ダンジョン学園、ゲーム転生ソロ攻略中。   作:塔乃登

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前回のあらすじ
海辺階層の探索は順調。
同級生に知り合いが増えました。(友達とは言っていない)


017.シズカとデート?

「あら、こんにちは」

「シズカ……?」

 

 今日は五月の第二週。

 俺が一人で砂浜を歩いていると、現れた彼女に声をかけられた。

 

「なんでこんな所に?」

 

 俺が今いるのは13階層。

 最高到達階層が16階層の彼女がここにいるのは不自然だ。

 基本的にレベル上げするにもアイテム集めるにも上の階層でやったほうが効率がいいからね。

 目当ての雑魚を重点的に狩るとかなら話は変わってくるけど、そもそも彼女は一人きりなのでそんな様子には見えない。

 

「今日はギルドメンバーの予定が合わなくて、一人でダンジョンに来ていました」

「っていう言い訳?」

「さて、どうでしょう?」

 

 俺の問いかけに、彼女はおかしそうにクスクスと笑う。

 それでもう答えてるようなものだろうけど。

 

「っていうか俺の索敵抜けてきたってことは隠密上げてるのか」

「そこまでではないですけど、一応上げてはいますね」

「また厄介な……」

 

 いくつかあるサブスキルの中に『探知』と『隠密』というものがある。

 

『探知』は周囲の状況をより把握できるようになるというもの。

 原作ではミニマップにより遠くの敵の存在が表示されるようになったり、隠された採集スポットを発見できたりするスキルだ。

 この世界だとミニマップは存在しないけど、代わりにモンスターや採集アイテムに気付きやすくなっている。

 

 一方『隠密』は文字通り、モンスターに気付かれづらくなるというもの。

 これを上げると発見される前に近接攻撃で先制できる距離まで近づけるようになったりする。

 まあパーティー組んでるとそこまで役に立たないスキルではあるんだけど。

 

 んでまあその探知と隠密の効果はその時の本人の警戒度合いで範囲が変わるんだけど、今はソロで歩いていたのでかなり意識して索敵をしていた。

 それにもかかわらず普通なら気付く距離より内側に彼女が現れたってことは隠密スキルで気配を殺して近づいてきてたんだろう。

 ストーカーかな?

 

 13階層は11階層とは違って、スタート地点から砂浜の続く道が分岐しているからみんな同じ方向に進むわけではないし。

 もっというと俺が進んでるのは次の階層に続く転送陣がある方向とは逆なので人と会う確率はさらに少ないわけで、ダンジョンの外から尾行されていた可能性まである。

 やっぱりストーカーじゃん。(推定有罪)

 

 今はダンジョンに入ったばっかりで片手剣を握ったままだったからよかったけど、刀を使っているのはあまり見られたくないかな。

 奥の手は隠しておくものだって偉い人も言ってたしね。

 そもそも一人でダンジョン潜っている時点で不自然ってことは言ってはいけない。

 

「まあいいや。それじゃパーティー組むか?」

「いいんですか?」

「構わないぞ」

 

 そのつもりで話しかけてきたんだろうし。

 気配を殺して観察されるよりは、隣で堂々と立っていられたほうが気は楽だ。

 シズカみたいな有名人に外というか人前で絡まれると注目を集めて迷惑だけど、ダンジョン攻略中なら問題ない。

 もしすれ違った同級生に見られても、噂になったりはしないだろうしね。

 

「気も使ってもらったみたいだし」

 

 わざわざダンジョンで話しかけてきたのは、俺が迷惑するのを考慮してのことだろうし。

 それくらいの配慮をされたのなら、俺もそこまで邪険に扱うのは失礼だろう。

 

「なら、お願いします」

 

 嬉しそうに言う彼女は、心なしか普段より表情が豊かな気がする。

 ごめん、やっぱ気のせいかも。

 

「んじゃ、行こうか」

「はい」

 

 んまあ刀は出さないけどね。

 

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 

「『スラッシュ』」

「『横一文字』」

 

 俺とシズカがスキルを撃ち込むと、砂浜で遭遇した土人形の体が崩れ落ちて砂に戻る。

 やっぱシズカの火力高いなー。

 ふたりで探索を始めてから数度モンスターと戦闘したけれど、彼女の火力は抜群で道中もサクサクだ。

 

