◯今のベートさんの状態
・ベル君の魔法の効果による中程度の補正+『月下咆哮』によるランクアップ級の補正
・ベートさんのスキル『双狼追駆』による『力』と『敏捷』に補正
・『孤狼疾駆』による走行速度の向上
・炎雷によるあり得ざるほどの加速と、威力及び身体能力、動体視力の強化
結論:Lv5でありながら、Lv7に届きそうなほどの強化量
アレンよりは確実に速いし、多分オッタルよりも・・・・
・・・・・・バグ?
一応、アイズさんの風よりもベル君の炎雷の方がベートさんには相性がいい設定にしてます。そもそも、溶解液を使う『蟲』を相手にしないなら、『風』による防御力とかいりませんからね。脚だけで全身じゃないし。
炎雷によるスピードと火力ブッパによる、ベートさんの長所の極限強化の方がいいに決まってます。
ベルの渾身の砲撃を掠め取ったベートは、そのまま取り込んだ炎雷を制御する。
通常時のベートであれば、いくらステイタス上はLv3の放った砲撃とはいえ『月女神の英雄』の『弓』装備時の効果によりLv4相当になったベルの砲撃を真正面から受けては、ミスリル製のメタルブーツ越しに大きなダメージは免れぬだろう。
しかし、今の彼は『獣化』している。その上昇した能力値でもって自身を蝕もうとする炎雷を無理やりに耐え、運用するという脳筋戦法によって解決していた。
炎と雷。二つの性質を有する魔法の運用こそ初めてではあるものの、その内の炎に関して言えば"まるで魂から馴染んでいるかのように"扱える。
雷に関しても、ベルのように放電することはできない──が、ベルの使用している場面を数回見ただけで使用方法を理解したのだろうか。ベートは持ち前の戦闘センスで、雷を身体能力や動体視力の強化に使用できている。
ブーツから迸る雷が全身を駆け巡る奇妙な感覚に苛まれながらも、ベートは『爆発的な加速』を持って、巨大花へ向けて誰よりも疾く走る。
暴力的な炎と脚力によって地面が爆砕され、『月下咆哮』等によって元のレベルを大きく超える敏捷の速さで駆け抜ける。
常であれば見失いそうなほどの『加速』は、雷による動体視力の強化によって巡る景色全てを正確に捉え、確実に敵をその目に捉える。
「るおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
渾身の加速を持って全てを置き去りにする彼の速さは、もはやLv6のアイズですら目で追い切れない。
自身に迫る驚異、あるいは危険性を本能で理解したのだろうか。ベート一人を狙って放たれた巨大花の蔦状の触手も、正確に狙いを定めることができずに空を切るだけに留まる。
敏捷によるエネルギーと豪脚、そして炎雷の爆発力を利用した蹴りを、ベートは巨大花へと叩き込む。
「がああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
『─────ガ、アァァァァ!!?ァァ────、───、─』
食人花よりも重めの破鐘の咆哮が断末魔の如く短く轟き、一秒も経ることなく、直ぐに小さくなっていく。
───一撃。
ベートが蹴りつけた箇所は、巨大花の根元。
地面に降り立ったモンスターが、その衝撃と重量で大きく地面を削ったことによりクレーター状になっている箇所。
そこから露出している黄緑色の根元に、たった一撃を叩き込んだ。
たった、それだけ。
───それだけで、巨大花は蹴られた箇所から上──茎から花まで、全てが粉々に
「────あああああ!!」
短く叫んだかと思えば、ベートは次なる獲物を求めて駆け出した。
たった数歩を持って新たな巨大花の元へと辿り着いた灰狼は、再び一撃で粉砕する。
「な────」
先程の蹂躙の際も全く視認できていなかったフィルヴィスが、ようやくベートの姿を捉えた。
が、次の瞬間には再び見えなくなり───アイズが担当するはずだった巨大花も、粉砕する。
