ダンジョン学園、ゲーム転生ソロ攻略中。 作:塔乃登
夏休みなのでアクアさんとナノさんと一日探索しました。
ナノさんの再登場はあるのか。(ある)
朝、寝苦しさを感じて目を覚ます。
「んー……、うお」
なんか暑いなと思いながら時計を確認すると、時刻は午前十時。
今日が平日なら遅刻確定の時間であった。
というかもう朝じゃなくて昼だわ。
よかったー、夏休みで。
昨日はちょっと夜更かししたからなあ。
長期休暇になるとつい夜更かししてしまうのはなんでだろうね……。
まあ休みといってもギルドの仕事や探索の約束がある日もあったりするんだけど、幸い今日はそのどちらもなく新たな罪が生まれることはなかった。
まだ日程的にも余裕あるしね。
これが三年の後半とかになると寝坊する余裕もないんだろうけど、今はまだ学年ランキングに載らない程度にゆっくり進行だ。
ゆっくりしていってね!
とりあえず朝飯食うかー、ということで制服に着替えて部屋を出る。
夏休みだけど学園の敷地内だし、いつでも制服でいいっていうのはある意味楽で助かってるかな。
私服を全く持ってないわけでもないんだけど、選ぶの面倒くさいしね。
「おーす、ジャック寝坊か?」
部屋を出るとちょうど廊下をすれ違った知り合いに声をかけられた。
「寝坊じゃないぞ、ただ予定よりも起きるのが遅くなっただけだ」
「それを寝坊って言うんだよ」
たしかに。
「そういうそっちは私服でなにしてるんだ?」
「俺は今日は休養日だ、一日遊んで過ごす」
「この前も同じこと言ってなかったか?」
「気のせいだろ」
気のせいなら仕方ないな。
なんてどうでもいい会話をしつつ、そのまま別れて寮を出る。
さてどうしよう。
とりあえず朝飯兼昼飯かなあ。
学食で食ってもいいんだけどね、せっかく休みの日なんだから外で食べてもいいだろう。
ということでやってきたのは生産職の店舗が並ぶ通り。
夏休みなのに飲食店は盛況でありがたい限りですね。
むしろ朝から活動できる分、みんな活き活きしてるまである。
朝飯だし軽くハンバーガーでも買って済ませようかな、と思いながら通りを眺めていると見知った顔を見つけたので声をかける。
「おはよう、ケミー」
「えっ……? ジャックさんですかぁ。おはようございますぅ」
「ケミーは買い物?」
「いえ……、ちょっとお腹が空いたのでなにか食べようかと思いましてぇ」
なるほど、彼女は寝坊が原因の遅い朝食ではなかったらしい。
どこかの誰かとは大違いだ。
「じゃあ一緒に食べようか」
「いいんですかぁ……?」
「もちろん、ケミーが嫌じゃなければだけど」
「そんなことないですよぉ」
「ならよかった。せっかくだし奢るよ」
「ありがとうございますぅ。それじゃあお願いしたいことがあるんですけどぉ……いいですかぁ?」
「うん」
お願い?と思いつつもケミーのリクエストを聞いて店に入る。
「お待たせいたしましたー」
テーブルを挟んで向かい合って腰掛け、注文を済ませるとほどなく料理が運ばれてきた。
ドンッ!と置かれた一つの皿にはピザが一枚。
内容はテリヤキチキン、シーフードミックス、明太マヨジャガベーコン、チーズ&チーズを90度ごとに配置したクォーターだ。
なおサイズは二人か三人で分けるのがちょうどいいくらいの大きさで、二人で分けるとしてもケミーのように朝食と昼食のあいだの間食で食う量はない。
少なくとも俺の常識の中ではそう。
「? どうかしましたかぁ?」
「いや、なんでもない」
ケミーを見ると普通の顔をしているので、想定外の量が出てきたわけではないようだ。
「これ一人分だと作ってくれないんですよぉ……」
「スキルで作れるレシピがそのままだからしょうがないね」
