※大分汚い表現が存在します。お食事中の方はご注意ください。
また、普通に『敵』がやってることが悪質、かつ最悪です。皆さんは絶対に真似せず、人に優しく接しましょう。
作者との約束です。
あと、流石に彼のファミリアもここまでしな・・・・・・しな・・・・・・うーん。
リリルカとの話し合いを終えたベルは、一先ずはミアハ達と合流。互いの得た情報を交換し合った・・・・・・のだが。どちらも目新しいものはなく。
精々が『やはり【アポロン・ファミリア】が『何か』をしたことによってお客さんが消え、さらには人通りもなくなった』のであろう、という『考察』だけ。
決定的な証拠のないそれでは、例え【アストレア・ファミリア】でも動かないだろう。
一同は解決の糸口が一切見えない問題を前に、頭を悩ませる。
三人が顔を突き合わせて考え込んでも出てこない『答え』───そもそも【アポロン・ファミリア】がこの問題を起こしたのか。もしも彼らが原因ならば、何故こんなことをしているのか?ということの回答は、誰も持ち合わせておらず。
時間だけが過ぎ去っていく。
このままではただ時間を浪費するだけになり、またベルの義祖父達『家族』が心配するだろう時間帯だということで、一同は一先ず『解散』することにし。また明日、『調査』を再開することにした。
すっかり暗くなった空に浮かぶ星を追いかけるかのように帰り去っていく少年の背に、二人が可能な限り優しく手を振る。
別れ行く三人の胸中には、同じ感情───『焦り』と『怒り』の二つが渦巻いており。
ベルはその感情を抑え、問題を解決したいと考え。
ナァーザはその感情を覚えた原因を排除したい、と考え。
ミアハは、その感情が、どうか一過性のものであることを祈った。
願いの方向性こそ違うものの、三人とも『問題』がすぐに解決することを願っていた。
しかし、そんな願い達とは裏腹に、【ミアハ・ファミリア】が
───そう。
「・・・・・・・・・・・・・・・なに、これ・・・・・・?」
次の日。
自身の『家族』にも【アポロン・ファミリア】、及び神アポロンそのものについて聞き込み、ほんの少しだけ情報を得たのがつい昨日の出来事。
アルテミスからは主に『天界』でのアポロンの様子を。
フォスやフィルヴィスからは、知っている限りの【アポロン・ファミリア】の所業の数々を聞き。
「
建物の間にひっそりと佇む石造りのホームは、多くの
窓や扉、屋根はもちろん。脇に備え付けられた井戸もロープが引き千切られた上で汚らしい茶色に汚れている。
不快なまでのか細い蟲蟲がホームに群がるかの様に飛び交っており、少年の傍を通り過ぎる獣人が鼻を押さえ、逃げるかのよつに走り去って行く。
少年が立ち尽くしていると、背後から声をかけてくる存在が。
振り返ると、そこには普段は優しげに緩ませている顔を顰め、怒りを顕にした男神───少年の主神、ミアハの姿があった。
「ミアハ様、一体何が・・・・・・・・・」
「分からぬ。私も起きた時にはこうなっていてな・・・・・・」
「・・・・・・井戸も壊されちゃってたから、ギルドとかに報告して・・・・・・こうして、掃除道具を買ってきたんだ・・・・・・」
「な、ナァーザさん・・・・・・」
男神の背後より現れた犬人の女性───ファミリアの先輩であるナァーザが、何時もは眠たげに細められている目を見開き、怒りの形相を呈していた。
その手には彼女の言う通り掃除道具が握られており、怒りに震える手の振動が伝わってふるふると揺れていた。
『怒り』を感じるよりも先に困惑が勝っていた少年を他所に、二人は掃除道具を手に清掃を始めた。
未だに現実が受け入れられて居らず、呆然と佇む少年は、視界の端で走り去って行く『影』が見えた。
その影を目で追えば、ブカブカなローブを纏った存在が『青の薬舗』から遠ざかっていく方向へと疾走していた。
もしやあれが犯人なのではないか、と追いかけようとし──ピタッ、と止まる。
あれが本当に犯人なのか、それ以前に掃除が先なのではないか。様々な憶測や思考が、ローブの存在を追いかける足を縫いとどめてしまい。
気付けば、ローブの存在はどこにも存在していなかった。
「ベル?どうした、何かあったのか?」
「・・・・・・ベル。何してるの?手伝って・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・はい」
