草喰みの白兎   作:リヴィドーカリェー

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 今年はちゃんと雨が降ったからか過ごしやすい温度ですね。まだエアコンをつけなくて済んでいい感じ。
 


選択

 突如後頭部を襲った衝撃で、僕は顔面を地面に強打した。

 ヒリヒリと痛む顔に回復魔法を使いながら、僕はその『犯人』を見た。

 そこには、先ほど僕を助け出して、そのまま前線に戻ったはずの───

 

「アリーゼ、さん?」

 

「ごめんなさいベル君、力入れすぎちゃった!顔、大丈夫だった?」

 

「・・・・・・・・・だい、じょう・・・・・ぶ、です」

 

「なら良かった!」

 

 ペカーッ、という音が聞こえそうなほどに明るい顔と口調で、彼女は笑った。

 まさに花が咲くとでも言い表せる程に綺麗で眩しいそれは、暗く沈んでいる僕の心をかき乱す。

 一度止まったせいで『もう辞めたい、止まりたい』と叫ぶ心をねじ伏せて。

 僕は立ち上がって、可能な限りの眼力でアリーゼさんを睨む。

 

「どいて、ください・・・・・僕は、行かなくちゃ・・・いけないん、です」

 

「だめよ」

 

 にべもなく切り捨てられた。

 それでも僕はもう退くわけにはいかないし、退けない。

 ───少しずつ大きくなる声を、抑えられない。

 

「どいてください」

 

「だから、だめよ」

 

「どいて!」

 

「だめよ」

 

「どけよ!!」

 

「だめ」

 

「──────なんでっ!!!」

 

 乱暴な口調になるのも意識できず、叫んだ。

 それでも、彼女は僕の覚悟を認めてくれない。

 ───目を見れない。

 後ろめたいことなんてしてないのに、どんな目で僕が見られているのか怖くて、目線が自然と下を向く。

 

「僕はもう、『覚悟』を決めたんです!あのひとを、僕が殺すんだって!!なのに、どうして邪魔するんですか!!!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 心の中はもうぐちゃぐちゃで、自分が何を考えていて、何を感じているのかも、もう分からない。

 分かっているのは、僕がアルテミス様を殺すことだけ。それが、あのひとの望みだから。

 だから───

 

「どい───」

 

「ベル君」

 

 てください、と続くはずだった言葉はアリーゼさんのデコピンによって阻まれた。

 ポコン、という音ではなくドゴスッ!!という音が鳴り響き、僕はそのまま後頭部から地面に叩きつけられた。意識を手放さなかったのは奇跡だった。

 前頭部と後頭部から激痛がして、また回復魔法で痛みを消すそうとした。

 ────そう、消そうとした。魔法を発動した、はずなのに。

 何故か、痛みが消えない。

 

「い、っ──・・・・・」

 

「どう?目は覚めた?」

 

「何が───」

 

「ベル君」

 

 また怒声が出そうになった僕は、アリーゼさんと目が合った。

 寝転がったままの僕を見下ろすその目は、悲しそうに細められていて。

 僕はその目に、昨日見たアストレア様の悲しそうな顔の面影を見た。

 

「本当にそれでいいの?」

 

「・・・・・・・・・なんで、それを聞くんですか?」

 

「貴方の想いが知りたいの。答えて」

 

 ───答えは決まってる。

 さっきのヘルメス様との問答で、答えは出た。

 僕は────

 

「ぼく、は───」

 

 答えようとしたのに。

 喉に力が入らなくて、空気が通る音しかならない。

 体が、動かない。

 ────動け。

 ────動け。

 ────動けよ!

