草喰みの白兎   作:リヴィドーカリェー

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 頑張って詠唱を考えましたが・・・・・・難しすぎますね。戦闘描写みそうなんですが。
 こう、どうすればかっこよくなるのか分からなくなります。


月光の加護

 

 

 壮絶なる戦闘音が鳴り響いている。

 

 金属同士がぶつかり合う音。

 聞けば底冷えするほどに大きく、抉るかのような打撲音。

 喰らえば重傷になるのもやむなし、と言える程に大きな二つの音が轟いていても尚鳴り止まない、大きく俊敏な風切り音。

 それらが断続的に、さらには一秒の中に何度も鳴り響いているのだから、行われている戦闘の早さはもはや『人』の物差しでは測れない。

 

 そんな激闘を繰り広げている人物達───アイズ・ヴァレンシュタインとレヴィスは、装備がボロボロになりつつも戦い続けていた。

 

(分断されてから、もうどれくらい経ったのかわからない)

 

 考えつつも、『風』を纏った一撃を赤髪の敵に叩き込む。

 避けきれない、と判断したのだろう。レヴィスは大剣を盾のように構えながら、アイズの横腹に蹴りを叩き込む。

 数瞬だけ『風』と豪脚が拮抗し・・・・・・やがて、脚が風の内側へと侵入する。

 そして───アイズの剣がレヴィスに叩き込まれ、大剣ごとレヴィスを切り裂くのと。レヴィスの蹴りがアイズの横腹に命中するのは。

 ほぼ同時に、発生した。

 

 弾かれるかのように互いに吹き飛んでいき、アイズは左手を地面に添えることで、レヴィスは脚を地面にめり込ませることで壁との激突を回避する。

 ギャリギャリ、と文字通り地面が削れる音を響かせながら、互いの様子を伺う。

 その時に休憩時間レストタイムを告げるかのように大鐘楼の音色が鳴り響く。

 

(───やっぱり、また(・・)。この人、硬くて傷が浅いし、なによりすぐに治る(・・)

 

(あの『姉妹』め・・・・・・まだ『白鐘』を殺せていないのか、間抜けが。おかげで『アリア』の確保が怪しくなってきた)

 

 互いの観察をやめ、アイズは自身の身体を見下ろす。

 何度も傷や怪我を負い、ポーションを一切飲んでいないはずの身体は、本来であれば痣や切り傷が残っているのはもちろん、血が滲んでいるのが普通のはずだ。

 だが、アイズの目には血の跡や土ぼこり等こそ付いているが、痣も切り傷も何も存在していない。

 

 そんな不思議な現象を前にしても彼女が動揺していないのは、今も鳴り響いている大鐘楼の音色が『ベルの音』であることを理解しているからなのか。

 いずれにしても、足元で今も輝いている白い魔法円マジックサークルが展開されて以降、常にアイズの身体だけ(・・)を癒す鐘の音色に、目の前の存在レヴィスを相手に一人で戦えていないことこそ不満ではあるが、『音』が鳴り響くたびにアイズの心に安らぎと冷静さをもたらしてくれる。

 

「────いくよ」

 

「──チッ」

 

 冷静な思考が、アイズに教えてくれる。

 相手の回復には鐘の音色は一切関係がないことを。音色が鳴り響いた瞬間に回復するのではなく、あれは『魔力』や『体力』、あるいは『精神力マインド』を消費することで、ようやく回復しているのだと。

 ───それならば。

 

「このまま、貴女を切り続ければ・・・・・・私が、勝つ」

 

「『アリアぁ』・・・・・・!!調子に、乗るなよ!!」

 

 三連続で繰り出した突きを、レヴィスは折れた大剣で逸らす。

 それでも風の影響を受け、だんだんとバランスを崩していき・・・・・・最後の突きで、身体が少し浮いてしまう。

 

「確かに、素の力は私のほうが弱い。耐久も、貴女のほうがある。だけど・・・・・・」

 

 自身の愛剣に『風』を溜めチャージして、突きとともにそれを解き放つ。

 

敏捷あしは私のほうが早いし、エアリアルを使えば力も、耐久も貴女に並ぶ」

 

「ぐ、っ・・・・・・!?」

 

