ダンジョン学園、ゲーム転生ソロ攻略中。 作:塔乃登
よろしくお願いします。
前回までのあらすじ
20階層のボスを倒し浜辺階層の攻略を完了したジャック。
ダンジョン攻略とギルド運営はともに順調。
そこに現れたグレイは、手を隠したオリキャラだった。
025.オリキャラ
いやそんなことある?
目の前の彼女、グレイの姿を見て俺はそんな感想を抱く。
指紋を確認すればいいやと思っていたところに手袋をつけた彼女の登場は作為的なものか、もしくは驚きの偶然か。
どちらもありうる、そんだけだ。
「どうしたのかの?」
「いや、なんでもないよ」
シャオに聞かれて正気に戻る。
今日はギルドハウスで加入メンバーの面接をする予定だった(というか目の前にいる)ので呆けている場合ではない。
「じゃあそこに座って」
「うん!」
元気の良い返事と共にグレイが向かいに座り、その隣にシャオも腰掛ける。
「じゃあグレイ……、グレイって呼んで大丈夫?」
「もちろん! 好きに呼んでいいよ!」
「ならグレイ、俺のことはジャックでいいよ」
「わかった! よろしくね、ジャック!」
屈託のない笑顔で元気よく答える彼女には、その素直さがよく伝わってくる。
「よろしくグレイ。それじゃあ基本的な質問からしていくよ。まずグレイはうちのギルドに加入希望ってことでいい?」
「うん!」
「木工師のスキルレベルは?」
「14だよ!」
「一度シャオの誘いを断ったって聞いたけど、なぜ今回は受けてくれたの?」
「それはねー、最初は友達と一緒にギルドを作ろうって話になってたんだけど、その友達の一人が男子と付き合い始めて、結局ギルドを作る話自体なくなっちゃった」
痴情のもつれかな?
シンプルに恋人同士で同じギルドに入ったって可能性もあるけど。
入学から二ヶ月半、学校に慣れて交友関係も広がっていく頃合いで恋愛関係の話を耳にする機会も珍しくはない。
俺には縁のない話だけど。
まあどっちにしろグレイにとってはとばっちりだったんだろうね。
「それでシャオに聞いたらまだ木工師を募集するっていうから、ボクも入れてもらおうかなと思って頼んだんだ!」
「うちのギルドについては知ってる?」
「うん、すごい装備を作って人気のギルドでしょ? ギルマスが男の人とは知らなかったけど」
「その点は大丈夫?」
「ボクは平気だよ!」
「うちのギルドは高レベルを目指してるから、かなり大変だけど大丈夫?」
「がんばる!」
「あとダンジョンに行ってモンスターと戦ってもらうことになるけどそれもOK?」
「がんばる!」
……、ちょっと不安になってきたな。
「ジャック、どうかの?」
「とりあえず問題はないかな。でもスキル適性がどれくらいかと、モンスターと戦闘しても大丈夫か、あとユニークスキルがここに書いてある内容で間違ってないかも確認したいかな」
一応事前に名前、レベル、ユニークスキル、他必要な情報は書いてもらってあるんだけど、特にユニークスキルは正しく認識できているかという問題がある。
別に嘘をつく意図がなくても純粋に勘違いしていることもあるだろうからね。
原作キャラなら何のスキル持ってるか聞かなくてもわかるんだけど、グレイはそうじゃないので確認しておきたいところ。
問題なかったらそのままギルドに入ってもらうから、入団交渉前のメディカルチェックみたいなもんだね。
「今挙げた内容を確認したいんだけど、これからダンジョン行ける?」
「うん、大丈夫だよ!」
じゃあそういうことで。
………………
…………
……
ということでやってきたのは1階層。
なぜ今更?と思うかもしれないが、グレイがダンジョン未経験だから。
階層への転移は一度到達したところにしかできないから、そもそもダンジョンに入ったこともない生産科の生徒はここに来ることになる。
うちのギルドだけ見たら勘違いしそうだけど、生産科でダンジョン入る方が少数派なんだよね。
