ダンジョン学園、ゲーム転生ソロ攻略中。 作:塔乃登
夏休みが始まって毎日がエブリデイ。
今日は七月の第四週。
朝から待ち合わせをしていたアクアさんとダンジョン前で合流する。
夏期休暇中だけあって、ダンジョン前は朝から学生で賑わっていた。
もちろん在学中の生徒が全員ここに集まっていると人がゴミのようになるので、これでもまだ控え目だ。
一部だけど実家に帰ってる生徒もいるしね。
「おはよう、アクアさん」
「おはよう、ジャックくん」
一人で立っていたアクアさんは、今日も普段と変わらない笑顔でこちらに応える。
「ところでルビーさんは?」
「ルビーちゃんは今日は調子悪いから探索お休みするって」
「あー、そうなんだ。それはお大事に」
ルビーさんにしては珍しいと思ったけど、まあそんな日もあるか。
原作との相違点の一つではあるけど、生きてればそんなこともあるよね。
「それじゃあどうしようか」
約束していたのはアクアさんとだけど、てっきりルビーさんがいるものだとばっかり思ってたからちょっと話が変わってくる。
二人でも探索できなくはないけど、さすがに適正レベルの階層に行くにはキツイし。
行くならいくつか下の階層だろうか。
「それならだいじょぶだよー」
俺は背後から話しかけられて振り返る。
そこにはクラスメイトの女子が立っていた。
「今日はよっろしくねー」
「よろしくね、ナノちゃん」
アクアさんと挨拶をする彼女の名前はナノさん。
クラスメイトで原作キャラだ。
彼女は金髪を首の高さで左右に結んで、そのまま肩の前に流している。
あと毛先がくるっとカールしてたり、全体的にオシャレ度が高い。
見た目で言うとギャルが近いだろうか、この世界にギャルの概念があるかどうかは知らないけど。
そんな彼女とはそこまで頻繁に話すわけでもないけれど、一緒に探索もしたことがある相手なのでコミュニケーション的にも戦力的にも問題はない。
「ジャックくんも、よろしくねー」
「よろしく、ナノさん」
そんな彼女は、すっと顔を寄せて笑顔を作る。
「もしかしてー、お邪魔だった?」
なんて言葉とは裏腹に彼女の口調は楽しそう。
「そんなことないから大丈夫だよ」
「そっかー、よかったー」
「どうしたの、二人とも」
今の会話が聞こえていなかったアクアさんの言葉に、ナノさんがやっぱり笑顔で振り返る。
「なんでもないよー。それじゃあダンジョン行こっか」
先に歩き出すナノさんに続いて、俺とアクアさんも転移陣へ向かった。
………………
…………
……
「それじゃあ俺が先頭でいいかな?」
「もっちろん」
移動した23階層にて、片手剣を握りながら俺が確認すると両手鎚を握ったナノさんが答える。
彼女が握る背丈よりも長い両手鎚は純アタッカー武器なので、タンク適性有りは俺しかいない。
まあ一応ね。
原作キャラには盾無しで回避タンクするキャラとかもいたりするし。
「それじゃあ俺、ナノさん、アクアさんの順番で」
「りょーかいだよー」
「うん、わかった」
隊列も確認して、三人で密林の中を歩き始める。
相変わらず木と草で歩きづらい階層ではあるけれど、そろそろ慣れてきた頃合いかアクアさんとナノさんもスルスルと歩を進めていく。
頼りになるなあ。
そのまま北に少し歩いてほどなく、モンスターに遭遇。
見えたのはコドモ土竜が三体。
よく考えたらトカゲ系は苦手な女子もいるんだろうか、と思ったりもしたけど見る限り二人は平気そう。
「? どうしたの、ジャックくん?」
「なんでもないよ」
俺が見ていたからか不思議そうな顔をするアクアさんだけど、特に問題がないなら言わなくてもいいだろう。
まだ気付かれてないけどモンスターの目の前だしね。
「アクアさん、最初よろしく」
