アマテラス。
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艦内は静かだった。
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だがそれは、
休息の静けさではない。
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“何かが近づいてくる前の静けさ”
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誰もが、
無意識にそれを感じ取っていた。
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通路を歩く整備員達も。
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ブリッジ要員も。
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医療班も。
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誰一人として、
理由を説明できない。
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だが全員が、
どこか呼吸を浅くしていた。
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■医療区画
消灯された室内。
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レイジ・イルマ。
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ベッドに横たわったまま、
天井を見つめている。
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眠っているわけではない。
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眠れないわけでもない。
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ただ、
意識だけが“遠い”。
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指先に、
深蒼の残光が微かに揺れている。
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■レイジ
「……まだ、来てないのか」
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誰にも届かない声。
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だがその瞬間。
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空気の奥で、
何かが“応答”する。
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潮騒。
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耳鳴り。
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深海のような重圧。
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レイジの呼吸がわずかに止まる。
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■レイジ
「……っ」
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今の感覚を、
まだ言葉に出来ない。
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だが確実に。
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“向こう側”は近づいていた。
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■アナハイム極秘工廠(未接続領域)
海沿いコロニー外郭。
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暗い巨大ドック。
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照明すら落とされた最深部。
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そこに、
“器”が眠っている。
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■リヴァイブ・ガンダム(未起動)
深蒼のフレーム。
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未完成の装甲。
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未接続の駆動系。
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だが。
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内部だけが、
微かに呼吸している。
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まるで海の鼓動。
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■セイラ・マス
機体を見つめたまま呟く。
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■セイラ
「反応が早すぎる……」
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■エリシア・マス
モニターを確認しながら言う。
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■エリシア
「レイジが“近い”」
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短い沈黙。
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深蒼フレームが、
わずかに明滅する。
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■セイラ
「違うわ」
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エリシアが振り向く。
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■セイラ
「近づいているのは——」
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少し間。
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■セイラ
「世界の方よ」
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■アマテラス・整備区画
ジョブ・ジョン。
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無言でモニターを見つめている。
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流れているのは戦況データではない。
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輸送ログ。
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部材番号。
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匿名依頼。
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だが。
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どれも妙に“気持ち悪い”。
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■ジョブ・ジョン
「……嫌な予感しかしねぇ」
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工具を置く。
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短い沈黙。
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周囲の整備員達も、
どこか落ち着かない。
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誰も理由は分からない。
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だが。
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艦全体が、
わずかに軋んでいる。
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海鳴りのように。
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■ジョブ
「……ちょっと行ってくる」
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誰に言うでもなく、
整備区画を後にする。
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その背中を、
誰も止めなかった。
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■外縁宙域
戦闘は続いている。
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だが。
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もはやそれは、
勝敗を決める戦いではない。
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■Hi-νガンダム
白い残光。
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■ナイチンゲール
赤い軌跡。
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二機は交差する。
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だが決着には届かない。
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“次が来るまでの戦場”
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■アムロ・レイ
「……まだ持つな」
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■シャア・アズナブル
「持たせるさ」
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ビームが交差する。
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回避。
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再加速。
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二人の動きは、
すでに戦闘というより“維持”だった。
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■アムロ
「時間稼ぎなんて、
お前らしくないな」
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■シャア
「貴様と並んでいる時点で、
今さらだろう」
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■アムロ
「違いない」
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ほんの一瞬。
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笑うような空気。
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だが次の瞬間には、
再び戦場へ戻る。
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白と赤が、
宇宙を裂く。
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■ラプラス・コア
沈黙。
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だが観測だけは続いている。
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■ラプラス・コア
「接続点接近」
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「許可未取得」
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■空白領域
宇宙と地上の“間”。
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そこへ、
小さなひびが入る。
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■レイジ
「……来る」
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深蒼が跳ねる。
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その瞬間。
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遠く離れたリヴァイブ・ガンダムが、
微かに“応答”した。