『グランド・デイ』・・・・・・ちゃんと書ききれるのか、不安と期待が入り混じる章ですね。頑張ります。
ちなみに、神会───二つ名なのですが、この章を終えた後にしようかな、と。
・・・・・・すごいですよね。思い浮かばないからって後て後で、と回していたら、気づいたら80話が近くなってます。
そろそろ80話に行くというのに、まだグランド・デイって何事?って感じですが。ははは。
謎の『白』
───『グランド・デイ』
それは、三大冒険者依頼が一角、『陸の王』ベヒーモスを、かつての最強と最凶のファミリアが討ち果たした日。
つまりは、ベル・クラネルの『家族』が漆黒の怪物を討ち果たした日でもあり、その日を祝う祭りが開催される日付でもある。
───今日は、その前夜祭。
本番は明日。盛り上がりも、当日には遠く及ばない───が、しかし。
───それでも、オラリオ一の盛り上がりを見せる日の前日祭であることには変わりないため、人通りは多い。
行き交う人々の身体が偶に接触し合い、言い合いになり、苛立つ者もいるものの、しかし人の数は減ることはなく。
元より人通りの多いせいで狭く感じる道がより狭くなる、という異常ともいえる状況に、都市内のいたるところが陥っていた。
「いらっしゃいませ」
「いらっしゃい・・・・・・」
多数の露店が立ち並ぶ広場にて。
【ミアハ・ファミリア】の面々は存在していた。
無論、彼らの目的は商売であり、販売している商品も、自慢のポーション関係の商品であり。
なによりも、今回も目玉商品として、新商品を販売している。
主な役回りは、神ミアハとナァーザが、やはり手慣れた接客力で接客をこなし、同時に在庫出しの仕事をもこなし。
そして、もう一つ・・・・・・新しく入った後輩達を『指導』する仕事も、
「いらっしゃいませー」
「い、いらっしゃい、ませ・・・・・・」
「ん・・・・・・もっと声を出したほうがいい。特に、カサンドラはもっと堂々として、笑ったほうがいい・・・・・・ああ、在庫ももう出したほうがいいね」
「は、はい!」
「わかった」
今まで探索系ファミリアに所属していたために、こうして接客をするのは初めての二人───最近所属したばかりのダフネとカサンドラの二人に、ナァーザがアドバイスをしつつ、自身も接客を続けていく。
通常の商売は【アポロン・ファミリア】の嫌がらせや、『戦争遊戯』で"やり過ぎた"影響で客足が遠のいていたため、こうして露店を出しても売れるのか、と心配していた白兎の思いとは裏腹に。
祭りの空気がそうさせるのがもしれないが、今はこうして、次々と順調に在庫が捌けている。
さらには、ベルが生み出した『糖花薬』はその見た目の可愛らしさ故か、それとも物珍しさ故か、一番売れている。
無論、これは特殊な製法で作製するため、作られた数が少なく、必然的に在庫も少ない。
希少性から、一瓶四万ヴァリスで販売していたのだが・・・・・・いつの間にか、残り一瓶にまでなってしまっている。
「次からは、もっと値段を引き上げてもいいかもね・・・・・・」
「どうだろうね。今は『お祭り』だから売れてるだけで、平時は売れない、なんてこともあり得ると思うけど」
「・・・・・・うーん・・・・・・・・・」
まさに『糖花薬』を金のなる木として見始めるナァーザに、ダフネが冷静な意見を出す。
お祭りの空気とは恐ろしいもので、普段は買わないだろう物を購入してしまう『謎の空気』がある。
ナァーザも冷静に考えるために、顎に手を添え、考え込む。
「そこはやはり要相談、といったところだろう。それこそ、今回の人気を足掛かりに、市場の様子を見ながら値段を少しずつ上げていく・・・・・・という形でも問題はあるまい」
穏やかな顔をしながら会話に混ざり、提案したミアハの意見に、その場の全員が頷く。
神アポロンとは異なり、善神とも評されるミアハに対するダフネ達の印象は良好なようで、今回のような決定に難色を示すことは殆どない。
「それにしても・・・・・・ベルさん、大丈夫なんでしょうか」
───そう。
この場には、本来いるべき筈の白い少年が存在していなかった。
何故彼がいないのか。
何故ダンジョンに行っているわけでもないというのに・・・・・・『お祭り』の最中に、彼を心配しているのか。
その理由を知る者達は、眉間にしわを寄せ、眉間を押さえる。
まるで頭痛がする、とでも言いたげな動作だ。
「分からぬ。『事故』が発生することもあるのだろうが・・・・・・無事を祈るしかあるまい」
「いえ、そうなんですけど・・・・・・そうじゃなくて、ですね」