 多分片手剣を握る今の俺よりも何割か多くダメージが出てるのは、彼女のユニークスキルが一番の要因。

 ユニークスキル:心眼による『攻撃の確定クリティカル』はもはや反則を通り越して犯罪的。

 全キャラ見ても最上位の火力を出せる彼女のユニークは素直に羨ましい。

 

「メイン武器は刀なんだな」

「ええ、私の家系は皆刀を振っていますので。実家の故郷にルーツがあるらしいです、ご存知ですか?」

「一般常識レベルなら」

 

 なんていうのは嘘で、かなり詳しく知ってるけど。

 そもそも彼女の家系の出身が日本モチーフだし。

 

「ぜひ今度、遊びに来てくださいね」

「行く機会がないでしょ」

 

 実際彼女のキャラエンドを見ると彼女の実家を訪れる様子を見ることができるんだけど、俺はそこまで好感度を上げる予定はない。

 

「歓迎しますよ?」

 

 歓迎されたらなにか良いことあるのかな。

 

「美味しい料理もありますよ。魚料理が特に絶品です」

「うっ」

 

 学園でも魚料理はあるんだけど、扱いが洋風で和食とは明確に違うから美味しくてもちょっと物足りないんだよな。

 

「温泉もありますよ」

「ううっ」

 

 日本人の魂が頭とは関係なく日本要素に惹かれてしまう……。

 嘘、ただ美味しいもの食べてゆっくりしたいだけ。

 真面目な話魚の刺身とか学園じゃ食えないしね。

 

「お酒もありますし」

「酒はまだだめでしょ」

「あら、私の故郷では15歳から成人として扱われますから」

 

 酒かぁ。

 酒かぁぁぁ。

 

「機会があったらな」

 

 決して欲望に目が眩んだ訳ではないのだが、気付くとそう答えていた。

 

「お待ちしていますね」

 

 俺の返事を聞いてシズカは嬉しそうに笑う。

 よく考えたら別に彼女の実家に行かなくてもひとりで旅行すればいいだけじゃんと気付いたのはずっと後のことだった。

 

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 

「それにしても、塔の中に海があるというのは不思議なものですね」

「そうかもな」

 

 小島の外周を並んで歩きながら、そんなことを言うシズカに答える。

 塔の中と考えたら草原もおかしいんだけど、確かに海があるのは一段おかしさのレベルが上がってる感があるのは否定できない。

 

「ここの海水はやはり塩の味がするんでしょうか」

「するんじゃないか?」

「魚もいるようですし、生で食べられる種類がいるかも知れませんね」

「それはちょっと興味ある」

「捕まえて捌いてみましょうか」

「それでも安全かは分からないだろ?」

「私なら見ればわかりますよ?」

 

 マジかよ、やべえな心眼。

 まあ寄生虫なら肉眼で確認できてもおかしくはないだろうけど……。

 

「いや、やめとく。腹痛で探索休んだら周りに迷惑かかるしな」

 

 彼女が安全と言うなら安全なんだろうけど、それでも100%ではないし。

 

「そうですか」

「わるいな」

「いえ、お気になさらず」

 

 それから会話は途切れ、二人のあいだには沈黙が流れる。

 まあ俺は会話がなくても気にしないし、シズカも同じだろうけど。

 そういう点では確かに相性がいいのかもしれない。

 

 なんてことを考えていると、ふたり同時に武器を抜く。

 一拍遅れて海中から姿を現したのは海産物系のモンスターの集団。

 

「『挑発』」

 

 俺が遭遇したモンスターの一団のヘイトを集めると、シズカは無言でそこに向かっていく。

 上体がブレず滑るように進む足捌きは、スキルだけでなく正式に戦闘技術を修めた人間のそれでとても勉強になる。

 いいなー、俺も真面目に剣術習おうかなー。

 シンプルに動きが格好良いのもあるけれど、実際戦闘でも役に立ちそうなんだよね。

 

「『縦一文字』」

 

 シズカはスパイクフィッシュの噛みつきを触れるか触れないかギリギリの所で避けて、そのまま最速でスキルを打ち込む。

 避けて斬るという動作は基本ではあるけれど、彼女はそれを最小限の動きでこなすので自然と次の動作へ移行するのが早い。

 あれも今の俺には真似できない技術だ。

 

