ダンジョン学園、ゲーム転生ソロ攻略中。   作:塔乃登

4 / 9
前回のあらすじ
アクアとパーティー解散したジャックは、その足で再びダンジョンに戻った。


004.ソロ探索とランキング

 いや、ちゃうねん。

 

 別にアクアさんが嫌いとかそういうのじゃないねん。

 

 ただちょっと、試したいことがあるから一人で探索したかったっていうかね?

 原作の知識や経験を元にアレコレするから他人に見られると都合が悪いっていうかね?

 要するにソロ用の戦い方を確認したかったってことでね?

 

 なんて心の中で自己弁論をしつつ、周囲を見渡して人がいない南東へと歩き始める。

 二階層は一階層に比べるとかなり広くなっていて、正解を知らずに探索すると一日じゃ終わらないくらいのフィールドの幅を持つ。

 加えてモンスターの種類も増えているので、それに対応した戦い方が求められることで進行速度も抑えられるはず。

 

 初見ならの話だけどね。

 なのでこの2階層にもそこそこ攻略中の人がいるはずだけど、基本はスタート地点から北というセオリーは正解なので必然的に南にいる人は少ない。

 転移陣の近くにいた同級生たちも、数分歩けば誰もいなくなっていた。

 

 周りの風景はあいも変わらず草原が続いているけれど、点在している目立つ岩や立っている木の並びが現在マップのどこを歩いているかを教えてくれる。

 うーん、実家のような安心感。

 

 そろそろいいかな?

 ということで片手剣と小盾はインベントリにしまって、代わりに取り出したのは刀。

 このゲームでは刀が単独カテゴリーとしてスキルレベルが独立している。

 両手武器だけあって、片手剣より重いけどまあ振るのに問題はない。

 

「おっ、ホーンラビットだ」

 

 遭遇したモンスターはその名のとおり、一本角の生えたウサギ。

 大きさは脛のあたりくらいで、角は20センチくらい。

 対面すると角の殺意が結構高いな。

 

 こっちの世界だからいいけど、前世?で遭遇したら普通に全力で逃げ出すような見た目。

 そのホーンラビットがこちらの存在に気付いて突進してくる。

 ゲーム時代はキャラクターの後ろから眺める空中カメラ視点だったから気付かなかったけど、自分の目で見る主観視点だとその速度は結構速い。

 

 まあそれでも、問題はないけれど。

 軽く足を開いて、腰に差したままの刀を握る。

 そしてホーンラビットが間合いに入る瞬間に、それを抜いた。

 

「『居合』」

 

 スキルの発動で放たれた居合斬りが鞘から滑るように三日月を描き、ホーンラビットの角と重なる。

 キィィンッ──。

 聞き慣れたヒット音が響き、弾き返されたホーンラビットが地面に倒れた。

 

 これが『居合』の効果。

 敵の攻撃モーションに合わせて当てると、その敵の攻撃を弾いたうえでダウンを取ることができる。

 いわゆるパリィによるカウンター攻撃だ。

 敵の攻撃を弾いた上にダメージも入る攻防一体の優れもの。

 

「よっと」

 

 そのまま無防備なモンスターに追撃すれば、一丁上がり。

 光の粒子となったホーンラビットのあとには、魔石が残される。

 これが俺の『ダンジョンソロ攻略』の基本戦術。

 

 居合で弾いて無防備になったところを殴る、モンスターがダウンから復帰してきたら再び居合で弾いて殴る、以下無限ループ。

 無敵すぎでは?と思われるかもしれないけど問題点が一つ、それはカウンターの受付可能時間が『0.13秒』しかないこと。

 フレームでいうと8/60フレーム。

 

 それを外すと普通にそのまま殴られて死ぬ。いや、ワンパンでは死なないけど。

 そしてその0.13秒を成功させるには結構な慣れが必要なのだ。

 当然誰でも簡単にできる芸当ではない。

 

 だから人前で居合を使って全部の攻撃を弾いてたら、明らかにおかしい奴として不要な注目を集めるのは必定。

 異世界人という立場で目立ってもいいことはないので、やっぱりソロ安定なんですね。

 

