草喰みの白兎   作:リヴィドーカリェー

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 そういえば、総合評価が1000を超えました。
 すごいですね。頑張った甲斐があります。
 ・・・・・・ただ困ったことに、私はこの評価に『何で・・・?』という気持ちのほうが強いですね。
 私は好きに書いてるんだけど、本当に面白いのかな・・・?とか疑問には思いますが、まあ、それはそれ。
 やっぱり嬉しいものは嬉しいわけで。

 情緒がぐちゃぐちゃになりそうです。誰か助けて。


会談

 全てを飲み込む破砕音が迫るのを感じながら、アイズは全力で駆ける。

 背後から迫る食人花の亜種は、全ての『同属』を喰らい成長する。

 喰らえば喰らうほどにその『足』たる食人花の数を増やし、さらに同族を喰らうという『食の加速』を繰り返すソレは、もはやアイズだけを狙っていた。

 アイズの風に路地にいた全てのモンスターが引き寄せられる中、レフィーヤとルルネはその背後にいた。

 

「逃げたい!逃げ出したい!狙われてないよね!?なら、逃げても────」

 

「そんなこと出来ません!そもそも、あのモンスターが居たとしても『街』の方が安全です!!団長やリヴェリア様が居ますし、それに──」

 

 あの鐘の音が鳴っているから。

 その言葉を、レフィーヤは飲み込んだ。

 延々と鳴り続ける鐘の音色は、途切れることがなく。

 まさに全ての傷を無くさんとするかのようにかき鳴らされる癒しの音を聞いても、レフィーヤの心は晴れず。

 むしろ、心配の感情のほうが強くなってきた。

 思い起こされるのは、この大鐘楼を初めて使った時の彼の姿。体中に汗が浮かび、心臓が早鐘を打った状態で気絶した姿を。

 

(早くやめさせないと・・・)

 

 じゃないと、彼は無理をする。

 それを確信しているレフィーヤは、確実に迫りつつある『リヴィラの街』を視界に入れると。

 その足元に、魔法円マジックサークルが出現した。

 

「ッ!?」

 

「うわっ、ちょっ、なに!?」

 

 急に立ち止まるレフィーヤに、ルルネが驚愕する。

 その魔法円を、レフィーヤは知っている。

 美しい翡翠色の魔法円は、レフィーヤたちを知覚したかのようにズレ、レフィーヤとアイズの間───食人花の亜種を、捉えた。

 ───直後。

 獄炎の火柱が、モンスターを焼き払った。

 

『────────アアアアァァァァァァァ!!!』

 

 耳をつんざく悲鳴を上げるモンスター。

 周囲を見れば、立ち昇った火柱は、三。

 全てを焼き尽くす業火が、数々のモンスターを灰に変える。

 そして、食人花達は何を考えているのか『魔法』へと向かい──自ら灰へと変じる。

 その姿に、以前見た少年の火球での撃破を思い出す。

 

「あれは・・・」

 

「リヴェリア様の魔法・・・」

 

 呆然とする少女たちの目の前で、業火が鎮まる。

 食人花の魔石すら焼き尽くした焔は、亜種すらも灰に変えたようだ。

 魔石も、骸すらも残らなかった敵に何とも言えない気持ちになるも、すぐに切り替えて街を目指す。

 

(まだ食人花を全滅したとは言えないし、何より襲撃者の存在が気になる──!早く団長達と合流を───!!)

 

 

 

 

 そうしてアイズと合流し、街を目指す少女たちの予想に反し。

 襲撃者は、現れなかった。

 アイズと渡り合い、あまつさえ食人花達の調教師テイマーであろうことが伺える『敵』の正体。

 そして、あの『宝玉の胎児』によって変化したモンスターが、執拗にアイズを狙った理由。

 さらには──アイズを『アリア』と呼んだこと。

 あらゆる謎を呼びながらも、『リヴィラの街』での戦闘は終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

────

 

 

 

 

 

 

 

「───ちっ」

 

 襲撃者は、その一部始終を見ていた。

 焼き尽くされた食人花。

 そして寄生した上に、焼き尽くされた『宝玉たね』。

 そして──『アリア』こと、アイズ。

 尽くが台無しになりながらも僅かに収穫のある現状に、慰めにもならん、と舌打ちをする。

 そんな彼女に───『影』が、語りかける。

 

「あら、レヴィス。どうして宝玉たねを持っていないの?もしかして・・・失敗したのかしら!?」

 

 アハハハハッ、と嗤う『影』に、レヴィスは舌打ちをする。

 

「黙れ」

 

「黙らないわ!だって、何にも目的を達成できてないアナタ、とっても惨めなカワイイんだもの!!」

 

 不快をあらわにするレヴィスは、やはり舌打ちをし。

 すぐに、その双眸をアイズに戻す。

 ───やはり、無理だ。

 現在のアイズと自身の力は互角。

 『武器』もまだ届いていないため、現状では倒すことも叶わず・・・良くて相討ちだろう。

 そうでなくても先ほどの業火を出した魔導士、長槍を操る小人族パルゥム、双子のアマゾネス、青髪の剣士*1

 そして───あの『鐘の音色』

 レヴィスは見ていた。

 あの鐘の音が響いた途端、範囲内の全ての冒険者の傷が癒えたことを。

 レヴィスは見ていた。

 あれは一人の少年がもたらしたものなのだと。

 