「うん、わかった。『ブリザードストーム』!」
「『挑発』」
アクアさんの範囲魔法のあとに、俺が三体まとめて挑発をかける。
こうしないとアクアさんに向かっていっちゃうからね。
そうしたら俺に向かってきたコドモ土竜の中から一匹をナノさんが後ろから叩いた。
「どりゃー!」
横から振り回された両手鎚は、コドモ土竜Aの横腹を豪快に叩く。
それと同時に彼女の青いハンマーから氷武器の白いエフェクトが舞った。
『グゲッ』
そのままナノさんが同じ個体に攻撃を続けると、そのコドモ土竜Aのヘイトが彼女へ向かう。
これで俺の受け持ちは二体。
被弾しないように気をつけながら攻撃していく。
「『アイスツインランス』!」
アクアさんの魔法が、ナノさんの担当しているコドモ土竜Aに横から突き刺さってHPを削る。
二対一の俺より、タイマンしてるナノさんの方がコドモ土竜のHPを削っているから、そのまま頭数を減らしてタイマン✕2に持ち込みたいという方針。
二対一だと回避&回避で殴りづらいからね、この方針が一番処理が速い。
「『ハイパワースタンプ』!」
ナノさんは自身のスキルで跳び上がって、そのまま重力も加えて両手鎚を叩き下ろす。
単発スキルの中ではかなり優秀でトップクラスの火力とDPSの出る技だ。
一旦ジャンプするから、その分モーションが長くてちゃんと当てるのは中々難しいんだけどね。
その点彼女はうまく使いこなしている。
柄が彼女の背丈よりも長い両手鎚は遠心力でとても重いだろうけど、彼女は一部を除いて全体的に細め。
特に腕や脚など武器を振るのに重要な部分もスラッとしていて、とても両手鎚を振り回せるようには見えないがその辺もレベルとステータスの恩恵だろうか。
「よいしょー!」
最後の一匹は俺がヘイトを取っているところを、ナノさんが後ろから一方的にボコって戦闘終了。
コドモ土竜が消滅したところで、ナノさんがこちらに向かって両手を挙げた。
「イエーイ」
「イエーイ」
彼女に応えて俺も両手でハイタッチ。
触れた手のひらは、やはり両手鎚をぶんぶんしてるとは思えないほど柔らかかった。
「イエーイ」
そのままナノさんはアクアさんにも同じようにするので、俺はそんな様子を横目にドロップアイテムを拾う。
「ねえねえ、アタシたち結構いい感じじゃなかった?」
ナノさんがここでいうアタシたちというのは三人のことである。
「そうだね、連携も立ち回りも良かったと思うよ」
「そっかー、それじゃあ今日は探索進んじゃうかもね!」
マップの埋まり具合的に今日で転移陣まで行くのは難しいかもしれないけれど、俺がゴールの場所を知っているのはおかしいのでナノさんの言葉は否定しないでおいた。
「それじゃあ出発しようか」
「うん!」
ということで三人で列になってまた歩き出す。
………………
…………
……
モンスターが出てこないあいだは暇なので、後ろでアクアさんがナノさんに話しかけていた。
「ナノちゃん、それ重くない?」
アクアさんがそれと言ったのは、ナノさんの背負う両手鎚。
重量=パワーなので、当然かなりの重量があるはずのそれだけど、ナノさんは軽く答える。
「そうだねー、確かに軽くはないけど大変ではないかなー」
「そうなんだ」
「さっきもナノさん、ジャンプして振り回してたもんね」
バーベル並みの重さのそれは握ったまま跳び跳ねている時点で色々とおかしいんだけど、この世界では比較的普通の光景。
「あれはスキルなのもあるけどねー。あっ、ジャックくん。スカートの中覗いちゃダメだよー?」
そんなことを言ってくるナノさんを見ると、なぜか彼女は楽しそうにこちらへ視線を向ける。
両手鎚の防具選択は主に重鎧か軽鎧の二択なんだけど、ナノさんがいま身につけているのはその後者の方。