「よし」

 

 声をだしてそのまま走り出す。

 懸念だった居合のカウンターがリアルになったこの世界でも問題なく使えるとわかったので、今ちょっとだけテンションが上がっている。

 まず居合の仕様が原作通りか、そしてそれを生身の俺が使いこなせるかが一番の不安材料だったからね。

 

 あとは他のモンスターにも通用すれば安心、なんて考えながら次のターゲットを発見。

 見つけたのはスライム。

 軟体生物は居合で弾けるのか、物理法則的にはちょっと怪しい気がするけどどうかな?

 ゲーム時代は普通に居合でパリィできたけど……、まあ試してみればいいか。

 

 速度を落とさずスライムの探知範囲に踏み込んで、そのまま走って距離を詰める。

 そのまま間合いに入ると、来た。

 互いの距離での条件判定を満たして、ある意味で機械的に行われたスライムの体当たりを完璧なタイミングでカウンターする。

 

「『居合』」

 

 ホーンラビットの再現のように合わされた居合の刃は、スライムをその場に叩き落した。

 よしっ。

 スライムは居合でOK。

 

 この世界のスキルは物理法則を超越するらしい。

 まあ上位スキルでは剣からビーム出たりするからおかしくはないか。

 

「えいっ」

 

 スライムにそのままトドメを刺してドロップアイテムを回収。

 そして再び走り出す。

 

 次に見えたゴブリンはこん棒に合わせて『居合』。

 次はキラーアントの噛みつきに合わせて『居合』。

 また見えたホーンラビットの突進に合わせて『居合』。

 

 索敵も観察もなく、走ってモンスターが見えたら突っ込んで弾く、斬る、また走る。

 

 うおおお!!! いまの俺は無敵だ!!!

 嘘です、別に無敵ではないです。

 ソロで自身が戦闘不能=全滅ペナルティだからね、油断大敵でいかないとね。

 

 とはいえソロで行動するだけのメリットは有り、パーティーを組んでいたらとてもできないようなマラソンレベリングのおかげで、俺の刀スキルのレベルはその日のうちに1→3に上がった。

 レベル1→2に比べて2→3は結構必要経験値が上がるんだけど、パーティーメンバーで頭割りされずに独占できる経験値はちょっとうま味すぎる。

 

 うーん、満足。

 こうやって効率よく稼ぎをしているときが、一番ゲームをハックしてる感じがして楽しいよね。(個人の感想です)

 ゲームをやってた頃みたいに、そうやって熱中しすぎて翌日寝不足になるような心配もないし全力で狩るぞ。

 そう思った俺は再び足取り軽く走り出した。

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 おえっ……、吐きそう……。

 テンション上げた結果無限に走り回ってたら体力が尽きたうえに吐き気がすごい。

 完全に普段しないのに急に運動しすぎた人になってる。

 

 そもそもこの体は戦闘に耐える性能のゲームキャラなので普通に運動するだけなら問題なかっただろうけど、流石に辻斬りマラソンは許容範囲外だった模様。

 ゲームじゃいくらキャラクターを走らせても疲れなかったのに理不尽だろ……。

 まあアクションゲームなのでスタミナゲージ的なものはあったけど、それはもっと短期的な部分だったし。

 

「ふう……」

 

 原作の仕様外の部分は想定してなかったなあ、なんて思いながら草原に寝転がる。

 元の世界じゃ草の上でごろごろすることなんてなかったのでちょっと気持ちがいい。

 吐きそうだけど。

 

 雑草のチクチクとした感触と匂いはどこか懐かしい子供の頃を思い出す感覚。

 急にこの世界に放り出されて少なくとも三年間はここで過ごすことになりそうと分かったときはどうなることかと思ったけれど、まあどうにかなりそうかな。

 

 折角だし、好きなゲームの世界で生きることを自由に楽しもう。

 

 視界いっぱいに広がる青空を見ながら、俺はそんな風に思うのだった。

 