(あれがいる状況では、『アリア』を討つことはできないだろう)

 

 傷を負っても治るのであれば、その『元凶』を潰す。

 それができれば苦労はないが、残念ながら少年の近くにはリヴェリアがいる。

 Lv6である彼女が近くにいる状態では、彼を討つのは厳しいだろう。

 もう一度舌打ちをし、いつまでも嘲笑をやめない『影』を無視して、レヴィスは踵を返す。

 

「あら、追わないの?」

 

「するはずがないだろう。これ以上やっても無駄だ」

 

 にべもなく姿を消す彼女に、『影』は嗤う。

 愚かしい子どもを見るかのような笑い声は、街まで響くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

────

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・ふ、ぅ・・・」

 

 最後の食人花が消え、街の人々が歓喜する中。

 僕は構えていた杖を下ろし、一人ホッとする。

 体はフラつき、倒れそうになるが、それをぎゅっとこらえる。

 アレだけ彼らを挑発したのに倒れたのでは、示しがつかない。

 僕を守ってくれていた後衛職の人々から受け取ったポーションを飲みながら、ゆっくりと呼吸を整える。

 自然と前後に揺れる体を抑えていると、突然その体を支えられた。

 見れば、青髪の女性が僕の体を支えていた。

 

「大丈夫?」

 

「あなたは・・・アーディ・ヴァルマさん・・・・・・」

 

「そうだよ〜!私はあのシャクティ・ヴァルマの妹にして、君の先輩冒険者で、君のことを支えに来たLv5!アーディ・ヴァルマだよ!じゃじゃーん!!」

 

「え、と・・・ありがとう、ございます?」

 

 誰にしているのかわからない──多分僕?──自己紹介に困惑しつつも、感謝を告げる。

 「素直な子だねぇ〜」とアーディは僕の頭を撫でつつ、移動を開始した。

 支えられながらの歩きは一切の負担もなく、疲れが抜けない僕は何処に向かっているのかも分からずに連れられていく。

 

「あの、アーディさん?僕は一体、何処に・・・」

 

「着いたよー!」

 

 僕が連れられた先にいたのは───

 

「やっほー、アーディ!元気そうだね!」

 

「うん!ティオナも元気そうで、嬉しいよ!」

 

 ティオナ・ヒリュテさん───?

 ロキ・ファミリア所属の、第一級冒険者。

 何故この場に連れられたのか分からない僕は、首を傾げる。

 

「あの、どうして僕はここに・・・?」

 

「んとねー、君に聞きたいことがあったんだー!!」

 

 聞きたいこと・・・?何だろう?

 スキルや魔法のこと・・・?でも、他人のステイタスの詮索はマナー違反なんじゃ・・・

 

「えっとねー・・・まずは、騎士ガラードが助けようとする人の名前は?」

 

「え?・・・王女、アルティス、様・・・?」

 

 唐突に振られた話に混乱したけど、すぐに英雄譚の話だと気づいて、答えた。

 僕の答えに、二人は嬉しそうな顔をする。

 

「じゃあじゃあ、竜殺しのジェルジオが倒した怪物の住処は?」

 

「確か、シレイナの湖畔・・・ですよね?」

 

 読まなくなって久しい英雄譚の記憶を掘り起こし、何とか答える。

 二人はさらに嬉しそうにし、質問がヒートアップする。

 

「じゃあじゃあじゃあ、その時に竜を倒した武器は?」

 

「槍と見紛う聖剣・・・・・・・と、えっと・・・・・・乙女のリボン?」

 

「それじゃあ、アルゴノゥトに出てくる意地悪な占い師のことをどう思ってる?本によっては出てこないことがあるんだけど、私はこの人が重要人物だと思うんだけど・・・・・・」

 

「え?えっ、と・・・・・・僕はその占い師が、アルゴノゥトの物語を書いたのかな、って・・・・・・・・・」

 

「え」

 

「えーーーーっ!ちょ、ちょっと待って!そうなると、今までの解釈が変わる!!」

 

 目を白黒させながら「あれがこうなって、こうだから──」とうわ言の様に口にするアーディさんに、固まるティオナさん。

 やがて二人は互いを見つめ合うと、大きく頷いた。

 

「ベル、って呼んでもいい?」

「アルゴノゥトくんって呼んでもいい?」

 

「え?あ、はい。いいですよ」

 

 よし、と何故かガッツポーズをする二人。

 仲がいいんだなぁ・・・と思っていると。

 

「それじゃあ、ベル。三人で神様がいうところの『おたくトーク』、しよう!」

 

「ほえ?」

 

「そーだよ!もっと話しよーよ!」

 

 おたくトーク?

 それは確か、特定の分野に詳しい者たちが、対象への互いの考えや解釈を話し合うやつでは?

