皆さんの熱い声援・・・・・・・・・声援?によって、作者の休みが決定いたしました!
数々の私の身体を案じてくださるお言葉を感想で投げかけてくださった皆様、ご心配をおかけして申し訳ありません。
仕事が休みになったことで心のつっかえのようなものが取れたのか、いつもより1時間だけ長く寝れました!
さて。
休みの期間なのですが、やはり三日のままでいこうと思います。
理由としては、やはり執筆の時間は苦痛を一切伴わなず、己の書きたいものを書いているだけで、半ば人々の反応を無視したものを書かせていただいているので・・・・・・まあ、1日の楽しみを無くしたくない、ということなのです。休日も結構あって、息抜きにするには執筆の時間はもってこいですから。
どうかご了承いただけますと幸いです。
・・・・・・・・・感想にてヒロインにして欲しいキャラのご意見、待ってます。参考にしますから
波状剣を手に向かってくるヒュアキントスに対し、ベルは一切動かなかった。
右手のナイフを突き出し、左手の短杖を隠すかのように腰の後ろへと回した姿勢のまま、『敵』の動きを深紅の瞳に映し出す。
見切りや防御のための構えを解かず、そのまま迫る剣の動きや重さ、癖を見極めるために睨みを利かせる。
上段から振り下ろされ、剣風や迫り来る金属特有の冷たい空気を肌で感じながら。
少年は撫でるようにナイフを横向きに波状剣へと滑り込ませ、刀身で敵の一撃を滑らせる。
唸るような金属が擦れる音を聞きながら、右手の柔軟でナイフの根元から剣先へと滑らせ、剣の着弾点を自身より逸らしきる。
まるで『水』を切ったかのように手応えの一切無い完璧な受け流しによってヒュアキントスの上体が崩れ、地面に彼の剣がめり込む。
追い打ち、と言わんばかりに、少年は受け流した『流れ』や『力』を利用し、頭上で円を描くように捻りを利かせ、袈裟斬りを放った。
───ナイフの峰で。
「ぐ、ッ!」
峰で放った一撃はヒュアキントスの右肩へと吸い込まれ、鈍い音が鏡を通して人々にも聞こえてくる。
呻きを上げ、うずくまる男にベルは少々──痛みの耐性の無い事に──呆れながら、当たりやすい位置へと下がってきた鳩尾へと、右膝蹴りを放つ。
人体の弱点とも言える位置に攻撃を受けたことで呼吸が困難となり悲鳴すらも上げられなくなった男に、追撃とばかりに左回し蹴りを放つ。
見た目以上に力の込められた足蹴は蹴られた存在を転がせ、半ば空中へと投げ出させる。
「【ファイアボルト】───ショック」
当然ながら受け身を取ろうとする男の『分かりやすい』動きに合わて少年は炎雷を発動させ、静電気にも等しい細い雷を奔らせる。
稲妻とも言えないひどく微細な、けれどしっかりと魔力を込められた雷は、ヒュアキントスに触れると同時にチクリとした痛みと痺れを与える。
身動きの取れない空中でそれを食らったことにより筋肉がほんの一瞬だけ硬直し、一切の受け身が取れぬまま地面と接触した。
ズドンッ!と大きな音を立てながら地面へと激突した男は、よろよろではあったもののすぐに起き上がり、その手に握ったままだった剣を、再び構えた。
対する少年は、その身に纏う炎雷を何時ものように飛ばす───ことはなく。
むしろそれを散らし、付与魔法発動前の素の状態に戻っている。
「貴様・・・・・・どういうつもりだ。あのままとどめを刺すことも出来たはず」
「えっと・・・・・・どういうつもりか、と言われても・・・・・・」
男が言っているのは、先程の峰打ち、あるいは炎雷を消したときのことだろう。
まるで『手加減』をされているかのような少年の挙動や仕草に、早くもヒュアキントスは頭に血が昇り始めている。
それを表情から完璧に読み取れるために、その後に訪れる結果が分かりきっている少年は、疲れたような、あるいは面倒くさそうな顔をしていた。
言えば手間のかかる『作業』が待っている、といわんばかりの顔だ。
「言え!」
「うーん・・・・・・」
困ったように数秒目を伏せ、暫くすると目を開く・・・・・・が、やはり少々目を逸らしている。
その目や挙動に、やはり男は苛立ちを募らせる。
「単純に、斬ったり炎雷を使ったりすると、"怪我をさせてちゃう"と思っただけなので・・・・・・ちょっと峰打ちにしたり、消したりしただけです」
相手を舐め腐った・・・・・・とまでは言わないが、それでもヒュアキントスを最早『敵』とは呼べる代物ではない、と言わんばかりのその言葉を聞き。
