ダンジョン学園、ゲーム転生ソロ攻略中。 作:塔乃登
装備の特殊効果が三枠になって結構強くなりました。
朝、鳥の鳴き声を聞きながら目を覚ます。
時刻は朝7時頃。
六月後半の空気はこの時間から既に暖かく、カーテンを開けると空には晴天が広がっていた。
「今日の予定は……」
午前は授業、午後に一回ギルドに顔を出して、その後ダンジョン探索かな。
でもその前に朝食だ。
授業で使うノート等を用意してから、制服に着替える。
そのまま部屋を出て食堂に向かうと、ちょうど隣の部屋から出てくる顔が見えた。
「おっす、ジャック」
「おはよう、バルガス」
挨拶をした彼の名前はバルガス。
寮の隣室の住人で俺と同じ戦闘科の一年だ。
タイミングが被ったのは偶然、というわけではなく登校時間から逆算すると自然と顔を合わせることが多いというだけ。
まあ逆隣の部屋の住人はいつものようにまだ寝てるだろうけど。
そんな親愛なる隣人のバルガスとは自然に並んで食堂へと向かう。
特別仲がいいというわけでもないけど、お隣さんならこんなものだろう。
「そいやジャック知ってるか?」
「なにが?」
「新聞部の記事のこと」
どの記事だろうか?
「ダンジョンの攻略記事のことだよ」
「ああ。読んでるけど特に気になる部分はなくない?」
俺の渡した資料をもとに書かれている新聞部の攻略記事は、1階層から始まって今は10階層を越えて浜辺階層の基礎を解説しているところ。
スタートから順番にやってるからしょうがないんだけど、同級生の過半数以上にとってはさほど参考になるような内容ではない。
まあ基礎ができてない一番下から持ち上げていくのも大切だし、フィールドの素材採集ポイントなんかは採集科の役に立ってるはずではある。
「いやそれがよ、最近攻略記事を見て10階層のゴールドライオンを周回するのが流行ってるんだと」
「へー。まあボスエリアは隔離エリアでエンカウントするまで歩き回る必要ないから悪くないかもね」
「そうそうレベル10台中盤ならステータス上がって全滅のリスクも減るし、経験値もそこそこ。レアドロ出たら売っても使っても美味いって人気らしいぞ。パターン自体も分かりやすいし、攻略記事で予習復習できるしな」
攻略記事にはボスのステータスから耐性、攻撃パターンとその避け方、タンクヒーラー近遠距離アタッカーの立ち回りまで書いてある。
そもそも既に浜辺階層にいるパーティーならゴールドライオンは討伐済みのはずだし、記事で予習すれば安定性は増すか。
普通に適正レベルの階層を探索した方が流石に経験値効率は良さそうだけど、同じことを繰り返す方がやりやすい人もいるんだろう。
自分もレアドロマラソンなら昔よくやった。
まあ何事にも限度があるけど。
黒骸骨……純刃……うっ頭が……。
あとボス素材は売っても結構うま味だし、装備が直ドロしたら20階層まで使えるしという部分もあるだろうか。
「ちなみにバルガスは?」
「俺はもう20階層手前だから経験値的にあんまりだな」
俺も20階層越えてるし、というかレベリングマラソンするなら20階層でいいかな。
ともあれ、攻略記事が同級生の底上げに役立ってるなら良いことである。
そんな話をしながら食堂に到着し、注文の列に並んでから席を見つけて座る。
時計を見ると時刻は7時半頃。
この時間の食堂はいつも盛況だ。
まあそれが嫌でもっと早く食べに来る生徒とか、逆にまだ寝てる生徒とかがいるおかげで満席にはならないけど。
「それじゃあいただきます」
手を合わせてから箸を握る。
俺の朝食は白米と焼き魚、サラダと海苔と味噌汁というオーソドックスな定食。
向かいのバルガスはピザを素手で掴んでいる。
相変わらずなんでもあってありがたいけど、対面のメニューとの落差で風邪引きそう。
ちなみに焼き魚定食の効果は魔法防御力+2%。
まあ誤差だね。
「おはようバルガス、ジャックも」
「おっす」
「おはよ」
ハンバーガーの皿を持って現れたのはバルガスの友人のトミー。
同じ寮に住むバルガスのクラスメイトで、こうしてたまに食堂で顔を合わせるので俺も顔見知りだ。
ついでに言うと、うちのギルドの武器を買って使っている客の一人。
うちのギルドでは武器を販売する際に名前やクラス、購入した武器などの情報を取っているので、こうして誰にどの武器が渡っているかはある程度把握している。
個人情報保護法? コンプライアンス? 無いよそんなもの。
まあ今のところはまだそのデータを活用したことはないけど。
「ごちそうさまでした」
