今回のお話は『お義祖父ちゃんがどうやってフィルヴィスさんを落としたのか』の内の一つですね。
こういった事を何度も繰り返していく内に、フィルヴィスさんが淡い思いを積み重ねていって、最終的には彼のことを好きになって『覚醒』したんだよ〜、って具体的な参考という程度に思っていただければ。
ひどく今更なのですが、『家族構成』と前話では銘打ちましたが、『派閥』と銘打つと普通の二次創作では考えられない構成してますよね、この作品。
・ベル・クラネル
・フィルヴィス・シャリア
・アルテミス
・フォス(オリキャラ)
・これにプラスで【ミアハ・ファミリア】
・原作よりも繋がりは薄いけれど、ヴェルフとリリルカ
うーん・・・・・・まあ、原作ではありえない勢力や繋がりを考えるのも二次創作の楽しみですから、まあ・・・・・・いいか!
この中で誰よりもあり得ないのはフィルヴィスさんですし。
多分『原作』の彼女がこの子を見たら、激昂すると同時に、『手を心の底から取ってくれた』存在が早めに現れたのを心の底では羨んで・・・・・・安堵するでしょうね。哀れ。
次回以降は・・・・・・太陽、行きますか。多分10話にも届かない気がしますが。
───ああ、これは『夢』だな、とすぐに理解した。
香る木製の作業机のニスの匂い、漂う『小精霊』達の姿が
手元には、最近整備をしたばかりの筈の短杖──『護手のティアーペイン』の姿。
すでに『魔法石』の交換を終えたのだろう、その石は深い朱色の輝きを反射し、私───フォスの姿を映し出した。
深い
われながら幼いかんばせだ、と思いながらも作業を終えていることを確認して、『首飾り』を付けた。
すると『魔法石』に反射する己の姿が、すぐに見慣れた黒紫色の髪と深緑の瞳へと変貌した。
「・・・・・・うん。そろそろ行くか」
良くは分からないが、それでも
部屋を出てすぐに見えるのは、見慣れた『カフェと魔導具店を併設した姿』──ではなく。
少し埃の被った棚や机に、ところ狭しと並べられた杖や木の枝、魔導具等々。
今の店舗とは異なるその姿は、まさに過去の魔導具店の姿──『旧紫氷の森』の姿そのもの。
懐かしさと郷愁に心を包んでいると、コンコンコン、と戸を叩く音。
「どうぞ」、と入店を促せば──入ってきたのは、『当時』の私が見慣れてきていた人物が、そこにはいた。
綺麗な濡羽色の髪に、燃えるような赤緋色の瞳でこちらを見据える姿は、まるで正義感に燃える若者──否、まさに若者そのものだった。
その背は私が『先程』見ていた姿よりも大分幼く、若い。
身長も私との差が頭半分程に──今は頭一つと半分。悔しい──まで縮まっている。
彼女──フィルヴィス・シャリアは、理路整然とした出で立ちのまま、私の方へと歩み寄る。
ピンとした背筋の彼女は、まるで後ろめたいことなど何もない、と態度で示しているかのようだ。
───それが、どうして
うんうんと悩む私に、彼女は凛とした声で話しかける。
「フォス、整備は済んだか?」
「ん?ああ・・・・・これだ。ちゃんと綺麗になったし、『魔法石』も交換はした・・・・・・それでも、無茶はするなよ」
彼女は受け取った短杖を腰のホルスターへと納め、すぐに切れ長の目を細めた。
「今は『暗黒期』。無茶をしなければ、無辜の民を守ることはできない」
「その正義感は結構なことだ・・・・・・が。張り詰めすぎるのは良くない、と私は常々言っているはずだが」
「ならば私も常々言っている。今は
ハァ、とため息をつく。
一度こうだ、と言ったら曲げないのは『何処ぞの義孫』と同じである彼女は、こうして言葉で言っても意味はない。
強い意志を秘めた赤緋色の瞳が、こちらの瞳を焼くかの如く正義感に燃え盛っている。
でも───
「自分を責めすぎるな、とも言っているだろう?」
