草喰みの白兎   作:リヴィドーカリェー

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 作者、実は甘党なんですよね。
 だからベル君の甘いものが苦手設定には『どうしてそんなひどいことするの・・・・・・?』と毎回思っています。

 今回のお話は

・二柱の神の恋バナ
・ポンコツの接触

 の、2本立てです。
 少なめに見えるかもしれませんが、少々長くなってしまった(特にポンコツの方)ので・・・・・・勘弁を。


短編 その5

 

 

 『月と炉の恋バナ』

 

 

 

 『貸切』の札が掛けられた、『紫氷の森』店内にて。

 世にも珍しい処女神の二柱が、カフェスペースにて料理を囲んでいた。

 普段は物静かな店内であるものの、今では二人の姦しい話が紡がれ、少々騒がしく──主に片方だけなのだが──はあるのだが・・・・・・店主たるエルフはそれを気にせず、読書に専念していた。

 

「いや〜、それにしても下界でアルテミスと一緒にご飯を食べれるなんて、夢みたいだよ」

 

「そうだな・・・・・・私もヘスティアと共にこうして神殿以外で共ににいるのは新鮮で、とても嬉しい」

 

「そ、そうかい?」

 

「ああ。・・・・・・かつての貴女は、ずっと引きこもっていたからな」

 

「うっ!?・・・・・・ふふふ、とても痛い所を突いてくるじゃないか。まあ否定できないんだけどネ」

 

 から元気気味に胸を張る少女のような背丈の女神───ヘスティアがから笑いをする。

 アルテミスの言うように引きこもりだったことを多少は気にしているのだろうか。

 自身にとって良くない方向へと進みそうな話題を逸らすために、彼女は一度咳払いをし。ヘスティアはかねてより気になっていたことを質問する。

 

「どれぐらいの間オラリオにいるつもりなんだい?ボクとしては、いつまでもここにいて欲しいくらいなんだけど」

 

 言いながらハンバーグを口に運べば、溢れすぎない程度でありながら旨味を滾らせる肉汁に、噛めば噛む程に感じられる肉自身の旨さやかけられているソースの甘塩っぱさが混ざり合い、まさに絶品と言える程の味の暴力を浴びせてくる料理の美味しさが口内で作り出されていく。

 思わず身悶えてしまいそうになる身体をぐっと堪え、アルテミスの返答を待つ。

 

「いつまで、か・・・・・・私にも分からないんだ」

 

 天上を見上げながら、女神は答えとも言えない返答をする。

 その顔は、記憶のなかに存在する者を追憶しているように優しく、けれど・・・・・・悲しそうでもあった。

 

「今は見ていたい者がここに居て、あの子に振り向いて貰いたいがために───時間を共にしていたいがために、こうしてここにいる。だから・・・・・・・・・ここを離れる時は、あの子の魂が天に還るか、私が離れたくなった時、なのだろうな」

 

 彼女の心臓は自然と早まり、頬に熱を宿らせる。

 早鐘を打つそれを抑えるように胸元に手を添え、恋する乙女の顔をする彼女の姿は、まさに『手に入らぬもの』に手を伸ばしているかのようで。

 ヘスティアは、『あの子』がそれまでの話に出ていて、かつヘルメスに聞いた少年───ベル・クラネルのことであることに、すぐに気がついた。

 

「もしかして・・・・・・その子のことが好きなのかい?」

 

 ヘスティアの質問に、アルテミスははにかむような笑みを浮かべる。

 

「・・・・・・そうだ。私の、英雄オリオンなんだ」

 

 ───オリオン。

 ヘスティアの知るそれは『射抜くもの』の意味をもつ神造兵器であり、神々すらも消滅させるほどの恐ろしい武器。

 しかし。そういった意味でないことは、アルテミスの見たことのない態度でわかる。

 オリオンの言葉に込められた意味がどういった意味なのかは分からない。

 けれど───

 

「どんな子なんだい?そこまで言われると気になっちゃうよ」

 

「え?」

 

 ヘスティアは、アルテミスが好きになった子のことが気になった。

 どういった子なのだろう。

 どういったことを喜ぶ子なのだろう。

 その子は───アルテミスを幸せにしてあげられるような子なのか。

 

「君の初恋を奪った子なんだ、それはもう凄い子なんだろうな、と思っちゃってね」

 

「ふむ・・・・・・」

 

 月女神は口元に手を添え、考え込む。

 先ほどとは異なり、無理やりに記憶の海を漁るように深く沈ませた思考で、少年の印象を探し。

 やはり、かっこいい姿が真っ先に思い浮かぶ。

 それこそ、自身を助けた時の必死の形相で『アンタレス』に魔剣を、ナイフを叩きつけ続けた際のこととかが。

 けれど、やはり一番印象に残っているのは───『氷の家』での、ベルの『独白と涙』だった。

 

 

「・・・・・・泣き虫」

 

「ほぇ?」

 

 先日の『戦争遊戯ウォーゲーム』を見ている者の認識では一致しない言葉に、ヘスティアは間抜けな声を出してしまう。

 ───だって、そうだろう?