「え・・・・・・ベート、さん・・・・・・?ズルい───!!」
アイズの拙い抗議の言葉にも耳を貸さず、ベートはさらに爆走を続け───周囲に存在していた食人花も含め、全ての敵を一撃で蹴り殺していく。
それは鬱憤を晴らすためか。
いつまでも弱者に助けられた自身に対する罰、あるいは糧を得るための横取りか。
今のベートは自身に対する怒りの炎を滾らせ、その炎に薪を焚べ続け、その熱を噴出しながら走り回る。
それに何を思ったのか、アイズも「食人花を切ろう」、と剣を手に走ったのだが・・・・・・それすらも許さず、ベートはアイズが狙う食人花すらも粉砕し、彼女の不評を買った。
───そうして。
彼は結局、視界に映る全ての敵───それこそ、天井に存在する食人花の蕾を含めた全てを、たった一人で蹴散らし、殺し尽くした。
「・・・・・・僕達、構える必要なかったですね・・・・・・ウィリディスさん・・・・・・」
「そう、ですね・・・・・・」
「私は義孫達が無事なら、それでいい」
「それは・・・・・・まあ、皆無事でよかった、ってことにしましょうか」
「───あの、フィルヴィスさん?やっぱり読みがおかしくありませんでしたか?おかしかったですよね?クラネルさん、貴方も絶対に気づいてますよね?クラネルさん?」
出鼻を挫かれた二人の呟きが、やけに大きく大空洞内に響き渡っていた。
そんな二人とは対照的に、フィルヴィスは落ち着き払っていた。彼女は驚異的なベートの暴走を見ても、むしろ頼もしさを感じたため、あとのことは彼に任せ、ベルとレフィーヤの護衛に興じている。
───若干一名、未だフィルヴィスに適応しきれていない存在がいたが。
「ベートさん。どうして横取りしたんですか」
「ああ?横取りなんかしてねえよ。お前が戦い始める前に殺しただけだ」
「それを横取りって言うんじゃ、ないですか・・・・・・!」
「もういいだろ。無事に終わったんだしな」
「良くないです。ズルい・・・・・・!」
珍しくアイズがベートに噛みつき、ベートはそれを取り合わない。
何時もはベートがアイズに抗議する姿を見ることはあるが、それとは今は逆。そんな珍しい光景を前に、レフィーヤは「喧嘩になる前に止めないと・・・・・・!」と今度はオロオロとしていた。
───そうして。
たった一日で経験するには濃すぎる経験をしながらも、一同は誰一人欠けることなく生き残った。
───
黄昏時の空。
ダンジョン帰りであろう冒険者達がバベルより多数出てくる時間刻。
僕は、ところ変わって『紫氷の森』──つまりは『家兼お店』の入戸に辿り着いていた。
あの後、互いの生存の喜びを分かち合った僕達は、ローガさんやヴァレンシュタインさん、そしてお義祖母ちゃんを主軸にパーティを編成。
気絶している怪しげなローブの集団──アンドロメダさん曰く、もしかしたら『闇派閥』の残党の可能性がある、らしい──を僕達が抱えて上を目指し、つい先ほど地上へと帰還した。
激闘によって体感時間が長すぎたのか、それとも数刻前までは『魔法』によって創られた月夜の下にいたからだろうか。
すっかり夜になっていると錯覚していた僕達は、まだ夕刻であることに心底驚いた。
驚きが落ち着いたことに抱えていたローブの集団はアンドロメダさん達が請け負ってくれた──後半の方は何もできなかったから、せめてこれだけは、だそう──ため、僕はこうして夕刻の時間帯に家に辿り着いている。
当然、皆と別れる前に僕のスキルや魔法──特に、『エウロギア・セリノーフォス』については他言無用にしてもらい、その変わりに【ヘルメス・ファミリア】の情報や【ロキ・ファミリア】の情報を他言無用とし、漏らさないことを互いに約束し合った。
お義祖母ちゃんも同様に約束した、んだけど・・・・・・なんでも、僕に関して言えば心配していないから問題ない、らしい。
───どうして?
