疲労』が引き起こされたのは明白。
なれば、あの『燐光』は何だったのか。
考えられるとするなら──やはり『スキル』。
───『英雄救命*1』。
能動的行動に対するチャージ実行権という、それ。
【草噛白兎】はあり得ないだろう。あれは『発展アビリティ』を獲得するもの。
タイミングや心当たりを探っても、それ以外にあり得ない。
しかし────
『───────ッ!!!』
「!」
──遠くから、破鐘の声が聞こえる。
恐らくは食人花のものであろうソレを捕らえた瞬間、少年は走り出した。
考えるのは後にし、体の疲労感は無視する。
そもそも『体の疲労程度』で、少年は止められない。
その程度で止まるのなら、彼はここにはいないのだから。
──彼は、すべての『死』を許さない。
────
──今日は厄日だ。
そう少女──レフィーヤ・ウィリディスは、心中で呟く。
彼女は今日の『【怪物祭】』を楽しもうと、『ファミリア』の先輩達と共に来ていた。
つい一時間ほど前までは闘技場内で行われていた催しもの──モンスターの調教を見ていた。
通常は難しいそれを容易く行うガネーシャ・ファミリアの技量に舌を巻きながら、ファミリアの先輩──ティオネ・ヒリュテとティオナ・ヒリュテと共に、その圧倒的技量と,モンスターの特徴等について討論していたはずだ。
それが、気づけば街中でモンスターが──それも、見たことのないモノが現れたと聞いて。
慌てて3人で飛び出し、ガネーシャ・ファミリアとアストレア・ファミリアを手助けするために、交戦を開始。
初めて見る黄緑色のモンスターとの戦闘に苦戦しつつも、『遠征』での経験を活かして、勝利する。
──少女はそう思っていたが、現実は違った。
武器のない先輩たちが素手で頑張って対処する中。
彼女が『魔法』を発動しようと、詠唱を開始した──瞬間。
──少女の腹部を、食人花の触手が貫いていた。
「───ゴボッ!?」
倒れ込みながら血を吐いたために、喉にそれがつまる。呼吸の音に「ゴボ、ゴッ──」と、粘性の水音が混じり、呼吸が苦しくなる。
手放しそうになる意識を無理やり堪え、『魔力暴発』を起こしそうになる魔力を、何とか抑え込む。
恐らくは、魔法,ないし『魔力』に反応したのだろう。
そうあたりをつけた彼女の考えは、正しい。
──それ故に。
『────ッ!!』
──未だに魔法を維持する少女を、食人花が狙わない理由がなく。
怪物は触手を振るい、少女を狙う。
ヒリュテ姉妹は間に合わない。
怪物が振るっている触手は、少女を貫いた触手であるが故に──近すぎる。
なにより彼女たちはそれぞれが一体ずつ、怪物を相手取っていた。レフィーヤの高い『魔力』に反応する食人花を抑え込むだけで、手一杯だった。
武器があればすぐに倒せるはずの怪物は、しかしないものをねだっていても、現実は変わらない。
彼女たちが怪物を灰にするよりも、或いは少女を助けるよりも。
触手が、少女の命を散らすほうが速い───
「───はぁっ!!」
──その少女に振り下ろされる死神の鎌を、白の軌跡が許さない。
炎雷を纏ったそれは、少女に振り下ろされる触手を斬断。
斬撃の嵐によって守られている最中。朦朧とする意識の中、それを見た。
白髪の少年だった。
彼は元々は白かったでろうボロボロの白衣を、炎雷によってさらに焦がしながら、次々と斬撃を放つ。
まるでランクアップしたての冒険者ようにステイタスに振り回されながらも放たれる剣閃の中に。どこか、確かな『技』がある、と少女は思った。
しかし、それもすぐに『ズレ』がなくなっていくかのように洗練されていく。
突然なくなった死の気配を前に、呆然と眺める少女の鼓膜にリン、リン──と。小さな鐘の音が届く。
見れば、少年の左手に握られる短杖が、白い輝きを放っていた。
あれはなんだろうか。そう思う少女に答えるかのように。
触手の雨がやみ、隙ができた瞬間。彼は杖を突き出した。
「フレイム!」
叫んだ瞬間に、少年の半身は飲み込めそうな大きさの火球が放たれた。
それは緩いカーブを描きながらも、食人花に一直線に飛んでいく。
(あれは・・・付与魔法の応用?)