 あの『女傑』と称せるアルテミスを落とし、尚且つ『漆黒のモンスター』を討ち果たした人物、かつ先日の"あの"『戦争遊戯ウォーゲーム』で勇ましくも恐ろしい活躍をした際の姿しか、ヘスティアは彼について知らない。

 故に、かの少年は見た目にそぐわず、さぞ高潔な『傑物』なのだろう、と思っていたのだが───それに見合わない言葉を言われたのだ。混乱するのも無理はない。

 凡そイメージが結びつかない炉の女神を置いて、アルテミスは内より滲み出る少年に対する印象や姿を説明する。

 

 

「泣き虫なんだ、あの子は。目の前で失われる命に慟哭して、絶望して。それでも助けたい、と叫び続けることができる、優しい心の持ち主───」

 

 

 それは当たり前のようで、しかしそうではないもの。

 自分の心を傷つけて、泣いても他者を助けるために行動できる、当たり前の優しさを持っていること。

 そして、他者の『死』に怯え、それを与えないように行動できる『泣き虫』だからこそ、少年は人を助けられたのだ。

 だからこそ───

 

 

 

「だから。私が、『今』ここに居る事が出来るんだ」

 

 嬉しさや愛しさに塗れた顔を赤くする彼女の姿に、ヘスティアは───敗北感と悔しさを、件の『少年』に覚えた。

 神友なのに、ヘスティアボクは何もしてあげられなかった。

 ヘルメスからアルテミスが陥っていた状況を後から聞いて、驚きと安堵、そして悔恨の意に苛まれることしかできず。

 下界の子に、あわや『神殺し』の罪を押し付けるだけに終わりそうになったのに。

 ───その子が、神すらもなし得ない『奇跡』を起こし、尚且つ救ってみせ。運命すらも捻じ曲げた。

 その事が───本当に、羨ましかった。

 

「変わったね」

 

「そう・・・・・・か?」

 

 「そうさ」と頷きながら、内心のセンチメンタルを隠し。女神は、やはり『神』として持ち合わせている好奇心に無理やりにでも従い、二人の関係やどういったことをしているのかを聞きまくることを、心に決めた。

 

「それじゃあ!これからその子について根掘り葉掘り聞こうかなぁ?"あの"アルテミスを落としたんだ、すっっっごく気になるね!!」

 

「・・・・・・・・・ふふ。ああ、分かった。まず、私とあの子は───」

 

 

 二柱の女神は、日が沈むその時まで語り尽くし。

 エルフの老人が夜食を運んでくるその時まで、現在の『時』を楽しみ尽くすかのように、共に居続けた。

 

 

 

 

 〜月狩猟の惚気end〜

 

作者のコメント:炉の女神さん、今作で初めての登場ですね。ここに来る前にじゃが丸の屋台でバイトをしてたことで疲れていたのでしょうが、神友の恋バナで精神力をチャージしてます。

 

 


 

 

 

 

 『ポンコツと白兎の接触』

 

 

 

 本日は快晴。

 ポカポカとした陽気が差し込む───ことはなく。

 建物の間にひっそりと佇むために、寧ろ、朝方は影のなかに存在する『青の薬舗』内は涼しい。

 暑すぎることも寒すぎることもない気候に、珍しくお留守番を命じられたベルが眠そうに眼を細める中。

 

 過ごしやすい気候のせいで船を漕ぐ少年の身体に『寝るな』、と言うかのように、来店を告げる鈴の音色が優しく響く。

 その鈴の音に反応し、反射的に少年の身体は起き上がり、口も勝手に動いた。

 

「いらっしゃいませ」

 

「こんにちは、クラネルさん」

 

 声に張りはないものの、眠そうではない程度の声で、少年は来客と来店の挨拶を酌み交わす中。

 姿を表したのは、美しい金髪のエルフだった。

 