全身ではなく主に急所を保護する軽鎧は、防御力に劣る分俊敏性が確保できるので重量武器でもアリな選択肢。
そんな彼女の短めのスカートからは、細い生脚が見え隠れしている。
「言われなくても覗かないよ。まあ覗かなくても見えそうだけど」
なぜか彼女は防具のデザインをアレンジしていて、普通の丈よりもスカートが短くなってるからね。
絶対に見るなと言われても困るスタイル。
「まあそれならしょうがないかー」
しょうがないんだ……。
「しょうがなくないよっ!」
アクアさんが顔を赤くしてナノさんの言葉を否定する。
「あはは、アクアちゃんはかわいいなー」
「そもそも俺はナノさんとはモンスターを挟んで向かい合ってるから大丈夫だよ」
『ハイパワースタンプ』なんかは上から振り下ろすモーションの関係で姿勢が前屈みになるので、後ろからはスカートが捲れて見えそうになるけど前からはそうでもない。
原作だと一部のプレイヤーに人気のスキルだったんだけどね、残念。
いや、残念ではない。
「というかよく動くならなにか履いたらいいのに」
スカートの下になにか履いてもいいし、同じように動き回るルビーさんなんかはそもそもスカートじゃなくてショートパンツだし。
「それは可愛くないから嫌ー」
「そっか、それならしょうがないね」
オシャレは我慢って言うしね。(違います)
そういえば、オシャレといえばということで俺の目線は彼女の手に向けられる。
「ナノさん、今日も爪塗ってるんだね」
「あっ、気付いたー? 今日は武器に合わせて青色だよー」
彼女の武器が氷属性なのでそれに合わせてということだろう。
そこを合わせる意味はあるのだろうかとちょっと思ったけど、まあなくもないか。
「授業もないのに偉いね」
学園で色んな人の前に出るならともかく、今日はダンジョン直行で日中ずっとこの三人だし。
もちろん俺に見せるために用意している、なんてこともない。
「えー、好きでやってるだけだからねー。でもそういうところに気付くのはポイント高いよ、ジャックくん」
「ありがと、そのネイルよく似合ってるよ」
「でしょー。上手く褒められたジャックくんには10ポイントあげちゃう」
「そのポイント貯めるとなにかいいことある感じ?」
「んー、それは別にないかな」
「ないんだ……」
1ポイント1オーラムに交換できるシステムとかはないらしい。
「ちなみにアクアさんは何ポイントなの?」
「えっ、私?」
「んー、アクアちゃんは1万ポイントくらいかなー」
「アクアさんのこと大好きじゃん」
9990ポイントリードされていたら逆転する目はなさそうだ。
いや別に逆転したいわけじゃないんだけど。
「まあそれほどでもあるかなー」
「ええっ。……ありがと、ナノちゃん」
「どういたしまして」
二人の仲が良さそうでとてもいいですね。
………………
…………
……
「そろそろお昼にしようか」
時刻は昼の12時過ぎ。
丸一日探索するなら昼食は必要なのでそろそろいい頃合いだろう。
毎回昼食のために外に出てたら効率悪いから、休日はこうやってダンジョンの中で用意をして済ませることが多い。
「賛成ー!」
「うん」
ということで、密林の中を流れる小川のほとりの開けた場所でお昼をとることに。
このあたりはモンスターの沸かないエリアなので安心して休憩することができる。
「それじゃあテーブル出すよ」
「よろしくねー」
俺はインベントリを操作して、中からテーブルと椅子をその場に並べていく。
原作じゃ昼食自体必要なかったんだけど、こうやって準備が楽なのはありがたいところだ。
「料理並べるね」
「ありがと、アクアさん」
料理もインベントリにしまっておけるので、今日はアクアさんが用意してくれたものをテーブルに並べていく。
「それじゃあ、いただきます」
