草喰みの白兎   作:リヴィドーカリェー

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 すごく疲れました。眠いです。でも楽しい。
 そんな日々を送れることに感謝しつつ、投稿です。
 今回は一人称視点でお送りします。
 実際どちらがいいのでしょうか・・・三人称だと文字数が鬱陶しいとかあるのですかね。
 私も色々試しながら書きますので、ご理解頂ければ幸いです。


無茶振り

 ──ギルドにて。

 早朝の、雑多な人々が混雑する時間帯。

 そこには、とある少年の似顔絵が貼り出されていた。

 ──指名手配書ではない。むしろ、栄誉なことだ。

 沢山の人々がそれを流し見ては驚愕し、すぐに近づく。そして、自身の身間違いでないことを確認すると、途端に胡散臭い顔をする。

 

 「ありえない」「流石になんかやっただろ」「ふざけんな」「嘘をつくならもっとまともなのにしろよ」

 

 嫉妬。妬み。嫉み。恨み。疑い。疑惑。

 様々な負の感情が巻き起こる中。

 それでも、彼に助けられたことのある者たちは納得した。

 ──同じLv1だと思ってなかったのに、むしろランクアップしてなかったのか、と。

 

 

 ──所要期間、一ヶ月

 ──ベル・クラネル、Lv2到達

 

 あどけない笑みを浮かべる紙上の彼は、何処か誇らしげだった。

 

 

 

────

 

 

 

 

 ディアンケヒト・ファミリアの治療院から退院して。

 僕はすぐに、『青の薬舗』で回復薬ポーションの調合を始めた。

 

 もう少しで『神月祭』であること。

 何よりそんな催しがあると言うのに、『怪物祭モンスターフィリア』にて全ての商品が捌けてしまったこと。

 それらを総合して、今日は『屋台』用の回復薬ポーション各種を作っていくことにし。その働きをもって『怪物祭』での危険行為は、多めに見るとのこと。

 

 帰ってくる時は怒られるんじゃないかとひやひやしていたが、実際は「速く、手伝って!」と、いつもののんびりとした口調を投げ捨てたナァーザさんによって、にべもなくポーションの作成に携わることに。

 白衣がボロボロで、でも注文しようにもそんな時間も惜しいことから、普段着ままで調合を開始する。

 薬草を粉末にしたり。鍋でお湯を沸かしたり。それで煮詰めたり。『調合』を進める中で、二人から色々と質問された。

 

 怪我はないか、とか。眠気はないか、とか。

 疲れはないか、痛みはないか。

 次々と聞いてくる内容は、僕を気遣うものばかりで。それを申し訳なくも、嬉しくもあり。

 つい気持ちが高ぶってポーション用の瓶を落としそうになって怒られたけど、それすらも嬉しくて。

 『怪物祭』の時のお祭り騒ぎの屋台も楽しかったけど。

 その後の『騒動』も、頑張った達成感があったけど。

 ようやく、噛み締められる時間ができた気がして。

 ──日常に、帰ってきた気がし─────

 

 

 

『見っけぇぇええええ─────!!!』

 

 

 

 ──訂正。今も非日常にいるようだ。

 普段は物静かで、お客さんも殆どこないはずの『青の薬舗ホーム』に、数々の神様達がやってきたようだ。

 普段ならばあり得ないほどの数の『神威』を待とう彼らの登場は、一体どういうことなのか。

 混乱する僕を他所に、神様達はホームの扉を開いた。

 

「そなたたち、何用だ」

 

 そんな『騒動』まっしぐらな矢面に、ミアハ様がたった。

 僕ですら知覚できないほどの速さでもって受け付けカウンターに出た彼は、毅然とした態度をしていた。

 

「何って、決まってるだろ」

 

『ベルきゅんのスカウト、だぜ☆!』

 

「お帰りはあちらだ、帰るといい」

 

『あぁん、いけずぅ!!』

 

 すげなく断るミアハ様に、何処かお決まりの台詞っぽいことを言う神々。

 状況を飲み込めない僕は、ひとまず心を落ち着かせよう、とポーションの作成に没頭する。

 ──少し、耳をすませながら。

 

「お前のところの眷属がLv2になったって、ギルドから通達があってな!」

 

「すぐにスカウトに来たってわけだ!」

 

「ここは弱小ファミリアだからな!」

 

『ワンチャン取り込めるかな、って思ってさ!』

 

「ベル本人は『医療系ファミリア』志望だ。そなたたちのファミリアは違うだろう。お帰りはあちらだ、帰るといい」

 