二人とも雑談をしながらも食事を終えて、そのまま並んで自室に戻る。
「じゃあなー」
「うん、また」
「またー」
登校の準備は済んでいるので、部屋に入ったらそのまま荷物を持って学園へ。
寮から校舎まではすぐ近く。
というのも戦闘科の校舎と戦闘科の寮が近くに揃って建てられているというだけの話である。
生徒数多いし敷地も広いからね、校舎も寮も分けたほうが合理的なんだろう。
校舎に入り廊下を歩き、教室のドアをくぐると既にクラスメイトたちが談笑している。
まあ自分の席で静かにしてる生徒もいるけど。
先に登校しているのは半数ほどだろうか、その中にはアクアさんの姿もあった。
「おはよう、ジャックくん」
「おはよう、アクアさん。ルビーさんはまだ?」
「うん、まだ来てないみたい」
俺やアクアさんの登校時間は毎日ほぼ一定だが、ルビーさんはそうでもない。
遅刻ギリギリに来ることもあれば、アクアさんより早く来ていることもある。
流石にホームルームに遅れてスカーレット先生に怒られるようなことは、そんなにないけど。
ちなみにアクアさんは朝から顔も格好もシャンとしている。
俺? 俺は眠気が顔に出てるかも。
もともと夜型人間なんでね。
そんな彼女なんだけど、今日はいつもとちょっとだけ違うところがあった。
「ところでなんだか甘い匂いがしない?」
「えっ、ほんとっ?」
アクアさんの近くで香るのは、甘くて紅茶が合いそうな、おやつの時間が待ち遠しくなる匂い。
嫌いじゃない、いやむしろ好きだな。
「実は今日、イチゴのタルトを食べてきたの……」
それは朝から食欲旺盛だ。
女子だし甘いものは別腹、というやつかもしれないけど。
体型管理に心配はないんだろうかと勝手に思ったりもしたけれど、今のアクアさんにはその傾向は見られない。
普段から運動しているからか、戦闘科って肥満体型は少ないしね。(いないわけではない)
まあ原作がゲームなことも案外ありそうだけど。
むしろ原作のスリムキャラがポッチャリ体型になったり、身長が伸びたりすることもあるんだろうか。
シャオとかは絶対成長しないだろうけど。(失礼)
「でもホールじゃないよっ、一切れだけだからっ」
「六分の一?」
「うぅ……、四分の一……」
四分割かぁ……。
六分割とか八分割に比べて、四分割はなんだかよくばりに感じるんだけどなんでだろうね。
先端が直角で尖ってないからだろうか。
直角だと六か八かと違って四って一目でわかるし。
まあカロリーがどれくらいかはホールのサイズにもよるけど。
「それにしても美味しそう」
メインのイチゴの匂いと、バターと小麦の匂いが合わさって朝食後なのにすごく食べたくなる香りだ。
授業前にこんな美味しそうな匂いさせてるのはなんらかの法律に違反してるんじゃないだろうか。
ジュネーブ条約とか。
「恥ずかしいよ〜……」
「あはは、ごめんね」
これ以上はセクハラになりそうなので(もうなってるとか言ってはいけない)、イチゴのように頬を赤くするアクアさんから離れた。
「あんたたち、なにやってるの?」
呆れた声に振り向くと、そこにはルビーさんの姿。
「アクアさんから良い匂いがするからちょっと気になって」
「ジャックくんっ」
この話題はアクアさんの気には召さなかった様子。
近くにいたら自然と気付きそうなものだけど。
「私、自分の席に戻るねっ」
脱兎の如く去っていく彼女を見送ると、俺とルビーさんの二人が残された。
「なんだかわかんないけど、ジャックが悪いことはわかった」
鋭い。
「そんなことないよ」
そんなことあるけど。
「まあいいけどー、あんまりやりすぎないようにねー」
ルビーさんもアクアさんの後を追って席に向かう。
様子を見ると何やらルビーさんにアクアさんがからかわれているようだけど、特に問題はなさそうかな。
それから少しして、時計の針は8時半。
今日もパリッとした服に身を包んだスカーレット先生が姿を見せた。
「それじゃあホームルームを始めるぞ、全員席につけ」
言われた通りに全員が席に着き、ピタリと静まったのを確認して先生が話を始める。
「よし、今日も全員いるな。ではまず連絡事項から。来月、七月には戦技祭がある。来週になったら希望を取るのでどれに出場したいか考えておけ」
「せんせー、戦技祭ってなんですかー?」
「戦技祭とは戦技、つまりスキルを競う催しだな。秋に行われる武闘祭がトーナメント形式の決闘なのに対して、こちらはダメージを競ったりといったシンプルなものが多い。これはメインスキルだけでなくサブスキルの部門もある。詳細はこれから配る用紙に書いてあるので確認しておけ」