「いただきます」
「いただきまーす」
メニューはクリームパスタと生ハムのサラダ。
三人でテーブルを囲み、手を合わせて食事を始める。
ちなみにどちらも料理スキルで製作した料理ではないのは、効果時間を上書きしないための配慮だろうか。
料理効果は重複しないから、効果目当てで朝食を選んでたら無駄になっちゃうんだよね。
「うん、美味しい」
「ほんとだ、これおいしー」
「ほんと? よかったぁ……」
スキルで作成した料理でないということは必然的に味にスキルの補正が効かないということなんだけど、アクアさんの用意してくれたパスタはそれらと見劣りしない美味しさだった。
「三人分用意するの大変だったでしょ。ありがとねアクアさん」
「ううん、料理は慣れてるから平気だよ」
「アクアちゃん、結婚しよ!」
「えぇ、ナノちゃんそれは困るよ〜……」
胃袋をガッチリ掴まれた様子のナノさんがアクアさんに抱きついているけれど、気持ちはわかる。
「そんなに喜んでもらえるなら、また作ってくるね」
「ありがと、アクアさん。でもいつも食べさせてもらっちゃ悪いしたまにはこっちもご馳走するよ、ナノさんが」
「そこはジャックくんがやるところでしょー!」
「いやー、俺はそんな料理得意なわけでもないからなー」
アクアさんみたいに立派なものを期待されても困る、んだけどなぜかアクアさんもナノさんの意見に同調する。
「私も食べてみたいな……、ジャックくんの料理」
「あー、まあそういうことなら」
ご馳走になった身だからアクアさんの希望は断りづらい。
まあそこまで拒否する理由もないんだけど。
「アタシも食べる!」
「ナノさんは作ってくる側でしょ」
「えー……」
不満そうな彼女だけど、順番を考えたらそれが自然な流れである。
結局、後日俺とナノさんがアクアさんに料理を振る舞うこととなった。
………………
…………
……
「キャーッ!」
昼食を終えた午後、俺達が密林の中を歩いていると聞こえてきたのは女子の悲鳴。
草木の向こう側から聞こえてきたその声に、ナノさんが駆け出したのであとに続く。
っていうかこの場所……。
俺が脳内でマップと現在地を参照して、向こうで何が起こっているかを一人で察した。
そのまま視界が通ると、目に入ったのは広場に倒れている二人の学生と、立っている二人の学生。
それと、巨大なトカゲが一匹。
名前は『メガ土竜』。
コドモ土竜の成体で、見た目はそのままコドモ土竜が大きくなったもの。
ただし、コドモ土竜が全長2メートルに対して、メガ土竜は10メートルを超える。
でかい。(確信)
なおこの階層までに遭遇してきたモンスターを全てぶっちぎって最大サイズだ。
というかこの階層ではこの場所だけに固定で出現する特殊モンスターである。
当然のように強敵なので、あのパーティーは戦闘の結果半壊したようだ。
「助けなきゃ!」
「ちょっと待った」
「ジャックくん!?」
俺がナノさんの腕を掴むと、驚いたように彼女が振り返る。
「まず助けに入るかどうかみんなで決めないと」
「でもっ」
「あれどう見ても階層主級のモンスターだよ。無策で突っ込んだらそのまま全滅してもおかしくないやつ」
勢いで突っ込んで全滅したらそのあとが面倒、になるかはわからないけれどちゃんと話し合って決めるべき案件だ。
目の前の彼らを助けるよりも、自分たちが全滅しないことの方がどう考えても大切だし。
リスクがある選択肢は、ちゃんと決断と責任の所在を明らかにしておく必要がある。
まあこれは原作知識じゃなくて、ほかのマルチゲームでの経験則だけど。
「……、わかった」
「じゃあ助けに行くのに賛成の人」
もちろん手を挙げたナノさんに同意するように手を挙げるアクアさん、そんな二人と同じように俺も手を挙げた。