兎にも角にも色々とあり、今は『家』の前にいる。
扉を開ける前に、念の為身だしなみを確認する。
バベルでシャワーを浴びて着替えたとは言え、この家はお店でもある。万が一にもお義祖父ちゃんの恥にならないように、身だしなみには気をつけないといけない。
一通りに目を通して一応は問題がないことを確認し、ようやく扉を開けた。
リンリン、と静かな鈴の音色が響き、カウンターに座っているお義祖父ちゃんとアルテミス様の姿が見える。
入店音に気付いた二人は同時に顔を上げて、僕の顔を見た途端に安堵の微笑みを浮かべた。
ミアハ様宛の手紙を二人も読んだのだろう。心配をかけてしまったことを申し訳なく思う。
「ただいま」
「・・・・・・あぁ、おかえりなさい」
「おかえり、ベル」
帰宅を告げる挨拶を交わし、互いに生きていることを喜び合う。
そのままカウンターへと向かう道すがら、カフェスペースの方を見る。
まだ閉店まで時間があるためか、それとも早めのご飯にしている人が多かったのか。
席の殆どがエルフによって埋められており、そのテーブルの上には今日の日替わりメニューの『サーモンのパイ包み焼き』に付け合わせの『グリーンサラダ』、『コンソメスープ』が、主に乗せられていた。
入店の際には集まっていた視線が少なくなっていくのを感じながら、カウンターへの道を歩む。
辿り着くと、お義祖父ちゃんがお盆に乗せたご飯──先程の日替わりメニュー──を、カウンターに乗せる。
「急な冒険者依頼を受けたと聞いたが・・・・・・大丈夫だったか?」
「うん、大丈夫だよ。ちょっと呪詛を受けちゃったくらいで」
「そうか、無事・・・・・・・・・呪詛?」
軽い調子で呪詛を受けたことを言うと、二人の顔が強張る。
何か変なことを言ったかな、と思いながら席へ向かうためにお盆に手を伸ばして────ガタンッ、と音を立ててカウンターから動かせないように、お義祖父ちゃんがお盆を押さえつける。
その目はいつも以上に鋭く細められ、まさに尋問をするときのような目つきをしている。
助けを求めてアルテミス様を見れば、彼女も拳を強く握りしめ、眉間に皺を寄せている。───かと思えば、直ぐに目を優しく細め、微笑を浮かべた。
「誰にやられた?誰が犯人だ?今すぐに消してきてやろう、さあ疾く言え。私が生き地獄を味合わせた後に氷漬けにして永遠に地上を生きる氷屍にして黒龍の口内に玩具として放り込んで噛み噛みしてきてもらおうそうしようさあ早く」
「相手が神でも心配するな。私が責任をもって、下手人を始末してこよう。だから、どうか教えて欲しい」
「───いやいやいや!もう呪詛は解呪したから!大丈夫だから!落ち着いて!?ね!?アルテミス様も綺麗な笑顔なのはいいんですけど、なんだか逆に怖いです!!??」
まるで自分事のように怒ってくれる二人に嬉しさと恐ろしさを感じながら、物騒なことをしないように説得する。
極端から極端に走りそうな二人の手綱を握ろうと声を張り上げてしまう。
そして、やはり少し騒がしくしすぎたのだろう。エルフからは突き刺さるかのような視線が────
「あれが店主の言っていた義孫か。確かに愛らしい見た目をしている」
「店主が大切に思うのも無理はないな」
「あれがあのお方の・・・・・・」
───殆どの視線が、生暖かい。
予想外の連続にさらされ、僕はその荒波に流されそうになりながらも何とか二人を宥めて、軽く事情を説明する。
24階層で、モンスターの大量発生の異常事態が起こったこと。
その原因の調査及び鎮圧が冒険者依頼の内容だったこと。
怪我人がいるそうだし、何よりこれの調査によって怪我をする人がいるだろうから、その依頼を受けることにしたこと。
18階層で怪我人の治療をしつつ、物資の補給と『強力者』と合流をしたこと。
調査をすれば、異常事態の原因はモンスターの大量発生ではなく、北の『食料庫』が塞がれたことで食糧を求めて他の『食料庫』へ向かう、モンスターの『大移動』だったこと。
その原因の『食料庫』に向かえば、そこで待ち構えていた食人花やローブの集団がいた事、等々。
ある程度はぼかしつつ、大雑把に説明した。
説明に納得したのか、二人は頷き───まだ、お盆は押さえられたままだった。
何故、と疑問に思う僕の目に映る二人の目は、『下手人』の名前を言え、と強く訴えていた。
しばらく目線を右往左往とし、言うべきかどうか迷った僕は、しばらくして意を決して、その名を口にする。
───ある意味では正解で、ある意味では間違いである状況下で。
「え、っと・・・・・・・・・ディース姉妹?って言って呼ばれてました」
「───────」
「ディース、姉妹?何処かで・・・・・・・・・」
その『名前』を口にした途端、アルテミス様は顎に手を添えて、何処で聞いたのか、と思い出そうと考え込み。お義祖父ちゃんは────表情が、消えた。
僕達の話が聞こえていたのだろうか。
