草喰みの白兎   作:リヴィドーカリェー

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 (スマホで書いているため)親指の腱鞘炎のなりかけ、懐かしい曲を聴くか友人の声を聴くだけで止まらない涙、一度に三、四時間程しかとれない睡眠、震えの止まらない身体・・・・・・・・・軽症、といったところでしょうか。
 お前はトリコ?


 小説情報にも書いたのですが、アンケートを実施しております。ご協力頂けますと幸いです。
 尚、一応は戦争遊戯の終了まで書き終えてからの話になります。ご了承ください。

 今回は短めです。


戦争遊戯〜中弐〜

 

 

「成る程ねえ・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・むむむむむぅ・・・・・・」

 

 『戦争遊戯ウォーゲーム』の戦場より遠く離れた地、【ロキ・ファミリア】の本拠ホーム『黄昏の館』にて。

 何処ぞに出掛けた神ロキが遠隔で設置した『神の鏡』が、シュリーム古戦場の状況を映し出していた。

 一部始終を目で追えていた第一級冒険者──フィン、ガレス、リヴェリア、アイズ、ティオネとティオナ、そしてベートは、ベルの動きを脳内で評価する。

 特に、ベルのことをLv2の時──一ヶ月ほど前のリヴィラでの戦いの際──の『自衛ができる治療師ヒーラー』という評価のままだったフィンは、少年の評価を数段階上へと昇格させた。

 

「元から弓使いアーチャーなのか、それとも後から得た技能なのか。何れにしても、彼の弓の腕前は相当なものだね」

 

「私としてはあの『毒』について気になるがな・・・・・・"どこぞに居る"『遠征』帰りに直ぐダンジョンへと向かう者には、文字通り『良い薬』になりそうだからな」

 

 目を細めながら告げられるリヴェリアの言葉に、ビクッ!と肩を跳ねさせた少女が、一人。

 自覚があるのだろう仕草をする少女を睨む王族に、アイズは目線を合わせないように『鏡』をより強く見る。

 少女の様子にため息を吐くリヴェリアに「そこまでにしておけ」と一言添え、ドワーフ──ガレスは、初めて見るベルの姿や動きに驚きとともに感心する。

 

「儂はこうしてあの小僧を見るのは初めてじゃが・・・・・・Lv3とは思えぬ動きをするものじゃ。それこそ、Lv4と言われたほうが納得する程に、あやつは速い」

 

「ベルは、凄い子だから・・・・・・」

 

「アルゴノゥト君だもんね〜!」

 

「なんであんたたちが誇らしげなのよ・・・」

 

 次々とベルとナァーザを次々と褒めちぎるフィンとガレス、そして幹部陣。

 特にコメントを残さないベートは舌打ちこそしているが、それでも画面から一切目を逸らしていないことから、今回の『戦争遊戯ウォーゲーム』にて、気になることや人がいることは読み取れる。

 ───そう、誰もが鏡に視線を集中させている。

 彼らは鏡に映る少年に目を向けているが故に、その場にいる幹部陣以外の少女───レフィーヤがむくれていることに気づかない。・・・・・・あるいは、気づいていて放置しているのであろうが。

 

「・・・・・・むむむむむぅ・・・」

 

 頬をリスの如く──と言うほどでもないが膨らませ、眼前の鏡に噛み付くかのようにじぃ~っ、と見つめ、その視線の先に居るベルの事を見る。

 

 彼は崩れた城砦より少し離れた位置に放置されるかのように置き去りにされている木箱から新たな矢を取り出し、矢筒へと次々と入れていた。放置されていたとは思えないほどに綺麗な状態の矢から、その木箱の位置や箱の状態は隠蔽カモフラージュなのだろうと読み取れる。

 

 全ての準備を整えた彼は、戦場──全てが瓦礫と化し、崩れている城砦へと戻っていく。

 レフィーヤでは視認すらも怪しいほどの速度で駆ける少年に、さらに嫉妬を重ね。

 次々と溢れてくるベルへの羨ましさやライバルとしての誇らしさ等々に、彼女はさらにむくれる。

 少々複雑になりつつある少年と自身の関係に少々思うことこそあるが、今は考慮すべき案件ではないため、頭を振ってそれを飛ばす。

 