後ろ髪を引かれる思いをしながらも、ベルも掃除道具を手に清掃を開始する。
たった三人で開始された清掃は、夕方になるまで続き。
当たり前のようにお客さんは一切来ず、『調合作業』すらも満足に行えずに、その日は終わりを迎えた。
────
また次の日。少年はダンジョンに居た。
側にはヴェルフとリリが共に居て、現在の階層は13階層。
最初の死線とも言われるこの階層は、12階層までの上層から急に難易度が跳ね上がる。
その影響も相まって冒険者の死者がとても多い階層に、三人は存在していた。
もとよりダンジョンに潜る予定ではあったものの、今回に関しては例え今日が潜る日でなかったとしても行くことになっただろう。
それは昨日や一昨日に引き続き、今日もまた『嫌がらせ』があったからだ。
一昨日がお客さんをお店から引き離す行為。
昨日が糞便に塗れさせる行為。
そして、今日は───ネズミを『青の薬舗』店内に侵入させ、薬草を食べ散らかさせてきたのだ。
一見地味に見えるこの行為は、少年達『医療系ファミリア』にとっては死活行為。
ネズミの駆除を自分たちで行いながら、このままではお客さんを呼ぶどころか『調合』すらもできなくなることに危機感を覚えたナァーザとミアハは、危険を承知でベルに必要な『素材』を集めてくるように命じた。
それを断ることなくダンジョンへとやって来た少年は、鞄が一杯になるまで潜り続けるつもり───────
「フレイ──「オラァ!!」───!!」
火球を飛ばして敵を討ち果たそうとした少年の前に深くローブを纏った存在が横入りし、モンスターを横獲りしていく。
そのまま発射してしまえばローブを撃ってしまう事に気付いた少年が短杖を天井へと向けると同時に、火球がようやく発射される。
当然、突如横獲りしてきた存在に抗議しようとヴェルフやリリルカが声を張り上げるが、ソレは一切見向きもせず。そのまま、魔石と素材を抜き取っては逃走する。
どうにか捕まえられないか、と考えながら追いかけよう、と脚に力を込めた三人に───怪物進呈。
『ガアァァ!!』
「───ちぃっ!なんだってこんな時に!!」
「これでもう
「───くそっ!!」
多数のヘルハウンドやアルミラージに囲まれ、三人が悪態をつきながら戦闘する。
───そう、五回目。
このような一日に一回でもあれば己の不運を呪うだろう出来事が、今日という日に五回も発生───否、引き起こされた。
ベルがモンスターの大半を倒すことで何とかなっているものの、それでもこれは『異常』だ。
なによりも───
(───やっぱり、あれは【アポロン・ファミリア】?それとも、また別のファミリア・・・・・・いや、もしかしたら本当に偶然の可能性も───)
度重なる問題に連日も苛まれた少年は、正常な判断能力をジワジワと失っていく。ぐるぐると回る思考は、永遠に終わらぬ輪廻の中にいる様に終わらない。
結局、この日は早く切り上げることになり。
地上へと帰った時にはまだお昼の時間帯だったが、それでも疲労困憊な三人は、そのまま各々の帰り道を歩いて行った。
───その後も、『嫌がらせ』は続いた。
ある日は原材料の『買い占め』によって、満足な薬品の『調合』ができず。
またある日はゴミを投げ捨てられて、生ゴミの臭いに塗れさせられたり等々。
手を変え品を変え来る日も来る日もやって来る嫌がらせを前に、三人とも疲弊していく。
もちろん、憲兵やギルドには通報済みだ。
だが、どれも『証拠の不十分』『買い占め自体は起こっているものの、買って行ったファミリアが別々』『ダンジョンにおいて発生した出来事は自己責任』などの理由により、中々調査も何も進まない。
まさに真綿で首を絞められるかの如くジワジワと追い詰めて来る『嫌がらせ』を前に、一同の心から平常心をガリガリと削っていく。
さらには───
「ヴェルフ!!」
「───ああ、ベル。どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたも・・・・・・!一体何が!!」
場所はヴェルフの鍛冶場。
何時もは鍛冶に勤しむかベルと共にダンジョンに向かうかをしているヴェルフが、ダンジョンへと向かう時間になっても来ない事を心配したベルが呼びに行った───その先で。
ヴェルフの作ったであろう武器が地面に散乱しており、彼はそれを回収しては傷や歪みを確認し、良い物は戻し、駄目になったものは捨ててを繰り返していた。