「・・・・・・無理だ。たった一人生き残った私が頑張らなければ、それこそ彼らに申し訳が立たない・・・・・・」
俯く彼女の顔は、暗黒期中のオラリオの空気のように暗く、重い。
先程までは強い意志を秘めていた瞳も、今は暗がりに落ちたかのように黒く、濁った色へと変化していた。
───この時の彼女は、ファミリアが全滅したばかりの頃。
大切にしていたファミリアの先達を全て失い、半ば自棄を起こしている彼女は、
だからこそ、あの時もそうだったように。
私は、この子を連れ出そう。
「フィルヴィス」
「・・・・・・なんだ」
「遊びに行こうか」
「は?」
俯いていた顔を上げた彼女の手を引き、私は店を飛び出した。
背後から離すように言われるが、それらを無視して外へ向かって走る。
───彼女だけが生き残ったのは、私の責任なのだから。
────
「いきなり走り出すな、危ないだろう。・・・・・・それと、あまり人の手は握らないほうがいい。特に、エルフのものはな。わかっているとは思うが」
「すまないな」
「それに、出掛けたいのなら素直にそう言ってくれ。急に手を繋がれて連れられるのは・・・・・・恥ずかしい」
「・・・・・・すまない」
少々攻めるかのような視線で見つめてくる彼女に二回ほど一言だけ謝り、改めて街並みを見回す。
───懐かしい、と。本来は思ってはいけないことを、つい考えてしまう。
今とは異なり、少し暗い雰囲気を纏ったオラリオ。
人々の目には警戒の色が濃く色づいており、お店を営む者も目線を鋭くして、全ての者を警戒している。
──『闇派閥』が暴れていた時代。
私がすべてを
しかし、まるで嫌がらせのように小さな事件や事故が発生するばかりのそれは、全ての人の不安を煽り続けていて。
物音が鳴るたびに肩を震わせる彼らを、私は責めることができない。
そんな中を、私とシャリアは隣り合って歩いていた。
周囲をキョロキョロと警戒する彼女に、私は少し苦笑する。何度かこうして連れ出すことはあったのだが、その度に彼女はこうして護衛のような立ち回りをするのだ。
緊張感を顔に貼り付けながらも私を守ろうとする彼女に、本当なら心を解せるようなことを言えればいいのだが・・・・・・生憎と、私はあまり口が上手くない。
故に、こうして少しは『休む』口実になればと思って行動しているというのに、中々上手くいかない。
もちろん、私が本気を出せば何時でもこの『暗黒期』を終わらせること自体はできる。けれど──
(──それだと、世界のためにならない。『オラリオ』は成長しない。───『黒き終末』を、討つことができない。───私は、黒竜の討伐に行けないのだから)
そのために必要なことだ、と自分を律していても。やはり、こうして人々を巻き込んでいるのは・・・・・・気分が悪くなる。
「・・・・・・大丈夫か?顔色が悪いが」
「・・・・・・ああ。大丈夫だ」
彼女には私が強がっていることは伝わっているのだろうが、それでも理由までは分からないだろう。
───彼女の仲間が倒れたのは。
ある意味では、いつでも『暗黒期』を終わらせられる私が、こうして呑気に街を出歩いているだけだからであること。
そして。その際に発生する悲鳴に、心を削られているからだなんて。
そんな真実が、もしも彼女に知られたらと考えると。私は途轍もなく・・・・・・怖かった。
────
シャリアを連れ回す私は、アクセサリー店へと足を運んでいた。
木の葉や鳥の羽、植物の茎など様々な装飾のなされたそれらや宝石の数々に、私は次々と目を通していく。
何か杖の装飾の参考になるものはないか、と商品をみている私の横で、シャリアも私の行動を真似るかのように商品を見る。
けれど、彼女の場合は掘り出し物──特別な効果を持つものがないかを探しているだけで、装飾等自体に興味があるわけではないのだろう。
───彼女は、自身を着飾ることに興味がないから。
