なんというか、このままいくと本当にベル君の争奪戦が始まりそうなんですよね。
最低でもベートさんがいる【ロキ・ファミリア】と、なんだかんだ仲が良いアリーゼさんと同じく狼人のネーゼさんを擁する【アストレア・ファミリア】の二つは争奪戦が発生したら参加するかもしれません。せめて遠征の間だけでも!って感じで。
イメージは、こう・・・・・・(私はアニメしか見てないのですが)ウィストリアのウィルを取り合ったゼオ様とエルファリア様みたいな感じで。
大きな爆砕音が鳴り響く。
命を刈り取るために振り下ろされた、ベート渾身の踵落とし。
レフィーヤの砲撃の威力も上乗せされたそれは、地面に大きなクレーターを作り出し、妹を叩きつけた。
「ゴッ・・・・・・あぁ・・・!?」
肺から空気が全て抜け、踵が突き刺った胸部でバキバキバキッ!と骨が次々と砕ける音が鳴り響く。
ぐちゃぐちゃに潰されていく内臓の感触がブーツ越しにベートの脚へと伝わり、それが不快だと言わんばかりに込められた力が増す。
獲った、と確信したベートは一度距離を取り、残心。
動き出す気配、心臓の音を強化された聴力で確認し、本当に死んだかどうかを確認しながら、身構える。
万が一を考えて距離をとって行ったそれが伝えてくる結果は───死。
目の前の存在は動き出す気配を見せず、先程のように騒がしい声も響いてこない。
───それが、とても不気味だった。
あれほどまでに硬く、自身を追い詰めた相手にしては、この最期はいくらなんでも呆気なさすぎる。
「・・・・・・・・・・・・」
興味をなくしたかのように死体を見て、ベートはその場を離れた。
妹は死に、残っているのは姉のみ。
周囲をチラリと見れば、食人花は天井に浮かぶ星々や月へと向けて触手や顔を伸ばし、触れ続けるのみ。
叩きつけても、噛み付いても手に入るはずのないものを追いかけている姿に不快感を感じていると───突如、少し離れた位置の壁に穴が空き、中から飛び出た『ナニカ』が大主柱へと向けて吹き飛んでいった。
長い赤髪を揺らす存在は腕を地面に突き刺し、それ以上飛ばされるのを防ごうとする。
───が、結局それで止まることなく。そのまま大空洞内にある大柱に叩きつけられることで、ようやく止まった。
グラグラ、と大空洞内全体が揺れるかのような錯覚に陥りながら、ベートは敵であろう存在の観察をする。
「あれは・・・・・・数日前にアイズが言ってたLv5クラスのやつか」
穴が空いた壁に視線を戻せば、中から少々装備がボロボロになったアイズが姿を現した。
彼女は傷自体は負っているものの、全て致命傷は避けている。
何よりもつい数分前まで大鐘楼が鳴り響いていたのだ。傷を負っていたとしても、その殆どは癒えているだろう。
「いやがったか、アイズ」
目的の人物を見つけても、ベートの心は喜びの一つもあげない。
それほどまでにベルの活躍ともたらした恩恵と活躍が、ベートの矜持を傷つけたのだろう。
遠くからはレフィーヤの喜ぶ声が聞こえ、ベートは舌打ち一つして、彼女達のもとへと駆け出した。
「─────ふふ、ふ」
ニヤリ、と笑みを浮かべる死体に、気付かないまま。
────
「・・・・・・くっ」
月を出現させる、という超常的な現象を巻き起こした少年は、地面に片ひざをつく。
莫大な量の精神力を消費したことにより、精神が遠のく感覚が訪れる。
直ぐに目の前に敵がいることを思い出し、武器を構える──瞬間。フワリ、と脚が少し浮く感覚がしたと思えば、フィルヴィスがベルのことを抱えて後退していた。
「無事か、義孫。目が蒼くなっているが」
「・・・・・・うん、大丈夫。これはスキルが発動してる証拠だから・・・・僕に触れても平気なの?お義祖母ちゃんはエルフでしょ?」
「お前は私の義孫だ。何故そのようなことを気にする必要がある?昔は