『そんなぁぁぁあああああ!!!』

 

 OH!MY GODオーマイガー!!!!と叫び、神々が崩れ落ちる、ガタガタッ!という音がホームに響き渡る。

 そろそろ鬱陶しくなってきたのか、ナァーザさんの顔が顰められ、眼光も鋭くなっていく。

 

 僕がハラハラとしながら調合していると、フハハハハッ!!という明らかに上機嫌な笑い声が響いた。

 この声は───

 

「ディアン・・・・・・」

 

 ミアハ様の苦々しい声が聞こえる。

 ──神ディアンケヒト。

 彼はミアハ様と天界の頃から折り合いが悪い──ほぼディアンケヒトの一方的なもの──関係をもつ神。

 その関係も、僕がディアンケヒト・ファミリアあちらではなく、ミアハ・ファミリアこちらに入ったことでさらに悪くなったようだ。

 度々僕を見かけてはスカウトに来る彼が、ここにやってきたということは────

 

「ミアハ!ベル・クラネルを出せ!そうすれば、今月の『借金』の取立てくらいは多めに見てやる!!」

 

 ──めちゃくちゃケチ臭い!

 明らかに法外な取引をしようとしている彼に、ミアハ様は毅然とした態度を崩さない。

 

「そんなことをするわけがないだろう。今月の分はきちんと払えるし、少しすれば来月の分も──」

 

 払える。そう言おうとしたミアハ様に、ディアンケヒト様はさらなる『試練』を課す神のように、残酷だった。

 

「ならば、今すぐに『半年分』の支払いを出せ!そうすれば見逃してやる!!」

 

「な、にぃ・・・!?」

 

(は、半年分・・・!?)

 

 め、滅茶苦茶だ!

 いくら借金をこちら側がしているとしても、これは幾らなんでも酷すぎる!

 僕が戦慄している中、ミアハ様は無言だ。

 唸っているようにも、苦しんでいるようにも聞こえる声は、どうにもならない現実への反逆のようにむなしい。

 

「・・・今すぐは無理だ。せめて、あと数ヶ月──」

 

「1ヶ月だ」

 

 はっきりと。

 まるで死の宣告を告げる『医神死神』のように、一切の慈悲も許さない声だった。

 まるで冷たい大鎌を首に添えられているかのような錯覚に陥る。

 ───半年分。

 前に聞いた時の話だと、僕がこの一ヶ月に稼いだ金額で、1.5ヶ月分。

 例え今すぐに『中層』に行けたとしても、そこまで稼げるかは未知数。運が悪いと、そこで命を落とす危険性も──

 

「ディアン・・・・・・!」

 

「ミアハ、お前が悪いのだぞ!ベル・クラネルを貴様達が取っていくから・・・・・・!!」

 

「くっ・・・ベルは、あやつが自らこちらへ来てくれたのだ!そなたの勝手など、許されると──」

 

「儂と貴様、どちらが世間一般的に信用があるのか。お前のような貧乏人にもわかるよな?ミアハ」

 

「─────ッ!」

 

 駄目だ。

 勝てない。

 このままじゃ、ディアンケヒト・ファミリアに入れられる。

 それは嫌だ、それは不味い。

 心臓がバクバクとうるさい。

 冷や汗が止まらない。

 何か方法はないのか?何か対策を──

 

「・・・・・・・・・・・・・・・わかった」

 

「!」

 

 絞り出すかのようなミアハ様の声に、僕は申し訳なく思ってしまう。

 これは、言ってしまえば僕が我儘を言った結果の末路。

 ディアンケヒト様がお金にがめついのを見て幻滅し、ミアハ様の理念こそがいい、と選んだが故の結果。

 だから、この結果も必然。僕はこのまま、売られるのだろう。

 ──仕方ない。二人をこれ以上巻き込むのも悪いのだから。

 

(だから、ここで売られるのも────)

 

 仕方ない。

 そう思っていた僕の耳は、信じられないものを捉えた。

 

「1ヶ月だな?」

 

「!」

 

「1ヶ月で、半年分集めてやろう」

 

「・・・・・・正気か?お前たち弱小ファミリアに、そんな力などあるものか!」

 

「ベルがいる」

 

「!」

 

 息を飲む。

 

「そなたがベルを欲しているように。私たちもベルを大切に思っている。ならば3人で力を合わせ、そなたの理不尽に立ち向かおう」

 

「・・・・・・・・・」

 

「私たちは───『ファミリア』なのだからな」

 

 