「へー、ダンジョンってこんな感じになってるんだー」
「グレイはダンジョン初めて?」
「うん!」
「じゃあ、戦闘は全部俺に任せていいからうしろについてきてね」
「戦わなくていいの? ボクも戦えるように準備してきたんだけど」
言いながらグレイは長い杖を構える。
杖といってもおじいちゃんが使うやつではなく、物干し竿のようなもの。
佐々木小次郎が握ってるやつでもなく、カンフーアクションで使いそうなやつね。
長さは2メートルくらいあって、グレイが持つとかなり長いなとなるけど、これが木工師の標準武器。
まあ今は使わないけど。
「それは仕舞ってて大丈夫。移動するのに邪魔になるだろうし」
「邪魔? ボクはこれ持ってても歩くくらい平気だよ?」
「うん。今から歩くんじゃなくて走るから」
「えっ?」
「それじゃあ行くよ!」
「ええーっ?」
俺が真っ直ぐ走り出すと、後ろから叫び声が聞こえた。
チラッと一応後ろを確認すると、ちゃんとついてきているので一安心。
目指すはもちろん次の階層へ続く転移陣の方角。
グレイも既にレベルは14ということで、一桁階層で戦闘しても時間の無駄だからね。
「ああそうだ、先に伝えておくけどレベルが上がったら教えてね」
「それは、いいけど、どうして?」
走りながら彼女の隣に並んで声をかけると、グレイもえっほえっほと走る呼吸に合わせながら答える。
「どれくらいでレベルが上がるか確認したいから。レベル上がった直後から次のレベルまでどれくらいの経験値が必要だったか見れば、グレイの木工スキルの上がりやすさが分かるからね」
「そんな、ことも、わかるんだ。わかった、それじゃあ、レベルが上がったら、教える、ねっ」
「うん、よろしく」
まあ走ってるだけじゃレベルは上がらないけど。
さっきから近くにモンスターを見かけたりもするけど、無視して駆け抜けている。
たまに索敵範囲内に入ってターゲットされることもあるけど、走って距離を開ければ素早いモンスター以外は諦めるから問題ない。
なお、高階層でこれをやると複数グループトレインしたうえで引っかかってそのまま死んだりするからやってはいけない。
あくまで低階層専用の手法だね。
「ジャック、あれって、だいじょうぶ?」
「うん、問題ないよ」
グレイが視線を向けたのはホーンラビット。
兎のモンスターだけあって健脚なホーンラビットは走る俺たちから離されることなく追ってくる。
「よいしょ、えい」
流石にこのままずっと追いかけられても手間なので、俺は地面に落ちていた石を拾ってそのままジャンプ。
空中でくるりと後ろを向いてその石を投擲した。
『キャンッ』
サブスキルである投擲の補正もあり、不安定な体勢ながら俺の投げた石はホーンラビットの顔面に直撃。
そのまま俺は空中でもう半回転して着地をして、そのまま走り続ける。
流石にこれ一発じゃ倒せないけど、攻撃でダウンした分距離を稼げてそのままターゲットを切れるから問題はない。
問題があるとしたらウサギに投石してる見た目が客観的に最悪なことくらいだろう。
動物虐待で訴えるのはやめてください、なんでもしますから。
なおちゃんと鍛えた武器を投擲スキルで投げればホーンラビットなら一撃で倒せるけど、投げた武器を拾いに行くのがめんどくさいので今回はスルー。
経験値も不味いしね。
ということで走ること20分ほど、2階層に続く転移陣が見えてきた。
「はっ、はっ。ジャック、あれは、どうするの?」
今度のグレイの視線の先にいるのはスライム。
走って追いつかれるほど機敏なモンスターではないけれど、ここから転移陣までが近くてターゲットを切れるほど互いの距離を稼げない。
なお転移陣はモンスターのヘイトを稼いだ状態だと起動してくれないから倒さないといけないんだけど。
とはいえわざわざ倒しに行くのはめんどくさい。