競技内容は近接武器で三分間カカシをぶっ叩いたり、盾でひたすら飛んでくる攻撃をガードしたり、魔法で単発の火力を比べたり、まあそんな感じ。
競技会といえばイメージしやすいだろうか。
「なお成績はクラス単位、個人単位で出るのでしっかりとやるように。成績優秀者には報酬も出るぞ」
原作通りなら貰えるのは結構優秀なアイテム。
まあ一年じゃ狙えるのは学年順位くらいだろうし、それも一学年だけで20クラス1000人くらいいるから難しいけど。
全体順位は三年までで競争相手も三倍なのでさもありなん。
そもそもレベル差があるしね。
まあクラスメイトは当然のようにやる気に溢れてるけど。
「ではホームルームは以上。全員授業の準備をしておくように」
スカーレット先生の締めの言葉でホームルームが終わり、休み時間を挟んで一時限目。
授業担当はスカーレット先生で、授業時間は8時45分から一時間半。
そのあと十五分の休憩を挟んで二時限目が、10時半から更に一時間半だ。
「では授業を始める。今日はモンスターの状態異常について説明していくぞ。まずこの状態異常は専用の効果によって引き起こされるものと属性によって引き起こされるものの二種類があり……」
時間になり再び先生が話を始める。
スカーレット先生の担当はダンジョン探索全般。
自身もこの学園の卒業生で、ダンジョンに潜っていた経験があるので最適な人物だろう。
ちなみに先生の授業は原作知識が通用するのでわりと得意。
まあつまり、逆に苦手な授業もあるんだけど……。
「ではこれから、王国史の授業を始める」
一時限目が終わり始まったのは二時限目。
教壇にはリックマン先生という男の先生が立っている。
「では王国史の123年からだ。まずこの年の冬に起きた重大な出来事が……」
と授業が始まるんだけど、正直内容には全くピンと来ない。
いや、原作にもスカーレット先生以外の先生もいて授業もちゃんと存在したんだけど、だからといってこんなダンジョンに関係ないことをゲームで細かくやるわけもなく前提知識は無いに等しい。
むしろ原作にあったアイテムのフレイバーテキストの方が、ああこの授業の単語はアイテムの説明にあったななんてなるから参考になるくらいだ。
つってもそっちの知識も授業に活かせるような内容はほとんどないから結局無力なんだけど。
正直言ってつらいです……。
試験で赤点取ったら夏休みに追試だし。
いや……、もう夏休みがちょっと削れるくらい許容範囲内なんじゃないか……?
なんて狂ったことを考え出しそう。(ダメです)
クローネとかにふつーに怒られそうだから頑張るけどさ。
あとマリーロールには煽られそうだし。
ワンチャンケミーとかグレイとは仲間になれるかもしれないけど。
なおこの授業だが、普通にクラスメイトからも人気がない。
というかダンジョン攻略に関する授業以外が総じて不人気気味なんだけど。
ダンジョン学園だからね、仕方ないね。
まあ真面目に授業受けてる生徒もいるけど。
まずアクアさん、アレックス、ルーク、あと原作ヒロインのクリムさんやフレイヤ様は真面目組。
一方俺、ルビーさん、アイザック、あと原作ヒロインでもフィスさんなんかは非やる気勢。
フィスさんなんかは既に背中が丸まっている。
探索中は背筋を伸ばして良いパンチを放つんだけどね。
といっても全員黙々と授業を受けているから、そういう点では最低限のやる気はあるという釈明はしておきたい。(既に寝てるサイモンは除く)
………………
…………
……
「では授業は以上。英雄ジョシュアの部分は試験にも出るので必ず復習しておくように」
授業終了のチャイムが鳴るとリックマン先生が資料をまとめて教室を出ていく。
時刻は12時ちょうど。
いい感じに腹が減ってくるお昼時だ。
今日の授業はこれでおしまい。
日によってはこのあと13時から三時限目があって14時半まで授業があることもあるけど今日はなし。
小学校低学年くらいの終了時間だね。
とはいえ本業はこの後のダンジョン探索なので15歳ながら6歳児と同じ時間しか働いていないわけではない。
普通の高校生みたいに夕方まで授業してたら探索してる暇がないから妥当なところだろう。
さて。
クラスを眺めるとアクアさんはルビーさんと一緒に他の女子と談笑している。
そのまま別方向に顔を向けるとアレックスがなぜかクラスメイトに確保されて、そのまま連行されていく。
なにごと?