それに少しの物悲しさを覚えた私は、一つや二つ、適当──テキトーではない──に装飾品を見繕い、会計へと進む。
「まいど」、とそれまでは私達に警戒の色を向けていた店主に言われると、私達はお店を離れた。
「何を買ったんだ?」
気になったのか聞いてくる彼女に「内緒」と告げると、そのまま散策を続ける。
甘味料や茶葉を購入する為に歩き回りつつ、こっそりと『氷の騎士』に先程購入した物品を渡す。
彼は私の意志を汲み、そのまま『紫氷の森』へとガッシ、ガッシ、と向かって行った。
「どうした?」
「いや、何でもない」
バレないように軽く身体で隠しつつ、彼女の心を癒す方法を考えながら共に歩きつつ───改めて、彼女の背丈を確認した。
───小さいな。
今の彼女──19歳のフィルヴィスは私よりも背が高いため、どうしても見上げる形になる。
けれど、過去の彼女──12歳となると、私とそこまで背丈が変わらない。今ここで先程連れ出す際のように手を繋いだとしても、人々には子供同士が手を繋ぐ微笑ましいものとして映るだろう。
(・・・・・・やはり、私と彼女は一緒に居るべきではないな)
例え彼女が天寿を全うしようと、
一瞬───道が少し交わっただけならまだいい。しかし、やはり生きる時間が少々異なる私達が共にいるのは、やはり間違っているだろう。
この夢が覚めて起きたら、より嫌われるように頑張ろう、と決意を新たにしつつ。
私は在りし日の記憶を辿り、シャリアを伴って歩いていく。
考え込みながら歩いていると───
「あれは───」
「フォス?・・・・・・まさか、またか?
私の視線の先にあるものを見て何かを察したシャリアの声も、今は遠くに聞こえる。
それほどまでに
芳しくも甘々しい香りに、美しいほどの白いホイップ。綺麗な茶色の生地に包まれた
「チョコレートいちごキャラメルホイップカスタードクリームクレープ、二つください」
「はいよー。いつもそれだね、甘くないのかい?」
「何を言う。スイーツは甘ければ甘いほどに『正義』たり得るのだろうに」
「ははは、違いない」
───クレープを注文していた。
当時は外に出る度にこうして買っていたために、こうして店主にも顔を覚えられていたことを、ようやく思い出した。この疑心暗鬼の『暗黒期』の中でもフランクに接してくれる店主は、まさに今の都市の中での私のオアシス───
出来上がるのを心待ちにしていると、シャリアが全力で走りってきた。
息が上がり頰も上気した様子の彼女は、私のことを軽く睨んでいた。
「フォス、またか・・・・・・またなのか・・・・・・!?いつもそうだが、そうして甘い物に目移りするな!何より、現役の私よりも早く走り去るな!何かがあったらどうする!!」
「すまない。だが、私にとって甘い物とは血液・・・・・・いや、『生きる理由』そのものなんだ。だから、こうして見かければ脚を運んでしまうことは、何も不自然ではないはず」
「そんなに力説されようと、私を置いていったことには変わらないからな!己が連れ出した者を置いて突っ走る者が何処にいる!?」
「私、だな」
「開き直るな!!」
ギャーギャー!と騒ぐシャリアに、私は懐かしさを覚える。
───私の知るシャリアと言えば、こうして私にガミガミと説教をして・・・・・・誰よりも心配をしてくれる、とても優しく誇り高いエルフだ。
あまりの懐かしさに思わず涙が出そうになるのを堪え、なんとか謝罪をし続けていると・・・・・・店主から、注文をしたクレープが差し出された。
「はいよ、注文のクレープだ。恋人同士喧嘩するのもいいけど、ちゃんと仲直りしないといけないよ?」
「・・・・・・前にも言ったが、私とシャリアは恋人ではないぞ?」
「本当かぁ?そこの子は満更でもなさそうだけど?」
店主が指さす先には、耳まで真っ赤になったシャリア。
