草喰みの白兎   作:リヴィドーカリェー

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 さて。実は今の時系列は、原作的には二巻、ソード・オラトリア的にも二巻の話何ですね。
 ですが、実は時系列はあんまり当てにしてません。だって、新月祭をずらすことが確定になったので。
 ・・・・・・・・・はい、ごめんなさい、許してください。だってこのままだとベル君がいつまでも『アレ』を使えないから・・・。
 私の執筆能力不足が招きました、ごめんなさい。


売買

 『怪物祭モンスターフィリア』から二日──つまりは、モンスターの騒動から二日後の明朝。

 日が昇り始め、空が白み始めたばかりの街は、未だ夢の中にいるものも多く。

 街行く人々は、決して多いとは言えなかった。

 そんな中。祭の会場だった『闘技場』近くに、一人の女性が立っていた。

 胡桃色の長髪を背中に流した、美しい女性だった。

 その人物──否、神物は、白み始めた空を、どこか睨みつけるかのような眼差しで見つめ。

 続けて、既に食人花が開けた穴がふさがれた道を、神妙な面持ちで見つめていた。

 

「アストレア様!」

 

 一人で佇む彼女──アストレアに、その派閥に属する団長、アリーゼが駆け寄る。

 早朝から街中を走り回って彼女を探し回ったというのに、一切息を切らしていないのは、さすが第一級冒険者というべきか。

 

「おはようございます、アストレア様!朝ごはんも食べないで出ていって、どうしたんですか?このままだと、みんなが作ったバーニング!な朝ごはんがコーリング!になってしまいますよ?」

 

「おはよう。朝から元気ね、アリーゼ」

 

 静けさに包まれていた街を、一人で明るくできそうなほどに明るい声のアリーゼに、アストレアは微笑む。

 アストレア・ファミリアのホーム──『星屑の庭』にて。朝食の準備が終わった団員が神室に迎えに行ったところ、もぬけの殻だったのだ。

 心配した眷属達は、食事前であることも忘れ、あちらこちらと探し回っている。

 そして現在。アリーゼが彼女を見つけたのだ。

 

「ごめんなさい、心配をかけたわよね。特に用があった訳では無いの。ただ・・・」

 

「ただ?」

 

 女神は言葉を切ると、再び空を見る。

 その先は、『月』が消えていった方向だった。

 

「何か、嫌な予感がするのよ」

 

 

 

 

────

 

 

 

 

「いらっしゃいませー!本日臨時開店しました、『青の薬舗』in迷宮の楽園アンダーリゾートです!」

 

 ──そこは、ダンジョン18階層。

 水晶と大自然で満たされた、『迷宮の楽園アンダーリゾート』とも言われる階層。

 モンスターが現れない──正確には、上と下の階層から入り込んでくるため、いないわけではない──この階層は、ダンジョンでの数少ない安全階層セーフティポイント

 僕──ベル・クラネルは、その中にある街──『リヴィラの街』で、商売を開始─────

 

「って、なんで!なんでダンジョンで支店を開いてるの!?」

 

 思わず叫んだ僕の声に、街の人々の視線が集まる。

 それに恥ずかしく思い、僕は縮こまった。

 

「おいおい、『鐘兎』、どうしたんだ?さっきまでは随分とモンスター相手に『暴れまわってた』じゃねえか」

 

「モルドさん・・・」

 

 頬と額に傷のある男性が、バシバシ、と僕の背中を叩く。

 あまり力を入れていないのか、そこまで痛くないそれを受けて、僕の緊張がすこし和らぐ。

 

「それで、どうして支店を開くことに・・・?僕は気づいたらこの白衣を着せられてたから、この天幕のことも何も知らないんですけど・・・?」

 

 僕の質問に、彼は「あぁ」とどこか納得がいったかのような声を出す。

 

「お前、確か12階層までしか行ったことがなかったんだったな。道中に俺たちのことを回復しながら『ヘルハウンド』やら『アルミラージ』、さらには3体も同時に出た『ミノタウロス』を瞬殺してたから、忘れてたぜ」

 

「あはは・・・」

 

 モルドさんは褒めてくれるけど、これに関しては偶然が重なった結果だ。

 ヘルハウンドは僕が付与魔法エンチャントを使えば、その炎は届かない。

 アルミラージは、大量に出たとしてもお義祖父ちゃんとの『鍛錬』で集団戦での立ち回りを叩き込まれ。

 ミノタウロスに関しては、以前のような『強化種』でないことと、その前回に戦ったミノタウロスのお陰で戦闘経験がある。

 これらの理由で、ここまでの道中は戦えたに過ぎない。

 

 そもそも、僕一人だとたどり着けるわけがないこの場所に来れたのは、ひとえにこの人が僕たちのために力を貸してくれているから。

 本当に感謝しかない。

 

「ひとまず説明するぞ。って言ってもまあ、やることはシンプルだ」

 

 言うとモルドさんはズビシッ、と指先を僕に向ける。

 その目は、まるで勝機のある商談へ挑むときのナァーザさんみたいな目だった。

 

「お前は、ただここ──迷宮楽園アンダーリゾート支店で調合及び接客、販売するだけでいい」

 

「え?」

 

 ──だけ?