 いくら念じても、口は動いてくれない。

 いつまで経っても、身体が動かせない。

 さっきまでは張れていた緊張と感情の線が、切れていた。

 

 ───心が、もう、折れた・・・・・・

 

「もう・・・・・いや、だ・・・・・・っ!」

 

 みっともなく泣きわめくことこそなかったけど、流れ出す涙は止められなかった。

 もう受け止めきれない。

 心が動けない。

 せき止めた思いが、溢れて止まらない。

 袖で涙を隠して、恥も外聞もなくなった僕は、さめざめと涙を流すだけ。

 

「助けたい・・・・・助けたかった!けど、無理だ!!僕には何もない!何もできない!何もしてあげられない!僕にできるのは『調合』だけ!!それもっ、っこんな時に限ってっ!・・・・・・ひとの命一つ救えない!!!」

 

 止められない。

 アリーゼさんは悪くないのに、怒声が止まらない。

 何も知らないのに。

 ずっと袖で隠しているせいで、アリーゼさんがどんな顔をしているのかなんてわからない。

 

「僕にはできない!もう『奇跡』は起こらない!!僕はっ─────『英雄』じゃないから!!!!」

 

 吐き出した。多分、これまでの不満を。

 吐き出してしまった、無関係の人に。

 罪悪感と後悔、そして自己嫌悪に苛まれる。

 

(────もう、消えたい───)

 

 

 

 

 

 

「───なら、なればいいじゃない!!『英雄』に!!!」

 

 

 ────は?

 あまりにもあんまりな言葉に、腕を顔から退かして、思わず目を丸くしてしまう。

 あいもからわず涙で見えない視界でも、アリーゼさんが胸を張っていることがわかった。

 多分フフーン、いいこと言った!って感じに腕も組んでる。それくらいは付き合いの短い僕にもわかった。・・・・・いや、そもそもだ。

 なればいい?なにに?───『英雄』に?

 

 無理に───決まってる。

 

「無理ですよ・・・・・僕には『英雄』になる才能がない。何の力もない、ただのいち治療師ヒーラーなんです。だから───」

 

「でも、『英雄』に憧れてるのよね?」

 

「─────」

 

 アリーゼさんの言葉に、言葉を失った。

 憧れてる?誰が?何に?───僕が?

 憎んでいる、助ける対象の────『英雄』に?

 

「私、貴方に『英雄になりたいって思わないの?』って聞いたじゃない?その時のベル君、すっごく複雑そうな顔なのに、すっごくキラキラした目をしていたんだもの!英雄譚のことになったら目の色が変わるアーディくらいにはキラキラしてたわ!!」

 

「キラキラした目・・・・・・」

 

 自分のことなのに、そんな表情をしていたことなんて知らなかった。

 どうして、そんな目をしていたんだろうか。

 

 ────────■雄に、なりたい。

 

 雑音ノイズが、心に鳴り響いた。

 

「それに────」

 

 時間が経って、涙が乾いてきた。

 未だに心の中の『英雄』に対する憎しみおもいと支える覚悟は、変わっていない。

 でも───その奥に、『何か』があるのが見えた。

 そんな僕を見て、アリーゼさんは・・・・・・・・・笑っていた。

 

「別に、どんな感情を持っていてもいいのよ?恨んでるけど好き、嫌いだけど愛してる───憎んでるけど憧れている、とか。相反しているようで矛盾してないものは、世の中に沢山あるわ」

 

「・・・・・・・・」

 

 それに、とアリーゼさんは僕の頭を撫でた。

 少し困ったような、年下の子どもを心配しているような。

 そんな、まるで面倒見のいい姉のような顔と目つきをしていた。

 

「ちゃんと好きなものは好き、って言えないと辛いだけよ?」

 

「でも、僕は・・・・・いや、そもそも。僕は『英雄』になんて───」

 

「ベル君。大事なのは『貴方がどうしたいか』。もしも『英雄』になるのが後ろめたいなら、一時的な『寄り道(・・・)』だと思えばいいのよ!!大丈夫、どんな答えを出しても、私たちが手伝ってあげるわ!そう!この清く────」

 

 僕が、どうしたいか。

 『寄り道』

 僕の、想い?

