草喰みの白兎   作:リヴィドーカリェー

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 話を加速させます。
 日常回でもやろうかな?って思ったんですが、あまり内容が変わらないというか・・・似たような話しか出ない気がしたので、もっと登場人物が増えてからに。


やっかみ

 三人でダンジョンに潜った日の翌日。

 僕は『青の薬舗』への道を歩いていた。

 ちなみに今日の朝食は何度も裏ごしされてとろとろコーンポタージュと焼きたてでサクサクとしているクロワッサンに、カリカリのベーコンと目玉焼きだった。

 やっぱりお義祖父ちゃんのご飯は美味しい。

 

「おはようございます」

 

「・・・・・・ベル。おはよう・・・」

 

「おお、ベル。おはよう」

 

 犬人シアンスロープ特有の犬耳を垂らし、目も眠たげに半目になっている女性──ナァーザさんと、長い青髪に優しそうな笑みを浮かべた男性──ミアハ・ファミリアの主神、ミアハ様の二人がもう揃っていた。

 

「すみません、遅れてしまいましたか?」

 

「・・・そんなこと、ない。ただ、私たちが・・・早かった、だけ・・・・・・」

 

「ナァーザの言うとおりだ。そなたの気にするようなことではない」

 

「そう、ですか・・・?」

 

 受け答えをしつつ、ようやく着慣れてきた白衣を纏う。

 洗剤の匂いと薬品の匂いが混ざったような匂いに苦笑しながら、今日の作業のための器具や素材を用意する。

 

「・・・ベル、お金」

 

「あ、そうでした」

 

 持ってきた鞄の中をガサゴソとひっくり返して、ヴァリスが入った袋を取り出す。

 中には昨日稼いだお金の半分が入っている。

 僕がファミリアに入団する際に交わした約束で、ファミリアの現状を考慮して、二つの約束を交わしたのだ。

 一つが、お金。

 ダンジョンで稼いだお金の半分を入れる、というものだ。

 これだけでも大助かりだ、と二人は言ってくれる。

 ・・・もっと稼ぎたいなぁ・・・・・・。

 二つ目が、僕が調合するポーションの素材は、自分で取りに行く、というもの。

 この二つのルールを設けるのには理由がある。

 今、ミアハ・ファミリアには膨大な借金があるのだ。

 モンスターに腕を食べられたナァーザさんの片腕のために、ミアハ様がライバル派閥に何度も頭を下げて作ってもらった義手──アガートラム。

 しかし、代償は大きかった。

 義手の金額は大きく、ミアハ・ファミリアは多額の借金をすることになり、そのせいでナァーザさんを除くすべての人が移籍。

 ナァーザさんも事故のせいでPTSDに陥り、ダンジョンに潜れなくなっていた。

 かつては中堅ファミリアと呼ばれていたファミリアの、没落の歴史。

 

 そんなファミリアに入りたい、と門を叩いた二人を説得するのは大変だった。

 なにせ、たとえ入団したとしても現状はお客さん一人来ない、素材も買うか依頼を出すしかない、団員もダンジョンに潜れず、たった一人で潜るしかない。

 そんな見捨てるに等しく、なにもしてやれない派閥よりも、それこそ件の義手を作った神──ディアンケヒト・ファミリアにでも行ったほうがいい、とミアハ様は言ってくれたのだ。(ナァーザさんはディアンケヒト様の名前が出たときにすごい顔をしていた)

 僕はそれでも、と。

 僕は二人のファミリアに入りたいと思ったのだ。

 だから何度も頭を下げ、お義祖父ちゃんも巻き込んで条件を話し合った。

 その結論が、先の二つの約束だ。

 

「・・・・・・ベル、頑張ってるね」

 

「え?」

 

「まだ、恩恵を得てから、半月なのに・・・・・・こんなに稼いだんだね・・・すごいよ・・・」

 