「ぁ」とか「ぅ」と言葉にならない声をする彼女の様子は、年相応のようでとても可愛らしいと思う。
───が、これは単に私のようないい歳した老人で甘い物好きな存在の恋人扱いをされたことに怒っているだけなのだと思う。
彼女に好かれるようなことは何もしてないはずだし、何よりも当時の彼女が私に惚れていたとは思えない。
───現在の彼女が私に惚れているというのも、とても信じられないことなのだが。
「告白すらしてないし、何よりお前は私の年齢を知っているだろう?流石に十倍もの年の差の子は、孫でも見るような目で見てしまうさ」
「あんたの見た目なら、そこまで気にする必要ない気もするけどねぇ・・・」
じゃあね、と言う店主に、私もまたな、と返事をして立ち去り。未だに赤くなって固まるシャリアの口元へ、クレープを差し込む。
むぐ!と言う変な声を出しながらも、口に突っ込まれたそれがクレープと分かると、すぐに可愛らしいリスのようにもぐもぐと食べ進めていく。
なんだかんだといいながらもこうして甘い物を食べる姿は、やはり年相応の反骨心を持つだけのただの少女にしか見えない。
初めて会った頃はもっと警戒心の強い猫のようであった彼女も、この時には、このように私が与えるものに対する警戒心が薄れ、私が彼女を害することはない、と理解してくれている。
微笑ましさと共に、ほんの少しの罪悪感を抱きながら、私もクレープに齧り付く。
口内をいちごの甘酸っぱさやチョコレート、カスタードの濃厚な甘さ、そしてアクセントの香り高いキャラメルが侵入しては支配していく。
甘い物をたべられる幸せに包まれながら、私達は一時の休息を楽しむ。
───これが、後にデートであるか否か、という認識の違いが発生していて、それが後々に問題となることを。
当時の私は、一切知らなかったが。
────
茜色が空を覆う中。私達は、未だに外を出歩いていた。
先程のように次々と目移りしてはそこへ駆け込む私を、彼女はため息を吐きつつも追いかける。
日も暮れ始め、暗い雰囲気にある街中で、私達は中々に楽しい時間を過ごしていた。
そうして、そんな事を何度も繰り返していると───頭上に、影。
ふと頭上を見上げれば、嘴に小袋を咥えた鳥類が、私の上をくるくると円を描くかのように飛んでいた。
掌を皿のように広げれば、そこに小さな小袋を落として、鳥は何処か遠くへと飛び去っていった。
袋の内容物が何であるかを理解している私は、一先ずホッとする。これで目的は達成できそうだ、と。
そんな心がまったりとリラックスしていた私の耳に届いた───爆発音。
何度も連続で響き渡るそれは、まさに人々を地獄へと誘う悪魔の足音のようで。
再び顔を見上げれば、建物から黒い煙が立ち昇っていた、
「───行ってくる!」
「───ああ。行ってらっしゃい」
短剣を抜き放ちながら駆ける彼女を、私は見送る。
───彼女を大切に思っていても、こうして戦場に送り出すことしかできず、引き留める気のない薄情な自分を。内心で責め立てながら。
────
動悸がする。とても、煩いくらいに。
胸中に、鈍い痛みが走った。怪我など、一切していない。
眼科に広がる街並みは、私が初めて見たときと全く変わっていないというのに。
───今は、それがとても嫌で、妬ましくて・・・・・・憎い。
「ハア・・・・・・ハア・・・・・・」
既に、騒動を引き起こした『闇派閥』の構成員は捕らえられた。
安心や嬉しさよりも、虚しさが心の内からジュクジュクと溢れ出してきて、心を覆ってしまいそうになる。
息が荒れている。人に見られている。そして───目を、逸らされる。
今はもう、それに慣れてきた。慣れてきてしまった。
【ディオニュソス・ファミリア】・・・・・・先達達の死は、既に人々に知れ渡っている。
それに伴って、私が唯一の生き残りであることを気遣う者達がいることも、わかっている。