多少の会話があった筈のエルフ達が座っている席から、全ての音が消え、ガチャン!!と茶器が割れるのではないかと錯覚するほどに、茶器が置かれる音がやけに大きく響いた。
動揺がエルフ達を包み込んでおり、彼らはその端正な顔を顰めていた。
(あれ、もしかして言っちゃ駄目な言葉だったんだろうか)
そんな事を考えている僕に、一人のエルフが近づいてきた。
金髪の男性だった。
ともすれば女性とも間違えそうなほどに美しい顔立ちをした彼は、その端正な顔を何故か『怒り』に歪め、細められた目で僕を睨んでいた。
「そこの兎。今の話は本当か」
思わず「ひっ」、と短い悲鳴を上げて逃げ出しそうになるほどに凄まじい怒気を感じながらも、本能的に答えなければこの時間が終わらないことを悟り──お義母さんがそうだったから──、簡潔に答えた。
「本当です!同行したアンドロメダさん・・・・・・『万能者』さんがそう呼んで、向こうも肯定してましたから!!」
半分叫びながら答えると、彼はまるで「声がでかい」、とお義母さんみたいに大きな声に対する不快感をあらわにしつつ、直ぐにそれを引っ込めて考える素振りを見せる。
かと思えば、同行者であろう黒妖精に声をかけ、お会計を済ませてお店を足早に出た。
その顔はやはり苛立ちと───少しの焦燥に包まれていた気がした。
嵐のような人だったな、と思いながらお義祖父ちゃんの方に目線を戻そうとすると、客席の方が少し騒がしくなっていた。
内容は先ほど口にした『ディース姉妹』に関するものだったけれど・・・・・・その中身は『恐怖』や『怒り』、そして『嫌悪感』に満ち溢れていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・分かった。取り敢えず、話はお前の食事が済んだ後にしよう」
お盆を押さえていた手を離し、お義祖父ちゃんはキッチンの方へと向かった。
僕がお盆を手に取って席へと向かうと、アルテミス様は思考を止め、カウンター扉を抜けて付いてきた。
席に腰掛ければアルテミス様も向かいの席に座り、僕の顔をジッ、と覗き込んできた。
その事に苦笑を浮かべつつ、僕は食事を開始した。
あいも変わらず美味しい味に舌鼓を打ちつつ、次々と口の中に放り込む。
アルテミス様が来て数日経ったけれど、彼女はこうして僕が食事する風景を楽しんで見ている。
何が楽しいのかはわからない──前に聞いたときは兎がご飯を口いっぱいに頬張っていて可愛らしいから、と言われた──けど、別にご飯の邪魔をされたわけでもないので可能な限り気にしないようにする。
アルテミス様の他にも、周りから向けられる様々な感情が込められたエルフ達──恐らくは先ほどの話を詳しく聞きたい人達──の視線を浴びて、いつもより少し居心地が悪くはあったけれど。
───
「・・・・・・チッ」
時は数刻前。ベル達がまだ食料庫にいた頃。
不機嫌さを隠そうともせず、長い赤髪を揺らす女──レヴィスは、逃げた先にある隠れ家のような場所から壁に埋め込まれている水膜を通し、地面に座って片膝を立てながらベル達の様子を見ていた。
『宝玉』を擁する自分達を逃がす目眩ましのため、そして一人でも多くの冒険者を殺すために解放した巨大花が、一切の戦果を上げることなく瞬殺されたのだ。
彼女が不機嫌になるのも無理はないだろう。
「レヴィス。どうなったの?」
「・・・・・・瞬殺だ。『アリア』ではなく、あの狼人が一人で全て仕留めた」
「ああ、
「でもまさか、ダンジョン内に『月』が見れるなんて思わなかったわ!あの兎さん、もっともっと気になってきたわ!」
自身を一度『
反対に、ディナはベルの事が気になっているようだ。
その顔は新しい玩具を前にした子供のように無邪気で、何処か残酷さや残忍さを感じさせる自虐心に満ちた笑みを浮かべている。
そんな二人と水膜を交互に見ていたレヴィスは唐突に立ち上がり、そのばを後にしようと歩き出した。
「あら、何処に行くの?」
「どちらにせよ、今の私達ではアレらに勝てん。『エニュオ』の命には逆らうことになるが・・・・・・『食事』に行くしかあるまい。後のことはお前たちに任せる」
何処か怒りを滲ませながらの言葉に、二人は何故か嬉しそうに微笑む。
直ぐに姿を消したレヴィスを見送り、二人は再び水膜を見た。それを見る彼女らは奥底に秘められた胸を高鳴らせる高揚感が隠せておらず、その目は何処か熱を持っていた。
彼女達の視線の先の水膜には、真っ白い髪に紅い目をした、兎のような少年が映し出されていた。
姉は好奇心の熱に、妹は怒りの熱に浮かされ。
全く異なる想いを『兎』に抱く二人は、気付けば全く同じ言葉を呟いていた。
「「また遊びましょうね?綺麗な鐘の兎さん?」」
ベル君、ロックオン。これに関しては本当に可哀想。
ベル君を問いただしたエルフ・・・・・・一体何ランドなんでしょうね?
次回はロキ陣営が中心になる・・・・・・かも?