「あ、うん、はい。ありがとうございます・・・・・・アンドロメダさんは?」
「彼女ならすでに仲間の元へ戻った。『もうこれ以上できることはないでしょう』、と」
「そうなんだ」
もはやフィルヴィスによる自身の義孫扱いに対し諦めの境地に達したベルは軽く流し、アスフィについて尋ねる。
特に重傷を負ったというわけではないことに安堵していると、すぐにありえないほどの速さで抜けていく疲労感に、驚く。
精神疲労寸前まで使用された精神力も、体力も瞬く間に回復していく感覚。
ベル自身は分からないが、彼女が言うように今の少年は瞳が蒼くなっており。もしもこの場にかの女神を知る者が居れば、彼女のそれによく似ていると評するだろう。
体も少し蒼白いオーラのようなものがまとわりついており。それこそが月下状態の付与、及び全能力値の上昇の証であることを義祖父から聞いた。
(これが、月下条件下達成時の体力と精神力の回復・・・・・・)
「【盾となれ、破邪の聖杯】」
確かな『月女神の英雄』の効果を実感していると、フィルヴィスが突如詠唱を開始した。
戦闘が始まってから頼りになりすぎている魔法が、詠唱の終了と同時に効果を発揮し、障壁が展開され────障壁に強すぎる衝撃を受けて、二人は後方へと吹き飛んでいく。
「【一掃せよ、破邪の聖杖】」
「────っお義祖母ちゃん!もう大丈夫だから降ろして!」
ベルが叫べば、フィルヴィスは雷を放つとすぐに彼を地へと下ろし、武器を構える。
少年もナイフと短杖を構えて炎雷を纏うと、先程攻撃を仕掛けてきた犯人───ディナが姿を現した。
「兎さん?いい加減に逃げていないで、私と殺し合いましょう?きっと楽しい時間・・・・・・いえ、楽しい夜になるわよ!」
まさにそこいらにピクニックにでも誘うように物騒な提案をするディナ。
それに対してベルは彼女を睨み、フィルヴィスは武器を握っていないほうの手にさらに力を込め、ミシミシッ、と拳から音を鳴らした。
「・・・・・・すみません、嫌です。僕はまだ死ぬわけにはいかないんです」
「そもそも、そのようなことを義祖母が許すわけがないだろう。下郎」
「あら、振られちゃったわ!」
ケラケラケラ、と愉しそうに笑う彼女に、二人は警戒を解かない。
魔法の効果の一つは全能力値を上昇させるものだとは言え、それも結局は中程度。
向こうがその気になればいつでも殺されることを理解している二人が、ジリジリ、と後退していると────大きな破砕音が、大空洞全体に鳴り響いた。
発生源を見れば、ベートが踵を叩きつけた姿勢でいて、すぐにそこから離れて叩きつけたもの───妹を警戒している。
「・・・・・・どうやらお前の妹は斃れたようだな、ディース姉妹」
「・・・・・・・・・うふふふ」
「・・・・・・何がおかしいんですか?僕達が言うのもなんですけど、貴方の妹さんが死んだかもしれないんですよ?」
言いながら気分が悪くなったのだろう。少年は目を伏せ、暗い表情を浮かべている。
敵が死んだことに心を痛めるベルを責めるでもなく──しかも敵は仇なのに──気遣ったフィルヴィスが短剣をディナに向け、彼を守るかのように立つ。
後方でレフィーヤも詠唱が終わった魔法を待機状態にしている中、ディナは・・・・・・・・・大声を上げて、笑い出した。
「ハ、アハハハハハハハハハ!!!死んだ?誰が?妹が?そんなわけがないわ!!だって、あの子はここにいるもの!!!」
狂ったかのように嗤う彼女が
大きな音と共に、大空洞内の壁の一角に穴が空き、こちらの方へとナニカが転がってきた。
何とか止まろうと四苦八苦していたが、どれも意味がなく。
そのまま大柱へとぶつかり、大空洞内全体を揺らした。
盛大に舞う土ぼこりに視界を覆われ、少しでも気配を見逃さないように身構えていると・・・・・・
「あら、レヴィス。どうしたの?凄い襤褸襤褸じゃない!」