「でも、投石じゃ、倒せないよ? それに、三体も、いるし」
グレイの言う通り投石では即死させられないし、三体相手にそれぞれ複数回石を投げるのも時間の無駄。
ということで俺はインベントリを操作してアイテムを取り出した。
テレレレッテレー、地球破壊爆弾ー。(青いタヌキの声真似)
俺が取り出した爆弾を後方に投擲すると、追いかけてきていたスライムにまとめて命中する。
爆発音と共に空気を揺らすような衝撃。
そして煙が晴れるとスライムは無事全滅していた。
流石ケミーの作った爆弾【Ⅱ】(こっちが正しい名前)、一桁階層の雑魚なら一発だ。
まあ赤字だけど。
「ジャック、アイテムは、拾いに行かなくて、いいの?」
「うん、今更この階層の魔石もいらないしね」
21階層から落ちる魔石【Ⅲ】は魔石【Ⅰ】の六倍の金額で買取してもらえるので、拾いに戻る時間がもったいないレベル。
「そう、なんだっ」
会話のあいだにもマラソンは続けていて、無事に2階層へと続く転移陣へと到着。
「到着ー」
「わぁー、思ってたより早かったね!」
「最短距離で走ってきたからね」
アクアさんと一緒に歩いたときは三時間くらいかかったっけ。
それと比べたら圧倒的なサクサク具合である。
「じゃあ次の階層に行こうか」
「うん」
頷くグレイはまだ走れそうなので、そのまま先に進む。
「転移:2階層」
………………
…………
……
「つ……、疲れたぁ……」
到着した3階層で、グレイは草原に横になって大きく呼吸し、胸を上下に揺らしている。
俺にもあんな時代があったなあ。(だいたい二ヶ月前)
ここまで1階層でおよそ20分、2階層ではおよそ40分ほど、合計で一時間ほどのマラソンは彼女にはちょっとキツかったらしい。
ちょっと反省。
「水飲む?」
「ありがとー。って、そもそもボクが死にそうなのはジャックのせいだけどね!」
「ごめんて」
まだ謝ってないけど。
正直俺もそこそこに疲れたら休憩しようと思ってたんだけど、なんか思ってたより走れたから調子に乗りすぎた。
まあそもそも生産科のスタミナがわかんないから程よい進行速度もわかんないんだけど。
一応生産科もレベルアップでステータス上がるから一般人よりは走れるはずなんだけど加減がわからん。
今度検証してみようかな。
「ジャックは余裕そうだねー」
立ったままの俺に、地面から見上げるグレイがそんなことを言う。
「まあ戦闘職だしね」
ここに来る前なら同じペースで一時間走ったら死にそうになってただろうけど、今なら問題なく走れる範囲。
というかまだ余裕がある。
「そんなに余裕ならボクもおんぶしてよー」
「えっ、いいの?」
えっ、いいの?
正直それが一番早いけど言ったら確実にハラスメントに引っかかるから黙ってたのに、本人から提案されるとは思わなかった。
「? うん、ジャックが背負ってくれるならボクも楽だもん」
「そっかー」
ほなええか。
「じゃあこのあとはそうしようか。もうちょっと休憩する?」
「するー」
グレイはもう少し休憩希望なようなので、俺も隣に腰を下ろす。
「そういえば、グレイの手袋ってずっとしてるの?」
「うん、木工は指先の感覚が重要だからね! 傷つけないように手袋してるんだ! 外すのは作業の時とお風呂の時くらいだよ!」
えらいなー。
これがプロ意識ってやつだろうか。
傷とか火傷痕とかあんまり触れない方がいい話なのかなとちょっと思ったんだけど、そうじゃなかったようで一安心だ。
作業中なら手を見る機会があるかもしれない、と頭の中にメモをする。
お風呂の中なら見れるかもしれない、というのはメモしない。
いやでも、ワンチャンあるか……?
お風呂じゃなくて海水浴とかなら、ギルドメンバーで企画すればいけるかもしれない。
ちょうどこれからサマーシーズン到来だしね。
浜辺階層はいつでも夏だろって?
