ダンジョン学園、ゲーム転生ソロ攻略中。   作:塔乃登

31 / 36
前回のあらすじ
熊は強い。
アクアは五色石の装飾品を製作依頼するために密林階層の次の階層を目指す。



031.戦技祭

「それではホームルームを始める。全員席につけ」

 

 昼食後の三限目の授業を終えた昼下がり、普段ならそのまま解散してダンジョンへとなるところなのだが今日は最後にホームルームがあった。

 担任のスカーレット先生が黒板に目的を書く。

 

「ここに書いた通り、今日決めるのは戦技祭の出場科目についてだ。これは全員参加で成績にも影響するのでちゃんとやるように」

 

 景品もあるしね。

 

「それでは参加競技を決める前に、今日の進行を行う者を決めるぞ」

「進行ですか?」

「そうだ、戦技祭は学生主体の催しだからな。そういった経験も後々役に立つだろう」

 

 要するにクラスの代表として皆をまとめる経験をしておけということだろうか。

 スカーレット先生が進行するのめんどくさいだけでは?と思わなくもないけど、まあ学祭の出店を委員長が司会進行するみたいな話だと思えばそうおかしくもないか。

 

「では立候補者はいるか?」

 

 と急に聞かれても困るというのがクラスメイトの反応だろう。

 元から手を上げる気がない人間もいるだろうけど、俺とか。

 これが二年三年と進級すると主人公であるアレックスが他薦されたりするんだけど、今の時期だと人望も成績も飛び抜けてるわけじゃないしね。

 

「いないか。ではこちらで決めるぞ。フレイヤ、できるか?」

「わたくしでしょうか?」

 

 指名されたのは原作メインヒロインのフレイヤ様。

 

「そうだ、このクラスでは一番の成績優秀者だからな」

「なるほど、そういうことでしたら承知いたしました」

 

 彼女は落ち着いた立ち振る舞いで頷きそのまま教壇の前に立つ。

 

「では戦技祭の参加種目を決めましょう。アレックス様、手伝っていただけますか?」

「僕?」

「はい。わたくし一人では手が足りませんので」

「わかった、そういうことなら」

 

 流石は原作メインヒロインと原作主人公、自然とペアになっていく。

 なおフレイヤ様は成績優秀者であると同時に容姿端麗でもあるので、一部の男子からアレックスに羨ましそうな視線が向いている。

 銀髪ロング+清楚な雰囲気はもうフォーマットとして強いしなあ。

 性能も良いし、あとスタイルも良いし。

 

「では主要競技から決めていきましょう。まずは『打倒:三人組』から」

 

 フレイヤ様が挙げたのは三人組でより多くダメージを出す競技。

 純粋に火力を競うことになるのでレベルが高くユニークスキルが優秀な者が有利な花形競技だ。

 

 まあ本当は理論値を競うならパーティーバフを混ぜたほうがいいとかって話もあるんだけど、そこまで考えて編成を組むクラスもあんまりないんじゃないかな。

 特に一年は。

 なんてことを思いながら、俺は話し合いが進行していくのを黙って見守る。

 そして後半になってやっと、希望の競技が読み上げられた。

 

「では次に、投擲競技を希望の方はいらっしゃいますか?」

「はい」

 

 手を挙げたのは俺一人。

 

「ではジャック様、よろしくお願いします」

 

 ほかに希望者もなく投擲競技の参加者は5秒で決まった。

 まあクラスメイトを見て空いてそうなところを選んだんだけどさ。

 

 

 ☆★☆★☆

 

 

「今日はお疲れ、アレックス」

 

 夕方、寮の食堂でアレックスの姿を見つけたので向かいの席に座って持ってた食事を置く。

 なお今日は珍しく彼は一人きりだ。

 そんな日もあるよね。

 

「ありがと、ジャック。といっても僕は黒板に書いてただけだけどね」

「フレイヤ様のサポートだけでも十分な仕事だろ」

 

 少なくとも俺はやりたくない仕事だ。

 いろんな意味でめんどくさいし。

 

「しかしアレックスは残念だったな」

 

 彼は最初の火力競技に立候補していたけれど、ほかの候補者と投票で負けて別の競技に参加することとなった。

 片手剣って純火力を競うには不利な武器だから仕方がないところもあるけど。

 

「うん、でも実力が足りなかったのは自分の責任だから。来年は参加できるように頑張らないと」

 

 うーん、流石原作主人公。

 