生産系スキルで作れるアイテムはある程度アレンジが効くんだけど、ピザはサイズの変更はできなかったんだろう。
「だからジャックさんが一緒に来てくれて助かりましたぁ」
「役に立ったならよかったよ」
ちなみにカットは45度ごとにされているので、一つの味につき二枚で合計八枚。
二人ならそのまま半分ずつ分けられるようになっている。
まあどうにかなるか。
寝起きなのがネックだけど、ゆっくり食べればこれくらいの量はいけるはず。
むしろケミーのお腹が心配になるね。(体重的な意味で)
さすがに本人に言ったらセクハラすぎるので黙っておくけど。
「それじゃあ食べようか」
「はぁい、いただきまぁす」
「いただきます」
そのままケミーは明太マヨジャガベーコンに手を伸ばすので、俺は反対のシーフードミックスを手に取った。
シーフードといってもチーズが使われているので、カットした断面からうにょーんと伸びるチーズを上手くすくってそのまま口に運ぶ。
うん、美味い。
チーズに乗ったエビとイカとホタテを噛むと、じゅわっとうま味が口の中に広がっていく。
「美味しいですぅ……」
向かいの席のケミーも大変満足した表情を浮かべながら自分の分を咀嚼している。
「ケミーって結構食べるんだね」
「そ……そんなことないですよぉ?」
俺の指摘に恥ずかしそうに顔を赤くするケミーだったけど、さすがにそんな事はあると思うな。
まあ不健康すぎなければ止めたりもしないけど。
「ごちそうさま」
「ごちそうさまでしたぁ」
結局二人で半分こしたピザを完食してさすがに満腹。
デカいピザって腹に溜まるよねぇ。
これは夕食までなにも食べなくても余裕だな……。
「ケミーはこのあとどうする?」
「ギルドハウスに戻りますよぉ」
「なら一緒に戻ろうか」
「はぁい」
ということで約束通り俺が会計を済ませて、そのまま二人で並んでギルドハウスへ向かった。
………………
…………
……
ケミーと一緒にギルドハウスに到着して、俺はそのまま執務室で書類仕事を始める。
まずは全体の作業進捗を確認して、そのあとにギルドメンバーのレベルの確認。
作った装備の数と次の販売日に揃える予定の数を確認して、製作用の素材の在庫を確認。
あと素材の仕入れ値の確認と、ギルドの予算確認。
基本的にはクローネが既に確認してくれている部分だけどダブルチェックは大事だ。
今日は八月の一週目で、先週の七月末には店舗販売とオークションもあったから予算自体は同級生のギルドの中ではトップレベルに潤沢だろうけど。
これらの作業の中で一番重要なのはメンバーのレベル上げ状況。
原作と違ってこの世界では経験値バーの貯まり具合を確認できないんだよね。
なので次のレベルまであと何%くらいかは、必要経験値と獲得経験値から俺が脳内データで計算しないといけない。
あと各キャラのスキル適性でも差が出るから、その辺も考慮しないといけないしね。
まあ厳密に管理する必要はないし、俺もそこまで細かく計算できるわけでもないんだけど、おおよそ卒業までにレベル100を目指すなら大切。
終盤は1レベル上げるのに1ヶ月近くかかったりするからね、マジで。
ちなみに今のところは全体的に順調だ。
ただし帰省しているマリーロールは除く。
マリーロールは帰ってきたら二人でボスマラソンだね。
そのあとは特殊効果の付与合成で使う用の精霊粉を配合して、それを渡す相手を間違えないようにラベルを貼っていく。
ここは俺が一人で確認しないといけないので確認作業は慎重にする必要がある。
んー……。
間違えないように集中していると肩が凝るね。
コンコン。
