ちょっと息抜きに描いてる作品なので・・・そこまで詳しく書くのは、ちょっと趣旨と違うというか・・・ごめんなさい。
ヴェルフは原作とあまり変わらない(強いて言えば求めたのはナイフだったくらい)。
リリはそもそもソーマ・ファミリアがそこまで酷くないから、精々冒険者のことをうざっ!って思うくらい。
鳥のさえずる声に導かれるように、意識を浮上させる。
最近は慣れ始めてきたベッドの柔らかな質感に、思わずそのまま包まれていたい衝動に駆られるが、数分の健闘の末にようやく起き上がる。
顔を上げれば、ベッド横には多数の医学本や調合書、家から持ち出した英雄譚やらが詰められてぎっしりとした本棚と、さらにその隣には机。
夜遅くまで書き直していたレポートが目に映る。
ぼーっとする頭を振り、顔を洗うために洗面所に向かった。
───
顔を洗って一階に降りれば、カウンターの上には朝食がお盆に乗せられて、あたたかな湯気を発していた。
飴色に染まったオニオンスープ、断面から顔を覗く、チーズにレタスとトマトが挟まれたオーソドックスなトーストサンド。
コンソメと玉ねぎが混じった香りと、パンの焼けた匂いに、思わずお腹の音が鳴る。
そのお盆を持ち上げ、テーブルに向かおうとすると、お盆の下からメッセージカードが現れた。
『今日は朝から予定があるので、食べ終わったお皿は水につけておいてくれ。今日はダンジョンに潜るのだろう?気をつけるように』
簡潔な内容が綴られたメッセージカードに苦笑を浮かべつつ、ポケットに入れて、今度こそ席へ向かう。
朝食を口にしながら、今日の予定を振り返る。
(今日はヴェルフとリリがいるから12階層までは行けるかな)
自身の武器の鍛冶師に、サポーターの小人族。
他の人が聞けば仰天してしまうパーティ構成に、しかし少年は疑問を挟まない。
そもそも、このパーティで一番ステイタスが高いのは、Lv2のヴェルフだ。
リリだって、サポーターとして、稀有な才をもつ。
ベルもLv1の中では類稀なる存在だ。
少年は治療師であり、何よりも所有する魔法のどれもが無詠唱。
速効性の回復魔法に、付与魔法による接近戦と中・遠距離の戦闘。
Lv1でありながら、パーティの中核を担っているのだ。
───
「リリ、ヴェルフ!」
「お、ベル」
「ベル様!」
朝食を食べ終えて、装備を整えた後。
中央広場噴水近くにて、待ち合わせをしていた二人を発見。
そのまま駆け出し、二人の名を呼べば、帰ってくるのは嬉しそうな二人の声。
炎のような真っ赤な髪をした、ヒューマンの男性──ヴェルフ・クロッゾと、栗色の髪をした、小人族の少女──リリルカ・アーデ。
この半月の間にまだ数回しかパーティを組んでいないにも関わらず、まるで昔馴染みの仲間のように心地良い空気が流れる。
「遅かったな?」
「ごめん、ちょっと起きるのが遅くて。・・・あと、朝ご飯が美味しくって、つい味わっちゃって」
「ああ、ベル様はフォス様のご飯を毎日食べてるんでしたよね。あれほどおいしいんですから、仕方ありませんよ」
「そうかあ?確かに美味かったけど、それよりもエルフの視線がきつかったけどな・・・」
「それは・・・言い辛いですが、ヴェルフ様だから、としか・・・」
「ふざけろっ・・・・・・って言いたいが、まあ・・・そうだよなぁ・・・」
──以前。
この三人でパーティを組むようになったときに、お義祖父ちゃんへ報告を兼ねて、家に誘ったのだ。
その時に、まだお客さんが──エルフがいる中でヴェルフが名乗ったことで、お義祖父は問題なかったのだが、他のエルフたちが大騒ぎ。
──やはり、クロッゾの名前はマズかったのか。
エルフの森を焼き払ったクロッゾの魔剣、そしてその製作者のクロッゾを忌み嫌うエルフの勢いを甘く見ていた。
必死に僕たちが弁明して、ヴェルフは家名を嫌っていることや魔剣を打つことを嫌っていることなどを説明し終わり。