賛成三、反対零。
「んじゃ助けようか」
「今の必要だった?」
ナノさんが不満そうに言うけれど、全員の意思を確認しておくのは実際大事。
これで全滅しても平等に全員の責任だからね。
あとで揉めないように責任の所在を確認しておくのはとても重要。
今の三人なら揉めないだろうとか、全滅しなければいいだろうとかそういう話ではないのだ。
「んじゃまず俺がヘイト取るから、二人はあっちの救助に行って。先に助けが必要か確認してね。もし必要ないって言われたらそのまま離脱。必要なら報酬のアイテムドロップは2パーティーで等分、消費アイテムは使っていいけど代金はあっち持ちで交渉して、もし断られたらまた声かけて」
「わかった!」
「本当に大丈夫?」
「たぶん!」
ナノさんの元気な声で不安な返事。
まあアクアさんもいるし大丈夫か。
そんな作戦会議をしているあいだに、あちらで戦っているパーティーは立っているのが残り一人だけになっていたので、俺はその逆に位置取るように走り出す。
「『ディフェンスブースト・セカンド』」
アクアさんに防御アップをもらって戦闘開始。
「『挑発』、『挑発』、『挑発』」
一発じゃメガ土竜のターゲットを取れなかったので挑発を数回、やっとこちらを向いた横をナノさんとアクアさんが倒れている三人の方へ走っていく。
さて、とメガ土竜のHPを確認すると、減っているのは二割程度。
先は長くなりそうだと思いながら攻撃を避ける。
短い腕によるパンチは比較的避けやすく、噛みつきも後ろに下がれば避けられる。
ただしあんまり後ろに下がるとメガ土竜もついてきてしまうので、回避後はあえて前に出て互いの距離を調整していく。
「『ハイスラッシュ』」
とりあえず申し訳程度に殴るけど、削れたHPはミリで虚無い。
まあ時間を掛ければ倒せはするけど、やっぱりあっちのパーティーの人たちにも早めに戦闘に復帰してもらいたいかな。
『ギャア! ギャア!』
鼓膜を震わせるような大きな鳴き声とともにメガ土竜が二本足で立ち上がる。
それから一歩二歩と前に出て、こちらに倒れ込んできた。
「あぶなーい!」
俺はあえて前に出て、メガ土竜の前足をくぐるように横に避ける。
コロリと転がってから立ち上がり、立ち位置を戻して角度を調整。
「『ハイピアス』」
『ギャアアア!』
メガ土竜が見せた咆哮は突進の予兆。
突進自体は普通に避けられるんだけど、こいつの突進(というか這いずり)はUターンして戻ってくるんだよね。
ついでにその方向は制御できないので、みんなの方に行ったら大惨事である。
うーん、仕方ないか。
「『パリィ』」
前に出した小盾のパリィで突進を弾くと、メガ土竜は大きく仰け反った。
みんなもこっちに注目してないし、小盾装備してるんだからたまにはパリィくらいしてもいいよね、と心のなかで言い訳。
まあ実際別になにか問題になったりはしないけど。
そのまま弾いた隙にちょっと攻撃。
でも気力は減らしすぎないように気を付けておく。
回避するのにも必要だけどガードするとゴリッと気力減るからね。
こういうとき小盾はつらいぜ。
「ジャックくん!」
アクアさんに呼ばれて視線を向けると、倒れていた三人が復帰して全員で武器を構えていた。
そのまま俺が頷くと、アクアさんの号令で六人が攻撃を開始する。
「『挑発』」
今まで省エネモードで殴ってたから、ヘイト値逆転されないように適宜挑発。
「『ハイパワースタンプ』!」
「『ブレイドダンス』!」
「『ダブルアサルト』!」
ナノさんに加えて別パーティーの男性アタッカー二人がメガ土竜を横から殴る。
「『アイスツインランス』」
「『フレイムボルト』」
「『アローレイン』」