自分の作業が終わってこの後どうしようかな、なんて思っていたら部屋の扉がノックされたのでそれに応える。
「どうぞー」
「失礼します」
ドアから顔を見せたのはクローネ。
ちなみに部屋のドアを閉じていたのは精霊粉の配合をしていたから。
この配合の詳細だけは未だにギルドメンバーにも教えていない極秘事項だ。
別にみんなを信用していないわけじゃないんだけどね。
教える必要がなくて漏れたら困る情報はそもそも教えないほうが安牌という情報管理の基礎に従っている結果である。
「ジャックさん、いまお時間よろしいですか?」
「もちろん」
「ではこちらを、ギルド単位での装備製作依頼の手紙です」
装備製作依頼とは文字通りうちのギルドに装備を作ってほしいってお手紙。
ユリウスたちのギルドにやったのをうちのギルドにもって話だね。
元から来ていたお手紙ではあったけれど、ユリウスたちがシズカたちを抜いて学年一位になったことと、そのユリウスたちにうちから装備が販売されたことが知られてからさらに数が増えていた。
「まあ受けるつもりはないんだけど」
「マリーロールさんもいませんしね」
「そうそう」
一式提供するには彼女の担当している装飾品が足りないので不完全だし、そもそもマリーロールはクローネと二人で交渉事の対外担当だし。
まあ装飾品が作れたとしても依頼を受ける気はあまりないけど。
今のトップ層はもうすぐ密林階層もクリアするだろうから。
すぐに型落ち品になる装備を高額で渡してもお金がもったいないだろう。
あとシンプルに段取り組むのがめんどくさいのもある。
「あとで確認しとくよ」
「わかりました」
とはいえ手紙に書かれているギルドの名前と代表名、攻略進捗と希望する装備なんかの情報は原作知識と合わせて活用(悪用ともいう)できるかもしれないのでありがたく受け取っておく。
手紙をまとめる手間でクローネの仕事が増えるんだけど。
その手紙の束を確認すると、優先順位が高い順に並べられていて彼女の仕事の細かさが見て取れるし。
ありがてぇ。
「いつもありがとね、クローネ」
俺が感謝の気持ちを伝えると、クローネは不思議そうな顔でこちらを確認する。
「どうかしたんですか?」
「日ごろの感謝を伝えておこうと思って」
色々とお世話になっているので今更かもしれないけど、気持ちは本当。
そんな俺の言葉に、クローネは逆にこちらへ頭を下げた。
「こちらこそ、いつもありがとうございます、ジャックさん」
「感謝されるようなことをした覚えはないけど」
クローネにはお世話になってばかりで世話をした覚えもないし。
「そんなことありませんよ。このギルドがあるのはジャックさんのおかげですから」
たしかにそれはそうなんだけど、自認として改めて感謝されるほどのことをしているかと言われると微妙なところだ。
まあでもそれくらい彼女たちのためになっているならよかったかな。
「今日寝坊した身からするとちょっと恥ずかしいけどね」
「寝坊したんですか?」
「うん、朝は弱くて」
「そうだったんですか? 知りませんでした」
そういえば確かに、平日は先に学校に行くし休日も約束に遅刻したことはなかったので、いままではそういう姿を見せたことはなかったかもしれない。
同じ寮の男子たちには結構な割合で朝弱男として認知されてるだろうけど。
そんな俺の言葉を聞いて、クローネがふっと笑う。
「私が起こして差し上げられればよかったんですが」
「それは心躍る提案だね」
まあ男子寮は女子は入れないから無理な話ではあるけれど、ありえないことを除けば素敵なシチュエーションであった。
………………
…………
……
執務室での作業を終えてお昼すぎ。
部屋を出てリビングに行くと、シャオとカッツェとグレイがお茶をしていた。
