なんだかんだで十話超えそうで、短くなりそうとはなんだったのか・・・・・
自己管理が下手すぎますね。申し訳ありません・・・・・
急に襲いかかってきた蠍型のモンスターを撃退した後に行われた、僕の全力の土下座。
それは───
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・・・・」
「あの、ベル君?私たち、そんなに気にしてない・・・・・・・・・うん、気にしてないから。大丈夫だから、ね?」
「クラネルさん、もう土下座をやめてください。そろそろ移動しなければ日が暮れてしまいます・・・・・私も、その、気にしては・・・い、いな・・・・・・・・ハイ」
「ごめんなさい!!!」
「ああっ、そんなに頭を打ち付けてはいけません!」
「リオン・・・・・あなた、ドS?」
「少なくとも、そこの青二才のせいで小僧の土下座の時間が延びたのは確かだな」
「く、ぅ・・・・・・!」
───彼女達がここに現れてから数十分ほど経っても、僕は土下座を続けていた。
正直に言えば足が痺れてきていて、いきなり立って移動するのは厳しいだろう。
それでも、僕は辞める気なんて無かった。
だって───目の前にいるのは、僕のお義祖父ちゃんの不手際で乙女の尊厳を破壊してしまった人たちなのだから。
「僕のお義祖父ちゃんがごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・」
「小僧、いい加減にやめろ。そろそろ迷惑だぞ」
「輝夜!そんな言い方は───!」
「事実だろう?そもそも、こんな場所からは即刻立ち去りたいと言うのに」
「だからといって───」
「はいはい、二人ともそこまで!ひとまず、輝夜の言う通り移動しましょう?話はそこでもできるわけだし!」
「・・・・・オリオン、彼女たちの言う通り、ひとまず移動しよう。謝罪はその後だ。大丈夫だ、私も手伝う。今回の事に関しては、私も無関係ではないからな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハイ」
ひとまず、謝罪はまた後にすることになって。
僕達は、現在【アストレア・ファミリア】と【ヘルメス・ファミリア】が設営している野営地へと足を運び始めた。
お義祖父ちゃんのことやさっきの土下座のこと等で、なんだか気まずい空気が流れる中。
それでも、アリーゼさんは僕に声をかけてくれた。
「それじゃあ、その『選定の槍』にベル君が選ばれたのね?いいじゃない!まるでお伽噺の『英雄』みたいね!!」
「そう、ですかね?でも、僕としては『英雄』よりももっと別のものになりたいと言いますか・・・・・・」
「そうなの?男の子なら『英雄』になりたい!って思うものじゃないの?」
「どうなんでしょうか・・・・・僕はちょっと、特殊?ですし・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・?アリーゼさん?」
「ううん、何でもないわ!そうね・・・じゃあ、ベル君にとっての『英雄』って、なに?」
「む、難しいですね・・・・・強くてかっこいい、誰かが傷付いていたら、その人の元に誰よりも早く助けに行ける人・・・です?」
「そうなの?・・・・・結構ロマンチストなのね!」
不気味なほどに静かになっている森の中で、アリーゼさんの声はよく響いた。
人によっては五月蝿いと言う──特にお義母さん──だろうこの人の声は、今の僕にとってはありがたいものだった。
───反対に、前を歩く二人とちょっとだけ心の距離があるんだけど。
リオンさんは前回のお説教の怖さで、ゴジョウノさんは初対面だから、僕が物凄く気まずくて。
「それじゃあ、ベル君はやっぱり治療師なのね。この前の『怪物祭』の時の鐘の音も、貴方のなんでしょ?」
「はいっ。スキルの効果で回復魔法の効果を広げたらそうなったんです。どうして鈴の音から大鐘楼の音になるのかは、よくわからないですけど・・・・・」
「そうなのね・・・ただ、あんまり『スキル』とかの説明とかはしないほうがいいわよ?下手したら神様達に狙われて・・・・・ううん、ベル君ならもう狙われてそうね!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・勘弁してください・・・・・」
「大丈夫か、オリオン?顔色が悪いぞ」
途中、嫌なこと──僕の勧誘に来た神様達やディアンケヒト様の事を思い出す事──を思い出してしまったけど、話しは弾んだし、何より楽しい、と思えるものだった。