さらにアクアさんと別パーティーの後衛女性二人が離れた場所から攻撃を加えていく。
「尻尾くるよー」
「わかった!」
メガ土竜が尻尾を持ち上げるモーションが見えたので声を上げると、近接で殴っていた三人が距離を取ってそれを回避する。
そのあと全員が無事に攻撃を再開したのを確認しつつ、メガ土竜の噛みつきをガード。
削りがいったぁい……。
流石に七人で殴っているとHPの削りも速く、順調にダメージを稼いで残り6割。
「交代するよ」
「おっ、それじゃあよろしく」
「任せて、『挑発』!」
小盾の俺よりもタンク適性がある片手槍と大盾装備の男子A(仮)くんが、タンクをスイッチしてくれるそうなのでその場所を譲る。
「『サークルアタックブースト』」
俺がナノさんの隣に並ぶと、アクアさんから攻撃力上昇の範囲魔法が飛んできた。
攻撃力上昇の効果時間が切れるまで続く長期戦なのでこれはありがたい。
「ありがと、アクアさん」
「うん」
「ありがとねー、アクアちゃん!」
それから戦闘は続き、たまに被弾しつつもHPを削っていく。
一回大盾の男子Aくんが倒れそうになったのでタンクをスイッチしたりもしたけれど、流石にタンク2ヒーラー2の編成には安定感があった。
原作の四人パーティーでやると火力が足りなくなるけど、今は七人いるから火力も十分だしね。
「また尻尾くるよー」
再びタンクは譲って、俺もメガ土竜の横から殴っているとまた尻尾を上げるモーションが見えたのでそう声をかける。
「えっ、マジ!?」
見ると短剣装備の男子Bくんがちょうどモーション長めのスキルを放ったところ。
このままだと被弾確定である。
うーん、まあいいか。
「『パリィ』」
横並びの最後尾に移動して、振られたメガ土竜の尻尾が皆に届く前にパリィで弾く。
その反動で、メガ土竜が体勢を崩した。
「サンキュー!」
「全員のりこめー!」
ダウン追撃に全員で火力を出すとHPがゴリッと減る。
そのまま全員で殴り続け、ついにメガ土竜のHPバーを削りきった。
「お疲れさまー」
討伐を終えて声をかけると、男子ABくんがこちらに駆け寄ってくる。
「助けてくれてありがとう!」
「本当に助かった!」
「お礼はナノさんに言うといいよ、助けようって言い出したのは彼女だから」
「わかった!」
指差して誘導すると、助けたパーティーのメンバー四名が彼女のまわりに集まって、感謝の言葉を伝えていく。
うーん、最初はどうなることかと思ったけど無事討伐できてよかったかな。
そんな様子を眺めている俺の隣に、歩いてきたアクアさんが並ぶ。
「みんな無事でよかったね」
「そうだね、アクアさんのヒールがよかったからかな」
「そ、そんなことないよー……」
照れるアクアさんだけど、実際良い仕事だったと思うよ。
「あっ!」
あっちに集まってたメンバーの一人が、メガ土竜の残したアイテムの中に宝箱があったことに気付いて指を指した。
宝箱って基本は階層ボスしか落とさないんだけど、メガ土竜は特殊モンスターだから落とすんだよね。
当然、中身は期待できる。
「行こうか」
「うん」
俺はアクアさんと頷いてみんなと一緒に宝箱の前に集まる。
そのまま全員で宝箱を開けると、中には一振りの両手剣が入っていた。
………………
…………
……
「もう外真っ暗だー」
三人で並んでダンジョンを出ると、すっかり日が落ちた空を見てナノさんがそう呟く。
「夏休みでよかったねー」
「ほんとにね」
朝から晩までダンジョンに潜ってたのは休日だから出来ることだし、明日の心配をせずに探索できたのも夏期休暇だから。
「授業の予習もしなくていいもんね」
ごめんアクアさん、それはやったことないからわからない。
「それにかなり儲かったし!」