 

「いやいやいや!僕、そこまで詳しくないですよ!?そもそも、読んだのもずっと小さい頃までですし・・・!」

 

「ダイジョーブだって!あたしよりも詳しいんだし!!」

 

「逃さないよ、ベル。私たちは君みたいな人を探してたんだから!」

 

 ───そうして。僕は、後に『英雄譚同好会』と呼ばれる二人と共に。『おたくトーク』を始めた。

 

 

 

 

 

 

────

 

 

 

 

 

 

 そんな様子を、フィンをはじめとしたロキ・ファミリアの面々は少々苦い顔をしながら見ていた。

 その視線の先の少年は最初の頃は遠慮気味だったが、今では次々と自身の記憶している英雄譚の考察や解釈を口にしている。

 

「始まってしまったね・・・」

 

「ああ。あの様子では、それこそ朝になるまで終わるまい」

 

 南無、という念を発するフィンに、リヴェリアは同意する。

 ───アーディとティオナは仲良しである。

 彼女達は英雄譚が好き、という共通点があり、街中でも二人で会えばすぐに『おたくトーク』を始める。

 もちろん、趣味は人それぞれ。何事もなければ他人が口を挟むのはご法度、というものだろう。

 ──その何事、があるのだが。

 問題は、二人はトークに熱が入ると他の者達にも英雄譚を読まないか、と勧誘を始める点だろう。

 ここでよく被害に遭うのは『疾風』。

 純粋目で懇願する二人を前に彼女がタジタジになっているのは、誰もが目にしたことがある。

 

「彼には言いたいことがあったんだけどね・・・」

 

「団長!私があのバカを止めてきましょうか?」

「私が呼んできましょうか?」

 

 ティオネとレフィーヤの申し出に、フィンは首を横に振る。

 

「やめておいたほうがいい。今の彼女達はようやくできた同志に喜んでいる。今行っても、三人のトークに巻き込まれるだけだと思うよ───あの子みたいに」

 

 え、と口にするレフィーヤは、三人に目線を戻す。

 その少し離れた地点から三人に近づく、憧憬の姿。

 そろり、そろりと近づくその様は、まるで盗人のよう。

 そして少年の背後についた途端、その白髪に手を───

 

「アイズ」

 

「っ!?」

 

 ビクッ!と体を硬直させる。

 恐ろしいことに、声の主はその声色を嬉色に染めているだけで、少女を硬直させたのだ。

 ギギギ、と少女が声のした方を見れば、そこには獲物を見つけた目をした二人の姿が───

 

「アイズちゃんも英雄譚トーク、しよっか」

 

「え?で、でも・・・わたし、知らな───」

 

「だいじょーぶ!あたしたちが教えてあげるから!」

 

「・・・・・・・・・・・・た、たすけ」

 

 ───アイズはその手をリヴェリアに伸ばす、が──

 

「・・・・・・アイズ。私たちには無理だ」

 

「ッ!?」

 

 ガーン、と気落ちする少女を、ティオナとアーディが拘束する。

 そして始まる、三人にプラスしてアイズが加わった『おたくトーク』。

 しどろもどろになりつつも三人と頑張って会話をするアイズの姿は可愛らしい。

 

「じゃあ理想郷譚アルカディアのエルナが仮面の騎士に出会う話知ってる?名前を知らずに別れちゃうやつ」

 

「・・・・・・ごめん。わから、ない・・・」

 

「じゃあ、永遠の眠り姫の話は?」

 

「・・・・・・・・・!それは、知ってる・・・・!」

 

 ようやく知っている話が出て嬉しいのか、ほんの少しの唇を曲げる少女。

 それを三人は微笑ましいものを見る目で見つめる。

 ───人によっては英雄譚トークをする三人の方が微笑ましいのであろうが。

 その様子を見て、フィンとリヴェリアは嬉しそうにする。

 特にリヴェリアなど、嬉しさのあまり目頭を押さえている。

 ───アイズがファミリア外の者とも仲良くなれている、と。

 娘、あるいは親戚の娘が成長しているようで、二人は嬉しそうだ。

 ・・・・・・レフィーヤだけは、楽しそうに話し合う四人を羨ましそうに見ているが。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 やがて、レフィーヤも四人の元へ向かい。

 やっぱり二人に捕まって。それどころか逃さない、という強い思いで捕まえに来たアイズに驚き。

 そして、五人になって賑やかになる。

 基本的にベルとアーディ、ティオナが英雄譚のあらすじや概要を話し。それを聞いてアイズとレフィーヤが感想を口にする。

 『リヴィラの街』の人々は彼らを見ている。

 戦いの余韻も何も無い彼らに呆れるもの、少年を羨ましがるもの、逆に少女達を羨むもの、彼らに感謝をするもの。

 

 様々な視線が集まるなか、結局五人の話し合いはフィンとリヴェリアの見立て通り、朝まで続いた。

*1
アーディのこと




 レヴィスが逃げた理由はそのまんまですね。
 延々と傷を癒す治療師が居て、さらにはその近くの護衛は簡単には排除できそうもない。
 その状態だと『武器』を持っていない彼女では、倒されるのがオチでしょう。
 ・・・・・・ベル君の体力が保てば、の話ですが。
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