 

 

 ☆★☆★☆

 

 

 

「おはよう、ジャックくん」

「おはよう、アクアさん」

 

 翌日、寮から登校するとクラスでアクアさんに挨拶をされる。

 昨日の今日なので自然な流れではあるけれど、昨日までクラスに知り合いがいなかったので不思議な感じだ。

 

「授業始めるぞー、全員席に着けー。あとアレックスは座るな、そのまま立ってろ」

「なんでですか!?」

 

 なんて日常風景を見ながら俺は席に着いた。

 

 

 

「それじゃあ今日はユニークスキルについて説明するぞ」

「センセー、ユニークスキルってなんですかー?」

 

 オルガさんの質問にスカーレット先生が答える。

 

「ユニークスキルというのは個人技能の俗称だな。まず前提として個人に依らない通常スキルの説明をしておこう。通常スキルというのは武器などのメインスキル、メインスキルと共存できる形で盾などのサブスキルが存在する。基本的に別々の武器種を同時に使うことはできないが、片手剣と盾など同時に使えるものがあるのは前者がメインスキルのカテゴリーにいる一方、後者がサブスキルのカテゴリーだからだ。サブスキルは盾スキルの他にも鎧スキルなどもあるな」

 

 片手剣と片手斧は左右に両方持っても同時にスキルを使うことはできないけれど、片手剣と小盾が両方同時に使えるのはこれが理由。

 盾に小盾・中盾・大盾の三種類があるように、鎧系にも軽装・軽鎧・重鎧の三種類が存在する。

 まあ『パリィ』が使える小盾とか『シールドバッシュ』が使える大盾と違って、鎧にはアクティブスキルがほとんどないから地味だけどね。

 

「さらにメイン/サブと別の分類としてあるのがアクティブスキルとパッシブスキルだな。アクティブスキルは『スラッシュ』のようにSPを消費して発動するもの。パッシブスキルは『斬撃ダメージ+5%』のように常時効果を発揮しているものだ。実際に『斬撃ダメージ+5%』は片手剣スキルレベル15で獲得できるのが確認されているぞ。レベルアップで急にダメージが上がったと思ったらこういったパッシブを獲得している場合が考えられる。各武器の低レベルパッシブは教科書にも纏められているので自分の武器ではどうなっているか確認しておけ」

 

 原作だと武器で覚えられるスキルは全部確認できたんだけど、この世界じゃステータスウィンドウに表示されるのはアクティブスキルの名前だけなんだよね。

 なのでパッシブスキルには解明されていない部分が多い様子。

 

「さて、ここまで長くなったが本題のユニークスキルはメイン/サブとは別の系統のスキルとして扱われることが多い。実際の効果としてはパッシブスキルに近いものが多いな。具体的には『片手剣を使用時、自身の攻撃力+10%』など固有の効果を持ち、個人個人が別の効果を持っている。そのせいで詳細を把握するには手間がかかることもあるぞ。この中で自身のユニークスキルを把握しているものは手を挙げてみろ」

 

 そう言われて手を挙げるのはクラスメイトの半分ほど。

 

「手を下げていいぞ。このクラスではおおよそ半分が自身のユニークスキルを把握していると『認識』していることがわかった訳だが、実際にはこの数字が正しいとは限らない。なぜなら自身のユニークスキルを勘違いしているというケースがあるからだ。今、自分は間違っていないと思っただろう? 実際にその認識が正しい場合がほとんどだろう。ただしそうでない場合は大きく損をしている可能性も存在している」

 

 この世界じゃユニークスキルは名前も効果もわからないからね。

 条件がわかりづらいのもあって正確に把握されていない可能性は十分にある。

 

「例えば前述した『片手剣を使用時、自身の攻撃力+10%』が、実は『片手武器を使用時、自身の攻撃力+10%』だったなんてことも考えられる。逆に『小盾を使用時、自身の攻撃力+10%』なんて可能性もあるな。これ自体は片手剣と小盾を使っているなら全て適応されるパッシブ効果は同じだが、片手武器が条件なら片手剣から片手斧に持ち替えるという選択肢も生まれる。逆に小盾が条件なら片手剣を使い続けても中盾に持ち替えたときに攻撃力上昇を受けられなくなる」

