ダンジョン学園、ゲーム転生ソロ攻略中。   作:塔乃登

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前回のあらすじ
アクアさんたちと四人パーティーを組んでボス戦に突入。


014.ボス戦(パーティー)

「『挑発』」

 

 事前の打ち合わせどおりに散開して三者三様に敵を受け持つ。

 俺はボス担当。

 取り巻きを掃除するまではやっぱり回避優先だ。

 

 回避、回避、攻撃、ガード、回避、ガード。

 割合的にはこれくらい。

 一番気を付けることは、ゴールドライオンが突進した時に他の人を巻き込まないこと。

 

 左右で戦っているルビーさんとフィスさんはもちろん、後ろで支援をしているアクアさんとも軸が被らないように立ち位置を調整していく。

 

『ゴアアアァ!!!』

 

 そして実際に突進を避けたら、あっちまで走っていったボスを元の位置まで引っ張ってきてまた向きを直す。

 本当はエリアの奥側に向けたら楽なんだけど、そうするとタンクがボスの影になってヒーラーから見えづらいのでこういう形に収まった。

 階層が進むとそのうちボスが前方扇型のブレス吐いたりするようになるから、またその時は立ち位置変えないといけないんだけど。

 

 パリィしろって?

 初見の(ってことになってる)ボス相手に華麗にパリィ決めちゃいかんでしょ。

 

「『ヒール』」

「ありがと、アクアさん」

 

 小盾でガードしてるとどうしても削りダメージでHPが減っていくけど、もうその流れにも慣れたアクアさんが回復してくれるのでありがたい。

 立ち位置的にはエリア中央に立っている俺に対してアクアさんは入り口の近くだからちょっと距離があるけれど、この世界だと回復魔法は離れててもそんなに困らない。

 

「くっ!」

 

 なんて思ってたら、視界の端でルビーさんが被弾して一歩下がる。

 

「被弾したら回避優先。アクアさんが回復してくれるから焦らなくていいよ」

「わかってる!」

 

 拳武器って回転が速いかわりにリーチが短い分、殴って怯まない相手は苦手なんだよね。

 ライオン・ハンターは中型敵なので拳で殴っても被ダメージモーションが発生せず、小型モンスターと違ってラッシュでのゴリ押しが通用しない。

 リーチが短い分敵に接近しなきゃいけないから、当然攻撃の回避も難しくなるし。

 

 とはいえ雑魚相手に被弾するのも珍しくはないので、普段通り落ち着いて対処すれば問題はない。

 まあ逃げ場がないボス戦で全滅したらペナルティという状況だと落ち着くのも簡単じゃないんだけど、今のところは大丈夫そうかな。

 最悪俺が挑発でヘイト取ればいいんだけど、ボスと雑魚相手に綺麗に立ち回るとそれはそれで不要に目立つから最終手段だ。

 

 それから回復を受けたルビーさんが雑魚との戦闘に戻る。

 フィスさんは問題なく、ライオン・ハンターへの攻撃を続けている。

 そこにアクアさんの氷魔法の追撃も加わり、ボスほどHPの高くないライオン・ハンターは二体とも大きく時間がかからずにその身を地面に倒した。

 取り巻きが消滅するその姿を見ながら、俺と相対しているゴールドライオンは歯を剥き出しにする。

 

『ガオオオォ!!!』

 

 聞こえたのは最初に対面したときと同じ咆哮。

 ただし今のそれは、ゴールドライオンのスキルであり、実際に効果を伴う。

 

「アクアさん」

「うん! 『ディフェンスブースト』!」

 

 その効果とはエリア内のキャラクターの防御力減少。

 結構ガッツリ下がるので、後衛なんかはそのまま突進を受けると即死したりする危険行動だ。

 ただしその効果は『ディフェンスブースト』の防御力上昇で打ち消せるのでアクアさんが全員にかけていく。

 

 優先順位はまず俺、次にアクアさん、最後に残りのふたり。

 前者の二択はどちらを優先するか意見が分かれるかもしれないけど、今回はメインで攻撃を受けてる俺優先でというアクアさんの意見を採用。

 初見だけどどうせ被弾しないから後回しでいいよ、なんて口が裂けても言えないしね。

 

 ソロなら責任を取るのもペナルティを受けるのも俺一人だけど、パーティーだと四人の問題になるので安易な判断でピンチを招くのは流石に困る。

 俺以外のミスなら責任の所在は別の場所に生まれるからいいんだけどさ。

 他のメンバーのミスで俺以外が倒れて、それでも自分ならほぼ確実にクリアできると思うのはいい。

 逆に俺自身がどうせミスしないから、リスクを度外視した選択肢を取った結果、ミスして全滅するのは困る。

 