それでも、僕たちが食事をしているときには、ずっと視線を集めていた。
(あのときは、いつもは美味しいはずのご飯の味・・・しなかったなぁ)
ヴェルフもチラチラとエルフを見つつ、食事を口に運び。
リリは逆に周りのことなど見えていないかのように、一心不乱にご飯を食べ進めていった。美味しい、美味しいと食べるリリに微笑みを浮かべるお義祖父ちゃん。
カオスに満ちていたあの時のことを思い出すと、少し胃が痛くなってきた。
「はー、やめだやめだ。嫌なことなんて思い出しても何にもならねえ、さっさとダンジョンへいこうぜ?」
「そうですね・・・今日は11階層まででしたよね?急ぎましょうか」
「うん!」
僕たちは雑談もそこそこに、ダンジョンへと歩いていった。
───
「ふっ」
『ガァッ!?』
「そりゃあ!」
『ッ!?』
ダンジョン、11階層。
薄暗い階層の中で、三人は拙いながらも、連携を取っていた。
ヴェルフが大刀を振るい、脂ぎった腕を振るう豚頭──オークを斬り伏せる。
リリもヴェルフが大刀を振るう前と後の隙を潰すようにバリスタを放ち、オークの目を射抜く。
隙の生まれたオークを、ヴェルフとベルが斬り伏せる。
ヴェルフは大刀で。
全身を薄く炎雷に包まれたベルは、右手に握るロングナイフで。
『怪物の宴』とも言われる怪物たちが次々と生まれる地獄の最中、それでも三人には焦りの感情はなかった。
Lv2の力を駆使して次々と斬り伏せるヴェルフに、的確に隙を潰すリリ。
そして──
「フレイム」
ベルがつぶやきとともにロングナイフを握る右手とは反対の手に握る杖を突き出す。
いつの間にか全身の炎が薄くなっており、右手の短杖に集まっていた。
すると、短杖から人の顔程の大きさの火球が二つ、発射される。
左右に分かれるように発射されたそれは、二体のオークの腹を焼くと、魔石を砕いたのか怪物の姿が灰に変わっていく。
「【ファイアボルト】」
すかさず付与魔法を発動し、薄くなった炎と、雷を補充する。
そのまま次のオークを見据え、一歩を踏み出すと、同時に。足元で炎を爆発させ、雷を足に流し込むことで、Lv1とは思えないほどの敏捷を発揮する。
ベルを見失ったオークへと飛びかかり、空中で二回転。
ロングナイフで胸元を切りつけることで露出した魔石を確認した瞬間、次の獲物を見据える。
新たに壁より生まれたオークを観た瞬間、足裏でオークの魔石を踏み──爆発。
先程と同じ加速の仕方をしながらモンスターを灰に変えながら、次のモンスターの元へと向かう。
「サンダー」
呟きながら、獲物への飛距離の暇。
杖を突き出すと、そこから一条の雷が真っ直ぐに発射される。
射線上にいたオークは魔石を貫かれ、自身が死んだことに気付くこともなくその身を灰に変える。
「【アンジェラス】」
オークに斬りかかりながら、短杖を少し遠くにいるヴェルフに向ける。
すると、リン。という鈴の音とともに、音の波動が飛ぶ。
それは速やかにヴェルフの元に届き、オークが『迷宮の武器庫』から取り出したのだろう棍棒と打ち合ったことで手を痺れさせた腕から、痺れを消す。
「すまん、ベル!」
「いいよ!だから冷静に!」
やがて。
余裕ができたベルが炎雷と回復魔法にて、リリの矢と共にヴェルフの援護に回っていった。
───
「なんつーか、ベル。お前の戦い方って不思議だよな」
「そうかな?普通だと思うけど」
「ベル様が普通なら、今頃オラリオは変態の集まりですね」
「そこまで言う・・・・・・?」
モンスターの殲滅が終わり。
今は倒したモンスターのドロップアイテムを収集していた。
至る場所に灰が積もり、山と化しているさまは異様だ。
そして、発展アビリティ『幸運』の効果だろうか。
これまた異様なまでにドロップアイテムが多かった。
それらの処理をする中。
唐突に振られた話に、少年は理解が及ばない。
変だ不思議だと言われても、普通の戦い方をしていると思っている少年にはピンと来ない。