 英雄への憎しみは消えない。

 英雄を支える者という夢も消えてない。

 でも、心の奥底。底に沈んでいた思いが、ゆっくりと浮上してくる気がした。

 

 

 

 

 

 ───────英雄に、なりたい。

 

 答えノイズが、聞こえた。

 その音が聞こえた瞬間、僕の心に『答え』が出た。

 心を縛っていた『鎖』が、解き放たれたような音が聞こえる。

 

 気付けば、口は勝手に動いていた。

 

 

「助け、たい。僕は、あのひとを助けたい!『奇跡』が欲しい!!だから、僕はっ!!『英雄』しか、彼女を救えないというのなら!たった一度だけでもいい!!」

 

 

 

 

「───────僕は、『英雄になりたい』!!」

 

 

 

 

「───いいわ!私も───私たちも手伝うわ!だから、なりましょう!あの美しい女神様を助けられるような、そんな『英雄』に!!!」

 

「はい!なります!!僕が、『あのひとの英雄』に!!!」

 

 さっきまでは辛くて、苦しかった心が晴れていた。

 『夢』を諦めたわけじゃない。

 でも────さっきアリーゼさんが言っていたように、これくらいの『寄り道』は、許されるはずだ。

 これが、たった一回───いや。二回目の。僕の『我儘』だから。

 

「それで、アリーゼさん?何か作戦が────」

 

 僕が作戦の概要を聞こうとする。

 あんなに自信満々に僕を焚き付けたんだ。きっと凄い作戦があるに違いない。

 

 そんな僕の考えを受けたアリーゼさんは、とても綺麗な笑顔で─────

 

 

 

 

「ないわ!」

 

 思わずズッコケそうになる。

 あんなに発破をかけていたから、作戦の一つや二つはあると思ったら、まさかの、無作戦ノープラン

 

「しょうがないじゃない!ないものはない、求めたってしょうがないわ!」

 

「えぇ・・・・さっきは『英雄』がどうとか言ってたのに・・・・・・せ、せめてどう戦うかくらいは・・・・・」

 

「そうねぇ・・・」

 

「────あの、アリーゼ!!早く戻ってきてください!!そろそろ限界です!!」

 

 僕達が作戦会議をしようとしていると、リオンさんの焦りの声が聞こえてきた。

 見れば、リオンさんがたった一人で『アンタレス』と対峙していて。その身体と装備品は、すでにボロボロだった。

 

「もう少し耐えなさい、リオン!今から作戦を考えるから!!」

 

「そんな、アリーゼ!?私一人ではもう───」

 

「大丈夫、あなたならいけるわ!頑張れ!リオン!!!」

 

「アリーゼぇぇぇぇえええぇぇええ!!!」

 

 断末魔にも似た絶叫を背景に、アリーゼさんは顎に手を添えて考え込み始めた。

 今更ながらに、アリーゼさんはリオンさんを放っておいてここに来たことに気がついた。

 

(ごめんなさい、リオンさん・・・・・)

 

 心の中で謝罪しつつも、僕も考える。アルテミス様を、助けたいから。

 ────アルテミス様の助け方。

 その目的のためには、最低でも『矢』を用いない方法で『アンタレス』を倒さなければならない。

 神の力アルカナムを持ちながらも、神の力が通じない『アンタレス』には、それこそ『下界』の力で倒すしかない。でも───

 

(────どうやって?)

 

 手詰まりにも似た──実際そうだ──状況に、思考を止めそうになる。

 それでも助けるために、僕は今日までの出来事を振り返る。

 

(なにか、ヒントは────)

 

 ぐるぐると思考が巡り、目が回りそうになる。

 そうして考えた先に───一つ、気になることを思い出した。

 そして、もしもそれができるなら───

 

「アリーゼさん」

 

「どうしたの?もしかして、作戦思いついた?」

 

「・・・・・・・・・作戦、とは言えないんですけど・・・・・」

 

 ゴニョゴニョ、と作戦を話して。

 「ひとまず試してみましょう!」と言いながら、アリーゼさんは僕を抱えて。

 ───残滓のアルテミス様のもとに向かった。

 

 

 

 

 

 

────

 

 

 

 

 

 

 

「アルテミス様」

 

「・・・・・オリオン?どうして、ここに・・・・・」

 

「すみません、アルテミス様!来ちゃいました!!」

 

「あ、あぁ・・・・・」

 