 盛大な破砕音を響かせながら、地面を転がっていくレヴィス。

 未だ倒れてはいないのだろう、と理解しているアイズは彼女を追いかけ────足元に、新たな(・・・)白い魔法円マジックサークルが展開された。

 もとから存在していたものから少しズレた形で浮かび上がったソレに───もっと言えば、すぐに回復効果が発揮されるでもないそれは、まるで詠唱中の魔法円マジックサークルの待機状態のようで。

 

「今度は、どんな事が起こるんだろう」

 

 次々と不思議な現象を起こす少年を心配する気持ちこそあるものの、それでも新たな発見を見せてくれる彼に、アイズは心を躍らせていた。

 

(髪、もう一回だけ触りたいな・・・・・・)

 

 ───何処か浮ついたような思いを抱きながら。

 

 

 

────

 

 

 

 

 アスフィ達は、その光景───少年達が戦っている場面を見ていることしかできなかった。

 吹き飛ばされ、怪我や火傷を負ったりする少年達。すぐに大鐘楼が癒すものの、アスフィ達から見れば彼らの戦いは痛々しいものに見えていた。

 

 それも、相手はあの(・・)ディース姉妹。

 かつてのときは、かの【フレイヤ・ファミリア】のヘディンとヘグニの二人と互角の戦いを繰り広げた者達。

 そんな存在が、第一級冒険者が一人──それも協調性が薄いベート──、その他の三人が第二級、それも内一人はなりたてだ。

 勝ち目が薄いどころではない戦いを繰り広げる彼らを、しかし【ヘルメス・ファミリア】の面々は何とか力になれないのかと検討する。

 

「やっぱり、すぐにでも加勢するべきだって!いくらなんでも、こうして見てるだけなんて後味が悪すぎる!」

 

「わかっています。けれど、今の私たちは怪我こそ治っているものの、肝心の武器や道具アイテムが殆ど残っていません。加勢するにしても、タイミングが───」

 

 アスフィが言葉を途中で切り、視線の先にいる彼ら───正確には、少し離れた位置に移動したベルを見た。

 彼はその手に握る短杖ワンドを構え、何事かを呟いている。集中もしているのだろう、深紅ルベライトの瞳は閉じられ、言葉を紡ぐことだけに注力していた。

 

「あれは・・・・・・詠唱?無詠唱だけではなかったのですか・・・・・・」

 

 聞いていなかった詠唱ありの魔法の存在に──そもそも残り二つが無詠唱なのもおかしいが──、アスフィは驚く。

 何よりも驚いたのは、その待機中の魔法円マジックサークルの範囲だろうか。

 

「これ、大空洞全体・・・・・・いや、もっとか?」

「もしかしたら食料庫バントリー全体、ってこともあり得るんじゃねえか?」

「どんなやべえ効果があるんだろうな、これは」

 

 ベルの広域回復&浄化を見た彼らは、もう何が出ても驚かないだろう。

 ───そう。よっぽどの効果でなければ、であるが。

 

 

 

────

 

 

 

「・・・・・・それじゃあ、詠唱を開始します」

 

 ベルが宣言すると、レフィーヤはベルの前に立ち、フィルヴィスはスキルの証である赤黒いオーラを発生させ、ディナを押さえにかかる。

 短剣と魔法の一刀一杖、短剣スティレットの二刀流とが交差し、ぶつかり合う。

 フィルヴィスは先程までとは異なり、可能な限り反らし、受け止めることに注力し、ディナをその場に縫い付けることに注力する。

 

「【門出の晩餐、祝福の福音、雷霆と氷の古書ちえ】」

 

「邪魔よ!」

 

「───【ディオ・グレイル】」

 

「【アルクス・レイ】!!」

 

 渾身の力で繰り出される突きを、待機状態にしていた障壁で受け止める。

 突きを放ったことにより僅かに硬直する隙を狙い、全力の魔力を込めた光の矢が飛ぶ。

 もちろんそれをディナは避けようとするが、不可能。

 レフィーヤの【アルクス・レイ】に付与された効果は『必中』。

 かき消されるか、獲物に当たるか等をしなければ消えない魔法が、レフィーヤのスキルによって増幅した魔法威力が砲撃と化して襲っきている。

 ディナは何度か後退して避けた後、途中で煩わしく思ったのだろう。結局は渾身の力で短剣を振るい、かき消す。

 もちろんダメージこそ与えられていないが・・・・・・それでも、当初の目的である時間稼ぎはできた。

 