 スキルのタイミングを測る、間合いのギリギリで避ける、までは原作の技術だけど、モーション判定の内側で実際の当たり判定を身のこなしで避けるというのは原作には存在しない技術。

 俺はあくまでモーションが読めて事前に知っている当たり判定の外側に回避しているだけで、動体視力が特別良いわけじゃないからね。

 

「『ピアス』」

 

 シズカが一匹を斬っているあいだに、俺はヘイトを取っている三体の中から一番耐久が低いモンスターを殴る。

 意図を察したシズカは斬っているモンスターを手早く処理してから、俺の殴っていた一体へ攻撃を加えた。

 彼女の火力ならヘイトの順位が入れ替わるのにそう時間もかからず、俺は倒し切る前に次のモンスターへ攻撃先を変える。

 

 こういう敵ヘイトの一位を入れ替える戦法は失敗した時に攻撃を受けやすいというリスクがあるんだけど、シズカは被弾することもなくヘイトを管理して敵を倒していく。

 普段はやらないんだけど、このやり方ができると別々に殴るよりも早く敵の頭数が減るからサクサクだ。

 まあシズカの火力自体がだいぶおかしいんだけど。

 

 おかげでサクッと戦闘終了。

 ドロップアイテムを拾ってから、彼女に視線を向ける。

 

「居合は使わないのか?」

「ええ、居合で弾くよりも躱す方が楽ですから」

 

 そうかな……、そうかも……。

 いや実際パリィよりも回避の方が楽なのはそうなんだけど、彼女の紙一重の見切りのような回避を見ていると疑問を持たざるを得ない。

 ユニークスキルあればこそなんだろうけど。

 

「装備が服防具なのもそれが理由?」

 

 今のシズカは和風の服防具に身を包んでいて、動きやすいけれど物理防御は控えめの格好だ。

 当たらないという前提なら優秀な装備だけれど、当たったら鎧防具よりも当然痛い。

 

「ええ、似合ってますか?」

「似合ってるよ」

 

 これは世辞でもなく本心。

 彼女の翠の長髪に、白がメインの和服はよく似合っている。

 

「ふふっ、ありがとうございます」

「どういたしまして」

 

 本当にデザインは良いんだよなあ……、まあ原作の女性キャラは大体見た目は良いんだけど。

 

「ところでシズカは退屈じゃないか?」

「私は貴方と一緒にいるだけで楽しいですよ?」

「それならいいけど」

「はい。貴方は退屈じゃありませんか?」

「俺も楽しんでるよ」

 

「なら両想いですね」

「ちょっと違くないか?」

「なら相思相愛でしょうか」

「遠くなってるんだよなぁ……」

 

 実際には楽しいというか、学びがあるって感じなんだけど。

 彼女のユニークスキル前提の動きをそのまま模倣することはできないけれど、それでも参考にはなる。

 

 例えば『心眼』によるクリティカルと確率回避は完全にゲーム的に処理されているわけではなく、この世界では彼女の技術の部分に拠る所が多いというのが一番の収穫だろう。

 具体的に言うと、彼女は急所である眼球や筋肉や骨の隙間を狙うことで意図的にクリティカルを発生させている部分があるということ。

 

 これはもちろんゲーム時代にはなかった仕様だ。

 頭とか翼とかに属性倍率が設定されてはいたけれど、そこから更に急所を狙うというシステムは存在しなかった。

 

 確率回避の部分も、ゲーム時代ではヒット判定になっていた立ち位置での相手の攻撃を身のこなしで紙一重で躱しているという解釈がされているのが見ていてわかった。

 これらの事実の素晴らしい所は、ユニークスキルを持たない者でも同じ現象を再現できるかもしれない、ということ。

 

 まあ詳しく観察すると全てがそうなわけではなく、急所を突いているようには見えない攻撃までクリティカルとなっている部分もあるので、どこまでが彼女のユニークスキルに依存しているのかはわからないけれど。

 この辺はあとで要検証かな。

 

「ふふっ」

「どうした?」

「いえ、貴方の熱い視線が少し気になってしまいまして」

 