 ───何より。

 何よりもレフィーヤがむくれているのは、ベルが魔法を主軸に戦っていないからだ。

 ───分かっている。

 少女も、ベルが弓を扱っているのはそれが一番『怪我人及び血を流す人』が少なく済むことに、きちんと気付いている。

 『毒矢』でもって痛みを伴わせることこそあれど、それでも必要最小限に留めていることなど。

 『神の宴』の際にはあれほどまでに怒っていたというのに、それでも優しさ───というよりも甘いベルに思うことこそあるものの、気付いている。

 ───が、それでも。

 少女は、ベルのことを何よりも『魔導師として』ライバルだと思っているのだ。

 無論、弓やナイフ等々の技能もベルの『強さ』であるのだろうが・・・・・・それはそれ。

 言うなれば、彼女はベルに『魔導師』として無双してほしかったのだ。

 

「むむむむむ・・・・・・」

 

「・・・・・・レフィーヤ?」

 

 唸り声を上げているレフィーヤの様子に、アイズはようやく気がついた。

 アイズが知る常の彼女とは異なる様子に怪訝な顔をした少女はしかし、すぐに『あの時』のことを思い出す。

 そう、ベルとレフィーヤが同時に盗られてしまった『神の宴』の───

 

「ごぱぁッ!?」

 

「あ、アイズ!?どうしたの!?!?」

 

「ちょ、ちょっと!どうしたのよ!?」

 

 『神の宴』より数日経つが、未だに心の傷が癒えていなかったアイズが可笑しな変な声を出しながら後ろへと吹っ飛ぶ。

 いきなりの現象にヒリュテ姉妹が悲鳴を上げるが、それ以外の───それもここ数日は何度も見たフィン等は、特に気にした様子もなく鏡を見ている。

 

「ベル・・・レフィーヤ・・・・・・盗られ・・・・・・泥棒兎・・・泥棒妖精・・・私は塵・・・・・・要らない子・・・・・・?」

 

「ほ、本当にどしたの、アイズ?」

 

「ひとまず、アミッドのところに───」

 

 未だに癒える気配のない心の軋みは、少しではあるものの少女の心を成長させている。

 希薄になりつつあった感情の表出はより活発となり、こうして皆に心配される程度には豊かになっている。───少々やりすぎな気もするが。

 

 永遠に残りそうな心に傷を追った少女のそれが癒えるのは、果たしていつになるのか。

 

 例え彼女の主神であろうと、その事を知ることはないだろう。

 

 

 

────

 

 

 

 

「・・・はあ〜ッ!・・・はあ〜ッ!・・・・・・何が起こった!?」

 

 男は瓦礫と化した城砦だったものより起き上がり、虚しく怒声を響かせる。

 

 味方より聞き出し、状況を知るために上げたのであろう声に答える声はなく。男──ヒュアキントス・クリオの視界に映るのは、完全に役目を失った瓦礫と、倒れ伏して動けなくなった同派閥の団員達の姿だけだった。

 彼とは異なり、倒れた者たちの大部分が城より出ていたためか、それとも『幸運』が味方したのか。大半の者達が瓦礫に埋もれることなく、気を失っているだけだった。

 それまで指揮系統のみを行っていた男が知っているのは、『ベル・クラネルが弓を使い、次々と団員達を撃ち落としている』『矢に触れれば『解毒できない毒』に侵される』程度のもの。

 そのため、伝えられていない情報──現在の『城だったもの』が崩れ去ったのがベルとナァーザの『爆撃』だったことなど知らないし、そもそもナァーザが遠方より狙撃をしていることも知らない。

 

「───ッ!?」

 

 ───故に、彼が『ソレ』を回避できたのは、冒険者としての『勘』や幸運、あるいは・・・・・・己の肌を突き刺すかのような鋭い殺気が理由だろう。

 恥も外聞もなく全力で転がったヒュアキントスが見たものは、雨の如く降り注ぐ無数の矢が天より振り注ぎ、その全てが彼の周辺に転がりし者───まだ毒矢を受けていない者たちを狙っていた。

 

 うめき声を上げながら貫かれた者達は抵抗すらもできずに『毒』を受け、生きるギリギリの呼吸を繰り返す以外のことができなくなる。

 ───すなわち、ヒュアキントスを除いた全てが、壊滅(・・)