『事故』という、凡そお祭りには合わない単語が現れるが、ベルが今居る場所、向かう場所を鑑みれば、それが大げさなものではない、とこの場にいる皆が理解していた。
だからこそ・・・・・・否、それ以外の理由でも、カサンドラは心配する気持ちが溢れて止まらない。
「あそこには、【剣姫】もいるん・・・・・・です、よね?また攫われちゃうんじゃ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
その心配の元は、先日の『【剣姫】による白兎攫い問題』が原因だろう。
動機は一切知らないが、他派閥の者───【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインにベルが攫われたことで、大きな問題になりかけたそれ。
無論、ミアハも
それの原理を理解できない下界の子の不安は収まらないだろう、と考えている男神に───追い打ちが刺さる。
「その、それに・・・・・・・・・『あの催し物』にも出られるんですよね?その・・・・・・ベルさんは、無事に帰ってこれるのでしょうか・・・・・・・・・?」
『あの催し』
先程の『心配事』とはまた別に存在する『問題』があることを、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・無事を祈るしか、あるまい・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ですよね・・・・・・」
お互いに無力な自身を悔やみながらも、カサンドラも同じように手を握り。
一人と一柱は、少年の無事を祈ると、人の数が増え始めた屋台を回し始めた。
────
「ではこれより、『神会主催、グランド・デイ前夜祭特別イベント』『オラリオで一番美しいのは誰だ!?最強美女コンテスト!』を、開催するー!」
ガネーシャの叫び声が響き渡るとともに、人々の怒号も響き渡る。
現在の『美女コンテスト』とやらは、開始時刻より遅れている。
そのため、美女美少女を見るために来たというのに待ちぼうけを食らった者たちの不満が爆発寸前となっているのだ。
「俺が、この美女コンテストの司会を務める・・・・・・ガネーシャだ!!」
ガネーシャが自己紹介をすれば、彼に黄色い歓声・・・・・・ではなく、血のように真っ赤な怒声が鳴り響く。
それを聞いても自らの声援としか見なさないガネーシャのメンタルは、まさに鋼のごとし。
───故に、画面より溢れる涙も汗なのだろう。そうに決まっている。
「それじゃあ、共同司会のデメテル!ここから先は仕切ってくれ!」
「あなた、何もしてないじゃない・・・・・・もう。じゃあ、簡単にルールを説明するわね」
ガネーシャより速攻で仕事を押し付けられたデメテルの優しくも不思議とよく通る声が、喧騒に包まれた会場に響き渡り、彼女の言うルールが、全ての者の耳に届く。
一つ、各神によってプロデュースされた美女たちが、様々な扮装をして現れ、一番の美女を決める催しであること。
一つ、判定は観客の声援で行うため、お気に入りの子に声援を送ること。
以上が、簡単なルールの説明だった。
───そして、その舞台袖では、数々の美女美少女が、その身を美しい衣や装飾品で飾り付け、その殆どのものが嫌々ながら『その時』が来るのを待っていた。
そんな彼女達の様子は同じばかりでもなく。
例えば───
「す、すごい歓声だよぅ、命ぉ・・・・・・私、やっぱり出ていくの嫌だよぉ・・・・・・」
「し、仕方ありません!千種殿!ここは腹を決めて出て行かねば!タケミカヅチ様が今回お店を出す為に使ったジャガ丸くんの材料費を回収せねばならないのですから!」
綺麗な和装に包んだ少女たちが、これから出るステージへの躊躇いや覚悟を話し合っていたり。
「すっかり騙されたわ・・・・・・まさか私をエントリーしてるなんて」
「はははは!手前が出るはずがなかろう。ま、たまにはこういうのもようではないか」
赤髪の鍛冶神が、己が眷属がついた嘘──自身が出る、と嘯いて連れ出したこと──によってこの大会に強制的に参加させられたことに、苦言を呈していたり。
「気合いや!気合いや!気合いや!みんな、気合いやでぇ〜〜!」
とある道化の神が、気合などと叫び散らし、眼前に立つ二人のアマゾネスの姉妹と、恥ずかしさと出たくなさでぶつぶつと呟いている妖精に、無理やりにでも気合を入れさせていたり。
それ以外にも、この場には多数の女性が存在していて。