 困惑している様子のアルテミス様。僕は少しだけ、気まずい。

 だって、さっきはあんなに喚いて、そして覚悟を決めて『矢』を取って。

 そのまま『アンタレス』を討つのかと思いきや、アリーゼさんにポコポコ叩かれて戻って来る。

 正直言うと、はたから見たら意味不明な状況だろう。

 

 そういえば、と思ってヘルメス様を探すと、彼は少し離れた位置にいた。

 その目は、こちらを観察している気がした。

 正直言うと彼が一番気まずいから、離れててくれて有り難かった。

 

「どうしてここに来たんだ、オリオン」

 

「────お願いがあって、来ました」

 

「お願い?」

 

 はい、と強く頷く。

 ───正直言うと、怖い。

 否定されるかもしれない。

 拒絶されるのかもしれない。

 ───救わせてくれないのかも、しれない。

 もちろん、救わせてくれないのなら、勝手に救わせてもらうけれど。

 それでも、僕は『言葉』が──『許可』が欲しい。

 だから───

 

「アルテミス様。『助けて』、って言ってくれませんか?」

 

「え?」

 

「お願いします。そうしたら、『力』が出る気がするんです」

 

 僕のお願いに、アルテミス様は困惑した様子だ。

 無理もない。いきなり言われても、どうすればいいか分からないだろう。ついさっきの僕もそうだったんだから。

 ───思い出したら、なんだか辛くなってきたけど。

 それでも、と。

 しばらく僕とアルテミス様は見つめ合って───

 ───?

 

(涙の、跡?)

 

 涙で濡らしたような跡と、少し腫れた瞼が見えた。少し気になったけど、今はそんな場合じゃないから。

 だから、あとで治しに来よう。そう決めていると───

 

「『助けて、欲しい』・・・・・・・・」

 

「!」

 

 ────言って、くれた。

 それが嬉しくて、僕はすぐに振り返ってアリーゼさんと笑い合って。

 すぐにでも『作戦』を実行しようとして──

 

「私は、まだオリオンと、・・・・・・ベルと。何もできていない」

 

 ───その後に続いた台詞に、固まった。

 どうして、そんな事を急に口にするのか。さっきまでは、そんな事を言おうとしてなかったのに。

 驚いた僕は、思わず振り返って───その目に浮かんでいる涙を見て、固まった。

 アルテミス様の顔は、困惑していた。

 思わず口に出た、あるいは口にしないようにしていた言葉が、止まらないとでもいうような。

 ───そんな『困惑』だった。

 

「貴方のいう『おじさんの料理』を、食べていない。貴方の義母にも、会えていない。貴方の好きなものも、嫌いなものも、何も知らない。それでも────」

 

 それは、まるで告白のようだった。

 そう思ってしまうほどに、アルテミス様の言葉は『熱』が入っていた。

 それは『本音』なのだろうか。

 それとも、もっと別の何かなのか。

 それでも────

 

「────アルテミスわたしは。まだ貴方と、一緒にいたい」

 

 ────僕はその『願い』を、叶えてあげたい。

 さっきのヘルメス様の言葉を思い出して。

 僕は────『こっちの願い』を、叶えることにした。

 

「はい!僕も、アルテミス様と一緒にいたいです!!」

 

 今の僕ができる、とびっきりの笑顔を浮かべて。

 僕は手に────『魔剣』を、握った。

 

 

 

 

 

 

────

 

 

 

 

 

 

「それで、良かったのかい?あのまま行かせて」

 

「・・・・・良くは、無いのだろうな。あのままだと、彼は傷付いて終わる」

 

「それが分かっていてやったのかい?───ずいぶんとまあ、酷いことをするもんだ」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 アルテミスは押し黙った。

 彼女の視界の先には、何処か興奮した様子のベルとアリーゼの二人が、仲のいい姉弟のように笑い合っていた。

 ───本当に、嬉しそうに。

 

「二人は知り合って短いって聞いたんだけどね・・・・・あそこまで仲がいいのは、二人の相性がいいのかな?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

 何処かおちょくるような男神の言葉は、女神の残滓の心をざわつかせる。

 自身でも分からない『負の(・・)』感情の奔流に、飲まれそうになっていた。

 その事実に、男神は気付かない。

 