やはり、と言うべきか。男は顔を真っ赤な怒りの形相のそれへと変化させ、叫び声を上げながら少年へと向けて走る。
型も何もあったものではない動きに呆れとともにため息を吐き、『見切った』ヒュアキントスの力頼りの横薙ぎを前に───その鍔へとナイフを突き刺し、そもそもの動きを制止する。
ガァンッ!と甲高い音が鳴り響くとともに、剣の動きの起点を奪われた男は、今度は狼狽えることなく隠し持っていた短剣を左手で抜き放ち、追撃を───
「遅い」
男が動き出すよりも早く。
ベルが左手に持っていた短杖をヒュアキントスの喉へと突き刺し、えづかせる。
キュッ、と変な悲鳴を上げる男はやはり動けなくなり。避ける間もなく、再び叩き込まれた回し蹴りによって蹴り飛ばされた。
「【ファイアボルト】」
「ッ!」
空中で三半規管が上げる悲鳴を無視し、再び炎雷を纏った少年をヒュアキントスは睨む。
その一切の挙動や狙いを見逃さん、と言わんばかりに目を見開き、『短杖』を睨んでいた。
───その時点で少年の術中にハマっていることに、一切気づかず。
「ライトニング」
短く告げられた言葉とともに、雷が蠢き───『光』を、発した。
「グァッ─────」
勿論、短杖をしっかりと見ていたヒュアキントスに防ぐ手立てなどなく。
突如失われた視界に狼狽えた男は、再び受け身を取れずに地面へと叩きつけられた。
───遊ばれている。
誰がどう見てもそう言他ない現実を前に、それでも男は立ち上がる。
フラフラで、既にボロボロの男に対し、一切の手傷もなく、灰褐色のローブや純白の戦闘衣に土埃の一つも無い少年。
誰がどう見ても結果のわかりきっているその姿に、少年が告げる言葉は、やはり一つだった。
「降参してくれませんか?これ以上、『怪我人』に手を挙げたくないんです」
───『怪我人』
『敵』でも『雑魚』、ないし『塵』でもなく、『怪我人』『患者』。
最早ヒュアキントスなど障壁でもなんでもなく、こうして手加減───これ以上の怪我を負わせないように加減をしている少年に、やはり男は歯向かった。
「───何度も、言わせるな!私は、貴様に屈したりなどしない!」
台詞だけなら英雄的。しかし、その実は少年が初めて『殺意』を抱いた男神の眷属。
悪神の眷属は悪、というわけではないが、そもそも止めるでもなく強力している時点で対処すべき敵であることは変わらない。
しかし───ヒュアキントスよりも先に、少年の心の方が、
構えを解き、ナイフと短杖をだらりと下げ、顔も俯きがちになっていた。
それを『隙』と見たのか、ヒュアキントスが突っ込んでくる。
男には才能があるのだろう。
それは、数合ではあるものの打ち合った少年ですらわかってしまうことで。
───だからこそ、男よりも才能のない筈の少年よりも弱い彼を、ベルは認めることが出来なかった。
───構えを解いただけで『隙』だと勘違いした男を、ベルは一切尊敬の念を抱けなかった。
───少年の心に、『■■』の念が芽生えた。
「───もう、いいです」
リン、リン───と、鐘が鳴る音が、やけに静かな戦場に、虚しく響き渡る。
ダカダカダカ、とうるさい程に鳴り響くヒュアキントスの雑な歩法に、やはり少年の■望の念が強くなる。
才能があっても本人に活かすつもりがなく、そのくせ自尊心や矜持のみが無駄に強いせいで肥大化しているため、今から人に剣の振るい方や歩法を倣うことなど、彼は一切しないだろう。
ヒュアキントスはLv3。英雄候補にも名を挙げられることもあるだろうし、人によっては本当に口にしているだろう。
故にこそ少年も期待していたし、ヒュアキントスを強敵と見て、さらには『支えるべき対象なのか』、と判断に困っていたのだが。
───ベルは、完全にヒュアキントスに『失望』した。
「───貴方は、『英雄』じゃない。なら、貴方が相手なら。作法も何も・・・・・・必要ないですよね?」
リン、と鐘によって純白の燐光が集った短杖を、ヒュアキントスに向けた。
───五秒の、蓄力。
光によって強化されているのは、少年が恩恵を得た時から持っていた回復魔法。
常であれば鈴や鐘の音色と共に怪我人の傷を癒し、蝕む毒や瘴気すらも浄化してみせるベルの十八番。
それが五秒もの蓄力によって強化されたのであれば、それこそ対象であるヒュアキントスの傷は、少年の体力と精神力を糧に癒えるだろう。
───常であれば。
「【アンジェ─────いや」
「福音」
───
杖と装備、そして蓄力によって強化された魔法は、音速の速さでもって青年へと吸い込まれていき。