 その女性が見慣れた存在であることに気付いたことで、何処となく安心感を覚えたのだろうか。何時もよりほわほわとした笑みを浮かべる少年の様子に、金髪の女性──リュー・リオンがビクリ、とほんの一瞬だけ反応し。

 しかし、すぐにいつもの如く───否、いつもよりほんの少しだけ低い、かつ"冷静を装っている"かのようなほんの微かに震えた声で、ベルに話しかける。

 

「クラネルさん。【アポロン・ファミリア】の一件では申し訳ありませんでした。今は良くも悪くも『暗黒期』ではないため、どうしても証拠がないと身動きができず───」

 

 何故か謝罪を始めたリューに、ベルは思わず面食らう。

 すぐに【アポロン・ファミリア】の『嫌がらせ』の際に助けられなかったことを悔いているのだ、と察し、何とも言えない顔をしてしまう。

 確かにすぐに助けてくれなかったことに思うところがないわけではないが、それでも今はこうして無事にファミリアで活動できている。それだけで今は十分だ、とベルは内心で結論づけていた。

 

 そんな少年の思いとは異なり、自身への憤りを感じているのか、拳を強く握る金髪のエルフにベルは慌ててしまう。

 なんとかやめさせられないか、と思考を巡らせ、とにかくこの話を終わらせればやめさせられるだろう、と考えたベルは、なんとか言葉を連ねる。

 

「気にしないでください。僕はこうして【ミアハ・ファミリア】に居るだけで満足ですから」

 

「・・・・・・そう、でしょうか・・・・・・・・いえ、それでも言わせてください。貴方を満足に守り、助けることができず・・・・・・申し訳ありません」

 

 どこまでも申し訳なさそうに謝るリューに、ベルはもう一度気にしないように伝えようとして───しかし、やはり謝罪を受け取らないと終わらないような気もして。

 

「・・・・・・わかりました。だから、もう謝らないでください」

 

「──ええ。分かりました」

 

 謝罪を受け取れば、リューは相変わらず申し訳なさそうな、けれど少しだけ安堵したかのように頬を綻ばせる。

 元気が出たのだろうことに少年は安堵の念を抱きつつ、すぐに咳払いをして、纏う空気を変える。

 つい世間話をしてしまったが、こうして薬舗に入店した以上、相手はお客様なのだ。いつまでも親しげに接するわけにはいかない。

 

「それでは・・・・・・お客様。本日はどのような商品をお探しでしょうか?」

 

 何故か『接客モード』に入る少年の姿に、硬い雰囲気がアミッドを彷彿とさせるような気配がして可笑しく思い、リューは苦くはあるが笑みを浮かべ。

 すぐに気を取り直し、買う必要のある物品を注文する。

 

「それでは、質の良い回復薬ポーションと・・・・・・以前頂いた高等二属性回復薬ハイ・デュアルポーションを含めて頂けますか?」

 

「───かしこまりました。少々お待ちください」

 

 恭しく頷くと、白衣を揺らしながら、少年はカウンター下の棚や調合室の在庫等々を漁り、適当に以前注文された際の数を参考に試験管立てに差し込み、割らないように気をつけて運ぶ。

 ガラスの容器内の液体が揺れ動くさまを眺めながら、カウンターにそっと置くと、緑、青、オレンジの三色の回復薬ポーションが試験管立てに所狭しと立ち並べる。

 

「こちらでよろしいでしょうか?」

 

 少年の言葉に釣られるように、リューは回復薬ポーションを見る。

 どれも色鮮やかで、一目で高品質だ、とわかる程に綺麗な回復薬ポーションの姿に『相変わらず品質が高い』と内心で褒めるリューは、一応は一つ一つを確認する。

 ないとは思うが、たまに着色料で誤魔化す輩が存在するのだ。そのため、冒険者は基本的にこうしてある程度の鑑定ができないといけない。

 ・・・・・・まあ、ろくに確認もせずに購入する、という者は──特に暗黒期を経験した者は──、このオラリオには居ないとは思うが*1

 

 

「素晴らしい出来ですね・・・・・・【ディアンケヒト・ファミリア】のポーションにも、勝るとも劣らないくらいです」

 

「ありがとうございます。数は以前購入された際のものを参考に揃えましたが・・・・・・よろしかったでしょうか?」

 

「ええ。ありがとうございます」

 

 接客モードに入ったことで少々素っ気ない態度になっている少年の応対に、リューは何とも言えない顔をする。

 

「クラネルさん」

 

「なんでしょうか」

 