「そいえばジャックは投擲競技だよね。投擲のスキルレベル上げてたなんて知らなかったよ」

 

 投擲競技というのは文字通り、武器やアイテムを投擲して的に当てる競技。

 原作だとダーツのミニゲームみたいな感じだったかな。

 

「まあ多少はね」

 

 実際のところはクラスで今の自分が一番投擲種目に向いているかと言われればそうでもない。

 あくまで先に有力種目を決めたうえで、残ったメンバーの中で俺以外に立候補者がいなかったってだけの話だ。

 

 うちのクラスにはいないけど、他のクラスの投擲適性持ちかつユニークスキルも投擲に補正がつくようなキャラとは競い合うのは難しいところ。

 そこまで頑張るつもりもないし、クラスから種目別優勝を期待されているわけでもないから問題はない。

 

「でもジャックならいい線行くと思うよ」

 

 なんて爽やかに言えるのも本人の資質だろうか。

 

「まあやるだけやってみるよ。アレックスも頑張れよ」

「うん」

「ところで、アレックスはフレイヤ様と仲良いのか?」

「えっ、そう見えたかな?」

「わりと」

 

 個人指名されるくらいだしね。

 特に彼女は特に親しいクラスメイトっていうのがいないから、アレックスは特別扱いなんじゃないかな。

 

「仲が良いかはわかんないけど、たまに話すことはあるかな……」

 

 おっと。

 この反応は、ほかの女性陣に対する反応とは様子が異なる。

 具体的に言うと、照れのようなものが見えた。

 アレックスはああいう異性が好みかー。

 原作だとプレイヤーが攻略ヒロインを選ぶ形だから、こういう反応は新鮮だ。

 

「フレイヤ様はほかに親しいクラスメイトもいないみたいだし、アレックスのことは頼りにしてるんじゃないか」

 

 あんまり突っ込んだことをいってフラグに影響を与えるのもよくないので、俺はぐっと自制をしてさりげなく背中を押す程度に留める。

 頑張れアレックス、お前がナンバーワンになれ。

 あとほかのメインヒロインたちも頑張れ、まだ余裕で逆転できるぞ。(たぶん)

 

 なんて野次馬根性はほどほどにしておく。

 初期好感度最悪から大人気になるキャラもいるから、実際まだどうなるかはわからないけどね。

 俺には実利もある話なので、いろいろとがんばってほしいところだ。

 

 

 ☆★☆★☆

 

 

 というわけでやってきた戦技祭当日。

 競技場ではルビーさんが木人(人を模した標的。木でできたものだけを指す)を殴っている。

 一つずつ順番にやってたら滅茶苦茶時間がかかるので、種目はいくつか並行して実施されており、競技場にいる人の数はそこそこ。

 

 彼女の参加している種目は『連撃』。

 丸太に対して時間内になるべく多く攻撃する種目だ。

 原作だと表示される四つのボタンを素早く押すミニゲームだったけど、今はみんな全力で殴っている。

 

 一応通常攻撃とスキルでSPと気力の消費配分とかあるけど、それでも理論値一つだけなのでは?と思わなくもないけど火力勝負だって結局ステータスとユニークスキルの暴力だから今更か。

 参加してる競技者は振りの早い拳武器、短剣二刀流、刺突剣、鞭など。

 みんな動きやすい軽装だし、激しく攻撃しているので躍動感がある。

 わりと女子も多いし見栄えもいいね。

 

「ルビーちゃん、がんばってー!」

「がんばれー」

 

 隣でアクアさんが応援をしてるので俺も応援しておく。

 

「てやー!」

 

 制限時間切れ間際にSPと気力を使い切ってラッシュをかけたルビーさんが拳を振った。

 そのまま競技時間は終了。

 

「おつかれさま、ルビーちゃん」

 

 無酸素運動で呼吸を乱したルビーさんが汗をこぼしながら退場してくる。

 

「くぅ〜、途中でミスしなければもうちょっと殴れたのにっ」

 

 気力は全て使い切ってしまうと回復が遅れるので可能なら全て使い切らずに、かつ全快になって回復をあふれさせないようにするのが望ましい。

 まあそれが難しいんだけど。

 戦闘中だと特にね。

 ついでに実践だと気力を全部吐いてでも殴りきった方がいい場面もあるのでケースバイケースだ。

 

 実際に出た結果は10クラス中3位。

 このあともう10クラスあるけれど、それでもなかなかの順位だろう。

 