「みんなお疲れさま」
「ジャックもお疲れなんじゃよー」
三人は作業が一段落してここに集まっていたようで、俺もその輪に加わらせてもらう。
「三人はなんの話してたの?」
「寮の話とかだよー」
聞くと生産科の女子寮でも夏休みだけあってそういう話で盛り上がっているらしい。
例えば恋バナとか、あとはみんなでBBQした話とか、錬金術で花火を作って打ち上げたりだとか。
なにそれ楽しそう。
そう考えると生産科は戦闘科よりもできることがあってイベント事には向いているんだよね。
まあ全員が全員そうでもないんだろうけど。
「カッツェは寮だと普段なにしてるの?」
「……寝て……る?」
なんで疑問形かはわからないけど、いつも寝てるカッツェはイメージ通りだ。
「そうだ、ジャックに聞きたいことがあったんだけど」
なにかを思い出したように、グレイが俺へと視線を向ける。
「どうしたの?」
「ボクたちのギルドって水着は作らないの?」
「あー……」
コメントしづれー。
女子に囲まれた中で水着の話題に触れるのの面倒くささがすごい。
なんか言ったらセクハラになりそうだし。
とはいえ答えは沈黙、とはいかないけど。
「答えづらそうな顔をしておるの」
察してるなら話題を逸らしてくれてもいいのに、という俺の望みとは裏腹にシャオは愉快そうに笑みを浮かべている。
「?」
そんなシャオを見て、グレイは不思議そうな顔を浮かべた。
「えーと、それはグレイが水着を販売したいって話?」
「ううん、そうじゃないけど、ほかのギルドだと水着を販売するって聞いたからボクたちはやらないのかなーっと思って」
「なるほど」
確かに生産職の作れるアイテムには水着が存在する。
夏休みと浜辺階層ってシチュエーションがあるならなるほど一定の需要が見込めるだろう。
デザインも豊富だし、なんならこの世界では原作からさらに可愛くアレンジもできるかもしれないし。
「結論から言うと、うちのギルドで水着を販売する予定はないよ」
「どうして?」
「まず前提として、性能を求めて水着を買う層はそう多くないだろうって理由」
ちゃんと作ってちゃんと付与合成すれば水着も一線級の性能にはなるけれど、だからといってこの世界で水着を着たまま戦闘したい学生はそう多くはないだろう。
原作プレイヤーには沢山いたけど、リアル化したこの世界だと流石にね。
それに水着で泳ぐだけなら転移陣付近のモンスターがわかないエリアで遊べば付与自体いらないし。
「加えて言うとうちの作る装備と水着の相性が良くないこと」
水着でまず優先されるのはそのデザインだろうけど、うちの販売形式とは相性が良くない。
あれが良いこれが良いって見比べながら選べないしね。
あとサイズの問題もあるし。
「だけどみんなが作りたいっていうなら売ってもいいよ」
「あれ、いいの?」
「うん、みんながやりたいならね」
もし販売したとしてある程度は売れるだろうし。
そもそもギルドの一番の目的はみんなのレベル上げだから、資金繰りに困らない程度になら商品が売れ残ってしまっても別に困らない。
装備を完成させた時点でレベル上げって目的は達成されるからね。
なのでみんながやりたいなら俺は止めない。
別に浜辺階層が水着女子で溢れかえったらいいななんて思ってないよ。
ホントダヨ。
「まあ一番はカッツェにやる気があるかどうかだけど」
作れる水着のだいたいは裁縫師、つまりカッツェの担当範囲である。
一部彫金師であるマリーロールが作れる水着もあるけど……、この話はやめようか。
「私は……」
カッツェが短く呟いてそのまま黙り込む。
大丈夫? これハラスメントで訴えられたりしない?