「・・・・・この前のローブの奴と似たようなのがやって来てな。そいつが『武器を見せて欲しい』、なんて言うから見せたんだが・・・・・・」
その先を口にせず、地面に転がった武器に目線を向けたヴェルフの言わんとしていることを、ベルはようやく察し───顔色を、青くした。
つまりは『ベル達に対する嫌がらせ』の範囲を、『ベルの仲間達』へと変換させたのだ。
凍りついたかのように固まる少年の脳内を駆け巡った、『嫌がらせ』初日に『家族』から聞きだした『神アポロンの性質』と、『アポロン・ファミリアの所業』。
『アポロンは【悲恋】などと呼ばれるほどに『恋』が多く、執念深い奴でな。同郷ではあるのだが・・・・・・あまり関わらないほうがいい。もしも貴方が目をつけられたらと思うと・・・・・・殺──』
『先程神アルテミスが告げた通り、神アポロンは『執念深い』ことで有名だ。【アポロン・ファミリア】は彼が見初めた者達が所属している、のだがな・・・・・・その大半は"他派閥から強引に引き抜いた"人員ばかり。あまりにもオラリオに被害を出す事が多いのも相まり、ギルドがペナルティを課したこともあるのだが・・・・・・あまり聞き入れられていないらしい』
『ディオニュソス様が彼と同郷だということで、何度か会ったことはあるんだが・・・・・・そうだな、義孫は彼の神とは関わらないほうがいい。・・・・・・大丈夫だ、何かあれば私たちが何とかする』
アルテミス、フォス、フィルヴィスの順で告げられた言葉。
その中でも『執念深い』『他派閥から引き抜いた』『オラリオに被害』の部分が、特に強く少年の心に響き渡る。
(───もしも)
最早【アポロン・ファミリア】=ローブの存在、という構図が自身の中で出来上がってしまっていることに、彼は気付かない。
───疲弊した精神によって導き出された答えは、さらに少年を追い詰めていく。
(───もしも、アポロン様が僕に『執着』しているから、『皆が傷ついている』なら・・・・・・)
そんな"通常なら信じられない"ものが『真実』であるなどと。
『答え』に至った少年ですら思わないだろう。
───この場合に大切なのは、『自身のせいで皆が傷ついている可能性』に至ってしまったこと。
「僕が、悪い・・・・・・?僕の、せい・・・・・・?」
「ベル・・・・・・?」
ガリガリガリ、と『ナニカ』が削られていく音を幻聴したベルは、気付けば走り出していた。
マイナスな思考が止まらない。止められない。
「ハァ・・・・・・!ハァ・・・・・・!」
走って、走って、走って。
考えて、考えて、考えて。
「・・・・・・ベル様?そんなに走って、どうしたんですか?」
ヴェルフを呼びに行ったベルが一人で戻ってきたことに気が付いたリリルカが、心配そうに彼の顔を下から覗き込む。
自身を責め立てる思考に支配されている少年が浮かべていた表情は────綺麗すぎるほどに優しい、笑顔。
「大丈夫。ちょっと色々あって・・・・・・ヴェルフは今日厳しいんだって。緊急の注文が入ったんだとか」
「・・・・・・そうなんですか?なら、今日は二人で行きましょうか」
微笑みを浮かべながら前を行く彼女に、ベルは内心でホッとする。
取り繕える。取り繕えてしまう。
己の内に渦巻く『暗い考え』など欠片もないと告げているかのように過ごす彼の『異変』に、リリルカはもちろん、ファミリアも、『家族』も、誰一人として気付く者はいない。
───それは、あのアルフィアからすらも心傷を隠し通せる程の精度を持った『擬態』なのだから。
結局、このあとは特に問題もなく。安全マージンも取れていて、何よりも上層だったため、例え先日のように怪物進呈を起こされても、ギリギリで対処可能なので問題はなく。
何時もよりも少ない報酬を片手に、彼らは出口を目指した。
───そうして。『嫌がらせ』が始まってから、一週間が経った頃。
『その時』は、やって来た。
────
ベル達以外には人っ子一人すらも来なくなった、『青の薬舗』にて。
すっかり焦燥に包まれ始めたホーム内の『調合室』にて、ベル達【ミアハ・ファミリア】は作戦会議を───
「やっぱり、【アポロン・ファミリア】のホームを焼き尽くすべき・・・・・・」
「ナァーザさん!!流石に証拠もないのにそんな事できませんよ!?」
───作戦、会議・・・・・・・・・
「そうだぞ。何を言っている、ナァーザ」
「ミアハ様・・・・・・!」