「あ、はい。といっても、ヴェルフとリリが頑張ってくれたからなんですけど・・・・・・」

 

「そんなことはないだろう。そなたも頑張っているから、件の二人もパーティを組んでくれているのだろう?」

 

 もっと自信を持つといい。

 そう言うミアハ様の言葉に、僕ははにかむ。

 こうやって素面で僕を褒めてくれるのは、照れくさくも嬉しい。

 

「取り合えす、もう作業を始めちゃいましょう」

 

「・・・・・・そう、だね。と言っても、客も来ないし、他にやることもないんだけどね・・・・・・」

 

「これこれ、ナァーザ」

 

 出鼻をくじくようなナァーザさんの言葉に苦笑しつつ、作業を始めた。

 

 

 

 ベル・クラネルが基本的に『青の薬舗』でやる作業は、新たなポーションの研究、および作成だ。

 理由は単純で、何度も言及があるようにそもそものポーションが減らないのだ。

 帰り道等でポーションを売りつけたりすることこそあるが、それだってベルの手持ち、かつ手慰みに作ったもの。

 減らないものを補充しても意味はない、としてベルの活動はどうしても研究がメインになってしまう。

 不満はない。

 入団前から説明はあったし、そもそも恩恵を得る前からポーションについての勉強はしてきた。

 何だったら、今までに難病とされてきた病の特効薬やら、誰も解毒しきれなかった猛毒の解毒薬等を研究、作成をしてきたのだ。

 今更、というものだ。

 

 今日もまた、薬舗内で研究を──

 

 チリンチリン、と鈴の音が鳴る。

 入店の音だ。

 

「・・・・・・誰、だろう・・・」

 

「客、か?」

 

「ディアンケヒト様なら、入店前から大声が聞こえるはずですし・・・・・・」

 

 ガハハハ!!という喧しい笑い声を思い出してしまい、ベルはゲンナリする。

 それでも、彼らにあるのは警戒の二文字だった。

 

「・・・・・・どうする?」

 

「一応は僕が行きましょうか?一応、Lv3以上でもなければ撃退位はできるはずです」

 

「どうだろうな。そもそも、普通に客かもしれぬぞ」

 

 うーん、と三人は頭を悩ませる。

 ──普段お客さんが来ないものだから、こうして来たのかどうか、という場面になると逆に不安になるんだなぁ・・・・・・。

 そんな悲しいことを考えながら、やはりここは現役の冒険者としてダンジョンに潜るベルが出ることになった。

 

 

 

───

 

 

 

「いらっしゃいませ」

 

 カウンターへの扉を開き、入店した者の姿を確認する。

 その人物の印象は、一言で言えばいかつい。

 悪く言えば、典型的な冒険者の姿だった。

 頬や額に傷があり、まるでゴロツキのような風貌は見るものによっては恐怖を与えるだろう。

 

「なんだ、ようやく出たか」

 

 おせえな。

 不満を隠そうともしない表情を浮かべる男性に、ベルは一瞬ひるむ、が。

 すぐに気を取り直して尋ねる。

 

「本日はどのような要件で」

 

回復薬ポーションだよ。それもありったけ」

 

「ありったけ、ですか…具体的には?」

 

 ベルの返答が気に食わなかったのか、男は顔を顰める。

 

「だから、ありったけだよ。今ある分全部だ」

 

「全部・・・・・・かしこまりました」

 

 少々お待ち下さい。

 そう口にしテーブルの上に回復薬を並べていく。

 その数はざっと50。

 正直に言えば、この時点で能天気だとかお人好しやらと言われるベルも訝しんだ。

 

回復薬ポーション、50本です」

 

「おお、ありがとよ」

 

 そう言いつつ、ポーションをそのまま持ち帰りそうな男性に、ベルは待ったをかける。

 

「待ってください、お金を払っていませんよね?」

 

「あぁ?別にいいだろうが!ここはただのポーションも1個も売れてねえんだろ?ケチケチしてんじゃねえよ。在庫処分してやるってんだ、感謝しろよ!!」

 

「しかし──」

 

「うるせえな、ルーキー。俺に逆らうのか?」

 

(・・・・・・?)