メガ土竜のドロップ武器は装備できるメンバーがいなかったのでそのまま売却し、その他アイテムと合わせて一人頭5万オーラムの利益となった。
普段のソロ探索の儲けと比べると控え目な利益ではあるけれど、頭数が増えるとこんなものである。
「アクアちゃんは今日のお金でなに買う?」
「うーん……、私は新しい装備かなあ」
「確かに装備は大事だよねー。ジャックくんは?」
「俺は特に予定はないかな」
必要な装備はギルドで作るし。
「それじゃあなにか奢って!」
「甘い物?」
「晩御飯でもいいよー。えっ、本当に奢ってくれる感じ?」
「高くなければね」
「やったー!」
とまあ嬉しそうなナノさんだけど、彼女は特に好感度が上がってなくてもこんな感じが平常運転。
陽キャのコミュ力ってやつだろうか。
「アクアちゃんも行こっ」
「えっ、いいのかな?」
「もちろん」
というかナノさんと二人きりよりは三人のほうが助かる。
「それじゃあ私も……」
「よし、アタシのオススメのお店行こ!」
ということで三人並んで、生産科のやっている店舗の方へ歩き出した。
これも夏休みだからできることかな。
【キャラクター図鑑/No.131】
キャラネーム:ナノ
性別:女
身長:普通
胸:巨
髪色:金
髪型:二つ結び
瞳色:緑
年齢:15歳(ゲーム開始時)
誕生日:12月2日
呼称:アタシ/ジャックくん
カテゴリー:原作キャラ/パーティーメンバー/クラスメイト
パーティー加入:制限有り(絆レベル1達成後)
武器適性:両手鎚(140%)/両手剣(135%)
ユニークスキル:『カラフルマーク』(属性攻撃時、与ダメージ+30%)
キャラtier:【B】
公式人気投票:【88位】
備考:明るく気さくなオシャレ女子。
適性武器は両手鎚。
加入条件は簡単に達成できるので多少日数を進めればほぼフリー加入。
TierBのキャラクターなので両手鎚持ちの中では最初から主力として期待できる。
ユニークスキルは属性攻撃のダメージ上昇。
基本的に属性武器で殴る運用となるが、弱点属性でなくてもダメージは上がるので汎用性は高め。
両手鎚スキルで属性スキルを覚えてからはさらに使い勝手が上がる。
性格は誰にでも優しく気さくに話しかけてくれる。
最初はすぐ仲良くなれるのが人気の一因、ただし個別イベントの終盤はちょっとしっとり気味。
体格は普通だが、重量武器が適性武器の割に腕脚が細めなのが特徴。
とはいえ極端に細いわけではなく、常識の範囲内。
腰も細く、体型を保つために努力をしているらしい。
最近ハマっていることは、足の爪にペディキュアを塗ること。
好きなスイーツはクレープ。
・両手鎚
長い柄のついた鎚を両手で扱う重量武器。
一撃の破壊力が特徴で、モーションが重く扱いづらいが火力はピカイチ。
立ち位置としては両手斧が近いが、両手鎚は打撃属性なので棲み分けられている。
打撃武器は斬撃or刺突武器より少ないので、相対的に採用されやすい。
アタッカーとしての立ち位置も分かりやすいので、ギルドに一人いるとありがたい存在だろう。
・ハイパワースタンプ
両手鎚の攻撃スキル。
ジャンプをしてから対象に鎚を叩きつける。
下位スキルであるパワースタンプは、ジャンプせずに攻撃する分威力は落ちるが、モーションが短く使いやすい。
上位スキルであるメガパワースタンプはジャンプからの前一回転スキルで見た目の派手さに相応しい威力。
なおハイパワースタンプは叩きつける時に前屈みになるので、前からのスクショ需要もあったりする。
・『大土竜の大剣』
専用特殊効果:『土竜の護鱗』(装備者の防御力+15%)
メガ土竜のドロップする両手剣。
固有の特殊効果は防御寄りの効果ながら倍率は優秀。
素の武器攻撃力も高いので、ドロップすれば密林階層をクリアするまで愛用できる。