「どう、なかなかやったでしょ?」

「良い動きだったと思うよ」

「でしょ」

 

 俺が褒めるとルビーさんはドヤ顔で笑った。

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 昼食を終えて正午過ぎ、自分の競技までまだいくらか時間があるのでどうしようかなと考えながら歩く。

 一番いいのはランキング上位の同級生の動きでも見に行くことなんだけど……。

 特に非原作キャラを見ておくのは後々役に立つだろう。

 

 例えば100階層をどっちが先に攻略するかの勝負になった時、相手がボスの攻略にどれくらい時間がかかりそうで、こっちにどれくらいの猶予が確保できそうか、なんて予測もできるだろうし。

 まあ、有力な学生は大抵ギルド所属だから、うちのギルドの装備品売るついでにまとめて個人情報パクったほうが早いし確実だからやっぱりあんまりやる気にならない。

 

「まあいいか」

 

 たまにはダラダラする日があってもいいだろう。(毎日だろとか言ってはいけない)

 

「おっ、ジャックじゃん」

 

 考えごとをしながら歩いていると声をかけられて視線を落とす。

 そこには競技場の陰に集まって座り込んでいる数名のクラスメイトの姿があった。

 

「みんなこんなところでどうしたの」

「そんなの見ればわかるだろ? ふっ、サボりだよ」

「ああ……」

 

 いるよね、文化祭とか体育祭で人目につかないところに集まってサボってる生徒。

 そんな人の習性はこの世界でも同じなようだ。

 

「ジャックもどうだ? 今なら飲み物もあるぞ」

「うーん、じゃあお邪魔しようかな」

 

 男数人で輪を作っているところに加わる。

 たまにはこういうのも悪くない。

 俺も学生時代はこっち寄りだったし。

 全員の前に飲み物のグラスが置かれていて、俺の前にもサービスで一つ置かれる。

 こういうときサッと取り出せるインベントリは便利だよね。

 

「んで、みんなで集まってなにしてたの?」

「いや、出番終わったからサボってただけ」

 

 戦技祭は丸一日の全体日程に対して、個人の出番は一時間にも満たない。

 必然暇な時間が大半になるわけだが……。

 

「みんなの応援は?」

「別に俺らがいなくても変わらんでしょ」

「うん……、それはまあ……」

 

 別に応援の量なんて成績に影響ないよね。

 いやまあ時と場合によるんだろうけど、戦技祭の種目的にはそんなに影響ないと思う。

 チームスポーツの球技とかだと結構影響ありそうだなと思ったりもするけど。(逆にプロスポーツのブーイングなんかも凄かったりするし)

 

「つーかお前はアクアちゃんと一緒にルビーの応援してたじゃねえか!」

「この裏切り者!」

「俺たちにも紹介しろ!」

 

「いや、クラスメイトなんだから普通に話しかければいいだろ」

「それができたら苦労はしねェ」

「久々にキレちまったよ。屋上に行こうぜ」

 

 なんだこいつら。

 

「んで、お前の本命はどっちなんだよ」

「えー……」

 

 まるでどっちかが本命であるかのように言われても困るんだが。

 っていうか別にほかのクラスメイトともパーティー組むしな。

 

「いや、俺歳上が好きだから」

「そういうのいいから」

「そういうのじゃないんだよ」

「今はクラスの話をしてるんだ、わかるだろ?」

「逃げるなよ、俺たちはマジの話をしてんだ」

 

 こいつらうざ……。

 

「じゃあフィスさん」

 

 どうせこの場限りで話が漏れることもないだろうからこっそり答える。

 見た目が好きだし性格も好き。

 まあ原作メインヒロインだし、好きといってもそういう対象じゃないけど。

 

 なんて思っていると、ガッと手を握られた。

 

「同士よ……」

「お前は話のわかるやつだと思ってたぜ……」

「太ももいいよな……」

「いい……」

 

 手のひら返し速すぎか?