───ヒュアキントスの身体から、『血』が溢れ出る。
「ガ、ぁ・・・・・・・・・・・・・・・?」
音の衝撃に見舞われた身体がくの字に曲がり、肋骨の殆どがバキバキッ!と折れていた。
鼻や耳、そして目からも血が溢れ出し、眼球は自然とグルンッ!と上を向く。
遅れて男の口からも血が吐き出され、地面へと深紅のまだら模様を作り出す。
一目で重症とわかる状態と化した男はしばしヨロヨロ、と身体を揺らし。程なくして、力を失った絡繰のように重力に引かれ、ドサッ、と大きな、けれど控えめな音を立てながら、顔面から地面へと倒れ込んだ。
「・・・・・・・・・ごめんなさい」
一言謝った少年は、しばし男の身体から目線を逸らした。
血が溢れた状態で地面に身体を投げ出している男はピクリとも動かず。
子供が見れば心傷になりかねない光景は、しかし少年の心をこそ責め立てる。
己が手で怪我人を作り出し、さらには追い詰め───最終的には、こうして死体数歩手前まで痛みつける結果になった。
その事実が、彼の心を蝕んでいく。
このまま放置すれば間違いなく『死体』となる男を前に、ベルの心がギリギリッ、と小さな悲鳴を上げ。「早く、早く終わって」と少年が願っていると、大鐘の音が遠くより鳴り響いた。
しばしその音を呆然と聞いていたベルは、それが終わりを告げるものであることに気づいた途端に安堵の息を吐き、怪我人の治療を開始した。
「もう、嫌だなぁ・・・・・・」
───その顔に、痛苦の念を浮かべながら。
────
「─────」
「───私の眷属の勝ちだな、アポロン」
静まり返った『バベル』の円卓。
凡そ『勝負』とも『決闘』とも言えない戦いを終えた神々の集う領域───否、オラリオ全体の空気は、完全に冷え切っていた。
始めこそ、ベルとナァーザの活躍───【ミアハ・ファミリア】の人数差をものともしない攻撃の数々に、神々も人々も大いに盛り上がり、全ての者を熱狂の渦へと巻き込んだ。
これからどうやって勝利するのか、どちらが勝つのか・・・・・・人々の関心が吸い寄せられ、その結果が訪れる時を待ち望んでいた。
───最初の頃は。
人々の『熱』の行く末は、【アポロン・ファミリア】の城が崩れてから陰りを見せ始めた。
一切の防御すらもできず、さらには連携もベル達未満のアポロンの眷属達が一方的に攻め立てられ、一瞬の内に城が崩される様は、戦いに関しては素人である民衆に対しても、それほどまでに『実力差』を感じさせたのだ。
それでも実況が熱い声援を
───そもそも、その必要性が出た時点で結末は見えていたのだろう。
始めこそLv3同士の一騎打ちということで、少しでも盛り上がった人々の視線が集まった。
どういった戦いが繰り広げられるのか、と関心を寄せられたそれは───しかし、実際には塩試合といえるもので。
ヒュアキントスが攻撃を仕掛けても一切崩れることのないベルの鉄壁の受け流しによって、ヒュアキントスのみが傷ついていくだけの時間がしばし流され。
致命傷を避け、さらには『手加減』をしていると思しき発言をする少年と、誰がどう見ても一方的な攻防のそれを前に、人々の関心が次々と薄れ。
最終的には、ベルが"強めに"反撃するだけで終わり。
───つまりは、少年が一騎打ちを始めた時点でそれを打つだけで勝てた、というだけの話で。
それに気付いた人々の今回の戦争遊戯についての総評は、たった一つだった。
『戦争遊戯を申し込んだのは【ミアハ・ファミリア】だけど、それ以前に喧嘩を売り続けた【アポロン・ファミリア】が悪い』
人や神の想いが、その一つに集約された。
その件のファミリアの主神はといえば───目や口を限界まで開き、哀れなほどに間抜けな面を白昼に晒し。そんな男神に周囲の神々が向ける目線も、全てが冷ややかで。
まさに場違いの空気に包まれた太陽神に、対する薬神はいつもは優しげに細められているそれを鋭いものへと変化させ、彼の男神を睨んでいた。
「そなたがベルを求めるのは仕方のないことなのだろう。あの子は優しく、誰よりも『甘い』。治療師としても一級品な以上、今回のように狙われることも多いのだろう」
「・・・・・・・・・・・・」
薬神の声が聞こえないのか、一切の反応も見せない男神に、しかしミアハは言葉を続ける。
───自身を戒めるかのように。
「だが、だからこそ私はこう言おう。『ベルは人を傷つけることを忌避する』。故にこそ、『我がファミリアは積極的に争うことはしない』、と」