 気持ちの置きよう的にはこんな感じ。

 まあミスするつもりはないんだけどね。

 

「『ワンツー』!」

「『ハイキック』!」

 

 正面の俺に対して、ルビーさんとフィスさんは左右からボスを殴っていく。

 ヘイトの一位は未だに俺が維持。

 ゴールドライオンの視線は未だに俺に固定されたままだ。

 

 ただし、ゴールドライオンは自身の周囲にキャラクターが居る場合、ヘイト関係なくその方向に攻撃をすることがある。

 例えば『後ろ蹴り』。

 これはキャラクターがボスの後方、ちょうど後ろ蹴りが当たる位置にいるときにランダムで使用されるもの。

 

「きゃっ!」

 

 短く聞こえた悲鳴はフィスさん。

 立ち位置的に丁度ゴールドライオンを挟んで反対側になるのでここからは見えないが、後ろ蹴りに引っかかったんだろう。

 まあ初見ボス全回避とかエスパーじゃなければ不可能だろうしこれは織り込み済み。

 

 ついでに言えば彼女はHPに20%分のバリアを持っているから、30%分程度のダメージを食らっても残りHPは120%-30%で90%程度。

 戦闘不能になるまでの被弾回数が一回多いというのはその数字以上に大きなメリットだ。

 やっぱ強えぜ……、メインヒロイン……!

 

「『ヒール』」

 

 アクアさんの回復が届けばそれも全快になるし。

 

 それから攻撃を続けて、ボスの残りHPは75%程度。

 ゴールドライオンの爪を俺がガードするとわずかにHPが削れた。

 

「『ヒール』」

 

 もう何度目かの回復で、何度か削られた俺のHPがほぼ全快まで戻る。

 この『ほぼ』という部分は重要で、上限を超える分の回復ロスを発生させないのはSP節約という意味では大切だ。

 場合によってはオーバーヒールになってもHPを維持する方がいい場合もあるけど、そのあたりはボスの火力とこっちが何発耐えられるかによるかな。

 

 ワンパン8割持ってく敵なら自分のHPが9割でも10割でも耐えられる回数に差はないしね。

 まあこれは流石に極論ではあるけど。

 

 カンッと再びガードの音が響く。

 そろそろまた回復ラインだが、その前にゴールドライオンの咆哮がフィールド全体に響いた。

 

『ガオオオォ!!!』

「『ディフェンスブースト』」

 

 それに対するアクアさんの対応は早い。

 俺を最初にして、順番で防御力低下のデバフを解除していく。

 ただし魔法は即発動ではなく詠唱時間がかかるので、一瞬で全員を元に戻すことはできない。

 このランク帯だとそこまで気にならないけど、魔法の威力が上がると詠唱(と言っても実際に呪文を唱えるわけではなく発動待機待ち状態なんだけど)も長くなるので運用が難しくなるぞ。

 

「『ハイキック』!」

「ルビーさん、今被弾したら危ないから一旦離れて」

「大丈夫! 当たらないから!」

 

 フラグかな?

 なんて思いながらも彼女は確かに、ユニークスキルによるバフを継続しながら殴り続けている。

 その様子を見て、彼女のユニークスキルの名前を思い出していた。

 

 ルビーさんのユニークスキル、名前は『烈火』。

 火のように苛烈な攻めは彼女の積極的な性格に起因したものなんだろう。

 アタッカー適性としてはとても優秀、なんだろうけど。

 

「ぐっ!」

 

 連撃を繋げることに集中しすぎたルビーさんが、ゴールドライオンの振った尻尾に引っかかる。

 

「ルビーちゃん! 『ヒール』!」

 

 あ、マズ。

 四回のディフェンスブーストから連撃でヘイトを大きく稼いでいたルビーさんへのヒールで、アクアさんのヘイトが俺を超えて一位に繰り上がった。

 

「『挑発』!」

 

 俺の挑発でゴールドライオンの内部ヘイトが一位に戻るが、それでも既にモーションに入っている攻撃を止めることは出来ない。

 

「きゃあ!」

「アクア!」

「アクアちゃん!」

 

 飛び掛かりからの爪攻撃を食らったアクアさんのHPが大きく削れる。

 後衛魔法職は前衛より耐久が低いから、一撃で危険域だ。

 

「ふたりは攻撃中止、アクアさんと一緒にそのまま安全圏まで退避!」

 

 俺が最優先で指示を出す。

 攻撃は止まるがふたりが攻撃を続けてヘイト管理を失敗するよりはいい。

 それにふたりが被弾したら手間が増える。

 全滅のリスクを考えたら時間がかかっても安全策だ。

 