 もしも回避できていなければ己も毒の餌食となっていたことに腹を立てながらも、自身が最後の生き残りであることを理解した途端に端正な顔を若干青くしながら、ヒュアキントスは波状剣フランベルジュを装備した。

 

「どこだ!どこにいる!?」

 

 たった二人に『壊滅』へと追いやられた事実に心を蝕まれ、他の者達の不甲斐なさへの怒りと、ベルとナァーザの二人への恐怖と警戒が、彼の心を埋め尽くす。

 

 些細の変化すらも見逃さぬとばかりに見開かれた眼は、しかし何も見ることは叶わず。

 ───変わりに、自身の心臓を差し貫くかのような冷たい『殺意』を感じ取った。

 

「───ッ、ぐぅッ!?!?」

 

 反射的に剣を横に構えた男に襲いかかる、重たい衝撃。

 数歩分後ろへと下がりながら、自身を襲った矢が粉砕される様を見て、それが飛んできた方角を見据える。

 

 ───そこには、『灰白』が存在していた。

 純白の弓を携えたソレは、既に次の矢を番え、ヒュアキントスへと向けていた。

 構えの向きや向けられている『殺意』から矢の軌道を読み取った男は、すぐに剣をそこへと置きに行く(・・・・・)

 ガァンッ!と甲高くも鈍い音を聞きながら、再び男は後退し───程なくして、身体の端を『毒矢』が微かに触れ、通り過ぎていった。

 

「う、あぁ?」

 

 触れたのは数秒にも満たない時間。

 それでも効力を発揮する『毒』は、ヒュアキントスから身体の自由を奪う。

 腕や脚には力が入らなくなり、呼吸も浅くなり、全身にジリジリとした痺れが走る。

 『毒』によって満足に動けなくなった彼は、正面から地面へと倒れ伏した。

 

 意識はしっかりしていて、何より眼前に『敵』が存在しているのにもかかわらず動けない自身の身体にヒュアキントスが苛立ちを隠せなくなっていると───首筋に、刃物。

 

 息を呑んで顔をあげれば、そこには『灰白』がしゃがみ込んだ状態で居た。

 男を見下ろす眼は血のように紅く、突きつけられているロングナイフもまた、光の反射によって同色に見える。

 まさに最後通牒を突きつけられている男は、それでも眼前の少年を睨みつける。

 

「・・・・・・降参、しませんか」

 

「な、ん・・・・・・だ、と・・・?」

 

 痺れによって満足に口を動かせない男の言葉は詰まり気味となり、自然と震えている。

 ───まるで、目の前の少年に恐怖しているかのように。

 

「もう、貴方達の敗北は決まった。なら、これ以上戦う理由なんてないじゃないですか。無意味に『血』を流す必要なんて、あるんですか?」

 

「────ッ!!!!」

 

 ───ベル・クラネルは、どこまで行っても『医療系ファミリア』の所属だった。

 彼の心中では、勿論彼らに対する『怒り』や『殺意』が渦巻き、胸中をグルグルとミキサーにかけるかのような『熱』を生み出している。

 それでも、それを抑え込み、さらには慈悲のごとく降伏を呼びかける。これ以上は"無意味"である、と。

 彼は心の底では『冒険者ではない』。

 彼は、どこまで行っても『治療師ヒーラー』だ。

 ───故に、彼の言葉がヒュアキントスの矜持を傷つけることになるなど、所属は一切分かっていなかった。

 

「舐めるな・・・・・・!私は、太陽の寵児、ヒュアキントス・クリオ!!貴様の慈悲など、いらぬ・・・・・・!」

 

「・・・・・・どうしても、戦うんですか?」

 

「ああ、そうだ!例え、この身を『毒』に侵されようと、貴様を倒し、アポロン様に捧げる!!それこそが、私が示せるの神に示せる忠義!!!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 ───ベルには理解できなかった。

 少年には、男の言う忠義も何もかもが、理解できなかった。

 何故傷ついてでも戦うのか。

 何故、わざわざ負けが決まっているのに挑んでくるのか。

 負けられない戦い───それこそ、『ミノタウロス』『リヴィラの街での戦い』や『アンタレス』の時もそう。少年は、成り行きや怪我人のために戦ってきたに過ぎない。

 傷つくことを許容、ないし強要するような神ならば、それは邪神ではないのか。

 ───けれど、このままでは眼前の男は敗北を認めないことは理解した。

 