人々の目線が、本来であれば私を気遣っているが故のものであることも・・・・・・わかってはいるのだ。
───それでも。
今も自身を責めている私からすれば。それらの目線は、途端に自身を責めている視線に早変わりし。
この心を責め立てる『材料』へと、勝手に変換してしまう。
「はっ・・・・・・はっ・・・・・・」
人々を利用する形になってしまって申し訳ないが、それでも私は私を許せない。
なぜ生き残ったのか。
なぜ今もこうして平然と呼吸をしているのか。
なぜ・・・・・・今も『ディース姉妹』を討ち果たす力を、得られていないのか。
先ほどの戦闘でも、私にできたのは補助のみ。
肝心の敵を討ち果たす力など、今の私にはなかった。
「くそっ・・・・・・」
わかっている。すぐに強くなることなど、私にはできないことは。噂に聞く『剣姫』のような才覚がないことを。
「・・・・・・くそっ・・・」
ミシミシッ、と鳴るほどに左の拳を握る。そこに残された『傷跡』が、私を責め立てるかのように疼く。
痛みが走ってもそれを止めず、延々と握りしめていると・・・・・・生暖かい液体が、指の間からこぼれ落ちた。
───『血』。
食い込んだ爪によって流れ落ちたそれを眺めていると───綺麗な白い布が、そこに巻かれた。
驚いて顔を見上げれば、自身とそれほど背丈の変わらないエルフの少年──否、老人が、白い布を私の手に巻きつけていた。
ギュッ、と布を巻き終えると、やはり彼は心配そうに私の顔を覗き込んできた。
「フォ、ス・・・・・・」
「シャリア。大丈夫か?」
そのまま、彼が左手の『傷跡』に触れようとした途端───反射的に、その手を強く弾いてしまう。
驚きに目を見開く彼を他所に、私は───顔を、真っ青にしてしまう。
───今のは、絶対に嫌われた。
彼が私を気にかけてくれているのは分かっている。
彼の『お守り』で守られ、血濡れた状態で倒れている私を、彼が助けてくれたからこそ今の私が居る。
そして"生き残ってしまった"私を気にかけ、壊れそうな心を守るために、先程までのようにあちこちへと連れ回してくれているのも、知っている。
だからこそ───今の行動で、私は嫌われてしまっただろう。
傷つけてしまった。仇で返してしまった。
私を、助けてくれた彼を。
「あ、あぁ・・・・・・」
「・・・・・・・・・シャリア」
うわ言のように声を漏らす私は、彼から掛けられた声にビクッ、と体を跳ねさせた。
───拒絶されるだろう、いっそ残酷なほどに。二度と顔を見せるな、とも言われるかもしれない。
それでも、逃げることはできない。目を逸らすことは、許されない。
処刑を待つ罪人のように顔を伏せる私を───彼は、一切責めることがなく。むしろ、申し訳なさそうな顔をしたまま、私に『お願い』をする。
「手を、見せて欲しい」
「───ぇ」
嫌われたと思っていた私の耳に聞こえた、懇願の言葉。
想像とは異なる彼の言葉に呆然とする私は、無意識の内に彼に従い、左手を差し出す。
彼は優しく左手を支え、改めて白い布がきちんと巻きつけられているのを確認し───その手首に、『輪』を通した。
「・・・・・・なんだ、これは」
「新しいお守りだ。先程のお店で買ったものに、魔術加工を施した。効果の程は保証する」
綺麗な光を反射するそれを天にかざし・・・・・・すぐに、それを取ろうと手を伸ばす。
───私は、その効果を知っていて。私には、過ぎたものだから。
その行動に、彼は慌てたように私の手を押さえ、腕輪が取れないように押さえつけた。
「どうした、シャリア。・・・・・・もしや、デザインが気に入らなかったか?」
「・・・・・・・・・ぃ」
「・・・?なん───」
聞き返した彼に、私は思わずあの日から抱き続けていた想いを、口にしてしまう。