 ベルの足元に巨大な魔法円マジックサークルが展開され、大空洞どころか食料庫バントリー全体を白く照らした。

 

「【死毒を排し、病魔を殺し。死の運命くさりを引き千切る】」

 

 ───やっぱり、ウィリディスさんは凄い。

 詠唱を開始してすぐ、ベルはそんな事を思った。

 

 詠唱を続ければ続けるほどに暴れ回る『魔力』、そして、目の前で鳴り響く戦闘音。

 多数の剣戟や砲撃の音が鳴り響き、それらを音楽のように妖精の詠唱うたが紡ぎ、まるでこの戦闘が神聖なものであるかのように錯覚させる。

 

 多大なる破砕音が響く中、それでもレフィーヤは何度も詠唱していた。

 フィルヴィスを信じているかのように、あるいは自身の行動が起死回生の一手になることを信じて。

 ───信じて、どっしりと構えること。

 言葉上では簡単に感じるそれが、こんなにも難しいことだとは思わなかった。

 

「ぐ、あぁ・・・・・・っ【盾となれ、破邪の聖杯さかずき】───!」

 

「【帯びよ炎、森の灯火。打ち放て、妖精の火矢】」

 

「────っ、【薬草をもって汝らに頑健なる肉体を。清廉なる光をもって汝らに祝福を】」

 

 フィルヴィスのうめき声が聞こえる。

 それを聞いても、レフィーヤは狼狽えず。むしろより一層詠唱が速くなり、魔力の操作も精密になっていく。

 ベルよりも後に詠唱を開始した魔法も、既に殆どの詠唱を完了している。

 反対に、ベルは狼狽える。何故か自身を義孫まごなどと呼んでいる『不審者』ではあるものの、自身を必死に守ってくれているものが傷ついている事実を前に、少年は心を乱し、詠唱が遅くなる。

 未だ詠唱の三分の二しか詠唱できていない事実が、ベルの心に焦燥の色を灯す。

 

 ───それが、ベルとレフィーヤの違い。

 

 仲間を信じて、詠唱を続ける。

 一般的な治療師ヒーラーや魔導士にとって当たり前のそれは、現在のベルには持ち合わせないもの。

 ───自ら前線に立てる者が、後方で詠唱だけを行う。

 ただ詠唱だけをすればいい、というものではない。どうしても前線にいたときのように戦場の様子を気にして、それによって集中が乱れる。

 仲間が傷ついているのを放置しているという事実も、さらに彼の心を蝕む。

 

 既に大鐘楼は鳴り止んでいる。前線に立つものを癒す音は鳴っていない。

 治せず、傷ついていく仲間を放置するというのは、現在のベルにとってあまりにも屈辱的だった。

 

「【我が身は混沌を浄化する炎鐘えんしょうを掻き鳴らせし、あなた英雄かりゅうど】」

 

「【雨の如く降りそそぎ、蛮族どもを焼き払え。───ヒュゼレイド・ファラーリカ】!!」

 

 いち早く詠唱を完成させたレフィーヤが、ディース姉妹の両方を狙い、数百もの火矢を放つ。

 それを真正面から受けることなく、ディース姉妹はどちらも後退を選択した。

 

「はぁ・・・・・・ふぅ。すまない、義孫ウィリディス。助かった」

 

「どういたし・・・・・・今読みがおかしくありませんでした?」

 

「?気の所為じゃないか?」

 

 軽口を叩きながらも直ぐに前線に戻るフィルヴィスに、詠唱を再び開始するレフィーヤ。

 まさに前衛と後衛のあるべき姿を前に、少年は今何もできていない自身のことが恨めしかった。

 ある意味では完璧以上の治療師ヒーラーである彼は、本来の治療師ヒーラーという意味では落第そのものだった。

 

「【矢を注ぐ女神よ。天空そらを巡り、どうか私の偉業みちを見ていていてほしい】」

 

「───辿り着いたわよ?」

 