自身の持つ知識と勘を総動員し、そう結論を出す。
白い光が何だったのかはわからないが、少なくとも『魔法』を発動したものではないだろう。恐らくは、『スペルキー』かなにか。
アレならば、確かに当たれば食人花にダメージを与えられるだろう。
当たれば、の話だが。
当然、あの食人花がそれを食らうはずが─────
そう思っていると、火球がそのまま飛んでいき。
食人花に届く距離になった──瞬間。
なんと、食人花が火球を食べた。
「────ぇ゜」
喉に詰まった血によって変な声になるのも構わず、少女は驚きの声を出す。何故か、火球を放った少年も酷く驚いた顔をしてる、気がする。
驚く少女達を他所に、怪物は口の奥の魔石が砕けたのか。その体を、灰に変えていった。
──魔法や魔力に反応するのは、何となく察しが付いていた。
しかし、それでも食べる──わざわざ自身の弱点へと魔法を当てたのは、知能がないということなのか。それとも──
次々と考えを巡らせる少女は、その視界の中に膝を折る少年を捉えた。
膝を付いた少年からは、先ほどまでは纏っていた筈の炎雷が消え去っている。
呼吸が荒く、また熱があるのか頬が蒸気している。咳も出ており、ゲホ、ゲホッ、と苦しそうにしている。
血反吐でも吐きそうなほど咳き込んでいた彼は、突然それを無視するかのように立ち上がり、少女に近づく。
少しフラフラとした足取りは、見ているこちらが心配になるほどに弱々しい。
そして至近距離になった途端座り込み、少女に短杖を突き出す。
今度は何をするつもりなのか、と少女が警戒する中。少年が消え入りそうな声で──「【アンジェラス】」、と口ずさむ。
瞬間、リィン──という涼やかな鈴の音色が鳴り響く。
やがて、それに釣られるように杖から出た緑色の波動が現れ、少女の体に空いた穴が塞がる。
しかし、それだけでは足りなかったようだ。
一度の回復魔法では、少女の怪我の十分の一程度を癒すに留まった。
それを見た少女は、あとは回復薬を使えば──と、そう思っていると。
レフィーヤは、驚くべきものを見た。
「【アンジェラス】!」
先ほどよりも力強い声で、魔法の名が呼ばれる。
その瞬間、リン、リン、リィン───と、鈴の音が何度も鳴り響く。
その度に先程と同じ波動が何度も広がり、少しずつ体に空いた穴を塞ぐ。
(───ありえない)
──詠唱が、ない。
先ほどまではあらかじめ詠唱をしていたのだろう、と思っていたものが、実ははじめから詠唱など存在していなかった。それは、少女に大きすぎる衝撃を与えた。
先ほどは、少年が回復薬を取り出す様子のないことから、持ち合わせていないのだろうと思っていた。
──違う。
彼は、詠唱が必要のない回復魔法を持っているために、回復薬を取り出すよりも回復魔法を何度も発動したほうがいい、と結論づけたということだろう。
詠唱がないくせに確かな回復効果があることにも驚愕だが、見るからに消耗しているはずの少年が軽々しく使っていることから、燃費もいいのだろう事がよくわかる。
──なんて、インチキ。
少女が戦慄する最中も、傷が塞がっていき。やがて、最初から体に穴など空いていなかったかのように消えた。
血の気が引いていた冷たくなっていた身体も、血色を取り戻していた。
上体を起こしながら「ありがとうございます」と、そうお礼をしようとした、が。
「ヒュ────、コヒュ─────!」
──喉に血が詰まっていることを忘れていた。
傷が癒えても、まだ意識が少し朦朧としているからだろう。息苦しさのことなど、すっかり忘れていた。