「あー、あれだ。よく付与魔法を発動した後にフレイム!だとかサンダー!だとかいうだろ?スペルキーじゃないってのは、なんとなくわかるんだが」
「あー・・・え、っと。お義祖父ちゃん曰く、僕のは弄りやすい?というか、コントロールがしやすいらしいんだよね」
「?」
「えっとね・・・」
説明が難しいのか、言葉につまる。
やがて、しどろもどろながらも説明をする。
「えっと・・・・・・僕の付与魔法が無詠唱なのは、わかるよね?」
「はい」
「あんだけ見てればな」
2人が頷いたのを確認して、言葉を続ける。
「そのせいって言うべきなのか、おかげ?って言うべきなのかな。僕の魔法は扱いやすい、らしい?」
「らしいって・・・・・・曖昧ですねー・・・」
少々あきれた様子のリリに、少年は思わず苦笑する。
「これもお義祖父ちゃんの考察だから、確証はないんだけどね。ただ、何処まで言っても無詠唱だから、スペルキーの追加効果ありの魔法の真似をしてもそんなに強くないんだって」
「「うーん?」」
今度はよくわからなかったのか、2人揃って首を傾げる。
殆ど同時にその動作をしたために、容姿などは全く似ていないのにまるで兄妹のようだな、と少年は思うが、絶対に口にしない。
あとが怖いから。
「つまり、僕が出してる火球とか雷の矢は、他の付与魔法で似たような効果のものがあったら、そっちのほうが威力が高いんだって」
「そう、なんですか?」
「そうお義祖父ちゃんは言ってた」
「そうか。まあ、ベルは頼りになるって考えれば終わる話だな」
「そうですね」
「僕、結構頑張って教えたんだけどな・・・」
しょも。という表情を浮かべた少年に、 2人は思わず笑ってしまう。
「まあいいか。それよりもベル、ナイフの調子はどうだ?」
「あ、うん。すごく手になじむというか…元から自分の一部だったみたいに扱えるよ!すごくいい!」
「そうか。・・・・・お前にはホントは鎧も使ってほしかったんだがなあ」
「仕方ないよ。僕の戦闘スタイル的にアーマーは邪魔だったし・・・・・・それに、魔法で溶けちゃうし・・・・・・」
──そう。
何も、ベルとて装備を固めたい気持ちはあるのだ。
しかし、ナイフと共にもらった鎧は炎と雷の熱量に耐えきれず、融解。
数回作り直しては、よくて1日しか持たない。
ベルの急速な魔力のアビリティ上昇に、Lv1用の防具では耐えられないのだ。
「リリとしてはベル様が倒れたらこのパーティが瓦解するので、もっと守りを固めてほしいものですが」
「あはは・・・そうしたいのはやまやまなんだけどね・・・・・・よし、終わり!次の場所に───
『助けてくれ〜〜〜!!!』
魔石の取り出しを終えた瞬間、突如聞こえてきた悲鳴。
瞬間、少年の顔が強張る。
「2人とも」
神妙な面持ちになる少年に、小人はため息を吐き、青年は不敵な笑みを浮かべる。
申し訳なさそうな、それでも嬉しそうな笑みを少年も浮かべ。
そのまま、3人で声の聞こえた方へ駆け出した。
───
「「8、82400ヴァリス!!?」」
あの後。
悲鳴を上げていた冒険者達を助け出して、リリのバックパックと僕たちのポーチが一杯になってから、ダンジョンを出た。
夕方に染まる空の下、必要な素材を僕とヴェルフが取ったあとにリリがギルドで換金しているのを二人で待っていた。
ギルドの建物から出てきたリリが俯きながら出てきて怪訝な表情をしたあと。
ガバッ!と顔をニヤけさせながらリリが告げた金額に、ベルら二人は驚愕する。
──たしか、Lv1の冒険者の5人パーティが一日に稼ぐ金額が25000ヴァリス丁度、ってリリが言ってたっけ。それを分けると一人当たり5000ヴァリス。
──僕らは三人で、素材はある程度ポーションとか鍛冶ように取ったから多少下がったはずなのに、82400ヴァリス。つまり一人当たり約27467・・・
──約5倍!?