「きちんとアポロンにだけ被害が出るようにしなければならぬのだぞ?それでは他の者も巻き込んでしまう」
「そっか・・・・・・そうだよね」
「ミアハ様!?ナァーザさん!?どうしてそうなったんですか!?!?」
───正気を失っていた。
ベルが何度も悲痛な叫びを上げつつ、二人を落ち着かせようと肩を掴み、ガクガクと前後に揺する。
それによって正気を取り戻したのか、二人の瞳は光を───
「「やっぱり、【アポロン・ファミリア】のホームの水道に毒を流し込めば・・・・・・」」
「もっと過激になってる!?」
───取り戻せなかった。
叫び散らす少年が何とか二人の正気を取り戻そうと四苦八苦している、その時。
ガチャリ、とホームの扉が開かれる音。
自分達が開くときを除いて、久しく聞いていない音に全員が顔を一斉に上げ、驚きの様相を呈し、狼狽えている。
三人同時に『調合室』を出た先にて待っていた、その『存在』は───
「ここが【ミアハ・ファミリア】のホームで間違いない?」
気の強そうなつり目気味の短髪の女性と、たれ目気味の柔らかそうな長髪の女性の二人が立っていた。
片方はシャンとした様子で立ち、もう片方はオドオドと落ち着かない様子で立ち、ベル達を見ていた。
「ああ。ここが私たち、【ミアハ・ファミリア】のホームで間違いないぞ」
「・・・・・・・・・それで、なんの用?」
相手が女性だからだろうか。ナァーザの二人への当たりが若干強い。
その事に気付いている少年が苦笑いを浮かべる、と同時に。
長髪の女性が、おずおずと一通の『手紙』を差し出す。
「あの、これを・・・・・・」
「これは・・・・・・」
「───招待状?」
ナァーザが、受け取った手紙───招待状を、ピラッと裏返すと、そこに刻まれている『
「これは、【アポロン・ファミリア】のエンブレム・・・・・・?」
まさにこれから焼き討ちに行こう、などと話し合っている対象が目の前にいる怒り───よりも前に、こうして招待状を渡してくる行動の『意味』を、三人は何となく理解した。
───つまりは、『何らかの準備』が整った、ということなのだと。
「はい。アポロン様が『宴』を開くので、も、もし良かったら・・・・・・べ、別に来なくても結構なんですけどっ・・・・・・」
「何言ってんのよ、あんたは。ほら、行くわよ」
思考を巡らせて黙り込む三人を置いて、二人がホームの扉へと向かう。
ナァーザが「待って!!」と叫べば、短髪の女性は面倒くさそうに、長髪の女性はビクッ、と肩を跳ねさせたあとに、二人がほぼ同時に振り向く。
「【アポロン・ファミリア】だよね。ここ数日、『嫌がらせ』をしてきたのは」
「・・・・・・・・・・・・なんのこと?」
「だ、ダフネちゃん!?」
ナァーザの質問に、短髪の女性───ダフネと呼ばれた存在は、惚けて返す。
しかし、この場には神であるミアハがいる。
子の『嘘』を見抜ける存在である『神』が居るが故に、先の彼女の行動は迂闊だった。
その証拠に、彼女の『嘘』を読み取ったミアハの目が薄く開かれ、彼にしては珍しく目の前の存在を睨む。
「答えてほしい、アポロンの眷属よ。あやつは、今度はベルを
「・・・・・・・・・さあね」
大人しく答える気はサラサラ無いのだろう。
言葉を短く切った彼女は、そのまま扉をくぐり抜け、外へと歩いて行く。
長髪の女性も置いていかれまい、とそれに続き、お店の中が静かになった。
───ナァーザだけは、彼女・・・・・・ダフネという存在が扉を通る際に呟いていた言葉を、口にする。
「ご愁傷様、ね・・・・・・」
小さな呟きは、空気の中へと溶けて行った。
前日の『怒り』を『家族』からの聞き込みで『自分への怒り』へと変換してしまい、心を削る
↓
連日続く『嫌がらせ』により精神や平常心が削れ、さらには『アポロンは執着深く、狙ったものを執拗に狙う』という話を聞いて、『僕が悪いんだよ・・・・・・』状態に
↓
そんな情緒が不安定になりそうなベル君ですが、よりにもよってこんな時に『平常を装う』事が出来てしまう。傍から見れば普通の状態に見えるため、『家族』も気付かない・・・・・・
↑
ヤバいわよ!
さて。怒りの感情を抱かせることには成功しましたが、果たしてベル君はきちんと『怒りを他者に向ける』事が出来るのでしょうか? それ以前に、彼に人を傷つける事ができるのか?
アポロン様の運命や如何に。
ちなみに彼が生き残ってるのは『運』がある意味では良いからです。