その事を気恥ずかしく思っていると、突然少年が少女の体を持ち上げる。
「?」
驚くほどに持ち上げられた時の衝撃も浮遊感もなく、優しく持ち上げられた事により、脳がまだその事を認識できていない。
何故?と疑問に思っていると、少年は静かに背後に回り、左腕を少女の胸の辺りに回す。
未だに上手く力が入らない事で、少女の体が少し前に傾く中。
突然の身体の接触──しかも胸──に少女がびっくりし、体に力が入らないのを無視し、暴れようとする中。
少年はそんな彼女のことなど気にせず、背中──肩甲骨の間のあたりを、叩いた。
「ゴッ!?」
叩かれるなんて想像もしてなかったために驚き、体が勝手に変な悲鳴を上げた。
続けて二度、三度と、続けて叩かれる。
その度に「ゴ!?」「ゴぇッ!?」と声にならない悲鳴を上げる中。
一際強い力で叩く、あるいは押された瞬間。ゴボッ!という音と共に、少女の喉に詰まっていた『血』が吐き出された。
コヒュー、コヒュー・・・と浅い呼吸を繰り返しながらも、酸素を取り込み、思考が鮮明になる。
そして、ようやく少年の意図を理解した。
(血を、吐き出せようと──)
「・・・大丈夫ですか?立てますか?」
こちらを気遣う、優しい声がかけられる。
突然声をかけられてたことで言葉に詰まっていると、先程のリィン──という音と共に、ヒリヒリとしていた背中の痛みが消える。
先程の回復魔法だろう。全くもってうらやましい。
「・・・大丈夫、です。立てます」
「そうですか?ならよかったです」
支えられていた体に力を入れ、フラフラでありながらも何とか立ち上がり、改めて少年を見る。
──無垢な少年だ。
そう思えるほどにあどけない笑顔を浮かべている。
処女雪のような白い髪に、深紅の瞳をもつその姿は、まるで兎のよう。
しかし、その瞳は真剣そのもの。まるでこちらの不調を見逃さない、とでも言うようにこちらの事を観察していた。
こんな少年が、さっきまで自分の胸を───
頭を振って考えを飛ばす。
ひとまず名前を尋ねよう。
「えっと、貴方は・・・」
「僕は、ベル・クラネルと言います。レフィーヤ・ウィリディスさん」
「え?」
思わず変な声を上げてしまう。
何故自分のことを知っているのだろうか。
「有名な『冒険者』は全部、オラリオに来る前に勉強しましたから!」
少し興奮気味に言う彼の言葉に、レフィーヤは少し困った顔をする。
少女はロキ・ファミリア──都市最大派閥と称されるファミリアに所属している。
それ故に有名──ではあるの、だが。彼女は自身のことをそこまで凄い存在と思えず。
少年のようにこちらを褒め称える言葉を贈られても、反応に困ってしまう。
「・・・私はそこまで凄い冒険者じゃありません。それより、あなたの方こそ大丈夫なんですか?」
「え?」
「さっきまで苦しそうにしていましたよね?」
「あ、はい。大丈夫ですよ。今は落ち着いてます」
「・・・そうですか」
朗らかに笑う彼から視線を切り。会話はそこそこに、状況を確認する。
まず、レフィーヤ。血を失っていて、少しフラフラ。
魔力はもう散っていて、詠唱はやり直さなければならない。が、それをすれば『魔力』が高まって、先ほどのように的になってしまう。
次に、ティオネさんとティオナさん。
武器がないため、打撃耐性のあるモンスター相手に素手で戦っている。そのため、決定打がない。
最後、彼。
あの食人花を切れるロングナイフを持ち、付与魔法と回復魔法を扱える。
あの白い光で敵を倒している?