「ぐ、ぅっ・・・・・・五月蝿、い・・・・・・」
「───情けないわね、レヴィス。あんなに綺麗な娘一人に負けるなんて。・・・・・・・・・そう思うわよね、
「ええ、そうね。
「・・・・・・なに?」
土ぼこりが収まり、現れた者達を見てベルとフィルヴィスは慄く。
レヴィスと呼ばれた赤髪緑眼の女。
先程まで戦っていた姉。
そして・・・・・・先程ベートが倒したはずの、妹。
都合三名。内二人は既に実力を知っているが、そのどれもが第一級クラス。
いつでも逃げられるように身構える二人は───少し離れた位置にいるレフィーヤの喜びの声を聞いた。
「アイズさん!!」
「・・・・・・レフィーヤ?それに、ベートさんも・・・・・・?」
壁の穴から姿を現す、金髪金眼の少女。
彼女は装備の至る所に血痕こそあるものの、傷自体は癒えているのだろう。特に消耗した様子もなく立っていた。
「あれは・・・・・・『剣姫』か」
「ヴァレンシュタインさん・・・・・・もしかしてあの女の人をここまで吹き飛ばしたのは、あの人?」
レヴィスが空けた壁の穴より現れたアイズに、レフィーヤは喜び、アイズは何故かいるレフィーヤとベートに困惑した。
フィルヴィスはレフィーヤとベートの目的が彼女の回収であることを思い出し。
ベルはアイズがいる位置自体は把握していたため、目の前にいる存在こそがあの壁の中で戦っていた者で、そんな彼女をアイズは吹き飛ばしたのだろう、と理解した。
しばらくアイズを見ていると、その姿が掻き消え・・・・・・気付けば、フィルヴィスとベルの両者を守るかのように立ちはだかっていた。
その隣に、ベートも姿を現した。
ベートは自身が蹴り殺したはずの存在が目の前にいることに顔を顰め、すぐにクレーターを作った場所を見る。
そこにはクレーター以外何もなく、殺したはずの死体もまるで最初から存在していなかったかのように無くなっていた。
「狼人。一体どういうことだ?何故あの片割れは生きている?」
「俺が知るかよ。・・・・・・俺はアイツを確かに蹴り殺したはずだ」
「・・・・・・本当だな?」
「こんなことで嘘なんかつくかよ、面倒くせえ」
すぐにベートから目の前にいるヴェナについて聞き出そうとするフィルヴィスだったが、その結果は不明。
より一層不気味さを増すヴェナの存在に、よく分かっていないアイズを除いたベル達の警戒が強まる。
レフィーヤも警戒をしていたが、アイズの姿を見た途端上機嫌になり、敵を前にしてアイズへと話しかける。それほどまでに、彼女が皆を信用している表れでもあるのだろうが。
「アイズさん!無事でよかったです!!」
「レフィーヤ・・・うん。ベルの、おかげだよ」
「僕ですか?僕は何もしてませんよ」
ベルの何もいていない発言を聞いた途端、レフィーヤがベルを信じられないものを見る目をした。
片眉が下がり、もう片眉が上がっていて、眉間に皺。まさに「はあ?」とでも言いたげな顔だ。
「なに、も・・・・・・?あんなことをしておいて?・・・・・・何を言ってるんですか、クラネルさん。私に喧嘩売ってます?」
「えっと・・・・・・あの回復魔法と、強化魔法。ベルの、なんだよね?あれのお陰で助かったんだよ」
「ありがとう」、と告げるアイズに褒められ、少し照れた様子になるベル。
そんな彼と彼女を見て、レフィーヤは頬を膨らませる。
その内心は『ズルい』の一色に染まり、嫉妬の炎が轟々と燃え盛っている。
「───そもそも!聞いてはいましたけど、この『月』はなんですか!!しかもついで感覚で全能力値の強化も行うなんて・・・・・・反則です!!ズルいです!!!」
「えぇっ!?ご、ごめんなさい????」
「えっと、レフィーヤ?落ち着いて、ね?」
少し理不尽気味に叫ぶレフィーヤに、ベートが「いい加減に黙りやがれ!」と一喝。