ちょっと気になるけどまあいいか、どうせアレックスが天然主人公イベントを引き起こしたとかそんなところだろうし。
恋愛絡みの話だったらあとで誰かに教えてもらおう。
ともあれ今日は誰かと約束をしているわけでもないので、そのまま一人で教室を出る。
ぼっちサイコー!
…………、別に泣いてないが?
なんて冗談は置いておいて。
このあとはギルドで用事を済ませたあとダンジョンに向かう予定だが、その前にランキングを確認しておくことにする。
うっかり階層更新してランキングに載っちゃったら面倒だしね。
基本的にある程度余裕を持って攻略してるんだけど念のため。
というかこれを確認して攻略スケジュールを立てているので、もはやここに見に来るのが日課のようなものである。
荷物をまとめ、教室を出て廊下を進み掲示板の前へ。
ちょうど授業が終わったタイミングなのでそこには人がぼちぼち。
とはいえ長時間眺めて何かあるようなものでもないので人溜まりができるほどじゃないけれど。
そんな風景の中に見知った背中と翠色の後ろ髪があった。
「あら、こんにちは」
「おはよう」
掲示板を見るために横に並ぶと、自然と話しかけられる。
まあ知り合いだし、スルーする方が不自然だけど。
隣の存在は気にせずに掲示板に視線を向けると、一位はシズカのパーティーで23階層。
その下には22階層組がズラッと並んでいる。
「相変わらず名前は一番上だな」
「そうですね」
シズカのあっさりとした返事に、どことはいわないけれど違和感を覚えた。
「なにか不満でもあるのか?」
「いえ、そういうわけではないんですが」
彼女は答えを探すように少しだけ言葉を切る。
「少し、物足りないのかもしれません」
要するに何が言いたいかと言うと、競争相手がいなくて張り合いがないんだろう。
あいにく俺は自分が強すぎてつまらないなんて経験をしたことがないので気持ちはわからないけど。
そもそも俺はハメ抜け知らない相手を延々ハメてボコれる人間なんでね。
俺は戦うのが好きなんじゃねえ、勝つのが好きなんだよォ!(フ◯イザード感)
とはいえ理屈としては理解できなくもない。
要するに黒◯のバスケのキセキの世代のような悩みだろう。
まああそこまでじゃないかもしれないけど。
「そのうち、シズカを追い抜く相手も出てくるんじゃないか」
そんな俺の言葉に、シズカがこちらを見る。
「本当ですか?」
「ああ」
「では、期待して待っていますね」
彼女は納得したように、そう答えて笑顔を作る。
まあその期待の半分は叶わないだろうけど。
………………
…………
……
シズカと別れた俺は、お昼は学食ではなく生産科の学生がやっている料理店へ。
「サンドイッチセットひとつ。持ち帰りで」
「はーい」
「ああそうだ、あとイチゴのタルトってあります?」
「ありますよー」
こういうお店は学食にないメニューがあったり、今回みたいに持ち帰りの注文を受けてくれたりもするのでたまに利用する。
あと学食みたいに混雑しないしね。
ちなみにこのお店は店内で食べていくこともできるしテイクアウトもできる両対応のお店だ。
店内にも人がそこそこ。
これから授業を終えた学生でさらに客が増えるだろう。
そんなことを考えていると、チリンチリンと店の入口が鳴りお客さんが入ってくる。
「あれ、ジャックくん?」
ちょうど入ってきたのは見知った顔。
「おはよう、シャリーさん」
「もうお昼だよ?」
俺の挨拶にシャリーさんがおかしそうにくすくすと笑う。
その様子には自然と互いの距離を縮めてくるような気安さがあった。
男子にモテそう。
彼女はシャリーさん。
生産科の同級生だ。
明るい茶髪と緩いウェーブのかかった髪の彼女は、オシャレに気を使っているのがよく分かる。
モテそう。(確信)
彼女とはギルドメンバーからの生産科繋がり、ではなくクラスメイトからの繋がり。
