何かエグい勢いでお気に入り減りましたね・・・・・・まあ気にしませんが。巡り合わせが悪かったんだろうな、と思っておきます。
常々過分な評価を貰いすぎているな、とも思っていたので。ここからが再出発として、初心を思い出しておきます。
さて。今回からは『太陽が堕ちる』章に入ります。
今でもあそこと争わせる・・・・・・以前に、どうやってベル君を『怒らせるか』について迷っているのですが・・・・・・まあ、頑張ります。
いつも通りに『楽しく書く』、をモットーにやっていきます。
半月分の返済
ガヤガヤと騒がしい・・・・・・どころではない程に、ギルド内で怒号が飛び交う。
彼らが吐き出す言葉は呪詛のように恨みや怒り、嫉みが大いに含まれ、その眼前に張り出されている紙───とりわけ、その中でも目立たないようにひっそりと張り出されたそれを指差し、怒鳴り散らしている。
「ふざけんな!!」「いい加減にしろ!!」「そろそろガサ入れでもなんでもして真相を突き止めろよ!!」「反則なんて言葉じゃたりねえぞ!!」
大音量の彼らの合奏は汚らしいほどの感情の奔流を垂れ流し、その紙に映るたった一人の少年へと向けられている。
彼の人となりを多少なりとも知っている───数日前の『リヴィラの街』での戦いでその者を見た者を含め、知っている者達ですら擁護することは厳しく、つい疑いの目で見てしまう。
それほどまでに、彼らの眼前に出された情報はあり得ないことなのだ。
アイズ・ヴァレンシュタイン、Lv6到達。
ベート・ローガ、Lv6到達
華々しい第一級冒険者達による、壁を破った報告。
しかし、彼らの殆どはそれらに一切目を向けず。向けていたとしても嫉妬や嫉みの視線を向けるだけで、誰も祝福などしていなかった。
紙と紙の間に挟まれ、上半分は隠されている報告書に映る白髪の少年へと、彼らの視線が突き刺さる。
隠されているかの少年の顔は、やはり恨めしいほどに綺麗な笑顔なのだろう。
───所要期間、十日間
───ベル・クラネル、Lv3到達
────
透き通るほどに綺麗な空気が流れる朝。
先程のギルド内での多数の怒号が響く屋内とは異なり、人の数が少なく、穏やかな通りにて。
二柱の神とそれぞれの眷属一名と二名が対立しており、まさに一触即発の空気を───
「ぬうぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉお!!??」
「私達の・・・・・・」
「勝ちだ!!」
「───でぃ、ディアンケヒト様───!!大丈夫ですかーーー!!!」
───空気を、つい数分前までは発していたはずだった。
───『神月祭』の日より、さらに数日。
ベル達【ミアハ・ファミリア】は、約束よりも早めに『半年分の借金』のアテを集めきった──『アンタレスの討伐の報酬』と『神月祭の売り上げ』で──ため、こうして神ディアンケヒトの元へと払いに来たのだ。
会いに来てそうそうに『ベル・クラネルを早めに引き渡しに来たのか』、などとふざけた事をぬかす老神に頭にきたナァーザが、つい必要分のお金を入れた袋を叩きつけるかのように渡したのが始まり。
いきなりの暴挙に、怒りに震えながら老神が袋の中身を確認した途端。いきなり叫び声を上げて後方へと吹き飛ばされていく彼の姿が、朝早くから披露された。
そんな神の姿に心配のしの字すらも見せず、むしろノリノリでミアハとナァーザはそれぞれの右と左の手でクロスするかのようにサムズアップをしながら背を向け、まるで彼らが男神を吹き飛ばしたかのように演出をする。
そんな二人とは対照的に、ベルは何時もの苦手意識を押し殺し、男神の心配をしていたが・・・それも男神の側にいたアミッドが対応したことで、特に問題はなかった。
彼女に支えられながら上体を起こしたディアンケヒトは、恨めしそうな顔で三者を睨む。
「ぬ、ぬぅ〜〜〜・・・・・・!まさか、本当に半年分の借金を払うとは・・・・・・!?」
「これでわかったであろう、ディアン。私達ファミリアの絆の力を!・・・・・・殆どベルが集めたが」
「ベルは、私達の・・・・・・!お前たちのような銭ゲバになんか、渡さない・・・・・・!!・・・・・・殆ど、ベルが集めちゃったけど・・・・・・三分の二くらい・・・・・・」
「くぅ〜〜〜〜〜!!!」
「意外と容赦ないんですね、お二人とも・・・・・・」
ディアンケヒトとアミッドを嫌っている態度を一切隠そうともしないナァーザはともかく、普段は心優しいミアハすらも神ディアンケヒトを責め立てている場面を見て、さしものベルも少々の困惑の色を露わにする。
如何に彼が善神と言われる部類の者であろうと、やはり神は神、ということか。
過去にベルへ兎耳をつけないか、と説得しようとするナァーザに『獣人に変身できるようになる薬』を作れるようになるのが薬師流、などと冗談をこぼしていたことを鑑みれば、やはりミアハも神なのだ。