 残る詠唱は、後一文。

 魔法の完成も間近に迫った中に辿り着いた死の気配を前に、ベルは目を閉じたまま詠唱し続ける。

 少年に見えていない瞳の先にある光景は、フィルヴィスは身体に数多の切り傷をつけた状態で地面に伏せており、レフィーヤは体を守るかのように杖を構えていた。

 そんな彼女に、ディナは騎士を救う安楽剣スティレットを突き刺そうとし───身体に切り傷を付けて、吹き飛ばされる。

 反射的に何もない空間を殴った彼女が目にしたのは、その空間から姿を現したアスフィ。

 砕けた兜とともに地面に倒れ込む彼女は、その目でベルを見た。

 

(───頑張ろう。僕を信じて守ってくれたこの人たちに、報いるために。生き残るために)

 

 ベルは覚悟を決め、最後の一文を紡ぐ。

 

「【──────我が名は、月の英雄オリオン】」

 

 最後の祝詞は、誓い。

 この魔法の詠唱は、ベルの半生。これまでの偉業、信念が記されたもの。

 それらを束ねたこの魔法は、仲間に能力値ちからと月の光をもたらす。

 その魔法は───

 

 

 

「【エウロギア・セリノーフォス】」

 

 

 

 月の光の加護を意味する言葉。

 ベルの足元に展開された巨大な魔法円マジックサークルが輝きを増し、彼が『対象』に選んだ者達を照らす。

 魔法円マジックサークルの色が白から蒼白へと変わり。淡く輝く清廉なる光は、食料庫バントリーを照らす赤い光を打ち消し────上空へと、昇った(・・・)

 

 巨大な魔法円マジックサークルが昇る様を見て、食料庫バントリー内にいる全ての者たちと、それを覗いている黒衣の人物や老神等全ての視線を集める。

 やがて、それは天井へと辿り着くと─────魔法円マジックサークル内の景色(・・)に、変化が訪れる。

 

 

 始めに目に映るは漆黒。

 どこまでも広がる闇は、大空洞内の光すべてを飲み込んだ。

 しかし、それも一瞬のこと。直ぐ様、数々の光───無限に広がる星々が、姿を現した。

 一番星、六番星、星座。

 常であれば見えるはずのない星を含め、全ての星々が映し出される────そんな中。

 悠然と佇み、蒼白い輝きを放つ大きな『月』が、姿を現した。

 

 ベルはダンジョンに潜る前に、この魔法を義祖父の家で試したことがある。

 その時に義祖父に言われたのは、この月と星々はフレーバーのようなもので、一切効果はないし、あるとしても太陽の光を遮れる程度のものである、ということ。

 それでも、ベルは嬉しかった。

 この魔法を使ったら、いつでもアルテミスが力を貸してくれているかのようで。

 

 ベルが魔法の対象に選んだ仲間達が、淡い蒼白い光を纏い、加護を受ける中。

 ヴェナと戦っていたベートの身体に、変化が訪れる。

 毛が一斉に逆立ち、筋肉が隆起する。

 琥珀色の双眼が縦に割れ、肉食動物のそれへと変貌する。

 

 ────『獣化』。

 

 ランクアップと同程度に身体能力を上げる狼人ウェアウルフのそれは、本来であれば『月の下』でなければ発動、及び維持されない。

 ダンジョンにおいて発揮されないそれを見て、狼人ウェアウルフはダンジョンに一番向いていない種族、と小馬鹿にする者も存在している。

 けれど。

 ベルの魔法によって付与された『月下状態』によって、ベートは月の下にいるのと同じ───否、それよりも大きく身体能力を引き上げられた。

 

 

 ベートは、遠吠えをあげた。

 この魔法の詳細について、ベートは聞こえていた(・・・・・・)

 第一級冒険者としての高い身体能力に付随された聴力の強化に、もとよりヒューマンよりも高い獣人の聴力の合わせ技により、少年が魔法の効果を語った際に戦闘にもかかわらずに少々──絶対に少しである、としか認めない──驚いた。

 