 それは殆ど全部なんじゃ・・・?

 頭に疑問符を浮かべる僕に、モルドさんは弱ったように頭を掻くと、もう少しくらしく教えてくれる。

 

「つまりだ。簡単に言えば、お前がここで販売をしても『カモ』にされておしまいだ。ここは、そういう街だ」

 

 彼が指さした先は、対面にある商店。

 そこには、地上での値段の5〜10倍、下手したらそれよりも高い品物が並べられていた。

 

「ここでの商談は、いわば自己責任。カモにされても文句は言えねえし、商品を盗られた、なんてことも自分のせいになる。だから───」

 

 モルドさんは商店に向けていた指を、今度は自分に向け、残った手を、後ろにいる2人──ガイルさんとスコットさん。同じファミリアの人で、よくつるんでる、らしい──に向ける。

 

「俺たちがお前をそれから守る。ついでに、お前が勝手に安く売ったり、ひどい時にはタダにする商品をゼロにする」

 

「ちょっ!こんな切羽詰まったときに、流石にそこまでのことは───」

 

「する。お前は、間違いなくする。俺たちが、その証明だ」

 

 モルドさんは、先ほどまでの少し軽薄そうな態度を引っ込め、真剣な眼差しで見つめてくる。

 後ろにいる彼らも、うんうん、と激しく首を上下する。

 ──証明?

 

「あの、モルドさん。僕たち、ファミリアのホーム──『青の薬舗』以外で、会ったことがありましたか?」

 

 僕の質問に、モルドさんたちは目を見開いた。そして、直ぐに困ったような、呆れたような笑みを浮かべた。

 

「なんだ、覚えてねえのか。こりゃ失敗したな」

 

「いいんじゃねえの?モルドが失敗するのなんて、いつものことだろ」

 

「ちがいねぇ」

 

「うるせえ、てめえら!すこし黙ってろ!!」

 

「ちょ、モルドさん!?お、落ち着いてください!!」

 

 激昂しそうになるモルドさんをどうどう、となだめ。

 すこし息を切らした彼は、暫く肩を上下させ。やがて「コホン」、と咳払いした。

 

「まー・・・あれだ。その・・・ミノタウロスの時」

 

 そこまで言われて、思い出す。

 彼が使っていた長剣は、僕がミノタウロスとの戦いで助けて、そして助けられた冒険者の物と同じだ。

 

「あのとき、助けられて・・・武器を投げたのが、俺だ」

 

 何故か申し訳なさそうに目を伏せる彼に、?と首を傾げる。

 ──何故謝るのだろうか。結局、剣を貸してくれたおかげで勝てたのだから、僕が助けられた側なのに。

 

「あの時、俺は・・・お前に身の程ってのを教えようと思ってな。そのために、わざわざ上層で出張ってたんだ」

 

 身の程。

 それはつまり、お義祖父ちゃんから聞いたことのある、『教育』という名の気に入らない者を甚振ることだろうか。

 ってた、ってことは・・・そのままミノタウロスが現れて──

 

「俺たちは、『鐘兎』の噂を聞いて・・・次々と到達階層を更新するお前に、『嫉妬』したんだよ」

 

 まるで懺悔をするかのような面持ちの彼に、僕は何を言えばいいのかわからない。

 そもそも、アリーゼさんにも言われた、その『鐘兎』のこともよくわからないし、結局『身の程』というのも行われていない。

 それなら、矢沢座言わなくても・・・

 

「だがな、俺はお前とミノタウロスの戦いを見て、思い出した」

 

「?」

 

「・・・・・・俺が、ダンジョンに求めてたもの、ってのをな」

 

「・・・・・・・・・」

 

 ダンジョンに、求めるもの。

 おじいちゃんが言っていたことを思い出す。・・・いや、正確には『思い出そうとした』、だ。

 おじいちゃんはお義母さんが倒れた時に、いなくなっちゃって。僕に残ったのは、おじいちゃんが書き記した『英雄譚』だけ。

 それも、結局はお義祖父ちゃんから貰った『医学書』や『薬学』しか読まなくなっちゃって。

 英雄譚の内容こそ覚えてるけど、しっかりと細部までか、と言われると怪しい。

 ────おじいちゃんは、一体何を求めろと言っていたんだろう。

 