「どっちにしても全員の意見は聞いたほうがいいだろうから、今すぐ結論は出さなくてもいいよ」
まあマリーロールは実家に帰ってるから聞けないけど。
彼女にあとから「聞いてねえんですわ!」とかって言われるかもしれないけど、言われるのは俺じゃないから気にしない。
「ジャック……」
「ん?」
「水着……、見たい……?」
カッツェに聞かれて、俺は死んだ。
………………
…………
……
とっくに日が暮れた午後九時頃。
寮に帰ってきた俺が玄関をくぐると、そこには見知った顔があった。
「ようジャック、今帰りか?」
寮に入ってすぐのラウンジでテーブルを囲んでる彼はクラスメイトではないがたまに話す相手。
ついでにいえば、夕食にはもう遅い時間に帰ってきたらその話題を振られるくらいには知り合いである。
「そうそう、デートしてた女の子が帰してくれなくて」
「ハハハ」
「なにわろてんねん」
「まあそんなことはどうでもいいんだが、ジャックさすがにこのあとは予定ないだろ?」
「いや、このあとはデートの予定が……」
「そういうのいいから」
「あっはい」
「今ちょうどゲームするのに四人目を探してたんだよ」
「あー」
俺と話している彼のほかに、テーブルを囲んでいるのは二人。
俺が卓を囲めばちょうど四人だ。
「了解、じゃあ部屋で着替えてくるわ」
「おっ、それじゃあこっちは準備しとくわ」
ということで一旦自室に戻り、ジュースを飲んで一息ついてからラウンジに戻るとテーブルの上には麻雀卓が設置されていた。
もちろん雀卓といっても自動雀卓ではなく、天板を一枚積んだだけの古風な手積み式だけど。
「おまたせ」
「そんじゃやるか」
「あいよー」
俺も椅子に座り、そのまま麻雀牌を両手でぐるぐると洗牌していく。
そして目の前に山を積む前に俺は左手へと指輪をはめた。
ちなみに麻雀は原作から存在するゲーム内ゲームで、ルールは日本式のオーソドックスなもの。
発無し緑一色はあり、大車輪はなしくらいのルールだ。
原作だと麻雀で勝つと仲間にできるキャラもいるぞ。
あと麻雀は結構音がする遊びなんだけど、周りも談笑していたりテーブルゲームを遊んでいる寮生がいるので注意されたりはしない。
みんなが寝てる個人の部屋もここからは距離があるしね。
特に夏期休暇はダンジョン探索終わってから寝るまでに余裕があるからこういう遊戯は盛況だ。
「リーチ」
左手に座っている上家が8巡目でのリーチ。
字牌と端牌から順に整理していったと言った様子の捨て牌に変な特徴は見えないので点数ヤバくは無さそうだけど、それでもリーチに振り込みたくはないかな。
「現物」
「現物やめろ」
「いやー、一発はヤバいでしょ」
「現物」
「だから現物ヤメロッテ!」
なんて言いながらも上がりは出ずに巡目は進んでいく。
「そいや知ってるか?」
「なにが?」
「今日学年一位が入れ替わったんだとさ」
「へー」
「入学からずっと今の一位だったのに入れ替わることもあるんだな」
「なんでも新しい方の一位は付与合成した三枠装備が揃ってるらしいぞ」
「なにそれヤバ」
「チートじゃん」
「俺たちにも売ってくれねえかなー」
「そもそも装備揃える金がないだろ」
「それな」
そんな話を聞きながら、俺が発声と共に手牌を倒す。
「ツモ」
「はぁ!?」
「ツモドラ1、500・1000」
「ダマテンじゃねーか」
「リーチ入ってたし安手だからなー」
「そういうのうちのシマじゃノーカンだから」
「んなわけないだろ、ほら点数払え」
「ちっ」
不満そうなメンツから点棒を徴集して再び崩した牌を混ぜていく。
「さっきの話だけど、新聞部が新しい儲け話を記事にするらしいぞ」
「それマジ? どこ情報?」
「新聞部の知り合い」
「へー、浜辺階層の貝殻マラソンは儲かったし期待してもいいかもな」
「心が死にかけたけどなアレ」
「その分オーラムはウマかっただろ」
「まあ作業が虚無すぎてみんなすぐ飽きるから儲かる部分もあったからなー」