 そこまで露骨に凝視をしたつもりはないけれど、まあ彼女の特性を考えれば見ているのを誤魔化すのは不可能か。

 

「不快だったか?」

「いえ、どちらかと言えば逆です。もっと見てくださって構いませんよ」

 

 露出狂みたいなこと言い出した。

 

「まあ不快でないならいいんだけど」

「見ていたことは否定しないんですね」

「バレてる嘘をついてもしょうがないからな」

 

 実際にはバレバレな嘘をゴリ押すこともあるから時と場合と相手によるけど。

 

 

 それからしばらく探索は続き、再びの雑魚戦を終え互いに武器を鞘に納める。

 

「私たち息が合ってますね」

「そうか?」

「そうですよ。以心伝心と言っても過言ではありませんよ」

「それは過言だと思うなぁ……」

「では一心同体」

「別の意味じゃん」

 

 どことなく響きがいやらしいし。

 流石に気のせいかな?

 

「特に連携に関しては非の打ち所がないですね。言わずに伝わるというのがここまで快感だとは思いませんでした」

 

 ワードチョイスには疑問があるけれど、言葉のいらない連携の気持ち良さは否定できないから困る。

 

「ギルドのメンバーは?」

「そうですね、皆さん優秀ですし言葉にすれば伝わりますけれど、それでも80点といった所でしょうか。こちらの意図を汲んで行動の先の先まで読んで立ち回る120点の貴方を知ってしまうと、やはり物足りなく感じてしまいますね」

 

 まあ連携というか、原作知識から効率よくモンスターを殲滅する手順を選んでいるだけなんだけど。

 

「やっぱり貴方をギルドに勧誘したくなりました」

「悪いがその気はないぞ」

「責任は取ってくれないんですか?」

「人聞きが悪いっ」

「私たち、相性は抜群だと思いますよ?」

「…………」

 

 本当のことを言うと、実際にとても動きやすいので強く否定しづらい。

 正直言って、シズカと二人でパーティー組めば、ソロよりも短時間でダンジョンを攻略できるだろうという予測はできる。

 最初にソロで攻略をすることを決めた時の理由の一つ、『原作を数百時間遊んだ自分の動きについてこれる仲間を育てるよりはソロの方が楽』という条件を彼女なら何の問題もなくパスできるだろう。

 

 原作をやり込んだ上での同級生からは異常に見えるであろう動きも、彼女は気にしないだろうし他人に吹聴することもきっとしない。

 それどころかシズカ自身がユニークスキルで常人ではあり得ないような火力と見切りをしているから、隣で俺が全力で戦っていても異常性が薄まるかもしれない。

 最後にソロの方が予定を立てやすいという点も、彼女とならそんなことが問題にならないくらいの速度で攻略できるだろう。

 

 といってもじゃあこれからも一緒にパーティー組もうとはならないんだけど。

 目立ちたくないというのは自分のリスク管理のためが一番だけど、目立つとめんどくさいからというのも確かにあるから。

 

 あともう互いに自分のギルド持ってるし、今更投げ出すのも無責任だしね。

 人数的には合併しても一つのギルドに収まるだろうけど、絶対めんどくさいからやだ。

 

 それに別の理由もあるし……。

 

「どうかしましたか?」

「いや、なんでもない」

 

 あんまり考えているとその考え自体を見透かされそうなので、俺は話題を変える。

 

「そういえばこの前一緒にいた女子生徒なんだけど」

「誰のことでしょうか?」

「目つきがキツイ子」

「ああ、ツクヨのことですね」

 

 言っておいてなんだけど、これで伝わるのもどうかと思う。

 

「あの子がなにかありましたか?」

「いや、どういうスキルの子なんだろうと思って、優秀なんでしょ?」

「ええ。光属性がメインですが、有能ですよ」

 

 メインヒーラーかー。

 

「私よりも、彼女のことが気になりますか?」

 

 そう言ってこちらを覗き込むシズカの顔は笑っているはずなのにちょっとプレッシャーを感じる。

 

「同級生はライバルだからな。優秀な人間なら誰でも興味がある」

 

 これは嘘じゃない。

 最後に抜き去るつもりなら、相手のスペックを正しく把握しておくのは間違いなくアドバンテージになるし。

 