「・・・・・・どうぞ」

 

「・・・・・・なんだこれは」

 

「解毒薬です」

 

 目を見開いた男は、すぐにそれへと疑いの目を向ける。

 『罠』の可能性を考えているのだろう。

 

「毒はないですよ。そもそも、そんな必要もないですし」

 

「・・・・・・何故、これを渡す?これが本当に解毒薬なら、すぐにでも私は貴様を倒してみせるぞ!!」

 

 男を何処か舐めている様子の少年に、ヒュアキントスは舌打ちをし、激昂して声を張り上げる。

 地に伏しているというのに威勢のいい男を、ベルは無表情で見つめる。

 

「自信があるから、舐めているから・・・・・・理由は何でもいいです。ただ、そうしないと貴方が納得しないのならそうしようと思っただけです。・・・・・・麻痺は戦闘不能扱いじゃないらしいですからね」

 

 終わりを告げる『大鐘』が鳴り響いていないことから、そう判断したのだろう。

 何処か納得のしていない顔をした少年は、しゃがんでいた身体を立ち上がらせ、距離も取るために歩いていく。

 男はしばし自身の眼前にある薬を睨み、自身の矜持と主神の願いを天秤にかけ───すぐに、瓶の中身を飲み干した。

 

 徐々に消えていく身体の重さや痺れを認識しながら、近くに転がっていた自身の剣を握りしめ、立ち上がる。

 半信半疑ではあったものの、本当に解毒薬だったことに目を見開き。すぐに、その顔に侮蔑の念を浮かべる。

 

(何を考えているのかは分からない・・・・・・が、麻痺が取れたのならこちらのもの。如何にベル・クラネルがLv3であろうと、所詮はなりたて。私に適う道理はない)

 

 己の勝ちを確信している彼は、剣を握る手に力を込めながら、どうやって少年を辱めて倒す、ないし殺すかを考える。

 彼我の実力差は決定しているのだ、と。

 

 ───ヒュアキントスは知らない。

 【ミアハ・ファミリア】を舐め腐っていた彼は、ベルに関する一切の情報を調べていない。

 そのため、彼が知っているのはベルが治療師ヒーラーであることと、十日でLv3へと至ったということだけ。

 ───故に。

 ───単独でゴライアスを討ち果たしたことなど、男が知るはずがなかった。

 

 距離を取るために動かしていた足を止め、後ろを振り返った少年は右手にナイフ、左手に短杖ワンドを握り、左手を隠すかのように右半身を突き出した。

 オーソドックスな、彼の基本の構えだ。

 

「準備はいいですか?」

 

「無論だ」

 

 男の同意を聞いた途端、少年の纏う雰囲気がガラッと変わり、眼前のヒュアキントスの挙動を見逃すまい、と目を見開き、炎雷を纏う。

 ヒュアキントスはと言うと、すぐに襲いかかることはせず、波状剣フランベルジュを少年へと向け、こちらも睨みを利かせている。

 

 ───こうして。

 二人の、一騎打ちが始まった。






●ベル
・納得しなさそうだな・・・・・・心を折らないと
・怒りや殺意>血や怪我への忌避、だったのが
 血や怪我への忌避>怒りや殺意、になりかけてます。

●ナァーザ
・現在、森の中でベルが手懐けた動物たちによって、モンスターから守られている

●アポロン・ファミリア
・ヒュアキントスを除いて全滅
・ヒュアキントスがベルと一騎打ち(勝つ気まんまん)

 ご心配をおかけして申し訳ありません。
 それもこれも作者の自己管理が下手なことが要因です。申し訳ありません。
 先にも書いた通り、この章を終えてからの話になります。ご了承ください。

 ・・・・・・皆さん、思ったよりもベル君のヒロインを増やして欲しいのですね。誰にしましょうか・・・・・・・・・アーティさんとかは即落ちになりそうなのでアレなのですが・・・・・・リューさん?それとも、折角生き残ってるからアリーゼさんや輝夜さん?うーん・・・・・・アイズさん?でも、あの人はもう脳破壊され系ヒロインにしたほうが面白──かわいい感じなのですよね。
 悩ましいものです。
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