「・・・・・・・『矢』を通して、伝わってきたんだ。あの子の想いが」

 

「想い?」

 

「そうだ」

 

 女神の残滓の視線は、彼らに釘付けだった。

 

「最初にここを去る時は───私の『願い』を優先した時は、心に蓋をしていた。その奥底では、延々と悲鳴を上げながら・・・・・それでも、私の『願い』を叶えるために、『矢』を手にした」

 

「・・・・・・・・・」

 

「だが───」

 

 残滓は、そこで目を閉じた。

 脳裏に浮かぶのは、ここに来た時の少年の姿、姿勢───表情と感情。

 切り裂かれた跡が残った旅服をそのままに、駆けてきた姿。

 陰鬱として、曲がった背中は何処にもない。こちらの目をまっすぐに見つめる姿勢。

 浮かべていたのは、申し訳なさそうな表情。

 そして───『アルテミスを助ける』という想いに染まり、四苦八苦してはいたものの。

 嬉しそうな感情に、溢れていた。

 ───最初の時とは、全く違う。

 

「堪えきれないほどに───嬉しそうだった」

「私を助けたい、という想いに満ちて───溢れそうだった」

「それを受けてからは──だめだった。いくら耳を塞ごうとしても、目を逸らそうとしても。彼の『想い』が、『わたし』に注がれていた」

 

「───毒されたのかい?残滓とは言え、貞潔の女神が」

 

 残滓は考え、そして───儚い笑みを、浮かべた。

 

「膝枕を受けた時点で今更だ。恐らく、『わたし』を通して『アルテミスほんたい』にも流れ込んでいるはずだ」

 

「・・・・・・・・そうかい」

 

 男神は被っていた帽子を、深々と被る。

 だから、気付かなかった───残滓の『変化』に。

 

「そう・・・・・・・私の、この『ベルを独占したいという身を焦がすほどにドス黒い思い』も一緒に」

 

「えっ」

 

「恐らく、これが『恋』というものなのだろう」

 

「ぇ、チガぅ」

 

 ヘルメスはつい残滓の方を見た。

 背中しか見えない彼女はしかし、まるでオーラのようにドス黒いものを放っていた。

 残滓とは言え、貞潔の女神とは思えないほどに。

 その視線の先にあるのは───一つの『魔剣けん』の柄を、二人で握りしめる姿。

 

「どうしてベルは私と一緒にいる時よりも嬉しそうでいる?私といる時は悲しそうにするか、怒るか、もしくは優しそうな笑みを浮かべるだけだったのに。どうして私はあの笑顔を浮かべさせてあげられない?どうして─────」

 

「・・・・・・・・・ワ・・・ぁ・・・」

 

 もしもこの場にアストレアがいれば、アルテミスの変貌具合に珍しく困惑しただろうか。それとも、喜んだだろうか。

 悲しいくらいに『恋』を知らない女神の残滓は、『嫉妬』が『恋』なのだと勘違いする。

 その歪んだ処女神の想いは、ある意味ではエルフよりも恐ろしい。

 いずれにしても───

 

(ベル君、こわぁ・・・・・)

 

 たった数日一緒にいただけなのにここまで執着されているベルに、ヘルメスは戦慄し、恐怖した。

 もしかして彼は病的嫉妬女製造者ヤンデレメーカーの素質があるんじゃないか、なんて思いながら。

 ヘルメスは少し、距離を置いた。

 

 彼女の姿に、とある結婚を司る女神を思い出したから。




 ベル君のイカれた姉枠を紹介します!
 心配、お説教、勧誘の3連コンボ!アミッド・テアサナーレ!
 心配、お説教、絶叫のエイナ・チュール!
 心配、デコピン、先導のアリーゼ・ローヴェル!
 心配、負けず嫌い、信頼のレフィーヤ・ウィリディス!

 以上のメンバーが、現状の姉枠だ!
 もしも本当にベル君の姉になりたいのであれば、アルフィアに言ってください。『姉の作法』を教えてくれるはずです!
 ・・・・・・逃げて
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