誰も彼もが『帰りたい』『早く終わらせたい』『屋台に行きたい』と、消極的な思いを内心に募らせる中───『白』が、そこには居た。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
目を閉じ、外界から自身の眼を遮断しているその『存在』は、頭の先から足の爪先までを顔以外を覆うほどに大きな『白い布』に包んでいた。
身長としては、150Cにギリギリ届くか届かないかくらいだろうか。
布に覆われていてもわかるほどに低い背丈に、しかしそれとは裏腹に大きく主張する胸や、括れによってできる突起、さらには布よりのぞく細腕から、そのスタイルの良さを嫌と言うほどに周囲に知らしめ、異様かつ異彩な存在感を放っている。
微かな隙間すらも許さぬ、とばかりに布で『中身』を隠す"少女"の存在は、もしも『中身』を知るものがこの場に居れば、勿体ないと思うか、あるいは憐憫と悲しみの涙を流すか、のどちらかだろう。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・ねえ。あれって誰だと思う?」
「さあ?興味ないわ」
「・・・・・・・・・?何処かで、会ったことがあるような・・・・・・・・・いえ、知ってる人・・・・・・?」
勿論、布で身体を覆ってはいるものの、柱やら角やらに身体を隠しているわけでもないその存在に、周囲の者達の好奇な視線が集まるのは必然。
何をしているのか、そもそも出演者なのか、何処のファミリアの所属なのか、中身は一体誰なのか。
様々な憶測や推測、推理が暇つぶし感覚に行われては、しかしそれら全てが的外れに終わっている。
『白』はピクリとも動かず、会場に出るその時までその布を脱ぐことはないだろう、ということを、誰もが本能的に理解した───その時。
『白』が、動き出した。
まるでなんてことない、寧ろこれこそが『日常』だ、とでも言わんばかりに、淀みなく、また一切フラつくこともなく歩けている『白』の『異常』な姿が、多数の女性や神々の目に映る。
唯一布が覆われていない顔から、その目が"一切開かれることなく"、けれど真っ直ぐに歩いている。・・・・・・歩けることを、証明している。
そのことに気づいた周囲の冒険者───特に、上級冒険者達がざわつく。
目を閉じて歩くというのは、言うのは簡単だが、やはりやるのは難しい。
如何に上級冒険者冒険者が昇格した器によって常人よりも五感が優れていると言っても、それは『白』のように完全に目を閉じた状態で"完璧に"歩けるというものではない。
ましてや、たとえ『白』が上級冒険者であろうと、『白』のように完全に目をとじた状態で、かつ淀みなく歩くというのは至難の業だ。
人々に戦慄をもたらした『白』は、そのまま暫く歩き続けると・・・・・・ある場所にたどり着いた途端に、ようやく動きを止めた。
『白』を自然と目で追っていた妖精───レフィーヤは、それの眼前に立っているまた別の妖精の姿に驚いた。
長く美しい濡羽色の黒い髪に、鋭い赤緋色の瞳。
『白』よりも数Cだけ高い程度で、またレフィーヤと同じくらいの高さの背丈は、彼女の美しさの中に可愛らしさを与えている。
何よりも、何時もは純白の戦闘衣に包んでいるその身を今回は藤色を基調としたドレスで着飾っていることで、美しさを跳ね上げている。
「フィルヴィスさん?」
彼女は小声で『白』と何事かを話し合うと、仕方ない、とでも言うようにため息を吐きながら、ソレの手を握った。
落ち着けるように、慰めるように、片手は『白』の手を握り、もう片手は布越しに頭を撫でている。
知り合いなのだろうか、と思いながら、レフィーヤは彼女に声をかけた。
「こんにちは、フィルヴィスさん」
「!?」
「・・・ああ、ウィリ・・・・・・ディ・・・・ス・・・・・・・・?」
山吹色の妖精が声をかければ、『白』はビクッ!と肩を跳ねさせ、白巫女の背後に回り込み。
フィルヴィスは、そんな『白』の様子にため息を吐きながらも返事をしようとし───彼女の姿に、絶句した。
彼女の身体を守るはずの布地は、まるでアマゾネスが纏うそれのように少なく、凡そ誇り高く、また潔癖とされるエルフがするべきではない服装をしていた。
本人も恥ずかしいのか、白いはずの肌を真っ赤にしている。
時折腕や手で胸を隠そうとしているが、その動作を見れば、例えばヘルメスであれば興奮しながら『恥じらいこそスパイスだ!』などと叫び、周囲の男衆から同意の嵐を得ることだろう。