なおクラスメイトは男。
戦闘科男子と生産科女子でどんな繋がりかと聞かれれば、文字通り男女の関係だ。
モテてる。(確定)
「シャリーさんもお昼?」
「うん、バージくんと一緒に食べようと思って」
バージというのはシャリーさんの付き合っている相手。
つまり俺のクラスメイトだね。
「バージはあとから?」
「ううん、お持ち帰りしてこのあとバージくんの部屋で……、あっ」
声を漏らして、彼女はなにかに気付いたように言葉を止める。
まあ男子寮は女子の立ち入り禁止だからね。
「今の、秘密にしてくれる?」
彼女は言いながら上目遣いでこちらを見つめる。
「もちろん」
問題にならない範囲なら自由にやればいいと思う。
別に彼女の可愛さに負けた訳ではない。
そもそも寮則に違反しているだろって話は、まあ他人に迷惑かけないならいいでしょ。
退学になるくらいの違反なら流石に止めたかもしれないけど、そこまでじゃないだろうし。
少なくとも俺のなかでは、他人の青春を邪魔するほどのものではなかった。
あと畢竟、他人事だしね。
「ありがと、ジャックくんは優しいね」
嬉しそうに、あとちょっと恥ずかしそうに笑う彼女の笑顔は、どこかで男子を勘違いさせていそうだとそんな感想を抱かせた。
最近グレイにも同じような感想を持ったけど、二人を比べると方向性が違うかな。
………………
…………
……
注文を受け取ってシャリーさんと別れた俺は、その足でギルドに向かう。
時刻は12時15分。
学食に行ったならまだ昼食の最中だろうし、ギルドハウスには誰もいないかな?
なんて予想はすぐに裏切られることになった。
「こんにちは、ジャックさん」
「おはよう、クローネ。他のみんなは?」
「まだ来ていないようですね」
今日はクローネが一番乗りで、俺が二番目だったらしい。
ならギルドハウスいるのは俺とクローネの二人だけか。
「クローネ、ちょっと時間いい?」
「はい、問題ありませんよ」
「じゃあこっち来てくれる?」
俺は彼女を手招きして執務室へ向かう。
まだ日が高い昼下がり。
初夏の空気は少し暑く、窓の外の喧騒は遠い。
普段はメンバーで賑わっているギルドの中も、今だけは時間が切り取られたかのように空気が停止している。
隠し事にはちょうどいいかな。
なんて思いながら俺はクローネと執務室に入り、ドアを閉じた。
・ダンジョン学園年間イベント
・入学式(四月)
新入生入学式。
・戦技祭(七月)
スキルを用いて行われる戦闘科の競技会。
クラス内で競技を選び、同学年と学校全体のそれぞれで順位が出る。
花形競技は三人一組での目標に対するダメージ競争。
大型モンスターに模した木像を早く壊せれば優勝。
各競技とクラス単位で優秀者には景品あり。
結果は前期の成績に影響する。
・夏期休暇(七月〜九月)
夏の長期休暇。
一日中ダンジョンに潜れるボーナス期間。
一部生徒は実家に帰省する。
・武闘祭(九月)
決闘システムを用いて行われる対人トーナメント。
個人、パーティー、ギルドの三部門がある。
個人は戦闘科全員参加、パーティーとギルドは任意参加。
予選と本選があり、本選は特に注目のイベント。
各部門で優秀者には景品あり。
結果は後期の成績に影響する。
・舞踏会(十二月)
年末休みの前にあるダンスパーティー。
好感度次第で誘えるキャラが増える。
原作では好感度の高いキャラがいないと悲しいことになるが、好感度の高いキャラが複数いると大変なことになる。
・芸術祭(一月)
生産科、採集科メインのイベント。
製作物、採集物の品評会と有志参加の出展イベントがある。
評価優秀者には景品あり。
生産科、採集科の成績に影響するが、原作では主人公が戦闘科なので詳細は謎。
・春期休暇(二月〜三月)
春の長期休暇。
夏期休暇と同じく一日中ダンジョン探索できる。
・卒業式(三月)
三年生卒業式。