「とりあえず明日は新聞記事確認しに行くか」
「だな。ということでリーチ」
十一巡目、対面の親が1000点棒を出しながらリーチをかける。
「通らば追っかけリーチ」
「はいロン」
「クソがッ」
「リーチ一発タンヤオ平和一盃口。……残念、裏は乗らず、12000だ」
「死〜」
「まだ瀕死くらいだろ」
「どっちにしろ十分痛いんだよなぁ……」
そんな話をしながらも局は進んで半荘終了。
俺は2回和了、振り込み0の3位終了だった。
「つーかジャック守りすぎじゃね?」
そんな指摘をされるけれど、まあ守備寄りの打ち方をしている自覚はある。
「振り込むよりはいいでしょ」
「それにしても攻めるときは攻めないと順位上がらないだろ」
「そうなんだけどね、でも個人的には堅く守るほうが好き」
まあ本当に上手い人はその場に応じて攻めも守りもこなすんだけど、俺はそこまで上手くないんで。
こればっかりは個人の趣味である。
「そんなことより次の半荘始めようぜ」
「はいはい」
ということで全員で山を積んで、自分の手から順に牌を切っていく。
「リーチ」
「リーチにビビるなんて雑魚のすることだぜ! 生牌赤五筒!」
「それロン」
「ぐあああああ!」
「お前は全ツッパやめろ」
「キエエエェェェーーーッ!」
薩摩武士かな?
………………
…………
……
「そろそろ寝るかー」
半荘が3回終わった頃、メンツの一人が伸びをしながらそう呟く。
「んだなー、明日もあるし」
別に夏休み中だから徹麻するのも物理的には可能ではあるんだけど、ダンジョン攻略を考えたらそろそろ切り上げるのが妥当な頃合い。
結構打ってたけど、まだ明日の朝までに七時間は寝られるから翌日に影響がでない範囲の遊びではあった。
「んじやおやすみー」
「やすみー」
「すみー」
「みー」
牌と卓を片付けてから各自解散をして俺も部屋に戻る。
「ふー、遊んだ遊んだ」
部屋の中で一息をつく。
今日麻雀を遊んだ三人は浜辺階層をクリアして密林階層に進んだくらいの攻略度合い。
一学年全体で見れば平均よりちょっと上くらいの進捗だ。
今のトップが28階層なので彼らが21階層から追いつこうと思うには既にかなり困難な差がついている。
それでも雑談で聞こえた彼らのモチベーションは高いようで、個人的にはこっそりとありがたい話であった。
同程度の進捗の一学年全員がそうなわけじゃないだろうけどね。
確かにやる気の向上に繋がってるというのは、俺にもメリットがある大切な話だ。
んじゃ、明日もあるしそろそろ寝ますかね。
部屋の明かりを消して、ベッドに入る。
ああそうだ、忘れてた。
自分の左手にはめていた指輪を外す。
この指輪と部屋で飲んだジュースは運のステータスをアップさせるものだったんだけど、効果は実感できなかったかな。
運のステータスが麻雀には効かないのか、それともステータスの上昇量が小さくて効果が実感できなかったのか。
多分前者だと思うけど今のところは検証できないかな。
そもそもズルじゃないかって?
ルールに記載されてないから大丈夫だ、問題ない。
前提として運の数値に元々個人差があるからね、多少装備で補っても素で恵まれているキャラには追いつけない程度なのだ。
明日も寮に帰ってきたら誰か誘って指輪なしで麻雀しようかな、なんて考えながら目を閉じた。
おやすみなさい。
スヤァ……。
・水着
生産職の主に裁縫師が生産できるアイテム。
カテゴリーは服防具。
物理防御は控え目だが属性防御は比較的優秀なものが多い。
デザインはビキニタイプからワンピースタイプ、スク水タイプまで様々。
素材を使って好きな色に染色する事ができる。
原作プレイヤーからは太ももストラップ(脚防具)などと合わせられることが多い。
なお水着自体は他の防具と同様に各ランクに装備があり、高ランクでしか製作できないデザインの物も存在する。
そういえば7話でジャックはアクアさんと水着デートの約束をしていましたね。(してない)