 多分いまこの場所が学園の中で一番IQが低いだろこれ。

 

「ちなみにお前は?」

「俺はフレイヤ様。お前は?」

「俺はアイギスさん」

「クラスメイトじゃねーじゃねーか!」

「細かいことはいいんだよ! お前は?」

「俺はエイスさん。お前は?」

「俺はフィスちゃん」

 

「トーナ様派はおらんのか」

「トーナ様は流石に……」

「話題に挙げるのも畏れ多いっていうか……」

「フレイヤ様とかアイギスさんもそんな変わらんだろ」

「それはちがくてぇ……」

 

 この辺の現地の人間の感覚はイマイチわかるようなわからないようなな感じだ。

 

「ちなみにうちのクラスの一番人気はフレイヤ様だな」

「どこ調べだよ」

「俺調べ、対象は一年男子」

「母数は?」

「150くらい」

「そんなに」

 

 同学年男子の約三割じゃん……。

 

「やっぱりあの上品な雰囲気がいいよな……」

「いい……」

「あとスタイルもいいし……」

「いい……」

 

「ちなみにアクアちゃんも人気だぞ」

「笑顔がいいよな……」

「お嫁さんにしたい……」

「料理とか上手そう」

「それはわかる」

 

「だからお前を許せないやつも多いぞ」

「夜道には気を付けろよ」

「そもそも女子と仲が良い時点で犯罪だろっ」

「だからなんでだよ!」

 

 なんてどうでもいい話をしていると、気付けば競技の開始時間が迫っていた。

 

「そろそろ出番だわ」

 

 競技場に向かうために腰を上げると、みんなの視線が集まる。

 

「おう、がんばれよ」

「怪我しないようになー」

「個人種目優勝できたらなんか奢ってやるよ」

「代わりに最下位だったらなんか奢れよ」

「はいはい」

 

 俺は軽くあしらって目的地に向かった。

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 さて、自分の出番がきたので競技場に入って指定の場所に立つ。

 同級生も横に並んでいて、視線の先にはそれぞれの的。

 距離は30メートルほどかな?

 25メートルプールよりもちょっと遠いくらい。

 

 的の大きさはダーツの的より大きいくらいで、より中央に当てられるほど高得点。

 全部で10回投げて、その合計点を競うことになる。

 野球のバッテリー間よりもかなり遠くてストライクゾーンよりも狭いから、素人ならまず当てるのが困難なレベルだけどスキルの補正があるのでその点は問題ない。

 

「それでは、始め!」

 

 進行係の合図で並んだ皆が武器を構える。

 ちなみにその武器も種類は自由なので、標準的な投げナイフからダーツの矢、あとは短めの投げ槍とか手裏剣なんかを構えている生徒も見えた。

 俺は普通の投げナイフだけど。

 

 そして周囲の様子を見ながら俺も投擲。

 的には中央が10点、そこから点数が減っていって一番外が1点と書かれていて、当たったのはたぶん7点、距離が遠くて見づらいけど。

 普通に中央を狙ったのに難しいわこれ。

 

 改めて周囲を確認するとやっぱり同級生たちも苦戦中。

 的を外してスコア0点に絶望している女子もいた。

 かわいそ……。

 

「ジャックくん、がんばってー!」

「ちゃんとやりなさいよー!」

 

 うしろからアクアさんとルビーさんの声援が聞こえてくる。

 それに反応して振り返ると、二人の近くにクローネたちギルドメンバーが揃っていて盛大にむせてしまった。

 

 当然うちのギルドは有名なので、六人は揃っていると注目を集めている。

 その先頭のグレイと目が合って、彼女が手袋をした手を振るので俺はサッと顔を逸らした。

 さーて競技頑張らないと。(現実逃避)

 

 まあ参加選手はみんな横に並んでるし、グレイが誰に手を振ったかなんてわからないかもしれないだろうからきっと大丈夫。

 さっさと出番を終わらせてこの場から退散しよう。

 

 えいっ、と2投目を投げると8点。

 続いて3投目は5点。

 並んだ同級生たちも次々に投げていて、一番スコアが良さそうなのは右隣の男子。

 彼は現在4投して26点。

 そのまま彼が10投を投げ終えるのを見てから、俺も最後のナイフを投げた。

 

「あ」

 

 俺の手からすっぽ抜けたナイフは的から大きく外れた場所を通り過ぎていく。

 

「ちょっと、なにやってるのよー!」

 

 なんてルビーさんの野次が飛んでくるけど、結果は結果。

 

「惜しかったね、ジャックくん」

「ありがと、アクアさん」

 

 競技場から退場し、全ての結果が出揃うと俺の順位は一学年20クラス中で5位。

 上位25%で平均よりかなり上だから『ジャック』のスキル適性を考えたら健闘したほうなんじゃないかな。

 

「次はアクアさんの出場競技だよね。がんばって」

「うん、がんばるね!」

 