 

 ベルに掴みかかろうとしているのか、カウンターの向こうへいるベルへと腕を伸ばす男性の腕を回避したリ受け流したりしながら、少年は思考する。

 ──ルーキー?

 ベルの中で疑問が膨らむ。

 ベルと彼は知り合いではない。

 何より、ベルも新人冒険者ではあるが、未だルーキーと呼ばれるほどに有名にはなっていない筈だ。

 なのにルーキーと呼ばれる・・・・・・?

 困惑するベルを助けるかのように、カウンター奥の扉が開く。

 

「・・・・・・うるさい」

 

 その一言とともに、扉の向こうから男性へと何かを投げつけられる。

 男性は回避し、その後にパリン、と甲高い音が鳴り響く。

 着弾地点には、ガラスの破片が散らばっていた。

 

「ちょっナァーザさん?お客さんにガラスを投げつけるのは──」

 

「・・・・・・ベル。そいつは客じゃない。私たちから、タダで、ポーションを、奪おうとする・・・・・・盗人、だよ」

 

「誰が盗人だ!」

 

 反抗するかのように声を荒げる男性に対し、ナァーザは睨む。

 元から半目になっている目は、眉毛と共に怒りに釣り上がっていた。

 

「・・・・・・会話は、聞こえてた。違うと、いうのなら・・・そのポーションも、ちゃんと買うはず・・・」

 

 ぐ、とうめき声を上げる男性は、暫く無言でナァーザを睨む。

 そんな二人に挟まれたベルは、震え上がることしかできない。

 やがて。男性が腰から袋を取り出すと、そこからヴァリス金貨をカウンターに叩きつけるように置き、ポーションを鞄に詰めていった。

 

「25000ヴァリスだ、ちゃんと払ったからな!」

 

「・・・・・・まいどあり」

 

「ま、まいど、あり〜・・・・・・」

 

 ダンダンと怒りに任せて足踏みしながら、男性は出ていった。

 男性が居なくなってから暫くし、お店の前からも居なくなったろうことを確認し、ようやくベルは一息ついた。

 

「こ、怖いですね・・・あれが、冒険者」

 

「・・・・・・あんなのは、まだ、可愛い方・・・・・・。たまに、ポーションを割ろうと、腕を振り上げるやつも、いる」

 

「居るんですが!?」

 

「大丈夫。そんなやつは、割られる前に・・・殴れば、いい」

 

「意外と暴力派なんですね、ナァーザさん!!??」

 

 驚愕するベルを他所に、ナァーザはお金の数を数える。

 きちんと25000ヴァリスがあるのを確認すると、そのお金をしまう。

 

「・・・大丈夫。ベルもそのうち、慣れる」

 

「えぇ・・・・・・そんな、お義母さんじゃないんだし・・・」

 

 その人物が居れば即座に殴られただろうことを口走ったことを自覚せず。

 暴力かぁ・・・と少年は呆ける。

 ようやく静かになった店内にて、ベル達は各々の作業を開始する。

 

 ──なお。

 先程の騒動で本当に全部の回復薬ポーションを売ったことを帰る直前まで2人揃って忘れていたため、帰るまでに急いでポーションを作ることになったのだった。

 この一件以降、ナァーザは件の男のことを『厄病神』と呼ぶようになった。




 〜軽く登場人物紹介〜
 モルド・ラトロー
 ・ヒューマン
 ・「鐘兎」と呼ばれる少年が躍進してきてるのを聞いて、嫉妬(気に入っていた女性が少年にメロメロになっていたのを見たせいでもある)
 ・ちょっと露悪的にしすぎた・・・というか、彼はここまで酷く・・・(原作の初対面とその後の行動を見て)・・・うーん
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