ふぎゅう、と変な声を上げながら、レフィーヤはチラチラ、とアイズとベルを見た後、トボトボと持ち場へと戻っていった。
少しため息を吐いて気を取り直したベートが、ディース姉妹に問いかける。
「それで?てめえらの目的は何だ?こんなところで何をしてやがった」
「あら、それが淑女にものを聞く態度なのかしら。不遜ね」
「答えるわけがないわ!そんな必要もないんだもの!」
小馬鹿にしたように笑いながら答える姉妹に、ベートは思わず舌打ちをする。
レヴィスは一切口を開かず、ただジッとアイズのことを睨み続けていた。
「そうか。なら仕方ねえ」
ベートは後頭部をガシガシ、と掻いた。
そして普段よりも逆立っている毛並みをさらに立たせ、その姿を一瞬で消した。
先程までの戦闘で一番厄介だと判断したヴェナへ向け、蹴りを放った。
バキィッ!!と骨が折れるような音が盛大に鳴り響き、彼女をレヴィスへ向けて蹴り飛ばした。
レヴィスはヴェナを受け止めることはせず、むしろ避けた。
「もう一度殺せば、嫌でも口を割るだろ」
「────レヴィス、何で避けたの!?」
「知るか。勝手にくたばっていろ」
「薄情ね!」
仲間である、と思っていた三人が仲がよくなさそう──特にレヴィス──であることに怪訝な顔をしつつ、追撃をするためにベートは前傾姿勢となる。
「───ちっ。巨大花!」
それを見た途端、レヴィスはその名を呼んだ。
直後、大主柱に寄生していた巨大な食人花が動き出す。
ブチブチッ!とくっついているものが無理やりに剥がされる異音が大きく鳴り響き、その巨大な花弁でベート達を見下ろしながら落ちる、
「───散れっ!!」
周囲のものに激を飛ばしながら、ベートは後退する。
フィルヴィスが近くにいたレフィーヤとベルを抱えて走り出し、アイズもそれに続く。
抱えられている状態で、「そういえば」、と思い先程の三人がいた所を見れば、そこには何もなく。
周囲を見回しても、彼女達の姿はなかった。
───大主柱の根元に寄生していたはずの『宝玉』とともに。
「逃げられたか」
「いつの間に・・・・・・」
「一体、どうやって逃げたんでしょう」
十分な距離をとるために、全力で駆けるフィルヴィス。
三回連続で発生する巨大花の着地による地震すらもものともせず、驚異的な体幹を持って二人を抱えながら後退し───【ヘルメス・ファミリア】と合流した。
団長であるアスフィは階層主クラスすらも凌駕する大きさを持つ巨大花に戦慄し、冷や汗を浮かべていた。
「『剣姫』、『凶狼』。あれを討つことは可能ですか?」
「知るか」
「・・・・・・多分、行けます。ただ、あれが食人花と同じなら・・・・・・ベートさんは、厳しいと思います」
厳しい、と言われたベートは頬をピクピクと痙攣させる。
食人花と同じ───つまりは、打撃系へと耐性。
他には『魔力』を狙う性質を持つが・・・・・・他の食人花と同じく天井に映る『空』へ向けて蔦状の鞭を叩きつけている様を見て、アスフィは「なるほど」、と納得する。
敵の首魁であろう三人は消え、残ったのは複数の食人花と巨大花。
現在はベルの魔法によってこちらを狙ってくることこそないが、それもいつまで保つかわからない。
なによりあの巨大花が蔦を天井へと叩きつけるたびに、食料庫全体が嫌な揺れを起こしている。
逃げることこそできるが、それでは冒険者依頼は達成できないし、何より放っておけば多大なる被害をもたらすだろう。
けれど、アスフィ達【ヘルメス・ファミリア】はもはや戦うための道具が残っていない。彼らの荷物にこそなれるが、加勢することはできない。
かと言って、逃げようにも現在の【ヘルメス・ファミリア】ではアイズ達の助けを借りずに24階層を抜けるのは不可能だろう。
「てめえらはここにいろ。チョロチョロ動き回れても迷惑だ」
「私達が倒します、から・・・・・・待っててください」