 ということで俺とアクアさんとルビーさんの三人は次の競技場に向かう。

 その前にチラッとメンバーを見るとグレイは不満そうだけど、逆に他のメンバーは3/5で笑っていた。

 

 

 ☆★☆★☆

 

 

「つかーれたー」

 

 戦技祭が終わって放課後、俺はギルドハウスの執務室でソファーにゴロンと横になった。

 柔らかいソファーの寝心地が気持ちいい。

 このソファー置けるだけで大きいギルドハウスに引っ越してよかったと思えるわ。

 

 普段のダンジョン探索よりはずっと体を動かしてはいないんだけど、それでも今日はちょっと疲れた。

 イベントって疲れるよね。

 ちなみに成績は、クラスが学年4位だったよ。

 やったぜ。(俺はなにもやってない)

 

「んー……」

 

 横になってたらちょっと眠くなってきた。

 これなら直接寮に帰ればよかったかな、なんて思ったけど後の祭り。

 まあいいか、ちょっと寝てから学食が閉まる前に寮に戻れば。

 

『コンコン』

 

 そんなことを考えながら目を閉じてウトウトとしていると、部屋のドアがノックされることが耳に届いた。

 

「開いてるよー」

 

 緩く返事をするとドアが開く気配がする。

 

「お邪魔するんじゃよー」

 

 聞こえたのはシャオの声。

 来客がシャオならこのままでいいか、寝たままでも怒らないだろうし。

 ということで目はつぶったまま、人が近くまで来る気配がする。

 

「書類を持ってきたんじゃが今いいかの?」

「あとで見るからテーブルの上に置いておいてもらってもいーい?」

「わかったんじゃよー」

 

 返事とともに、俺の寝てるソファーの前にあるテーブルに紙が置かれる気配。

 そのままシャオは部屋を出ていくかと思ったら、俺の頭の上で気配が止まった。

 

「ジャックはお疲れかの」

「ん、ちょっとだけ。帰る前にまだ寝てたら起こしてもらっていい?」

「了解したんじゃよ」

「よろしくね」

 

 これで寝坊する心配はなくなったので安心して安眠できる。

 

「こうやって見ると普段と印象が違うのう」

「そう?」

「いつもより優しそうに見えるからの」

「普段から俺は優しいよ」

「たしかに、それもそうかもしれんの」

 

 そこはツッコんで欲しかったんだけど、まあいいか。

 

「シャオは寝てるときはどんな感じ?」

「自分の寝顔は自分で見れないからのう」

 

 たしかに。

 

「なら今度シャオの寝顔も見せてもらおうかな」

「それはちょっと恥ずかしいかの」

 

 なんて言いながらもシャオのおかしそうに笑う息遣いが聞こえる。

 まあ俺も寝顔を(まだ寝てないけど)見せているからお互い様ということで。

 

「そうだ、今日は応援ありがとね」

「迷惑じゃなかったかの」

「人にバレたら困るけど、そうじゃないなら平気だよ」

 

 応援されるの自体は嫌でもないし。

 

「それならよかったんじゃがの」

「うん」

 

「ところでジャック」

「んー?」

「最後外したのはわざとなのかの?」

「それはー、秘密」

「秘密なら仕方ないの」

 

 目を閉じたままでもシャオが再び笑ったのがわかった。

 そのままシャオが部屋を出ていくと思ったら、身体にふわりとなにかが触れた。

 柔らかい手触りと優しい香り。

 そして全身を包み込むような感覚は薄手のタオルケットだ。

 

「ありがと」

「どういたしましてじゃの」

 

 あとで洗って返さなきゃ。

 

「それじゃあジャック、おやすみなんじゃよ」

「おやすみ、シャオ」

 

 挨拶をして今度こそシャオが部屋から出ていく気配がする。

 ドアが閉まって一人きりになった執務室で、俺はほどなく眠りに落ちた。

 




*ストックが尽きたので少し更新をお休みします。しばらくお待ちください。


・本編に入らなかった小話的なもの

グレイ「もー、せっかく手振ったのに無視するなんてひどいよ!」
マリーロール「そうですわ、グレイがかわいそうですわよ」
ジャック「いや、マリーロールは思いっきり笑ってたじゃん」
マリーロール「そんなことありませんわ。困っている貴方が面白かったなんてことは絶対にありませんわ」
ジャック「絶対に面白がってたでしょ」
グレイ「ボクのこと無視しないでよー!」

なんて話があったとかなかったとか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。