その辺は気分の問題よ。
まあ正月にハワイ旅行する芸能人みたいに冬にバカンスしてもいいかもしれないけど。
「ジャックはどうして生産ギルドのギルマスやってるの?」
逆にグレイに聞かれて少しだけ考える。
もし無関係の外部の人間に聞かれたら、金のためと答えるのが一番無難な回答。
だけどグレイはこれからギルドメンバーになる(かもしれない)相手だし正直に答えてもいいか。
「ダンジョン攻略するなら強い装備が必要だからね。みんなにはそのためにレベルを上げてもらってるよ」
本当は100階層を目指しているからギルドメンバーにもレベル100になってほしいんだけど、今のところそれを言っても大言壮語にしかならないので黙っている。
レベル100って本当に難しいし大変だからね。
それにこの先で原作知識が使えないように仕様変更されていたら、100までレベル上げるのも怪しくなるだろうし今のところそこまで伝える気にはならない。
80なら付与合成周りの仕様変更されてても俺が馬車馬の如く働けば達成できるだろう。
たぶんおそらくきっとメイビー。
まあ、ここまでリアル化に際して辻褄合わせされた部分以外はほぼ原作通りだから、そこまで心配する必要はないと思うけど念のため。
「じゃあボクも頑張るね!」
「うん、それには期待してる」
マジで。
「ちなみに、戦闘科のメンバーは増やさないの?」
「そうだね、その予定はないかな」
現状も到達階層の更新は刀を使ったソロプレイで攻略しているし、ボス階層もこの前はギルドメンバーにも手伝ってもらったけど、あれもそもそもソロで倒せるのをメンバーに火力出してもらっていただけ。
パーティー組んで上げてる片手剣のスキルとかも、小盾パリィ使えばソロの方が早く上げられるし。
ならどうしてクラスメイトとパーティー組んでるかって?
半分くらいは趣味かな……。
パーティーで攻略するの楽しいしね。
クラスメイトにさりげなく(?)アドバイスして攻略の手助けをしたり、原作主人公であるアレックスの恋愛を近くで観察したり、全体の攻略速度を上げるための工夫とかはやってるんだけど。
まあその辺は、現状まだスケジュールに余裕があるって前提の行為ではある。
少なくとも到達階層の更新に関してはソロで完結している。
なのでギルドメンバーに戦闘科が必要かと問われれば必要ない。
「そうなんだ。あれ、でもボスは倒すんだよね? 誰かに手伝ってもらうの?」
この反応も懐かしいなあ。
「それは実際見てのお楽しみということで。そろそろ行こうか」
「うん!」
元気な返事とともにグレイが両腕を伸ばしてくるので、彼女の前に背を向けて屈む。
「よいしょ、ボク重くない?」
「とりあえず平気そうかな」
異性に重いなんて言ってはいけないという常識は弁えているけれど、それを抜きにしてもグレイは重くはない。
一人称ボクのグレイだけれど、背負ってみるとやっぱりちゃんとした女の子みたいだ。
「それじゃあ出発!」
「おー」
グレイが転移陣に向けて指差して、俺もそれに向けて歩を進めた。
☆★☆★☆
グレイとダンジョンに潜って二日目、ひたすら走り続けて10階層に到着していた。
「『居合』」
ゴールドライオンを居合で弾く。
そのままスキルで攻撃すると、ゴールドライオンのHPが盛大な勢いで減っていく。
適正レベルで戦った時とは別物だけど、今のレベルと装備を考えればこんなものだろう。
今日もグレイと一緒にいるんだけど、今回は見学してもらっている。
ソロでもすぐ終わるし、グレイ一人の火力を出してもそんなに短縮されないしね。
シャークサイクロン相手にクローネたち三人で火力出してもらった時みたいな編成なら、流石に目に見えて差が出るけどね。
あと、前にゴールドライオンを倒した時みたいに自分の実力を見せておくという意味合いもある。
ある意味での示威行為、なんて言うと下品だけど。
ダンジョン攻略においては相応に信用できる、ということは示せるだろう。
そこを理解してもらわないと例えば将来的にダンジョン100階層踏破の計画を見せた時に疑いの目を向けられそうだし。
徐々に信頼を積み重ねていくのも大切だけど、それはそれとして階層ボスを一方的に封殺する初見のインパクトは効果的なんじゃないかな。