「なら私ももっと良い所を見せないといけませんね」

 

 なにやら気合が入ったシズカが言って先へ進む。

 タンクより前に立つのはどうよと思わなくもないけれど、彼女の働きを見れば文句を言う気も失せてくる。

 鎧袖一触とはこういうことかというように、接敵したモンスターをバッサバッサと斬り倒していく。

 

「『横一文字』」

 

 カニ型のモンスターにシズカがスキルを放つと、当然のようにクリティカル。

 カニは甲羅が頑丈で斬撃属性の通りは悪いんだけどクリティカル攻撃はそんなのお構いなしに敵を屠っていく。

 

 やっぱり急所を狙うわけでもなくクリティカルを出すし。

 ただ今のは縦一文字の方が火力が出る場面だったから、あえて横一文字を選んだのには理由がありそう。

 彼女が無駄なスキル選択をすることはないだろうしね。

 

 しかしまあ、硬い敵を相手にするとより狂った火力が際立つな。

 俺は楽でいいんだけど、あんまりその動きを見ていると妖刀、魔剣のように良くないものに魅入られそうな気分が少しだけしたので視線を外す。

 彼女が悪いわけでもないんだけどさ。

 

「『ピアス』」

 

 エイの姿をしたモンスターの目を狙ってスキルを放つが空中で身を捩られてわずかに狙いから外れる。

 これは非クリティカル。

 

 シズカは簡単そうにやっているけれど、実際に真似しようとすると結構難しいわこれ。

 空飛ぶエイ自体そんなに機敏な動きをするわけではないのにご覧の有様だし。

 

 例えるならFPSで等倍スコープ遠距離単発ヘッショを狙うくらい難しい。

 回数を重ねれば一回くらいは当たるだろうけど、正直確定で当てられるようになる気はしない。

 こちとら原作を身体が覚えるくらい遊んでただけで人間性能は並なんでね。

 

「『ピアス』」

 

 再チャレンジはまたハズレ。

 まーじむずいんですけどこれ。

 

「『縦一文字』」

 

 しかも後ろからスキルを当てたシズカは当然のようにクリティカル出してるし。

 互いのダメージ差が悲しいぜ。

 

「ふふっ」

「どうした?」

「いえ、苦労してるなと思いまして」

 

 そんなこともあるけど。

 

「貴方は見ていて飽きないです」

 

 そこまで愉快な動きをしているつもりはないけれど。

 

「いろいろ発見もありますし」

「例えばどんな所が?」

 

 俺が聞き返すと、シズカは少しだけ困ったような顔をする。

 

「言ってもいいですけど……」

「けど?」

「実際に言うと嫌な顔をされそうなので」

「ああうん……」

 

 要するに俺の行動から原作知識があるっていう部分が漏れているって指摘なんだろう。

 結果彼女の興味をもっと引いてしまっていると言われれば不本意な指摘ではある。

 

「私はそんな表情を見るのも嫌いではありませんけど」

「性格が悪い」

「貴方の表情でしたら、それがどんな色でも私は嬉しいですよ?」

 

 喜色でも憂色でも美味しく食べられるのは別の意味でタチが悪いな。

 

「悪いのは性格じゃなくて趣味の方だったか」

「そうでしょうか?」

「まあそのうえで配慮ができるのは評価するけど」

 

 相手に嫌がらせしても楽しめる性格なのに、相手の嫌がることをしないのは偉い。

 これで興味の対象が俺じゃなければな……、なんて言ってもしょうがないことだけど。

 

「という訳で折角だから俺が嫌な気分にならない程度に教えてくれ」

「そうですね。まずはモンスターの攻撃を見る前に反応していることがありますね」

 

 それは自分とモンスターの立ち位置、それに直前の行動から次の攻撃が予測できる場合があるからだな。

 

「あと攻撃をガードするとき、意図的に受けているような場面がいくつかありましたね」

 

 それはあんまり完璧な動きをすると不自然だから、あえて削られるのを込みでガードしているから。

 

「攻撃を見た際に、僅かに判断が止まっている場合もあるように見えます」

 

 それはモーションを読んでギリギリの回避をするか、それともパリィをするかでほんの一瞬だけど判断に時間を使っているから。

 