その後も色々な話しをしているうちに、僕達は気づいたら野営地へとたどり着いていた。
辺りはすっかり暗くなっていたけど、野営地は人々の活気が満ち溢れていた。
テントを建てる者、物を運搬する者、食事の準備をする者。
様々な人々が協力し合うことで野営地が成り立っているのが、一目でよく分かった。
「人が多いですね・・・・・」
「ここで近くの村からの避難民の受け入れを行ってるからね!もちろん、ちゃんと自分達でテントの設営とか、食料の準備とか、手伝えることはちゃんとやってもらってるけどね!」
「そうなんですね・・・・・」
お義祖父ちゃんとヘルメス様は居るかな、とキョロキョロと辺りを見回していると。
少し離れたところで旅装の男神様と背が小さめのエルフ──ヘルメス様とお義祖父ちゃんを見つけた。
僕が声を掛けるよりも早く、ヘルメス様がこちらに手を振ってくれた。
「おーい!ベルくーん!アルテミスー!」
「ヘルメス様!それに、お義祖父ちゃん!」
「ああ、ベル・・・・・何故今そう呼ぶ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・?」
いつも通りにお義祖父ちゃんの事を読んだだけなのに、突然お義祖父ちゃんが顔を手で覆いだした。
なんでそんな反応をするのかよくわからないでいると、周囲の人々がざわめきだした。
「おじいちゃん?」「あのエルフのことをそう言ったのか?」「何処からどう見ても子どもと子どもだろ」「そういうプレイ?」「ショタ×ショタ・・・ありね」「ねえよ」
───という声が聞こえた。
(・・・・・・あっ)
そういえば、もう何の違和感も抱いてなかったけど・・・・・周りから見ると、背が低いお義祖父ちゃんのことを『おじいちゃん』、って呼ぶのって変に見えるんだった。
───時すでに遅し。後悔先に立たず。
様々な時を惜しむ言葉が脳裏を過ぎり、されど現実は変わらず。
ヒソヒソと僕達の関係を考察する声が聞こえてくる。
お義祖父ちゃんは、深く、深くため息をついた。
「スゥ〜〜・・・・・・ハァ・・・・・皆に、言わなければならないことがある」
凄く、凄く言いたくなさそうな顔をしている。
そりゃそうだろう、だってこれから言う言葉が何か知ってる僕でも。お義母さんやおじさんに言われるまでは、信じていなかったんだから。
それほどまでに、信じられる内容の言葉じゃない。
「私の齢は、もう
───場が、静まり返った。
それまでは作業をしつつ聞き耳を立てていた人たちも、僕達を指差してからかおうとしてた人たちも───【アストレア・ファミリア】や【ヘルメス・ファミリア】の人たちも、驚きに目を見開いて、口をあんぐりとしていた。
直ぐ様、人々は神──ヘルメス様とアルテミス様を見た。
『神には外界の子の嘘が見抜ける』
それを期待してのものだったが──答えは、肯定。
曖昧に微笑んで首を縦に振るアルテミス様に、苦笑を浮かべながら大げさに肩を竦めるヘルメス様。
───それを見て、さらに人々は押し黙った。
「そういうことだ。そもそも、私はその子の義祖父だからな。その子が私をお義祖父ちゃん、と呼ぶのは間違っていない」
「間違えた者たちも気にするな。私自身、見抜けるものは、それこそ神しかいないだろう、とは分かっているからな」
「───ただし、私をチビ扱いしたら許さん。それだけは覚えていろ」
そこまで言って、お義祖父ちゃんはその場を去った。
お義祖父ちゃんの姿が見えなくなってから、しばらくして。堰を切ったかのように、周囲が騒がしくなる。
「つまり・・・ショタエルフ爺・・・?」「属性盛りすぎだろ」「そもそも、なんでヒューマンが孫?」「・・・ヒューマンと結婚して、産まれたハーフの子供が同じハーフの子と結婚したのか・・・?」「どんな確率よ、それ・・・」「髪色も目も何もかも面影がないし、血縁がないと言われたほうが納得いくぞ」
ガヤガヤガヤ、と人々が様々な考察を述べていく。
(ごめんなさい、僕とお義祖父ちゃんに血縁関係はありません)
(お義祖父ちゃんがお義母さんの父親代わりだったから、そう呼んでるだけなんです)
(お義祖父ちゃんには妻も恋人もいません・・・)
と、誰に聞かせるわけでもない答えを、内心で言う。
────お義祖父ちゃん、ごめんなさい。
あまり自分の年齢について快く思っていないお義祖父ちゃん──昔知人にイジられたかららしい──に、僕は心のなかで謝った。
とにかく、お義祖父ちゃんがいないと『謝罪』もできないので、僕はアルテミス様やヘルメス様と一緒に、お義祖父ちゃんが去っていった方向──とある神様がいる場所へと、向かった。
────