どうやら自分たちの情けない最後の呟きが誰にも聞こえていないようだ、と安堵する二人とは裏腹に。
ディアンケヒトは怒りに顔を赤くしながらも、その脳内で策謀を巡らせる。
「こ、こうなればもう一度───」
「───ディアンケヒト様。そろそろ次の商談のお時間です」
先程まで老神を支えるだけで一切口を開かなかったアミッドが喋り始め、声が聞こえた途端。ナァーザがまるで猫のようにシャーッ!!と警戒心と敵対心をあらわにし始めた。
神ディアンケヒトは彼女の言う『商談』の一言に呻き、悔しさを露わにする。
もうそんな時間なのか、これからミアハ達に新たなる『試練』──と言う名のベル・クラネルの引き抜き作戦──を実行しようとしていたのに、と悔しさを一切隠そうともせず。
「アミッド!だが、このまま引き下がれ───」
「ですから、お時間です。お急ぎください」
有無を言わさないアミッドにぐぬぬぬ、と唸り。すぐにフンッ、とドシドシとわざと大げさに足踏みをして、『商談』とやらに向かう。
「弱小ファミリアなんかに使う時間がもったいないわい!!」などと負け惜しみを口にしながら去る彼に、ナァーザがべーッ、と舌を出す。
特に問題が起こらなかったことにホッ、と安堵するベルとは異なり、ナァーザは出していた舌を引っ込め、今度はアミッドに敵愾心を込めた睨みをきかせ、ベルをひしっと抱きしめた。
「何の用なの、性悪女。ベルなら、絶対に渡さないから・・・・・・!」
「あ、あの、ナァーザさん。流石に恥ずかしいです・・・・・・」
ベルの抗議の声に反応せず、むしろより強く彼を抱きしめ、離さないように力を込める。
「私は別に貴方達から奪うつもりなどありませんよ、エリスイス」
「嘘」
努めて冷静に返すアミッドに、ナァーザはありえない、とばかりに頭を振り、断言する。
普段であればナァーザに注意をする側であるミアハも、彼女と同じくベルを預かる存在として──主神として、ベルの肩に手を置いて離さないようにガッチリと力を込める。
「同じ回復薬を扱う派閥として、断言する。ベルを欲しがらない医療系なんて、この世に存在しない」
「アミッド。そなたもベルの起こした『奇跡』を知っておろう。あれは私でさえも起こせぬ。それに───『嘘』はいけぬぞ?」
穏やかな笑みを浮かべるミアハの言う『嘘』の言葉には、ナァーザやアミッドの言葉以上に『意味』がある。
───外界の子は『神』に嘘をつけない。
先のアミッドの言うことが嘘なのであれば、やはり彼女も内心ではベルの事を欲しているのだろう。
───もちろん、『治療師』兼『薬師』として。
「・・・・・・そうですね。確かに、私の個人的な思いを口にするのなら、彼には是非、我が治療院の治療師として働いて頂きたいと思っているのが本音です」
「ほら、やっぱり。口ではああ言っても、内心ではベルが欲しくてたまらないんでしょ。この性悪女」
「な、ナァーザさん。少し言い過ぎなんじゃ・・・・・・それに、僕なんかを欲しがる人なんて・・・・・・」
オロオロと間を取り持とうとする少年にナァーザは少し呆れながらもベルの頭を撫でつつ、聞き分けの悪い子に言い聞かせるように優しい声で語りかける。
「・・・・・・ベルは甘い。このままだと、あの銭ゲバがまた同じようなふっかけ方をしてくるに決まってる。そうなったら、いつか私達のほうが早く力尽きる・・・・・・それに、ベルは凄い子。・・・・・・私なんかより、ね」
「・・・・・・・・・・・・?そんなことない、はずですよ?ナァーザさんはずっと、このファミリアを支え続けてきたじゃないですか」
丁寧に教えても、イマイチピンときていない様子の少年。
それは自身の功績の凄さをきちんと理解していないが故のもの。
彼はダンジョンでの怪我人や重傷者の治療については当たり前の行為だと思っているし、義母の『病魔』を治したことについても凄さが分かっていない。
───医神すらも治せなかった病気を『癒した』凄さや異常性を、彼自身が理解できていない。
「ベルは、いい子だね・・・・・・だからこそ、お前たちには渡さない・・・・・・!!」
先達に対する尊敬の念を滲ませるベルをより強く抱きしめ、頭を撫でて愛でる。さらにはそれらを行うに伴って強くなっていく怒りの念も相まり、最早猫のようなシャーッ、ではなくライオンや虎の咆哮のような凄みを帯びてきた威嚇を繰り出す。
その勢いには威嚇を向けられていないミアハすらも思わず後ず去ってしまう程度には強く、重い念が込められていた。
「少しは私の話を聞いてください」
「聞く必要は、ない」
何時もは静かな印象のあるアミッドですら声に勢いが乗ってきたことで、ミアハはそろそろ二人を止めるために努めて優しく、諭すような口調で説得───
