化け蜘蛛飼育(?)日記   作:渋音符

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 思いついたので。


2話

 

 

 ○月△日

 

 目が覚めたら部屋の真上にくそでかい蜘蛛がいた。何で?

 

 

 

 とりあえず一旦落ち着いたので、改めて日記の続きを書いていく。

 一先ず寝ている内に食われる、みたいなことは起きなかったみたいで一安心。まだ家の中の糸とか、天井に取り付いている大蜘蛛とかはそのまんまだし、自体は一つも好転してないけど一旦それは置いておく。

 ……なんか今目があった気がするけど気のせい気のせい!そういうことにしておこう!うん!

 

 隙を見て日記と万年筆を持って寝室の外に出ることはできた。あの大蜘蛛が着いてくる気配はない。ただ僕の様子をじっと見つめていた。

 というかアイツ、昨日の蜘蛛……だよな?めちゃくちゃでかくてびびったけど、なんとなく面影があるような、ないような。もうちょっとよく見てみなきゃ分かんないけど、でもでかい虫ってだけで怖いし、なんなら気味が悪い。観察はよっぽどのことがあってもしないでおこう。

 

 なんか、仕事のこと考えたくないな。すごい嫌だ。この状態で外出したくない。帰って来た時に家がどうなっているか想像したくもない。

 かといってこのままあの大蜘蛛と同じ屋根の下で過ごすのも……。

 というか、休む時に仕事場にどうやって言い訳すんの?「くそでかい蜘蛛がいるんで休みます」?通る訳あるかそんな理由!

 うーん、仮病使う?でも気が引ける。生まれてこの方ズル休みなんてしたことないし、病気で休むのを人に伝える時もなんだか居たたまれない気持ちになる。出勤できるならそれに越したことはないだろう。

 

 しばらく考えて、普段通り出勤することにした。

 なんかくそでかいし滅茶苦茶知性ありそうだから、蜘蛛には一応「これから出掛けてきますが、どうか変なことはしないでください」と懇願しておいた。頭が少し揺れたのは偶然なのか、頷いてくれたのか。見れば見るほどつぶらな目をしている。餌として品定めされてるのかも。気分悪くなってきた。

 

 クローゼットからスーツだけ引っ張り出して、日記帳と万年筆を持って部屋の外に出た。扉は閉めた。アイツは着いては来なかった。僕の寝室を根城にしてるらしい。冗談じゃない。

 急いで喉を潤して、着替えて、出掛けることにする。帰ってきた時にはどうかいなくなっていますように。出来れば張り巡らされた糸も撤収してほしい。マジで。

 

 

 

 仕事を終えて帰ってきた。現在時刻は21時。取り敢えずリビングで日記を書いている。

 

 まずは朗報。家の中の糸が減っていた。天井には結構緻密に糸が張られているが、少なくとも僕が行き来するような場所にあった糸はなくなっている。

 多分僕がちょっと移動しにくそうにしていたのを見ていたのかもしれない。配慮……なのだろうか?いや、僕に配慮をするという時点でもう普通の蜘蛛ではないからくそ怖いけど。これ朗報じゃなくて悲報じゃね?

 

 取り敢えず次。悲報。蜘蛛いなくなってない。というか、リビングの天井に張りついてこっちを見てる。行動範囲広がってる。

 てか、ドア閉めたのにどうやって寝室から出たんだ?僕が知らないだけでこの家天井裏とかあるの?それともドアを開けて出てきたの?どっちにしろくそ怖い。

 

 取り敢えず寝室に引っ込んでぱぱっと服だけ着替えてしまう。飯は外で食べてきた。ちょっと前の自分にファインプレーと言いたい。大蜘蛛に見守られながら飯食うとか、ちょっと出来そうにない。

 

 飯を食うで気になったけれど、あの大蜘蛛、何を食べるんだろう。アイツが昨日のアイツであるということが合っているなら、あんだけ成長してるってことだよな?てことは餌なりなんなりで栄養をきちんと蓄えているん、だよな?

 どんだけ害虫まみれだったんだ、僕の家。というか、僕が気付いていないだけでとんでもない魔境に住んでるのか?居抜き物件なんて買うんじゃなかった。これからあの不動産屋は絶対利用しない。

 

 ……怖いけど。めっちゃ怖いけど、風呂に入りたい。流石に体を洗わずに寝るのはなしだ。身だしなみ的な意味もあるし、自分の気分的にも。ただ、あんな大蜘蛛がいる家で裸になるってのは、文字通りの据え膳になってしまうのではないかという懸念(けねん)もある。

 洗面所に鍵掛けたらいけるか?アイツ、ドアは開けるみたいだけど鍵までは流石に……いけそう。別に家の中まで鍵穴付きのドアだったりはしないし。すごい鳥肌立ってきたどうしよ。

 

 リビングに戻ると、大蜘蛛はじっとこっちを見ていた。じっと、っていうか、じぃぃぃっと、みたいな。何考えてるか分からない。つぶらな目が恨めしい。

 頭を下げながら「今から風呂入るから入ってこないでください。お願いなので」と懇願する。ちょっと頭を震わせるのが逆に怖い。意図は通じてそうだけど、言うことを聞いてくれるかはまた別。

 着替えとバスタオル、後日記帳と万年筆を持って洗面所に(こも)ったが、入浴中に襲われないことを祈る。

 

(濡れたのか、少しページがふやけている)

 

 取り敢えず風呂は上がった。少なくとも入浴中は無事に過ごせたみたい。一応耳は澄ませてたけど、変な音とかはしなかった。

 寝間着に着替えたし、寝室に戻ろうと思う。

 

 

 

 くそ吃驚した。マジで。一瞬死んだかと思った。

 洗面所の外、すぐ目の前の壁にあの大蜘蛛が張り付いていた。怖かった。自分の物と思えないか細い悲鳴が喉から漏れた。なんなら他のも漏れそうになった。

 僕の悲鳴に驚いたのか、大蜘蛛はびくりと身体全体を震わせて、壁を登り、天井を()ってリビングまで退散していった。意外とびびりらしい。奇遇だな。僕もびびりだ。

 リビングに顔を出すと、アイツは隅っこの方で身体を(すく)ませてこちらを見ていた。「びびらせてすみません。でも、こっちもとてもびびりました」と正直に言うと、頭を少し震わせた後にこちらとの距離感を計るように少しずつ天井を這って移動し始めた。ちょっと可愛かった。嘘。やっぱりまだ怖い。

 

(二重線で消された文章が何行も続く)

 

 端的に記す。寝室にハンモックみたいなのがあった。糸で出来ている。多分、あの大蜘蛛用。アイツここで寝る気らしい。ちょっとベッドと距離があるのは、アイツなりの配慮なのかもしれない。

 まだリビングにいるアイツにハンモックを使って寝るのか聞くと、また頭が少し震えた。多分肯定の合図。なんで僕蜘蛛と意志疎通してんだろう。慣れって怖いね。まだ慣れきってないけど。

 

 ……今日はもう寝よう!そうしよう!大丈夫だ。食われるならもう既に食われてる。だから無事に寝て起きれる!きっと!そう思わないと怖くていつまでも寝られないし、睡眠のためにやってきた大蜘蛛と夜中の間ずっと目を合わせることになってしまう。絶対に夢に出る。嫌だ。

 色々考えたけど、アイツもこの部屋に寝に来るんなら、ドアは開けっ放しにしておいてやるくらいはしよう。閉じきって入れないようにするのも忍びないし。というか自力で開けられるから無駄だし。

 

 それでは、寝ます!明日も生きてますように!マジで。

 

 





 次回は未定。
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