野営地の中心。あるいは管理施設とも呼べる、数十人は入れそうなほどに大きなテントの中。
そこには、お義祖父ちゃんと、もう一人──一柱。純白の衣に身を包んだ、美しい女神様がいた。
真剣な表情で、目の前の地図や何かの記録が記された書類に目を通すその人は、僕達に気がついたのか、書類から顔を上げた。
「あら、ヘルメス。それに──────アルテミス。それから、その白髪の子がベル?いらっしゃい」
「こ、こんばんは」
「久しいな、アストレア」
「・・・・・・・・・えぇ。久しぶりね」
アルテミス様と知り合いなのか、笑みを浮かべているアストレア様。
でも、なんというか。
僕には、その笑みが何処か寂しげなものに見えた。
見間違いかな?と僕が思っていると、ヘルメス様が前に出た。
その顔には、何時もの軽薄そうな笑みが浮かべられていた。
「やあ、アストレア。相変わらず精が出るね。少しはオレみたいに、サボったらどうだい?」
「それはできないわ。・・・今は下界の危機が迫っている。今も何処かで悲鳴が上がっていると言うのに、何もしていない、というのは落ち着かないのよ」
「そう言っておきながら、私が出る直前まで己からあの蠍達を切りに行ってただろうに。少しは落ち着け、このお転婆」
「そうかしら?そういう貴方こそ、この場だと私以上に頑張っているのでしょう?お互い様よ」
「・・・・・・・・・・・・・・さて、な」
柔和な笑みを浮かべてながら、女神さま──アストレア様が、お義祖父ちゃんとヘルメス様と会話している。
何というべきか、人々がイメージする女神様のイメージにぴったりの人、と言うのだろうか。
物凄く優しそうな雰囲気を感じる。
ただ───
(何処か、アルテミス様に似てる・・・・・?でも、あんまり膝枕をしてあげたいとは思わない・・・うーん?)
自分でもよくわからない感覚に苛まれながらも、僕以外の四人の雰囲気が鋭くなったのを感じて、僕は思考の海から浮上した。
「それで、今の状況は?」
「そうね・・・・・まず、近隣の村はそこまで被害はないわ。もちろん、全ての村が被害を受けていないわけではないけれど・・・・・少なくても、村の人たちは全員無事よ。そこは確認済み」
「なるほど・・・・・アスフィ達にも頼んではいたけど、遺跡への侵攻は?」
「駄目ね、『門』が開かない。『アンタレス』の情報を何も得れていないわ」
「そうだろうな・・・・・あの『門』は私の『神威』じゃないと開かない。だから・・・私が行くしかない」
「となると、行くとしたら明日以降かな?なら、すぐに準備しよう。『決戦』を前に力尽きたら、元も子もないからね」
「・・・・・・なら、この野営地を私の『氷』で覆うことしにしよう。それなら、『アンタレス』の夜襲の心配もない」
「・・・・・・・そうかい。だが、そうなると君の負担が大きい。『決戦』では、君を連れていけない」
「大丈夫だろう。その『決戦』には、私の自慢の義孫がいくからな」
目まぐるしく出てくる情報を、1個ずつ咀嚼していく。
まず、被害状況。
村への被害そのものは存在しているけど、人は無事。ただ、それも何時まで持つかわからない。
次に、『門』・・・多分、『エルソスの遺跡』への『侵攻』のこと。
その『門』が開かなくて、侵攻ができず、『アンタレス』の情報がないこと。
そして、『門』の開閉には、アルテミス様の『神威』が必要で、連れて行く必要があること。
最後に、『決戦』は明日。
それまでは、お義祖父ちゃんがこの野営地を守る『結界』のようなものを作るんだそう。
ただ、それの影響でお義祖父ちゃんは『決戦』に参加できないこと。
情報を理解し終わると、アストレア様が僕の方を見た。
その青い瞳には──何処か、後悔や嘆き、憐憫が感じられた。
「貴方が『槍』をもって、『アンタレス』を討つ。ここから先に進めば、貴方は後戻りができなくなって───傷付くことになる。それでも、貴方は行くの?」
言われた意味が、よくわからなかった。
後戻りができない?場所が遠すぎて、救援がこれ以上呼べない、ということなのだろうか。
傷つく?怪我をする、ということだろうか。・・・・・当然か。僕はまだLv2。アリーゼさん達とは文字通りレベルが違う。
僕自身、どうして自分が選ばれたのか疑問なんだから。
───いずれにしても。
「アルテミス様は、行くんですよね?」
「・・・・・・・・・・・・あぁ」
僕が目を見て問うと、アルテミス様は僕の目を見返して答えた。
その眼差しは凛としていて、その想いは覆らないだろう。
───なら、僕の答えも揺るがない。
「行きます。そもそも、時間もないんですよね?なら、僕が行きます」