「・・・・・・業腹ですがそのようです。お願いします」
アイズとベート、そしてフィルヴィスが巨大花へ向けて歩み出す。
レフィーヤはこの場で詠唱をし、ベルもここで回復魔法の発動、及び砲撃を担当する。
ナイフを仕舞い、短杖を右手に握る。
そのまま短杖に蓄力を開始し、リン、リン───と鐘の音を鳴らしていると、ふと、セイン・・・・・・正確には彼が持つ『弓』が目に映った。
「あの、セインさん。不躾なお願いなんですけど、弓を貸していただけませんか?」
「ン?いいけど・・・・・・矢はないよ?」
「大丈夫です。『弓』であることが大事なんです」
怪訝な顔をしたエルフの青年は、特に文句もなくベルに短弓を手渡した。矢が無いとはいえこんなにも素直に渡すのは、それほどまでにベルを信用したのか。
お礼を言いながら渡された短弓を左手で握ると、自身の全能力値が急激に上昇する感覚を味わう。
視力も上がり、視野も広がる。視界が昼間の中のように明るく感じられる。
「・・・・・・よし」
スキルの効果を実感し、ベルは魔法円を十度瞬かせる。
炎雷が大きな音を立てながら発生し、強すぎる火力によってベルの体を焼く。・・・・・・が、それも『月女神の英雄』の効果によって癒える。
短弓に燃え移らないように気をつけながら、短杖の白い燐光にそれらを収束させる。
スキルの発動の引鉄を思い浮かべながら炎雷の制御をする。
短杖に次々と吸収されていく様を眺めていると、少し前にレフィーヤから聞いたことを思い起こされる。
「『ベートさんのメタルブーツには、魔法を吸収して自分のものにできる効果があるんです』、か・・・・・・どれくらいまで吸収できるんだろう」
ベートさんのメタルブーツと、僕のスキルは。と純粋な疑問を口内で呟き。
やがて、リィン───、とそれまでとは異なるか細くも力強い鐘の音が鳴り響き、短杖を真ん中・・・・・・ベートが担当する巨大花へと向けた。
「ブラスト」
スキルと魔法によって上昇した『魔力』の能力値──およそLv4の下位〜中位にすら届くほどの『魔力』によって強化された炎雷を、さらにスキルで限界まで強化する、という脳筋砲撃。
一分の蓄力がなされたそれは、ベルの全身を覆い尽くすほどに大きな砲撃となり、眼前に存在する巨大花へと向かって爆進する。
そのままいけば、例え倒すとまでは言わずとも確かなダメージを与えられるだろう、と確信できるほどの威力を誇る魔法。
───それに向かって、走り出す狼人が一人。
「もらうぞ、兎野郎」
「ぇ゙」
巨大花へと砲撃が届くより前に、炎雷へとベートは両足をぶつけた。メタルブーツに取り付けられた宝玉が炎雷を吸収し、糧とする。
すべてを取り込むことこそできなかったものの、それでも大部分を吸収してみせたベートに、ベルは思わず変なうめき声をあげた。
残った炎雷はそのまま巨大花を焼き貫き、不快なまでの大きな破鐘の声を響かせる。
それでも表層を焼いただけに留まったのは、果たしてベルの火力不足によるものなのか、それともベートが奪い取ったからなのか。分からないが、それでもベルの心は一つだった。
「先に言ってくれれば、普通にあげたのに・・・・・・」
先の『ベートさんは厳しい』、というアイズの発言がよほど響いたのだろう。
打撃への耐性があることを加味した発言を前に、ベートはそうすれば目の前の存在を蹴り殺せる、と判断したのだろうが・・・・・・突然そんな事をされれば、ベルが驚くのも無理はないだろう。
うぬぬぬ、とうめき声を上げるベルを見て、全てを見ていたレフィーヤは詠唱をしながら苦笑する。
ベートさん、思ったよりもアイズさんの『ベートさんは厳しい』発言が効いたみたいです。
それ以前に兎野郎にこれ以上活躍させてたまるか、俺にやらせろとか言うプライドポコポコにされた腹いせも含まれるかもしれません。