「こ、これこれ、ナァーザ。そろそろその辺に・・・・・・」
「駄目。この女には、そろそろ目にものを見せなきゃ・・・・・・」
───説得しようとしたが、眷属には効かなかったようだ。
少しシュン、と肩を落としたミアハを他所に、アミッドは一度コホン、と咳払いをして、真剣の眼差しを三人へと視線を向けながら、彼らからの視線を集める。
紫水晶の瞳が強い意志を秘めていることに気づいた三人は一度動きを止め。
ナァーザを含めて、とにかく話を聞く姿勢になる。
「近頃の噂の件は、ご存知ですか?」
「・・・・・・噂?」
コクリ、と頷きながら、アミッドは続ける。
「何やらあなた方・・・・・・【ミアハ・ファミリア】について嗅ぎ回っている者達がいるようです」
「・・・・・・嗅ぎ回っている者達?」
ナァーザの驚きを含んだ呟きに「ええ」、と頷く彼女を見て、ミアハが顎に手を添える。
嗅ぎ回っている、ということは回復薬に不備があったのか、それとも───こちらの『弱み』を探っている者達か。
「かく言う私も尋ねられた側なのですが」
「・・・・・・余計なこと、言ってないよね?」
「答えられない以前に知らない、とは言いました」
毅然とした態度を崩さずに断言する彼女に、ナァーザは納得のいかない顔をしながらも追及はしなかった。嘘は言わない、と信用しているのだろう。信頼は死んでもしないが。
変わりに、訪ねてきた人物について聞いてみた。
答えが返ってくるとは思っていなかった質問の返しは、意外にも返ってきた。
「黒いローブの不審人物が複数人いらしたのですが・・・・・・その正体は、分かりませんでした」
『黒いローブの不審人物』、それも複数人。
まず最初に脳内に浮かんだのは、24階層の食料庫にて出現した、ローブの集団と──『レヴィス』と呼ばれる存在に、『ディース姉妹』。
もしや、彼女達が関係しているのか、と思考する少年を他所に。アミッドはそのまま踵を返していった。
「一体、誰が・・・・・・」
この前の戦闘──特に、Lv5のベートやLv4のフィルヴィスを容易く捻っていた『ディース姉妹』のことを思い出し、跳ねる心臓。
あれほどまでに強く、そして何よりも不気味極まる彼女達が、自分を捜しているかもしれない。
何時もよりも短い間隔で鳴る心臓の音が、まるで『警告』を告げるかのように拍動を繰り返すのを、少年は聞き続けることしかできなかった。
────
月明かりの照らす中。
ワイングラスを傾ける月桂冠を被った男神が、テラスから眼下の拠点内にある庭を見下ろしていた。
彼の目線の先には本来何も無い筈なのだが、その網膜──正確には頭の中には、想像上の
果敢に跳ね回る少年の姿を『妄想』し、つい舌舐めずりをしてしまう。
そんな男神の元へ、彼の興したファミリアの団長──ヒュアキントス・クリオが、恭しく近寄っていく。
「
「おお、ヒュアキントス。よく戻ったな」
「いえ」
自身の眷属の帰宅を喜ぶ主神───アポロンの姿に、ヒュアキントスも安堵の息を漏らす。
挨拶もほどほどに、男神は彼に頼んでいた
「それで、どうだった?」
「・・・・・・やはり、
苦々しい顔をしつつも告げる己が眷属の報告に、アポロンはふむと顎に手を添える。
その視線は、彼の手元にある手配書に注がれていた。
「ふむ・・・・・・あまりギルドを疑うことをしたくはないのだが・・・・・・
手配書に記された人物は、当然『ベル・クラネル』。
その真偽の程を知りたかった彼の思いは届かず、結果は『何も分からない』。
まさに『外界の未知』とも言える存在を前に、むしろそれを糧にアポロンの胸中にて猛る炎が、より強くなる。
「───アポロン様。本当に奴を迎え入れるおつもりなのですか」
苦虫を噛み潰したような表情を繕うこともなく、男は言外にそうであって欲しくない、と告げていた。
彼の気持ちを男神は知っていたが、それでも男神は神。己の『欲望』に男神は逆らえないし、逆らうつもりも無いのだろう。
「そうだ。お前たちには申し訳ないが・・・・・・私はあの子を、見初めてしまったのだ」
「・・・・・・・・・」
手配書を撫でては頬を緩める主神の姿に、ヒュアキントスは人知れず拳を握り込んだ。
血が滲みそうに鳴るほどに握られた手に気づくこともなく、アポロンは浮ついた雰囲気のままに、その場で踊るかのように回り出す。
「ああ・・・・・・待っていてくれ、愛しい『癒しの兎』きゅん・・・・・・!」
───天界を昇る月が、彼の姿を見たくないと告げるかのように。黒い雲の中へと、その姿を消した。
作者は変態じゃないので、普通にアポロン様の描写に一番困りました。
短い文ですが、彼特有の『舐め回されるかのような気持ち悪さ、及び気色悪さ』を表せていたらいいで・・・・・・いや、良くないですね。それだとまるで私が変態みたいじゃないですか。