「『居合』」
もう何回目かの居合のあとに、スキルを連発で叩き込む。
「『蓮華』」
蓮華は刀レベル18で覚えるアクティブスキル。
その攻撃方法は蓮華の花びらのように放つ連続攻撃だ。
派手で見栄えはいいこのスキルだが、実際のところはモーションが長くて使いづらい。
あとSPも重いし。
ただしこれでトドメを刺して戦闘終了というタイミングでなら後隙を考える必要もなく、このあと休めばSP効率を度外視できるので悪くはない選択肢だ。
派手だしね。
戦闘方面に詳しくない相手にもなんか凄いことをしてるって感じさせるには適した技である。
討伐タイムはおよそ9分。
中々の数字かな。
「ジャックって凄いんだね! ボク驚いちゃった!」
素直に感心した様子のグレイに逆にちょっと驚かされる。
ここまで来るまでにも感じてたけど、グレイはかなり素直で純粋な感じ。
それならここまで考えて演出する必要もなかっただろうか。
うーん、やっぱり原作知識が通用しない相手はやり辛い。
逆にクローネなんかはこちらの意図を読んだうえで後々の手間を省くための演出だって理解してくれるだろうな、なんて推測できたりもするんだけど。
でもクローネは俺と思考の波長が近い部分があるっていうのもあるから例外かな。
まあいいか、今回は別に何か損したわけでもないし。
「それじゃあ先に行こうか。大丈夫?」
普通は階層ボスを倒したら一段落だけど、今回はただの通過点なのでこのままダンジョンを登るのを続けたい。
「うん、またおんぶしてくれる?」
「自分で走って疲れたらね」
「わかった! それじゃ行こー!」
「おー」
今回は二人並んで転移陣を使って次の階層に進む。
よく考えたらそろそろ人が増え始める階層だなあ、なんて俺が気付くのはもう少し先の話だった。
☆★☆★☆
それからさらに翌日、俺とグレイは浜辺階層を走っていた。
まあ走ってるのは俺だけなんだけど。
グレイは慣れた様子で俺の背中に収まっている。
最初は自分の足で走ってて今は体力回復に休憩中なだけだから文句を言うつもりはないけれど。
ちなみにそろそろ人も増えてきたので二人とも変装をしている。
俺一人なら探知と隠密のスキルでそこそこ隠れられるんだけど、二人だと流石に限度があるからね。
俺がつけているのはお馴染みの般若面。
グレイがつけているのは狐面。
なにそれかっこいい。
ちなみに木工師である彼女の自作品である。
俺の般若面も特殊効果がついていない間に合せのものなので、今度ちゃんとしたやつを作ってくれるとのこと。
これで外から見ても俺たちは野生の不審者としか見えないだろう。
身バレよりもモンスターと勘違いされて襲われるのを注意しないといけないレベルだ。
まあこのまま人の多いところに出たら流石に目立ちすぎるからその前に着替えないといけないけど。
なんてことを考えていると、正面から現れたのはスパイクフィッシュが三匹。
結構動きが早いので、今の状態だとスルーするには面倒な相手だ。
爆弾で即死させられるわけでもないから、複数グループをトレインしてしまうとちょっと危ない相手でもある。
「グレイ、やるよ」
「うんっ、わかった!」
背中のグレイが元気よく応えて、そのまま俺の肩を押してぴょいっと飛び降りる。
「『挑発』」
身体が軽くなった俺は速度を落とさずにスパイクフィッシュを三匹とも挑発。
敵群とグレイを挟んで反対方向まで走り込んでから静止する。
「『居合』」
「やあっ!」
俺が居合で叩き落としたスパイクフィッシュに向けてグレイは取り出した長杖を振り下ろした。
これが戦闘職とのパーティーならヘイトは分担したほうが楽なんだけど、彼女は生産科なので俺がターゲットを全部持って無防備で殴りやすいところを殴ってもらっている。
ここに来るまでにも何度も戦闘を繰り返しているので、連携も問題なく、程なくモンスターは全滅した。
「いえーい!」
グレイが両手を挙げるので、俺もそれにならってハイタッチ。
残念ながら両手ともに薄手の白い手袋をしているから、指紋は確認できないけど。
「じゃあまたよろしくね、ジャック!」
「うおっ」