─────
「すみません、クラネルさん。あなたのナイフを貸してくれませんか?」
「え?」
「ティオネさんかティオナさんに決定打があればすぐに終わるはずです」
投げ渡せばそれで、と。
そう呟くとなるほど、と納得した様子の彼は、しかし少し考える様子を見せる。
ジッと彼女たちと少女を見て。
暫くすると、まるで何かを決意したかのような目つきになる。
「詠唱してください」
「は?」
脈絡のない文脈に、思わず素っ頓狂な──あるいはおかしいことを言う者を見たかのような──声を上げる。
自信のある考えだったのだろう。何も言ってこない少女に首を傾げている。
──何も知らない癖に。
そう口に出そうになるのを抑え、あくまで理性的に反論する。
「私が詠唱をすれば、それだけであのモンスターの的になります。それだと意味が──」
「僕が守ります」
当たり前の事を言うかのように。
落ち着いた口調で言い放つ彼に、レフィーヤは目を見開き、すぐに目つきを鋭くする。
「あなたが、ですか?正直に言えば、私はあなたのことを信用していません。怪我を治癒してくれたのは感謝していますが──」
「本当ですか?」
「──ッ?」
全てを見透かすような深紅の瞳に、言葉が詰まる。
何を言っているのか。
全て本当のことだ。
彼よりも彼女達のほうが、長い付き合いなのだから────
「あなたが信じていないのは、自分のことじゃないですか?」
「────────」
かぁっ、と顔が熱くなる。
血がなくなったというのに、頭に血が上る。
怒る。怒る。怒───
─────図星だ。
瞬時に頭が冷え、冷静になってしまう。
彼の提案も一つの手だろう。
しかし、それには私の『力』がいる。──私が誰よりも信じていない、『力』が。
彼の強さは先ほど見た。『憧憬』の少女には及ばないにしても、あの怪物たちに立ち向かえる程の『強さ』を持っている。
対して、私は───
「ウィリディスさん」
「っ」
「守ります」
「・・・」
「僕が、守ります」
真っ直ぐに見つめてくる瞳に、釘付けになる。
こちらの事を信じて疑わないその姿は、まるで『英雄譚』に憧れる少年のようにまっすぐだ。
「だから、僕達のこと。助けてくれませんか?」
あなたを助けた、僕の顔を立てると思って、と。自然と笑いかける彼を、『燃料』にする。
──少女の心が燃え上がる。
──簡単に言う。
先ほどまで息も上がって、咳も出ていた癖に。
──簡単に言う。
私よりも、明らかにLvが低い癖に。
──だから。
「私を、守ってください」
──そこまで言われて。
何もしなかったら、それこそ私は何にもなれない!
心を奮い立たせる。
フラフラだった足を無理やり固定する。
それを見たベルが「【ファイアボルト】」、と呟くきながら、杖をくるりと振るう。
まるでおとぎ話の魔法使いのような仕草。次の瞬間に纏われる炎雷に、もう少女は何も言わない。
そう、何も言わな───────
言わ─────
言───
(──────ものすごく言いたいんですけど!?)
叫び散らしそうになる言葉を飲み。
魔力を安定させる。
(絶対後で聞き出す・・・)
そう、謎の決意を新たにして。
ベル君の行動理由は『死』を許さない、ですからね。誰かを助けるのに理由が──それも自分勝手な──あるため、自分は英雄ではないと思ってます。
英雄は清廉潔白じゃないといけないとでも思ってるんですかね?ハハッ。
見た人がどう思っているのかは見えてません。普通のことをしてるだけですし、そもそも僕は治療師なので助けるのは当たり前です。って感じで。
ここのベル君は結構ズバズバ言います。義母の教育の賜物ですね。可哀想。
・・・いや、結構原作でも言ってたかも。さすがにここまでじゃないけど。
こう、相手の地雷原を土足で踏み荒らす感じで。