「・・・・・・・・・もう、私は・・・・・・生きたく、ない・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「生きていたく、ない・・・・・・・・・無理だ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
───言ってしまった。ついに、言ってしまった。
よりにもよって、私を助けてくれた彼に。
けれど、仕方がないだろう。もう私に、生きる価値はないのだから。
先達を失い、力もなく。敬愛するディオニュソス様の力にもなれず、生き恥を晒し続けて。
挙句の果てに、こうして命の恩人に『死にたい』、と言っているに等しい───命を投げ捨てるに等しい言葉を叩きつけた。凡そ誇り高きエルフにあるまじき行為をしてしまった自覚があるだけに、余計に手に負えない。
・・・・・・・・・けれど、これでよかったのかもしれない。これでようやく、私も見捨てられ───
「は?許さんが?」
「─────────え?」
大方予想していた言葉とは異なる言い分に、変な声が出てしまう。
もっと、こう・・・・・・優しくも仕方ないなぁ、と悲しみを必死に隠した顔をしながら「そうか」、と言われて終わると思っていたのに。
彼の顔は、どこまでも私に生きる意思を授けようと、必死だった。
「────っ、もう、良いだろう。私の心はもう、あの日に死んだ。それなのに、まだ私に『生きろ』などと言うのか」
「そうだ。とある老神の言葉をそのまま借りるのならば───『生きろ、そなたは美しい』、だな」
なんだそれは。
凡そ口説き文句として恥ずかしい部類の言葉に、思わず半笑いを浮かべてしまう。
何よりも・・・・・・今の私に、美しい?
───お前が握るその手が、どういった状態なのかを知っている癖に、と。
湧き上がる『怒り』の衝動をそのままに、呪詛の如く吐き出してしまう。
「以前にも見せただろう!この左手に、このような気持ちの悪い傷跡の残った醜いエルフを・・・・・・!お前はまだ、美しいと言うのか!?」
バッ!、と彼が巻きつけてくれた白い布を引き剥がし、その手に痛々しく残る『傷跡』を、
自分でも白すぎると思うほどに真っ白な肌に不釣り合いの、茶色くて黒い切り傷の跡に──火傷痕。
ファミリアの先達を失った『ディース姉妹』との戦いの際に、闇色の炎から身体をかばうために左手を盾にした際に出来てしまった『傷跡』。
少し膨れ上がり、至る所に茶色とも赤色とも取れるぶくぶくとミミズが走っているかのようなそれは、見目麗しいと称されるエルフには似つかわしくないだろう。
事実、私のこの傷跡を痛々しい、気持ち悪いと称する者も多数いたのだ。───私を含めて。
だから、お願いだ。
もう、私を───
「─────訂正してほしい。お前・・・・・・いや、君は。出会った頃からずっと・・・・・・・・・・・・綺麗だ」
「っ。お世辞は、もう止せ。私は、美しくなどない」
どこまでも強情な彼に、もううんざりしてきた。
生きたくないと言っているのだから、もう放っておいてほしい。
生きる気力がないのだから、いっそ惨たらしいほどに見捨ててほしい。
そう思っている。
───そう、思っている・・・・・・はずなのに。
彼に願われるたびに、請われるたびに───ほんの微かに、『生きたい』、と思ってしまう。
意志の弱い私の事が、嫌いになってしまいそうになりそうなほどに。彼の言葉が、心地良いぬるま湯のようにじんわりと心に響いてしまう。
「────なら、あの時の言葉と、この言葉を何度でも言おう。・・・・・・『もしも君に結婚相手が見つからなかったら・・・・・・私が貰おう』、と。そして・・・・・・・・・『君は、美しい』のだと」
「─────ぁ」
以前彼に言われた『約束』。そして、先程も贈られた『言葉』。
冗談めかして言われたそれらを、私もまた冗談として流していたというのに。