 こうして実際にその効果を実感し・・・・・・・・・ベートは、嗤った。

 この魔法を使用したベルに対してではない。

 この状況において、いくらフィルヴィスがLv5と大差ない強さになれると言っても、本物のLv5であるベートには劣る。

 そんなベートが強化される魔法を発動し一点突破の力を得るために、皆で耐え忍ぶ。戦術として間違っていない判断だ。

 

 嗤った対象は───自分自身。

 何故自分は治療師じゃくしゃの手を借りなければ、目の前の存在一つすら打ち倒せないのか。

 何故己は、彼の治療師ヒーラーの治癒がなければ、既に倒れているほどにボロボロなのか。

 彼は常にベート達の『心配』をして、必要な援護をしようといつも思考を巡らしていた。

 

 何故『心配』をされている?己よりも格下であるLv3に。

 何故、お前ベートは弱い?

 何故、何故、何故・・・・・・?

 

「うるせぇ・・・・・・・・・」

 

 脳内で鳴り響く言葉に、ベートは顔をしかめる。

 自身を苛む傷が、ジュクジュクと熱を放つ。

 ベートは、自身への怒りを抱いた。

 いつまでも変わらない自分に、いつまでも援護されている自分に。

 

「突然月が現れたことには驚いたわ。でも、それだけ。いくら狼人あなたがスキルで強くなろうと、貴方おもちゃじゃ私に勝てないわ!」

 

「・・・・・・・・・」

 

「あら、黙っちゃったわ。さっきまではあんなに叫んで泣いていたのに。るおぉぉ!って!」

 

「るせぇ・・・」

 

「あら、怒っちゃった?怒っちゃったのかしら!」

 

 キャハハハ!といつまでも小馬鹿にする態度を改めず、ヴェナはベートを嘲笑う。

 もう既にベートはボロボロだ。

 メタルブーツは傷だらけで、凹んでいる箇所も散見される。

 服装も複数の切り傷が刻まれ、血もべったりと染み付いている。

 痛みつけることを主軸に添えられた攻撃は致命傷にこそならないが、それ以前に『遊ばれていた』という事実が、ベートの心を蝕んでいた。

 ───だからこそ。

 

「もういい、喋るな。うるせえ」

 

「貴方は言葉が汚いわね!でも、これが負け犬の遠吠えというものかしら!とっても惨め───」

 

 言葉を切り、ヴェナは短剣スティレットを構えた。

 彼女の視界の先にいたはずのベートの姿が消え───背中に、衝撃。

 

「────ゴッ!!??」

 

「────吹っ飛んじまえ!!」

 

 ゴロゴロ、と壁に向かって転がっていくヴェナ。

 その時点で第二級冒険者にも追いつけない速度で飛んでいく彼女に────ベートは、追いついた。

 

「死ね」

 

「────!」

 

 踵落としをするために、ベートは片足を振り上げた。

 そして、渾身の一撃を放つ───その、直前。

 

「【アルクス・レイ】!!」

 

「────ハッ」

 

 レフィーヤが極太の光の矢をベートのブーツへ(・・・・・・・・)放つ。

 それはベートのダメージを狙ったものではなく・・・・・・むしろ、その逆。

 

 魔法がベートの履いているメタルブーツ、その宝玉へと吸い込まれ(・・・・・)、光を放つ。

 彼の装備しているメタルブーツ、『フロスヴィルト』。

 それのもつ力は、『魔法効果の吸収』。

 故に───

 

「───上出来だ」

 

 ベートのLv6・・・・・・・・・否、LV7にも届きうるほどに上昇した能力値ステイタスに、レフィーヤの莫大な威力を誇る砲撃の威力が加わる。

 普段であれば尻込む後進が、この場面で成長していることに──絶対に口にしないが──喜び、ベートは唇をニヤリ、と曲げた。

 

「くたばれぇ!!!!」

 

「【ディアルヴ・オチュア】!!」

 

 短文詠唱によって放たれた闇色の炎と、ベートの踵落としがぶつかる。

 それは一瞬の拮抗を演じ────ベートの一撃が、炎を突き破った。

 驚き固まるヴェナは、そのまま一撃をモロに受け。

 大きなクレーターを作りながら、地面へと叩きつけられた。




 ベートさん、ベル君のこと凄く複雑な顔して見てます。
 守るべき立場の者が、ある意味では一番守られてますからね。プライドポコポコされてます。
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