 

 もし攻撃力が上がっていないことに気付かずに使い続けていたら、それはかなり損をすることになるだろう。

 

「ではどうやって条件と効果を把握するのかといえば、まずは自身の『ステータス』とにらめっこすることだな。そんな馬鹿なと思った奴もいるかもしれないが実際にこれが一番簡単だぞ。自身のステータスを見ながら行動して、ステータスに変化があれば高確率でそれが個人のユニークスキルだ。逆にステータスでわからないのが威力上昇系。例えば『光属性魔法を使用時、威力+10%』なんて効果だと攻撃力上昇と似たような内容だがステータスには反映されない」

「じゃあどうやって調べればいいんですか?」

 

「そういう場合は使用武器とそのスキルレベルが同じ相手と数字を比較するのが一番わかりやすい。ユニークスキルで補正がかかっているならダメージに差が出るはずだ。逆にステータスに大きな差があるなら、常時効果を発揮しているパッシブスキルがある可能性が高い。その際に注意する点は、比較する二人が両方威力上昇のユニークスキルを持っていると正しい数字がわからない場合だな。AよりBの方がダメージが5%多いが、実際にはAが+10%のパッシブ、Bが+15%のパッシブを持っている、などというケースも考えられる。比較するなら既にユニークが確定している相手に頼むといいだろう」

 

 細かい条件があったりしてその方法じゃわからなかったり、あとデメリット付きのユニークもあったりするから人によって大変だったりするんだよね。

 

「他の方法もこれから説明するが、もしそれらを試してみてもわからなかったら教員に相談するように。逆に面倒だからと言って授業で説明された方法を試す前に聞きに来るなよ。教員も暇じゃないからな」

「はい!」

 

 気合の入ったクラスメイトの返事を聞きながら、しばらくはクラスの中でもユニークスキルの話題で持ちきりになるんだろうなあと少しだけ面倒くさい気分になった。

 

 

 

 ☆★☆★☆

 

 

 

 学園に入学してから1週間ほどして、俺は学内にある掲示板を眺めている。

 掲示板と言っても学内のお知らせが貼り出されているわけではなく(そういう目的の場所もあるけど)、目の前にあるのは学生のランキング。

 なんのランキングかと言えばもちろん、ダンジョンの踏破進度だ。

 

 まず全体のランキング1位は当然の3年生。

 階層は64階層。

 学生生活の2/3で階層の2/3を攻略していると見れば順調に見えるかもしれないが、階層の攻略は放物線状に鈍化していくので100階層攻略は不可能だろう。

 とはいえ、主人公が絡まない学年の攻略進度としては平均的な物なので遅いというわけでもない。

 

 そんなランキングの隣には学年別のランキング。

 3年の名前は全体と同じく、2年はそれより約20階層ほど下の45階層。

 

 そして1年のトップは現在5階層。

 ほとんどの新入生が初日にチュートリアルとして1階層をクリアしたとはいえ、2階層以降はフィールドがかなり広くなるのでこれはそこそこの数字。

 この感じだと四月中にトップは10階層をクリアするかな。

 

 ちなみに全体順位は100位まで、学年別順位は50位まで表示されている。

 あんまり目立ちたくない俺としては、当然ここにも名前を載せたくないので、同級生たちには頑張ってほしいところだ。

 

 なお俺の到達階層は今3階層。

 おそらく順位で見れば数百位とかなんじゃないかな。

 3階層攻略者の最高順位は多分200位くらいで、俺は400位くらいとかだと思うきっと。

 というのも最高到達地点が同階層の場合は、先着順で並びが上になるんだよね。

 

 んでその関係で、問題が一つ。

 100階層攻略の『ベストエンド』は学校で最高成績の生徒として表彰されるんだけど、もしかしたら一番最初に100階層を完全攻略しないと条件達成できないかもしれないと言う懸念がある。