───もしかして、本気なのか。
そう思ってしまい高鳴る心臓を押さえつけようと、ギュッ、と強く胸元を握りしめた。
深く深呼吸もして、体を落ち着かせようとする。
期待しては、駄目だ。私は、もう────
「君が嫌う君自身を、私は・・・・・・私だけでも。いつまでも愛し続ける。例え・・・・・・君が、世界よりも自身を憎んでいたとしても」
「─────、ぁ───」
───すぐに追撃をされ、意味をなさなくなったが。
私の手を握る彼の手は、いつの間にか握り込むかのようなそれに変わり。
この手に残る痛々しい傷も含めて、彼の手は手をギュッ、と包みこんでいた。
「だから───どうか。死なないでくれ・・・・・・シャリア」
───死なないでくれ。
生きたいという言葉ではなく、死ぬことを許さないとする言葉。
その言葉は私の心にストンと落ち、最後のピースのようにピッタリと当てはまり。『生きる』理由ではなく、『死なない』理由へと変わっていく。
彼の顔を、見た。
その顔は、やはり必死だった。
遠くへと行ってしまいそうなものに縋り付くかのような、みっともないほどの必死さに包まれた彼の顔を。私は真正面から見る。
私と同じ"生き残ってしまった者"の顔をする彼を見て。
どこまでもこちらを慮り続ける優しい彼と、私の共通点を見つけて暗い悦びに満ちた私は。
ゆっくりと、頷いてしまった。
「────わか、った」
ホッとしたような、罪悪感に塗りつぶされそうな。
そんな二つの感情が混じった彼の顔が、頭から離れそうにないほどに記憶に焼きついていくのが、自分でもよく分かる。
───私は、恐らくだが。
『約束』の日の事も、この日のことも。忘れることはできないだろう。
こういった事を『一年間』じっくりコトコトと積み重ねていって、最終的に五年間もの別離期間を経て再会しました。
そりゃ勘違いしますし、記憶がぐちゃぐちゃになって拗らせますよね。
ドストレートに綺麗だ、美しい、生きていて欲しい、死ぬな、等々と言われればね・・・・・・あ、この人私のこと好きなんだな(恋愛的に)、ってなりますよね。
実際には(『家族』のように)好き、なのですが。バカ。
・・・・・・そもそもフィルヴィスさん関係の話が多すぎ?
うるさい!原作がひどいんだからこれくらいいいだろ!!
・・・・・・まあ、つまりは原作のような悲壮感だっぷりのフィルヴィスさんはここ(過去のオラリオ)に置いてきた、ってことですね。
誰が悪い?→フォス
フォスだけが悪いの?→そもそもの全滅の元凶は『ディース姉妹』
じゃあ『ディース姉妹』が一番悪いの?→でも彼女達をいつでも殺せたのに見逃したのはフォス
=俺(フォス)が悪いんだよ・・・・・・、になるなんですね。
だからこそ彼は「彼女は私といたら幸せにならない・・・」ってなってます。でも彼女は離れても幸せにならないんだよ?詰みだよお終いだよ年貢だよ。
第三者目線からみたら彼の考えは一応は間違っちゃいないけど・・・・・・『黒竜』は皆の問題だしな・・・・・・ってなるのが所謂神視点ですね。
フォスは参加出来ない(理由はちゃんとある)ですし。仕方なかった・・・ってやつだ。
それもこれも、君たち(現オラリオ)が弱いから!
ベル君は相手の良いところをすぐに見つけてはストレートに褒めて落とす。
フォスは相手に縋り付いて懇願しながら、相手をストレートに褒めて落とす。
そんな義祖父と義孫。多分恋愛面で一番格好がみっともないのは義祖父。
ちなみになんですが、ベル君とアルテミス様は普通にフィルヴィスさんを受け入れてますし、応援してます。
何故って?これを含めた『暗黒期』の思い出(フィルヴィスさんの"ちょっとした"記憶違いあり)を彼女に話されて、『責任取らせなきゃ・・・・・・』ってなってます。
───『責任』について、話したことがありましたね。