それは挑発、あるいは警告だろう。
【ミアハ・ファミリア】側から戦争遊戯を挑むことはしないが、挑まれれば今回のように抵抗をする、と。
例え大きな人数差があろうと、【アポロン・ファミリア】のように叩き潰すのだ、と。
そう、宣言している。
「────さて。確か今回の戦争遊戯では、勝者が敗者に好きな要求を、好きなだけできるのであったな?」
───それは、まさしく死刑宣告だった。
「あ、あぁ・・・・・・・・・ッ」
まるで死神の如く黒く、ゆらゆらとしたオーラを幻視してしまうほどに、今のミアハは恐ろしかった。
いつもは優しげの顔は、現在はその面影の一切を排し、ただただ純然たる『怒気』と『殺気』をアポロン相手に向けていた。
向けられている側は、相手は己とは異なり戦闘系の一切を司っていない神を相手しているというのに、その身体を恐怖へと縮こませ、震わせていた。
「ホームを含めたファミリアの財産は全て没収、ファミリアも解散。オラリオからも永久に追放しよう。そして───」
スッ、と男神は懐から取り出した一枚の紙と、一通の手紙をアポロンへと差し出した。
それを反射的に受け取ったアポロンはと言うと、受け取ったものを見て戸惑った。
───それは、とある位置に印の示された地図と、『麗しきベル・クラネルのご家族様へ』と綴られ、ミアハのファミリアのエンブレムの蝋印が捺印された手紙だったからだ。
「その地図に書かれた地に、その手紙をもって行くこと。そこに、ベルの『家族』である二人のヒューマンと、一柱の神が居る」
「な、なんだと?」
神アポロンは困惑した。
何故そんな事をさせるのか、と。
そもそも、そんな事を要求して何になるのか、と。
「会いに行けばわかる。そうだろう、ヘルメス?」
ガバッ、とアポロンは顔を上げた。「そうだ、我が友ヘルメスならば、庇ってくれるのではないか」、と。
───しかし、男神が望む結果は訪れなかった。
ミアハに名を呼ばれた旅神は、薬神の言いたいこと、そして渡したものが何であるのかをすぐに理解し。
いつもは軽薄な笑みを浮かべている顔を、それはもう大いに引きつらせ───
「アポロン、心を強く持てよ。いくらオレでも、君のした事は庇いきれないし、庇うつもりもない。向かう時は一柱で行ってくれよ」
彼の旅神も、恩のあるベルが追い詰められた事実にかなり怒っていたのだ。
それこそ、万が一にでもアポロンが勝てば、アスフィに頼み込み、ミアハがアポロンを送ろうとしている地にベルを逃がそうとしていた程には。
───無論、巻き込まれる可能性もあるため、アポロンと一緒に『あそこ』へと行きたくないという想いもあるのだが。
生まれて初めて見た程に一切の弁護も無く自身を切り捨てたヘルメスを見て、アポロンはガクリ、と肩を降ろし。
渡された手紙の先には、一体何が待っているのか、と心底震え上がっていた。
───そうして。
ようやく、戦争遊戯は終わりを迎えた。
◯ショック
・静電気を発射する
・身体をほんの一瞬硬直させる
・消費する雷が少ない
・手加減の技
◯福音
・不可視の音の塊を打ち出す
・皆さん大好き、アルフィアさんの魔法・・・・・・の、真似
・そもそも、ベルの回復魔法は『速"攻"魔法』と『音属性』『回復魔法』『浄化魔法』の効果が独立していて、発動する際に"勝手に"混ざることで、治癒の効果が表出している仕様です。
この内の『速攻』と『音属性』の効果のみを残し、他の効果を抑える、ないし封じれば、『音属性の速攻魔法』のみが残り、【サタナス・ヴェーリオン】と似た効果が現れる、という理論です
・スペルキーは無し(そもそもこの使用方法自体が派生系)
・本家との違いは文字通りの速攻性で、『原作のベル君』の炎雷のように連射できます
・大好きな義母と似たような魔法ですが、これを人に向けて使うとグチャグチャ(可能な限りのかわいい表現)になるので、ベル君は人にはあまり使いたくない模様
今章のテーマは
・今作のベル君の『人を傷つけることを良しとする』程に怒り狂う際の怒りのスイッチ
・彼が怒るとどういった手段に出るのか
・結局人を傷つけているけど、ベル君の心は痛まないのか
といった形ですね。結果?見た通り、最初こそ自身の信念を曲げてでも全力を出して、『毒』すらも持ち込んで戦って・・・・・・・・・途中で正気に戻ります。そして、すごく後悔します。
だって、今作の彼はどこまで行っても『心の底では冒険者ではない』、ですからね。