俺の準備を待つことなく、グレイが背中に飛びついてきた。
「自分の足で走ってもいいんだぞ?」
「えー、やだー」
彼女は背中から降りる気はなさそうなのでそのまま走り出す。
戦闘にも体力使うから、その分長く背負うことに異論はないんだけどね。
それはそれとして急に飛び乗ってくるのはやめてほしい、心臓に悪いので。
「ジャックってさー」
「んー?」
俺が走り続けていると、耳元からグレイに話しかけられた。
風を切って走りながらお面をつけて話しかけられるとちょっと聞き取りづらいんだけど、今はグレイがお面を少しずらしているのでちゃんと聞こえる。
「どうしてそんなに強いのー?」
「えっ、それ聞いちゃう?」
「? ダメだった?」
「いやー、ダメではないけど」
今までみんなにスルーされてたからちょっとびっくりした。
スルーされてたというか何か秘密があるのを察したうえでスルーしてくれていると言った方が適切だろうけど。
ここまでノーダメージで居合を使ってモンスターを完封してきたら、生産科のグレイにも流石に不自然な光景であることは分かったようだ。
「すごい頑張ったからかな」
原作遊ぶのを。
「そうなんだ! ジャックって凄いんだね!」
グレイからの素直な賞賛がちょっとくすぐったい。
あと話すと耳に吐息がかかるからそれもくすぐったい。
今更だけどグレイって男の集団に突っ込んだら無自覚サークラになる才能とかありそう。
よかったー、俺以外全員女子のギルドで。
☆★☆★☆
「あっ、レベル上がった」
「おっ、本当?」
11階層から適度に雑魚も倒しつつ、20階層に到着したのが昨日のこと。
その時点で彼女のレベルは15に上がっていた。
そのまま昨日と今日でグレイのレベルが16、17と上がるまでシャークサイクロンを狩り続けること十数匹。
レベルアップに必要としたシャークサイクロンの数で彼女のスキル適性が判明した。
その数字は140%。
うちのギルドだとマリーロールに次ぐ数字。
原作換算だとおおよそTierBくらいのキャラ性能だ。
まあシャオはユニークスキルが優秀だしカッツェはこの世界だと壊れキャラの片鱗を見せているけど。
まだグレイのユニークスキルの検証は終わっていないが、もしユニークスキルがあまり役に立たなくてもギルド加入をお断りする理由はない数字。
「それで、ギルド入れてくれる?」
性能的には問題なく。
加えて言うと数日一緒にいて既にかなり打ち解けてる。
原作知識が通用しないのは不安要素ではあるけれど……。
それでも断る理由はなかった。
「これからよろしくね」
「うんっ」
互いに握手をする。
こうして、ギルドに新しいメンバーが増えたのだった。
【キャラクター図鑑/No.---】
キャラネーム:グレイ
性別:女
身長:普通
胸:普
髪色:緑
髪型:ツインテール
瞳色:青
年齢:15歳(ゲーム開始時)
誕生日:4月2日
呼称:ボク/ジャック
カテゴリー:非原作キャラ/パーティーメンバー/同級生
武器適性:木工(140%)/他不明
ユニークスキル:『---』(手袋を外したときの製作速度+10%)
キャラtier:【B】(原作キャラと比較しての査定)
公式人気投票:【無】
備考:非原作キャラ。褐色ボクっ娘。八重歯有り。
髪型は短めのツインテ。
スキル適性140%はTierB相当。
TierBは学年全体で平均より上なので、スペック的には優秀側。
非原作キャラなのでユニークスキルの名称は不明。
効果内容は(ほぼ)無条件で10%上昇なのでTierB相応に優秀だろう。
戦闘スタイルは生産科近接攻撃組のニューウェーブ。
そのうちシャオとマリーロールと三人並んでモンスターをボコってる姿が見れるかも。
性格は素直で元気、難しいことや細かいことは気にしないのが特徴。
異性に対する距離感が近い。
シャオは男女差を理解したうえで気にせず異性に接するが、グレイはそもそも男女を区別せずに接するタイプ。
(こいつを好きなのは俺くらいだな……)って男子を量産してそう。
恋愛経験は無し。
なお女子とも普通に仲がいい様子。
たぶんクラスじゃ男に騙されないように友達に守護られてる。
好きなことは体を動かすこと。
好きな食べ物はヤキソバ。