 なんでかって言うと100階層攻略が2番目以降になると順位表記が『#005:ジャック』とかになるんだよね。

 

 これで学校から表彰してもらえて、ベストエンド判定をクリアできるかと言われるとちょっと怪しい。

 まあ100階層攻略自体はこの世界では偉業だから、絶対に表彰してもらえないとも言わないけど、それを信じて計画を立てるほどの期待値じゃないかな。

 

 ゲームの頃は主人公以外のPTがダンジョンを完全クリアすることはなかったし、PTは全員同順になるのでそういう心配をする必要がなかったんだけど。

 でもゲームがリアルになったここではキャラクターがみんな自立して行動しているので、万が一が存在する。

 

 ということで俺の理想は、当分の間は目立たないようにランキングに載らない順位に抑えつつ、最後は全部抜いて一番最初に100階層攻略を達成すること。

 めんどくさい? 俺もそう思います。

 

 まあ予定が崩れたり、何か想定外のイレギュラーがあったらその時は本気出すということで。

 しばらくは攻略よりも、足元を固める期間になるかな。

 到達階層の更新より、というかその前にやるべきことがあるし。

 

 ということでこれからの方針を決め、帰ってダンジョンに行こうかと振り返ると、一人の女子生徒が立っていた。

 

「こんにちは」

 

 今は放課後、同級生達の多くはダンジョンに潜っているであろう時間だけあって周囲に人は居らず、その挨拶は俺に向けられたもので間違いがない。

 彼女と面識はないんだけど……。

 

「こんにちは。はじめまして……、ですよね?」

「え? はい、そうですね。はじめましてです」

 

 なぜか彼女はおかしそうにクスクスと笑って答える。

 それに合わせて揺れる長い翠色の髪と、吸い込まれそうな深い瞳。

 整った顔と、薄い表情。

 大笑いというわけではないけれど確かに微笑を浮かべているはずなのに、あまりその顔からは感情が伝わってこない不思議な表情だ。

 

「私、シズカって言います」

 

 知ってる。

 珍しい髪色と特徴的なその瞳は、見間違えようがなく原作キャラの一人だ。

 しかもただの仲間キャラではなく、同学年にいる最強格の一人。

 

「貴方のお名前をお聞きしてもよろしいですか?」

 

 そんな彼女が興味深そうに、顔をぐいと寄せてこちらを覗き込む。

 

「ジャックです」

 

 原作での主人公との初対面ではこんなに急に距離を詰めてきたりしないはずなのに何故、という疑問が俺の脳内に浮かぶ。

 そしてその答えは、すぐに彼女の口から発せられた。

 

「ジャックさん。…………、貴方、不思議な眼をしていますね」

 

「眼?」

「ええ。私はその人も目を見れば、相手がどんな人かだいたい分かるんです。でも貴方は不思議。こんなに何も見えない人は貴方が初めてです」

「そんなに変人な自覚はないんですけどね」

 

 言い訳をしながらも、思い当たるのは二つのこと。

 ひとつは、俺自身。

 何も見えないというのは、俺が元々この世界の人間じゃないからだろう。

 

 まあ現代日本に生きていたという特異な記憶を持つからか、それとも原作キャラの身体に憑依している異物だからかはわからないけれど。

 どちらにしても人に知られたくない、知られたら面倒なことになる厄ネタだ。

 

 そしてもう一つは、彼女のこと。

 突然だが、このゲームのキャラクターは固有のキャラ特性、いわゆる『ユニークスキル』を持っている。

 その中には俺の持っているものみたいにわざわざ説明する必要もないようなハズレのスキルから、それだけで他のキャラと格差が生まれるくらい圧倒的に優秀なものまで幅が広く。

 

 そして彼女のユニークスキルは最上級の代物だ。

 そのスキル名は『心眼』。

 効果は『全ての攻撃の確定クリティカル』と『敵の攻撃の確率回避』。

 