「お二人とパーティを組み始めてから、リリの懐は潤うばかりです!」
「そりゃあこっちのセリフだろ。小遣いも手に入るし、鍛冶用の素材も手に入るし…」
「僕も、ポーションの素材が手に入るし、二人がいると安心するし・・・お互い様だよ」
「ベル様の治癒魔法のおかげでポーション代も浮いてますし、利益率が鰻登りです〜!」
あはははは〜!
と小躍りするリリに微笑む。
それに気がついたのか、少し頬を赤らめて咳払いをしたリリは、袋を二つ、僕とヴェルフに差し出す。
「お二人の分です!」
「・・・あの、リリ。やっぱり僕の分は素材代も含めて分けたほうが良いんじゃ・・・・・・」
「それを言うなら俺もだろ。そのへんどうなんだ、リリスケ」
「良いんです。ヴェルフ様からは武器を、ベル様からポーションを提供してもらってるんですから」
パーティを組み始めてからは恒例になりつつあるやり取りに苦笑しつつ、お金が入った袋を受け取る。
「ごめんね、リリ」
「気にしなくて大丈夫です。リリとしては、これからもお二人とパーティを組めればそれでいいですし」
「お、なんだぁ、リリスケ?そんなに俺たちのこと大好きなのか?素直じゃねぇなぁ、お前も」
一瞬。
ヴェルフの言ったことを理解できていないのか、キョトンとする。
数秒後、意味を理解した瞬間、リリの顔がリンゴのように真っ赤になる。
「ち、ちがいます!お二人とのパーティならトラブルもないし、アイテムの補充も気にしなくていいから楽なだけです!!」
「まあまあ、まあまあまあ…」
「ムッキー!!!!」
「えっと・・・僕は嬉しいよ?」
「ベル様もですか!?よりにもよって、ベル様までからかうんですか!!??」
あー、もう!!
そう叫びながらぷりぷりするリリに思わず笑ってしまう。
からかわれていると思ったのか、さらにリリは怒る。
ヴェルフも声をあげて笑う。
ベルも、堪らえようとして失敗し、笑う。
少年たちは、そんな彼らの日常になりつつある時間を噛み締めた。
〜軽く人物紹介〜
ヴェルフ・クロッゾ
・ヒューマン
・今作では本編で言及されていた「無茶」を、成功させた世界線、ということに
・ベルくんにはナイフと戦闘服を作っているんですが、ホントは鎧も作ってあげたかった(戦闘スタイルとどうあがいても上がり続ける魔力による魔法の火力の前に惨敗)
リリルカ・アーデ
・実はソーマ・ファミリアがとあるファミリアが存命なせいでカヌゥさんが早い段階で拘束されたので、そこまで悪影響はない
・ベルとヴェルフのことを他の冒険者とは違うとは思っているが、多分知り合いとか友達くらいの関係性
・実はベルのことを内心で「薬草をハムハムしてる兎」くらいに思っている。想像がかわいい