「ジャックくんは!?」

「俺は大丈夫。もしHPが50%切ったらヒール入れて。それまでは待機で30秒数えてからアクアさんに二回、全快までヒールでよろしく」

 

 俺の現在のHPはおよそ70%。

 直撃一発で50%を割るし、ガードしても三回でそのラインを割る。

 小盾の削り痛いからなー。

 

 これが大盾なら気力が0にならないようにだけ気を付けてガン盾してればいいんだけど、まあ無い物ねだりしてもしょうがない。

 アクアさんが二回ヒールをしたあとに俺にヒールができるようになるまであと90秒。

 ここまでの立ち回りだと、ちょっとペースがきついかな。

 

 なら、ガードの回数を減らすために回避の比率を増やす。

 そのために俺は、右手の片手剣を完全に下げた。

 攻撃すると気力を消費するし、攻撃のモーション分回避の余裕が減る。

 その分ヘイトが減るけれど、それは『挑発』で補えばいい。

 

 まず右手での引っかきを、右後ろに避ける。

 そのままだとゴールドライオンが攻撃するために一歩前に出てしまうので、先に自分から距離を詰めなおす。

 

 次は噛みつき、これは右横に避ける。

 そして向きがズレるとそのうち視線上にアクアさんたちが入ってしまうかもしれないので、元の位置まで戻って角度を戻す。

 言葉にすればそれだけ。

 

 とはいえ実際には見てから避けようとしても間に合わないので、モンスターが攻撃準備モーションを見せるさらに前、攻撃判定決定からモーションに移行する前の段階から向かって右側に回避を始める。

 これがソロなら延々右回りしてればいいんだけど、今は突進の後方ケアをしないといけないのでタイミングはうっすらシビアだ。

 

 よくわからない?

 簡単に言うとゴールドライオンが殴るぞって決めてから実際に殴り始める前に回避を始めるって感じ。

 

 まあこれだけだと、突進は避けられないんだけど。

 

「危ない!」

 

 響いたのはルビーさんの声。

 突進は攻撃判定デカめでそのまま突っ込んでくるので、後ろにも横にも歩いて避けられない。

 

「ていっ」

 

 なのでこうして、横に飛ぶ。

 突進の当たり判定に引っかかる前に、俺は横に飛び込み、そのままごろんと一回転。

 いわゆるローリング回避だ。

 ドヤ顔するほどのものでもないけどね。

 

 原作の決められたモーションだった通常攻撃がリアルになったこの世界ではかなり自由行動になっているのと同じように、原作では基本の回避モーションもこちらの世界ではあまり見かけない。

 とはいえそんな原作モーションだからかはわからないが、回避後はスタントアクションのように綺麗に地面を踏んで立ち上がれる。

 

「『挑発』」

 

 攻撃対象にされて実際に攻撃されると一回ごとに敵からのヘイトが減少していくので、合間合間に挑発を挟んで優先度一位を維持。

 突進で向こうまで走っていったゴールドライオンをフィールドの中央まで引っ張り直して向きも戻す。

 

「『ヒール』。ジャックくん、回復したよ」

 

 90秒を数え終えたアクアさんから声と共にヒールが届く。

 

「ありがと、アクアさん。それじゃあもう三十秒数えたらふたりは攻撃再開。アクアさんはしばらくはSP温存で回復に専念しておいて」

「わかった」

 

 ということで30秒後、俺が時間を告げるまでもなくルビーさんとフィスさんが攻撃を再開する。

 やる気があっていいですね。

 指示を聞いてもらうのは大切だけど、それと同じくらい自主的に行動するのも大切だ。

 

 フィスさんは元より被弾はあれど問題なくリカバリーできていたし、ルビーさんも今の表情を見れば問題はなさそう。

 勢いに身を任せるでもなく、後悔を残すわけでもなく、反省はした上で集中している顔が見える。

 

 

 それからもアタッカー組は何回か攻撃を食らってHPを減らしたけれど、ヘイト管理を乱すことはなく攻撃を続け、しばらくの後にボスが倒れた。

 パリィを何回か使ってもいいかなと思ってたけど、結局必要なかったな。

 

 時計を見ると、討伐タイムは30分。

 ソロ攻略より所要時間1.5倍で獲得経験値と獲得アイテム1/4と考えると激マズだ。

 だけどまあ、今はそこまでスケジュールに余裕がないわけでもないし、それにこうやってパーティー組んでいることも後々役に立つ予定なので問題ないかな。

 あと楽しいしね、パーティープレイ。

 

「ごめんね、アクア」

 

 戦闘後、自分の突っ込みすぎてミスをしたルビーさんがアクアさんに謝る。

 