「お前、よくそんな恥ずかしい格好ができるな・・・・・・?」
「い、言わないでください!私も着たくて着たわけじゃありません!?」
「・・・・・・・・・・・・」
フィルヴィスの呟きに同意するかのようにコクコクコクッ、と首を上下する『白』は、やはり彼女に守られるかのように背後に身を隠しているため、シュールな絵面となっている。
───その小動物のような動作に、何名かの女性がゆるキャラ的な可愛らしさを感じていたが。
レフィーヤは気を取り直し、その『白』へと目線を向ける。
『白』は顔を見られまい、としているのか、全力で顔を背けながら、周囲を自然と見回していた。
その姿や動作が、やはり何処かで見たことがあり、また何かを隠していることがわかり。
レフィーヤはその様子から言葉は交わせないだろう、と苦笑を浮かべながら判断し、フィルヴィスに尋ねた。
「お知り合いなんですか?」
「ああ、お前も───いや」
白巫女は、一度顎に手を添えて考える。
『白』の正体を知る彼女からすれば、『白』がレフィーヤの知り合い"でもある"事がバレれば、すぐに秘密が露呈してしまう。
ならば───やはり、『嘘と真実を混ぜた事柄』で誤魔化すしかない。
数少ない"友人"に、真実も混ぜているとはいえ『嘘』を告げなければならないことに申し訳なく思いつつ、フィルヴィスが言葉を紡ごうとした───その時。
「さぁ、そろそろ時間ね。オラリオ最強美女コンテスト───」
「開催だあああああああああああああああ!!!」
『!』
よく通る女神の声と、たった一柱なのに騒がしい男神の声が、控え室にまで届いた。
殆どの者達が『ようやく終われる』、と思いながら入場していく。
「フィルヴィスさんは何番なんですか?」
「私は、確か・・・・・・最後の一歩手前だ」
「そうなんですね・・・・・・えっと、貴女は?」
「・・・・・・・・・・・・!」
『白』が何処からともなく取り出した紙には数字が書かれており、これが『彼女』の順番なのだろう、と理解したレフィーヤは数字を見て────否、数字を見ようとした。
「・・・・・・・・・一番最後?」
紙に書かれていたのは『一番最後』の四文字だけで、それ以外には記されていない。
『白』は彼女の呟きに同意するようにコクコクッ、と首を上下する。レフィーヤはそのボディランゲージ高めの動きに苦笑いを浮かべつつも、すぐに一番最後の意味を理解した。
「つまりは、この人が必ず一番最後になる、ってことですよね?」
「ああ、そうなる。この子がこの大会に出場することになったのは、神ヘルメス──彼の男神がこの子の出場を打診してきたからなんだ」
「神ヘルメスが・・・・・・?」
「ああ」、と頷きながら、フィルヴィスは『白』の頭を撫でる。
『彼女』はと言うと、やはりそれを拒むことなく、寧ろ嬉しそうにしている・・・・・・ような気がする、とレフィーヤは読み取った。
だんだん『白』の正体が気になってきていたレフィーヤが、さらなる質問をしようとした、その時───ロキの叫び声が、聞こえた。
「レフィーヤァ!早くしてぇやぁ!」
「・・・・・・・・・行かないと、ダメなんでしょうか」
『白』の正体。
羞恥と、それによる会場に出たくない気持ち。
二つの行きたくない理由によってこの場に留まりたい気持ちに苛まれているレフィーヤを、しかしフィルヴィスは甘やかさない。
「行かないと、他の者達にも迷惑がかかってしまうだろうな」
「うぅ・・・・・・・・・・・・」
これまでの交流によって、レフィーヤには自身よりも他者を優先するきらいがあることに気づいたフィルヴィスが、他者を引き合いに出した。
それによってようやく観念したのだろう。
レフィーヤはトボトボと会場へと向かい、けれど、途中で変に覚悟を決めたのか、はたまた別の理由か。
彼女は顔を真っ赤にしながら、会場へと向けて走り出した。
山吹色が遠のいていくのを見届けたフィルヴィスは、早くも自身の出番が来つつある事も分かっているため、『白』の手を引いていく。
「いくぞ、■■」
「・・・・・・・・・・・・はい」
フィルヴィスは、会場へと向かった。
謎の『白』さん・・・・・・一体何者なんだ・・・・・・フィルヴィスさんとも仲よさげだし・・・・・・(すっとぼけ)。
ちなみに現在のフィルヴィスさんは、ベルレフィ応援者状態です。良かった、まだ対処が簡単な方ですね!
●『白』
・だいたい151Cくらい
・目を閉じている
・肌が綺麗すぎるほどにきめ細かく、綺麗な白
・被っている布より覗く髪の色も白
・若干白飛びしている気さえしてくる