 まるでアミッドのような無表情──もしかしたらモデルは彼女なのかもしれない──で話している少年であるが、やはり何時もの人懐っこい笑みを浮かべていない状態の彼の姿は、『似合っていない』の一言が当てはまる。

 

「失礼だとは思うのですが・・・・・・その話し方、似合っていませんよ」

 

「え・・・・・・本当ですか・・・・・・?」

 

「ええ。アリーゼが丁寧語を使っている時くらいに、似合っていません」

 

「えっ」

 

 ガーンッ!とわかり易いほどにショックを受ける少年の反応に、ようやく知っている彼の姿が見れたことでリューは少々安堵する。

 しかし──アリーゼを礼にしたこともあるのだろうか?──、余程ショックだったのだろう。肩を落とし、ぶつぶつと「だってナァーザさんがこうすればお客さんから人気が出るって・・・・・・」*2と呟いていた。

 

 あまりにも様子が変化したことでリューも申し訳なく思いながら、しかし彼女の目的は先程の謝罪と買い出し。いつまでもこうして戯れているわけには行かないため、必要なお金──以前同じ注文をしたことがあるので聞かなくてもわかる──を差し出した。

 明らかに元気をなくしながらも、ベルはお金を精算し、ポーションの入った試験管を緩衝材を入れたり等で割れないようにしながら紙袋へと入れ、リューへと渡す。

 

「どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

 紙袋を受け取り、用を終えたため帰宅しようと踵を返したリューを見て、「あ、そうだ」と独り言を零したベルが、一度彼女を引き止める。

 怪訝な顔をする彼女に、少年はカウンター後ろの棚に飾られていた小さな瓶を差し出した。

 瓶には、丸っこい突起が生えた粒が多数入っていて、それらは海のように鮮やかな青色をしていた。 

 

「こちら、試作品の『糖花薬』です。オマケとして差し上げますので、良ければ使用感を教えていただけませんか?」

 

「試作品、ですか・・・・・・?」

 

 「はい」と頷きながら、この商品の説明をしてくれる。

 

「これは極東・・・・・・いや、それよりももっと遠くだったかな・・・・・・?とにかく、そこで作られている『金平糖』というお菓子の作り方より着想を得て作成したものです」

「作るには時間がかかるのですが、そのかわりに通常の回復薬ポーションと同じ・・・・・・よりも強力な治癒効果があります。なにより、こちらの商品の利点は甘くて美味しいこと・・・・・・・・・らしいです」

 

 最後まで聞いていたリューは、最後の『らしい』の言葉に苦い顔をする。

 もしや、回復効果が保証されていないのではないか、と。

 

「らしい、とは?」

 

 怪しむリューに、ベルは少々言いにくそうな・・・・・・あるいは、言いたくないかのような、苦い顔をしていた。

 それによって、リューの警戒心がさらに増した───が。

 すぐに、それが杞憂であることを理解した。

 

「僕、甘いものが苦手で・・・・・・」

 

 その一言に、リューは勘違い──ベルが言う『らしい』とは、効果ではなく味に対するものなのだと言うことに気づき、少し恥ずかしくなる。

 少々目線を逸らしながら、リューは少年に返答する。

 

「意外ですね」

 

「そう、なんですかね・・・?」

 

 微笑ましい理由──本人的には恥ずかしい理由──で味が保証できないことに少年は自身の頬をポリポリと掻き、恥ずかしさを誤魔化した。

 

「とにかく。味はともかく、効果はミアハ様のお墨付きなので保証されてますよ」

 

 「どうぞ」、と購入済みの証しである可愛らしいリボンを巻き付けた瓶を、リューへと差し出す。

 彼女は受け取っても問題ないだろう、と判断し、手を伸ばし───少年の手と彼女の手が、触れた。

 

「あっ・・・・・・」

 

 エルフと手が触れてしまったことに、ベルは思わず身構えてしまう。

 義祖父と接してきたこと、さらには最近ではフィルヴィスと共に過ごしてきたことで、さらにエルフの文化に理解のある──義祖父自身はあまりエルフであることや文化に拘っていないが──少年は、今すぐにでも殴り飛ばされる覚悟をし。

 

「ありがとうございます。大切に使わせていただきます」

 

「あれ?」

 

 ───想像通りの結果にならなかったことに驚いた。

 もしや触れていなかったのではないか、とも思ったが、それはあり得ないだろう。

 その事に安堵し、安心した少年は───ミスを、犯した。

 

「リオンさんって、異性と触れても平気なんですね」

 

「え?」

 

「え?」

 