 はっきりと言い切るミアハ様に、僕は嬉しさがあふれる。

 たった1ヶ月の間しか一緒にいない。が、それでもこれほどまでに信用されて、信頼もされてることが、嬉しい。

 そんな僕の心とは対照的に、ディアンケヒト様が「フンッ!」、と不機嫌そうに鼻を鳴らす。

 最初に来た時のような上機嫌さは、もう感じられない。

 

「ならばやってみるといい、ミアハ。まあ、お前たちがどう足掻こうと無駄だがな!」

 

 また来る!そう叫び散らしながら、ディアンケヒト様が『青の薬舗』から出ていった。

 他の神様たちも、同じく扉から出ていった。

 

 先ほどまでは騒がしかったホームが、信じられないほどに静かになった。

 重苦しい雰囲気に支配された調合室に、ミアハ様が戻ってきた。

 

「戻ったぞ」

 

「・・・おかえりなさい」

 

「お、おかえりなさい」

 

 ミアハ様が戻ってなお消えない空気に、僕は押しつぶされそうになる。

 ──やっぱり、二人に迷惑はかけられない。

 そう思った僕を見透かすかのように。

 二人が視線で、僕を見咎める。

 

「ベル、これはそなたが原因ではない。言ってしまえば、私の力不足が招いた結果だ。そなたが責任を感じることではない」

 

「・・・そんなことをいったら・・・私がモンスターに、腕を食べられたのが、原因・・・。ミアハ様も、ベルも、悪くない・・・」

 

「───いいえ。やっぱり、僕が二人に負担を強いて居るんです。だから、やっぱり僕が」

 

「いや、私が───」

 

「だから、私が───」

 

「僕が───」

 

 責任の所在を自分にするために。僕達は、それぞれを擁護しながら、自分を責めた。

 それが、大体数十分ほど続いて。一旦、この話は置いておくことにした。

 それぞれがいつまでも譲らないせいで、無駄に時間を浪費してしまうことを危惧したためだ。

 ──あまり時間は残されていない。

 やがて3人で『作戦会議』を開始する。

 

「ひとまず『神月祭』を含めた1ヶ月が期限だ。それまで、私たちができることをしよう」

 

 三人で頷き合う。

 まだまだミアハ様やナァーザさんと、同じファミリアでいるために。

 

「取り敢えず・・・この『高等二属性回復薬ハイ・デュアルポーション』は、絶対に売れる・・・じゃないと困るけどね」

 

「そうですね。ひとまずそれを主軸に、僕もダンジョンに潜るときには深めに───できれば、『中層』まで行けたら──」

 

「それでは危険すぎる。せめてもう少し危険度を少なく・・・それこそ、どこぞのLv2を多数擁するパーティに参加する、でもないと賛同できぬぞ」

 

「でも・・・」

 

「功を焦っては仕損じる。確かに、そなたの焦りも分かる。だが、それでそなたを失ったのでは、意味がない。分かるな?」

 

「・・・はい」

 

 それでも、焦りが消えない。

 神月祭での商品が足りず、そろそろ素材もたりなくなる。

 買いに行くにも、あの様子だとディアンケヒト様が『妨害』してくるだろう。

 素材を取りに行くにしても、ダンジョンに行くには入念な準備と、『装備』がいる。

 ロングナイフと短杖は良いが、肝心の『戦闘衣バトルクロス』が第三級冒険者向けじゃない。

 さらには、実力的に行けるとしても『中層』に行くための経験が足りない。

 

 ナイナイ尽くしの現状に、若干匙を投げかける、と──

 

「お困りのようだなぁ?『鐘兎』!」

 

 扉の向こうから声が聞こえた。

 慌てて開けると、そこには以前来た頬と額に傷のある、ガラの悪いお客さんが──

 

「連れてってやるよ」

 

「え?」

 

 何のことだろうか、と思っていると。

 彼は顔をニヤリ、とニヤケさせながら、僕たちにとっては『天国』にも、『地獄』にも感じられる『提案』を行った。

 

「俺たちが、お前を『中層』に連れて行ってやる」




◯ミッション「借金を『半年分』返せ!」

《方法》
●ナァーザ&ミアハ
・「神月祭」での屋台、及び「高等二属性回復薬」の販売のための『量産』
●ベル
・ダンジョンでの『素材』入手、及び魔石等の換金
・素材が集まり次第、『調合』に合流
●『最後に現れた冒険者』
・一体何モルドなんだ・・・
・『中層』へ連れて行ってくれる、らしい・・・?
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