 どっちかだけでもヤバいことが書いてあるのに両方揃ってるの壊れすぎだろと原作プレイヤーなら誰もが思う効果。

 特に前者はヤバい、対人ゲームなら秒でナーフされるくらいぶっ壊れてる。

 まあその分、仲間にできるタイミングは全キャラで最後くらいに遅いんだけど。

 

 といったここまでの説明で気付いた人もいるんじゃないだろうか。

 おそらく彼女の『人が見える』というのは、『心眼』が現実になって適用された結果なんだろう。

 戦闘中には全てを見切る最強の眼は、それ以外の場面でもあらゆるものを見通すらしい。

 

 原作で主人公と絡むときはこんな感じじゃなかったという原因は、俺の特異性のせいで、それは絶対に知られたくない秘密なわけで。

 つまりなんというか、今すぐここから逃げ出したい。

 当然そうもいかないんだけど。

 

「ジャックさん」

「なんでしょう?」

 

 脳味噌を高速回転させてそんな推論を組み立てていた俺に、彼女は提案をする。

 

「よければ私とパーティーを組みませんか?」

「シズカさんって、あのシズカさんと?」

 

 視線で示すのは、1年ランキングの一番上。

 そこには見間違えようもなく、『#001:シズカ』と書かれている。

 要するに今この学年で一番強いのが彼女だ。

 

「ええ、あそこに書いてあるのは私のことです」

「なら実力的に釣り合わないですよ」

 

 俺の当たり前の返答に、彼女はなぜか心底不思議そうな表情を浮かべた。

 

「? そんなことないでしょう?」

「……、というと?」

「だって貴方は、とても強そうですもの」

 

「こちらのことはよく見えないって言ってませんでしたっけ?」

「ええ、でも強いかどうかくらいは眼を見なくてもわかりますから」

「なるほど……」

 

 ハッタリか?

 いや、立ち居振る舞いや動作でスキルレベルやステータスを見抜いている可能性もあるか……。

 彼女のユニークスキルの性能から逆算すると、それくらいのことはできてもおかしくないと思えてしまう。

 

「私、貴方にとても興味があるんです。人のことをもっと知りたい、そんなふうに思うのは初めてかもしれません」

 

 聞きようによっては、熱烈な愛の告白に聞こえるかもしれないそんな言葉は、今の俺からしたら嫌な予感が脳内でガンガンと警鐘を鳴らしている。

 

「それで、どうでしょう?」

 

 しかし彼女からは、とても逃げられる気がしない。

 

 そんな彼女に俺の答えは────。

 




【キャラクター図鑑/No.067】
キャラネーム:シズカ
性別:女
身長:普通
胸:普
髪色:翠
髪型:ロング/ストレート
瞳色:翠
年齢:15歳(ゲーム開始時)
誕生日:5月4日
呼称:私/貴方
カテゴリー:原作キャラ/パーティーメンバー/同級生/貴族
パーティー加入:制限有り(二学年後期以降、踏破ランク上位に入ったうえで専用イベントを達成)
武器適正:刀(180%)/槍(165%)/刺突剣(165%)
ユニークスキル:『心眼』(全ての攻撃の確定クリティカル+敵の攻撃の確率回避)
キャラtier:【S】
公式人気投票:【34位】
備考:スキル適正、ユニークスキル共に非常に優秀なキャラ。
最強パーティー編成議論では常に有力候補に挙げられる。
第一適性は刀は全キャラ中最高適正、成長倍率で比べれば全キャラ全武器種の中でもほぼ最高クラス。
それだけでなく第二適性の槍、刺突剣でもキャラtier:Sに入れるほどの高倍率を持つ。
仲間にすればどれを持たせても、パーティーの主力アタッカーとして活躍できるだろう。
彼女が結成するギルド『花天月地』は最終学年まで主人公とトップを争うギルドの一つ。
普段は泰然自若とした性格だが、興味の引かれたものには強い執着を示す。
名前や得意武器を見ても分かる通り、極東の国の血筋を引いている。
好きな食べ物はアイスキャンディー。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。