「合ってましたか?」

「全部シズカの気のせいだな」

「ふふっ、そうですか?」

 

 本音を言えばずっと隠しておきたいところではあったけど、この観察眼から隠すの無理でしょ。

 まあ彼女にバレるのはもう諦めるとして、それ以外の人にはバレないように指摘された点は気をつけることにしよう。

 

「貴方の全てをいつか見せてくださいね」

 

 ねだるように、もしくは誘うように、彼女はこちらの瞳を見つめる。

 これで彼女の頬が染まってでもいれば、勘違いしてしまいそうなシチュエーションだ。

 彼女にあるのは興味であって好意ではないと予め分かってるから安心して対応できるけど。

 

「見せるほどのものはないけどな」

「ふふっ、そうでしょうか?」

 

 まあ一緒にいて正体がバレるって危険性もあるけど、あんまり邪険に扱って逆に悪質ストーカーになられたら困るからほどほどに付き合ってあげるのが一番安牌なんじゃないかな。

 

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 

「それじゃあ今日はこの辺で」

 

 結局今日は一日シズカとは付き合って、俺の片手剣のレベルは11→12に上がっていた。

 時間に対する経験値効率でいったら俺がソロでレベリングするのと同じくらい。

 ふたりで火力が2倍になったと仮定しても移動時間がかかる分経験値2倍にはならないので、実際の火力上昇はそれ以上だ。

 

 やーっぱシズカのユニークスキルは公式チートだわ。

 結局クリティカル再現もほとんど出来なかったし。

 学年1位でダンジョンを踏破するつもりなら彼女のことも越えないといけないんだけど。

 

 そんな彼女は涼しい顔でこちらを見る。

 

「はい、今日はありがとうございました」

「お礼を言われるのも変な気がするけど」

 

 別に感謝されるようなことはしてはいない。

 

「そうかもしれませんね。それでも楽しかったです」

「ならよかった」

「貴方は、どうでしたか?」

「勉強にはなったかな」

 

 授業よりずっと学びの多い時間だったのは間違いない。

 別に授業が悪いわけじゃないけど。

 

「なら、またご一緒してもいいですか?」

「機会があればね」

 

 可能な限り消極的な肯定は、しかし彼女には満足のいく答えだったようだ。

 

「ではまた、必ず」

 

 あんまり頻繁にあっても嫌だなとちょっと思ったけれど、彼女はその辺のタイミングを読むのは間違えないだろうというちょっとした確信があった。

 




*ストックが尽きたので少し更新をお休みします。しばらくお待ちください。


・探知
モンスターや採集アイテムを発見しやすくなるサブスキル。
盾がガードをするとスキルが上がるように、探知は敵や物を発見するとレベルが上がる。
ダンジョン探索をしていればある程度は自然に上がるスキルではあるが、意図的に上げようとすると手間のかかるスキルでもある。

・隠密
敵から発見されづらくなるサブスキル。
主に敵に見つからずに近寄ることで経験値を得ることができる。
未発見状態から攻撃が容易な弓を使用しているとレベルが上がりやすく、弓自体もスキルに未発見時ダメージアップのパッシブスキルが存在する。

・クリティカル
攻撃した際に発生する強力な特殊ダメージ。
効果内容はダメージ1.5倍+防御無視。
通常では低確率で発生するのみだが、装備の特殊効果などで発生確率を上げることができる。
確率の他にダメージ倍率も特殊効果上げる事ができるので、クリティカル特化のキャラに持たせると非常に強力(控えめな表現)。
ジャンプ状態から使用できるスキルを用いた空中確定クリティカル構成はとても有名。

・確率回避
判定上当たっている攻撃を確率で回避したことにするステータス。
その数字は回避率で表されるが、基本は0%でレベル上昇などで上がることはない。
ユニークスキルなどで最初から回避率を持っている極一部のキャラ以外がこれを上げるには、装備の専用効果を用いる必要がある。
なおその装備も大半は上がって数%なので、期待するほどの効果が見込めるかは微妙な所。
大抵は他の有用装備を使用した方が有効な場合が多い。
シズカのユニークスキル『心眼』による回避率初期値は30%。
なおこのステータスはリアル化の際に仕様に大幅な変更が入っている模様。
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