「兎に角、だ。俺はお前に救われた、だからこうして手伝う。理由としては十分だろ」

 

「・・・・・・・・・でも」

 

「でもも何もねえ、これは俺たちがやりたいからやる。ただそれだけだ。だからお前は、どっしりと構えて調合やら接客やらをしていればいい」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・はい」

 

 消え入りそうになる声を、何とか音にする。

 彼は、僕が心配になったのかジッ、とこちらを見つめて。暫くすると、何事もなかったかのように、元の配置に戻った。

 

 

 モルドさんが言っていたこと。

 『ダンジョンに求めているものを思い出した』

 

 ───僕がダンジョンに求めたのは、『調合用の素材』『魔石、ないしお金』くらい。

 ───そのはずだ。なのに、どうして。

 ───こんなにも、何か大切なことを忘れているような気持ちにさせてくるんだろう。

 

 

 

 ───────■■■、■■たぃ。

 

 頭に、ノイズが走った気がした。

 

 

 

 

────

 

 

 

 

「お買い上げ、ありがとうございました。またのご来店を、お待ちしております」

 

 ──結局、僕はその後も答えがわからず。

 ただ次から次へとやってくるお客さんを捌き続けた。

 時には格安で買おうと交渉しようとしてくる者や、時には僕が『世界最速兎レコードホルダー』、ないし『鐘兎』であることを知って、激昂してくる人。

 様々な地上であれば事件になりそうな案件も、全てモルドさんやスコットさん、ガイルさんが守ってくれた。

 彼らに感謝をしつつ、お金を確認する。

 ───盗まれて、ない。

 その事を確認すると、袋へ入れてカバンに詰め込む。

 

 もう商品はない。

 調合用の素材もなくなり、あとは魔石や要らない素材くらい。

 ───あとはこのまま、地上に帰るだけ。でも。

 来たときは明るかった天井のクリスタルは、まるで夜を告げるかのように暗い。

 そんな暗い中でもキラキラとわずかな光を反射する姿は、まるで地上で見上げる星のようだった。

 ───泊まり、になるのかな。

 

 昼とは違って、夜は活動する冒険者が少なくなるため、モンスターが多い。

 それによって、多くの冒険者は夜が遅くなる前に帰るのだ。

 ───つまり、今もこうしてダンジョン内にいるということは、自動的にここで寝泊まりをするほうがいい、ということ。

 

「坊主、引き上げるぞ」

 

「はい。モルドさんも、スコットさんも、ガイルさんも。手伝って頂き、ありがとうございました」

 

「まだ礼を言うには早えよ。今日はここに泊まりだからな」

 

 言うと、彼は背後にある施設を指さす。

 そこはこのリヴィラの街にある宿泊施設だ。

 僕らはその建物を目印に、歩を進めた。

 

「ひとまず寝て、明日また『中層』で狩りを────」

 

 しよう。

 そう告げようとした彼の言葉が、止まる。

 

 ───何かがおかしい。

 何かどよめきのようなものが、この先の宿の方から聞こえる。

 モルドさんも何かおかしいと思ったのか、雰囲気を変え、警戒の色を顕にする。

 モルドさんは近くにいた通行人に声をかけ、問いかけた。

 その人は怪訝な顔をして、直ぐに「ああ、『鐘兎』の店の奴らか。あそこは繁盛してたみたいだし、知らないのも無理ない」、と何処か独り言のように呟いていた。

 その顔は青く、白い。まるで見てはいけない、もしくは知ってはいけないことがあったかのように。

 彼は暫くすると、重々しく唇を開いた

 

「殺しだよ。この先のヴィリーの宿でね」

 

 ───それは、僕達が泊まる予定の宿の名前だった。




 ベル君、一体何を忘れてるんだろうね。
 多分ダンジョンのことじゃないよ、だって君のおじいちゃんが「ダンジョンに出a」とか「男ならh」って言った瞬間に四ツ山向日へ『福音』されてたもの。トラウマでしょ。
 さて。今回でソード・オラトリアの話──『リヴィラの街』の事件に立ち会うことになりましたね。
 一体フィンはベルくんにどんな反応するんだろな・・・反応しないことも?よくわかんない、未来の私に聞いてくれ。

 最後に。
 皆さんは、徹夜をして小説を書かないでください。
 こうなりますよ。
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