「・・・・・・・・・そう」
「・・・・・・・・・」
僕が決意をあらわにすると、お義祖父ちゃん達は笑みを浮かべていたけど。
───皆が僕を見る目が、とても辛いものを見る目をしている気がした。
────
「アストレア」
「・・・・・ヘルメス」
野営地の拠点。あるいは中心。
今は皆が寝静まり、ベルも寝床に向かった──アルテミスと一緒に寝ることになった。が、そこまで慌ててなかった──中。
ヘルメスとアストレアは、大きなテントの中にいた。
魔石灯が淡く光を発する中。
ヘルメスは、悔恨するかのような表情を浮かべている。
「ベル君はこのままだと心を壊すだろう。もしも『真実』を知ったら────誰かのために怒れる彼は、誰よりも心を傷つける」
「・・・・・そうね。貴方やアリーゼの話を聞く限り、あの子は他者よりも自分を責める子のようだから」
二人の顔は悲しみに染まっていた。
それは『槍』に選ばれる者を探し、そして『アレ』を討つと決めた者たちでありながら。
その選ばれし者の境遇を、二人は嘆いていた。
「いざという時は、彼を動かす言葉も分かっている。だが───」
「それをしたら、あの子はオラリオを去るかもしれないわ」
アストレアの言葉に、ヘルメスは頷く。
───心のざわめきが止まらない。
───嫌な予感が止まらない。
自身の内面に訪れた変化に、ヘルメスは困惑している。
───何故自分はただの子どもに、ここまで肩入れしているのか。
───何故、彼が『英雄』を忌避する度に嫌な予感が増すのか。
もはや自分のことがよくわからなくなってきた男神は───一つの質問を、アストレアに投げかけることにした。
それは、既に数日前に問いかけたものだった。
「君は、今回の『決戦』についてどう思っている?」
「・・・・・それは、もうすでに答えたはずだけれど?」
「そうなんだけどね・・・・・」
ヘルメスは、少し困ったような顔をしていた。
「オレはミアハとフォスにも似たようなことを問いかけた。そうしたら、二人とも特に嫌な予感はしない、っていうものでね。なら、今日初めてベル君に会った君の考えに変化はあったのか、どう思ったのか。そこが気になってね」
自分の感覚を信じてはいるものの、自身とは反対の意見を出した二人の『勘』も見逃すことはできない。
後顧の憂いを断つ、とまでは言わないが───今回の『決戦』において、そのような『些細』な問題も、可能なら消し去りたいのだ。
そうね・・・・・とアストレアは一度手を口元へ添えて、考え込む。
そして数秒間考えて、答えを出した。
「もちろん、前に言ったように・・・・・貴方と同じ、『決戦』への『嫌な予感』は無くなっていないわ」
「嫌な予感は、ねぇ・・・・・つまり、新しいものが芽生えたのかな?」
「ええ」
これまた問題だ。
『些細な問題』を解決しようとしたら、さらなる問題が増えた。
その事に頭を抱えたくなったものの、ヘルメスは聞くしかない。
今出てきた問題も、放ってはおけないのだから。
「それは?」
「───あの子自体は、そこまで悪い結果にならない。そう思うわ」
その言葉を聞いて。
ヘルメスは、目を見開いて。すぐに、今度は『自分』を疑い始めた。
ミアハ、フォス。
この二人だけなら、そこまで疑わなかった。
けれど、そこにアストレアが加わると話が変わる。
『正義』を司る彼女は、ある意味では『調停者』としての側面を持つ自分と同じ視点を持っている。
そんな彼女が、ベルに対して『悪い結果にならない』と言った。
───未だに自分は、彼に対しての『嫌な予感』が消えないのに。
「どうしてそんな事を聞いたの?」
「いや・・・・・ちょっと、ね」
ベルに関することについて、ヘルメスと彼ら『三人』は、まったく違う考え──『勘』を出した。
方や、ベルが『途轍もない喪失』を経験すると予感したヘルメス。
方や、『そこまで悪い結果にならない』とした三人。
三人の共通点を考えても、そこまで思い浮かばない。
ミアハとフォスだけなら、二人はベルを愛しているから、で説明がつく。
しかし、ここでアストレアが混ざると分からなくなる。
果たして───
「君はどんな結末を辿る──いや。どんな結末を招くんだろうね?────ベル君」
未だ鳴り止まぬ嫌な予感を前に、けれどそんな『未知』を楽しむように。
ヘルメスは、今度は楽しそうに笑っていた。
面白いくらいにベル君とリューさんを接触させられなくて笑っちゃいますね。いや笑えない。
そのうち短編集みたいな番外編とか書きたいな・・・・・とか思いながら頑張ります。やっぱり医療系設定なら『出汁』回くらいはやりたいですし。