 ───わざわざ自分から訪ねなければいいと言うのに。ベルは、聞いてしまった。

 ベルより『触れても平気』の言葉を飲み込み、理解したリューは───先程の出来事を振り返った。

 少年より瓶を受け取り、彼女が意識しない形で触れてしまった手の感触。

 自身とは異なる、少々硬めの手の感触を。

 

 

「あ、え?な、あ、え?・・・・・・・・・・・・ぁ」

 

「リオンさん?」

 

 細部まで思い出してしまった初心うぶなエルフは、すぐに顔を赤くした。

 普段接する者達が女性ばかり──そもそも彼女の所属が【アストレア・ファミリア】ということで、気軽に接して蹴るものがいないが──な彼女は、初めて手に触れた男性の感触と熱を思い出して、熟れたリンゴのように真っ赤になっていた顔を、さらに赤くし。

 

 

 

「あ、あぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・し、失礼しました!!」

 

 

 

 叫び声をあげ、逃げるように走り出す。

 それでも紙袋を脇に抱え、手渡された『糖花薬』の瓶を大事そうに両手でつつみ込んでいるのは、周知にさらされても彼女に残っていた理性が仕事をした結果故か。

 自然と閉じられた扉を見つめていた少年は、ポツリと呟いた。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・やっぱり嫌だったのかなぁ・・・・・・」

 

 傷付いたような、申し訳なく思うような呟きは、誰にも聞こえないまま。

 空虚に響き渡り、静寂に包まれた空気へと、溶けていった。

 

 

────

 

 

「あら、リオ・・・・・・ン・・・・・・??どうしたの、そんなところで頭を抱えて」

 

「クラネルさん・・・・・・触れられる男性・・・・・・しかし相手は14歳、7歳は年下・・・・・・これでは神々の言うショタコン・・・・・・・・・私は変態・・・・・・・・・?」

 

「本当にどうしたのよ?」

 

 ぶつぶつとおかしな事を──なにより、既に相手が運命の相手だと思っている──呟きを続けるエルフの姿が、人々に目撃されたのだとか。

 

 

 

 〜作者のコメント〜

 ここのリューさんは原作よりもアリーゼさん達【アストレア・ファミリア】の面々の空気"には"慣れてますが、男性への耐性が酒場で働いていないのでありません。

 なにより、アリーゼさんが『大丈夫よ!リオンは美人なんだから、貴方の手を握れる男の人は現れるわ!』などという謎理論を聞き続けました。

 その結果、手を触れられる男性──つまりはベル君と手が少し接れるだけで、ポンコツ即落ちになります。

 

 やーい、恋愛初心クソ雑魚エルフ〜!と言ってあげてください。周知に顔を真っ赤にして暴れ始めますから。

*1
なお原作のベル君

*2
『ベルが、客引きの時に甘い顔ばかりするから、変な女性客ばかりたくさん来る・・・・・・なら、素っ気なくさせれば良い・・・・・・』と考えての行動






●恋バナ
・ヘスティア:アルテミス、羨ましいなぁ・・・
・アルテミス:ベル君の凄さや可愛らしさだけでなく、一応はこういった所が駄目!(ベル君に惚れられては困るため)の話をずっと続けている
・フォス:ずっと黙っている。時折アルテミスの話に頷いたり、首を傾げたりしている

●ポンコツと白兎
・リュー:後ほどアリーゼに相談し、『リオン、ショタコンなのね!』と言われ、また頭を抱えた。その前に相談相手は選んだほうがいいと思う
・ベル:『糖花薬』、甘くなければなぁ・・・と思っている。現在、抹茶味を開発中
・アリーゼ:リューの変容にドン引きした。その後に話を聞いて、茶化したり焚き付けたりしている
・【アストレア・ファミリア】の面々:ポンコツのいじりネタが増えたことを内心で喜んでいるものが多数。一人だけ、リューが持っていた『金平糖』そっくりな薬をジッ、と見つめている

●『糖花薬』
・モチーフは『金平糖』。甘い
・瓶入りの薬品で、十粒入っている
・回復効果は一粒で回復薬ポーション高等回復薬ハイ・ポーションの間より少し上くらいある
・デメリットは身体に振りかけても効果がないこと
・値段は効果や工程の複雑さ、また一瓶に入っている粒数から、一先ずは4万ヴァリス位を想定

 何故か文数が増えていて、短編なのに短編らしくなくなってるような・・・・・・まあ・・・・・・いいか?いいか!

 次回からは『グランド・デイ』に入ります。よろしくお願いいたします。
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