「ううん、こっちこそミスしちゃってごめんね、ルビーちゃん」

 

 ミスを謝り合うふたり。

 美しい友情だなあ。いや、揶揄とかではなく。

 アクアさんの被弾は責められるほどのことでもないけれど、それでもヒールの手順を変えれば防げた事態ではあったので彼女自身の中では反省要素なんだろう。

 

 そのままルビーさんはこちらに向いて謝罪をする。

 

「ふたりもごめん」

「あたしは全然平気だよ!」

「まあ誰にでもミスはあるよ。ボスは倒せたんだし問題ないと思うよ」

 

 あんまり同じミスを繰り返されると流石にどうかと思うけど、最初から完璧にできる人間なんて居ないしね。

 俺だって原作での初見ボス戦は普通にミスしまくって全滅したし。

 なんならこの世界の人たちみんな優秀で普通にビビるよ。

 

「でも、ジャックくんの動きは凄かったね!」

 

 純粋な視線で褒めてくれるフィスさんがちょっと困る。

 いや、別に普通なんで、全然凄くないってことにしておいてください。

 

「ありがと、フィスさん。それじゃあボスドロップ拾おうか」

 

 話を逸らすようにボスが倒れた方へ視線を促すと、ボス素材のドロップの他に宝箱があるのが見えた。

 先程までは確かにそこになかった宝箱が、草原にぽつんとひとつ置かれている。

 あからさまに不自然だけど、まあそれ言ったらモンスターが素材を残して消えるのも不自然だから今更だろう。

 

「あれって、レアドロップじゃない!?」

 

 言って駆け出したのはフィスさん。

 

「えっ、ほんと!?」

 

 追いかけるのはルビーさん。

 たしかに、ボスの素材はそのままフィールドに落ちるので、宝箱が発生するのはレアドロップの時のみ。

 

「開けていい!?」

「いいと思うよ」

「うん」

 

 俺の答えにアクアさんも頷いて、ふたりが宝箱を開く。

 そしてその中身を見て……、俺は内心で頭を抱えた。

 

 ライオンフィスト。

 宝箱の中身は金属製の手甲で、ゴールドライオンの顔を象った拳武器だ。

 原作でのドロップ確率は2%。

 低確率ボスドロップということで、当然性能は優秀。

 

 特にボスから直ドロップしたこの装備にのみ付く専用特殊効果、『獅子の一咬み』は同ランクで付与合成した攻撃力強化【Ⅲ】の倍率も大きく上回る。

 拳武器使用者なら誰もが欲しい一品だ。

 問題は、ここにはその拳武器使用者が二人いるんですけどね……。

 

「これ欲しい人ー」

「はい!」

「あたしも!」

 

 挙がった手はふたつ。

 ですよね~。

 

 ボスドロップがひとつ。

 欲しい人はふたり。

 何も起きないはずもなく……。

 




・ライオンフィスト
専用特殊効果:『獅子の一咬み』(装備者の攻撃に刺突属性追加ダメージ+15%。攻撃部位が刺突弱点の場合更に+5%)
ゴールドライオンの顔を模した拳武器。
その牙によって追加ダメージを与える。
専用特殊効果は獅子の一咬み。
拳武器の攻撃は打撃属性がほとんどなので食い合わせが悪い部分もあるが、それでも15%は優秀。
攻撃部位が刺突弱点であれば更に+5%。
専用特殊効果の特徴として、付与できる特殊効果の枠を一枠占有するというデメリットはあるが、同ランクでこれ以上の補正値を出すのは困難なので問題にはならないだろう。

・アタックブースト/ディフェンスブースト
文字通り攻撃力/防御力を上昇させる魔法。
効果対象は単体。
上昇値は控え目、効果時間は長め。
雑魚戦では使用してから戦闘終了するよりは効果時間が長く、そのまま移動して次の戦闘に活かすには効果時間が短いので相対的にコスパは微妙。
ずっと戦闘が継続するボス戦ではその効果を活かせるが、戦闘中にかけ直すにはSP消費とヘイト上昇に注意する必要がある。

・基本モーション
原作に存在するスキルでないモーションのこと。
武器毎に通常攻撃が複数とガード、ローリング、ステップ回避などが存在する。
ジャックの攻略する世界でもこれらのモーションは存在し、自然と行えるようになる。
ただし原作で存在した物理法則的な嘘(例えば槍を背負ったままローリングすると明らかに地面に引っかかっている)などはこの世界では再現されないためか、使用されている率は低い。
通常攻撃も原作のモーションには縛られない自由な動きが可能。
スキルは発生フレーム、モーションともに基本的に原作通りなので原作をやり込んでいる人間ならこちらの方がパリィは取りやすいかもしれない。
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