機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第6巻 第8章 「接続前夜」

アマテラス。

 

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艦内は静かだった。

 

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だがそれは、

休息の静けさではない。

 

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“何かが近づいてくる前の静けさ”

 

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誰もが、

無意識にそれを感じ取っていた。

 

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通路を歩く整備員達も。

 

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ブリッジ要員も。

 

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医療班も。

 

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誰一人として、

理由を説明できない。

 

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だが全員が、

どこか呼吸を浅くしていた。

 

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■医療区画

 

消灯された室内。

 

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レイジ・イルマ。

 

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ベッドに横たわったまま、

天井を見つめている。

 

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眠っているわけではない。

 

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眠れないわけでもない。

 

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ただ、

意識だけが“遠い”。

 

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指先に、

深蒼の残光が微かに揺れている。

 

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■レイジ

 

「……まだ、来てないのか」

 

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誰にも届かない声。

 

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だがその瞬間。

 

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空気の奥で、

何かが“応答”する。

 

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潮騒。

 

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耳鳴り。

 

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深海のような重圧。

 

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レイジの呼吸がわずかに止まる。

 

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■レイジ

 

「……っ」

 

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今の感覚を、

まだ言葉に出来ない。

 

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だが確実に。

 

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“向こう側”は近づいていた。

 

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■アナハイム極秘工廠(未接続領域)

 

海沿いコロニー外郭。

 

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暗い巨大ドック。

 

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照明すら落とされた最深部。

 

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そこに、

“器”が眠っている。

 

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■リヴァイブ・ガンダム(未起動)

 

深蒼のフレーム。

 

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未完成の装甲。

 

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未接続の駆動系。

 

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だが。

 

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内部だけが、

微かに呼吸している。

 

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まるで海の鼓動。

 

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■セイラ・マス

 

機体を見つめたまま呟く。

 

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■セイラ

 

「反応が早すぎる……」

 

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■エリシア・マス

 

モニターを確認しながら言う。

 

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■エリシア

 

「レイジが“近い”」

 

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短い沈黙。

 

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深蒼フレームが、

わずかに明滅する。

 

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■セイラ

 

「違うわ」

 

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エリシアが振り向く。

 

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■セイラ

 

「近づいているのは——」

 

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少し間。

 

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■セイラ

 

「世界の方よ」

 

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■アマテラス・整備区画

 

ジョブ・ジョン。

 

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無言でモニターを見つめている。

 

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流れているのは戦況データではない。

 

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輸送ログ。

 

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部材番号。

 

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匿名依頼。

 

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だが。

 

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どれも妙に“気持ち悪い”。

 

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■ジョブ・ジョン

 

「……嫌な予感しかしねぇ」

 

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工具を置く。

 

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短い沈黙。

 

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周囲の整備員達も、

どこか落ち着かない。

 

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誰も理由は分からない。

 

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だが。

 

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艦全体が、

わずかに軋んでいる。

 

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海鳴りのように。

 

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■ジョブ

 

「……ちょっと行ってくる」

 

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誰に言うでもなく、

整備区画を後にする。

 

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その背中を、

誰も止めなかった。

 

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■外縁宙域

 

戦闘は続いている。

 

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だが。

 

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もはやそれは、

勝敗を決める戦いではない。

 

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■Hi-νガンダム

 

白い残光。

 

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■ナイチンゲール

 

赤い軌跡。

 

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二機は交差する。

 

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だが決着には届かない。

 

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  “次が来るまでの戦場”

 

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■アムロ・レイ

 

「……まだ持つな」

 

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■シャア・アズナブル

 

「持たせるさ」

 

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ビームが交差する。

 

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回避。

 

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再加速。

 

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二人の動きは、

すでに戦闘というより“維持”だった。

 

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■アムロ

 

「時間稼ぎなんて、

お前らしくないな」

 

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■シャア

 

「貴様と並んでいる時点で、

今さらだろう」

 

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■アムロ

 

「違いない」

 

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ほんの一瞬。

 

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笑うような空気。

 

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だが次の瞬間には、

再び戦場へ戻る。

 

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白と赤が、

宇宙を裂く。

 

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■ラプラス・コア

 

沈黙。

 

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だが観測だけは続いている。

 

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■ラプラス・コア

 

「接続点接近」

 

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「許可未取得」

 

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■空白領域

 

宇宙と地上の“間”。

 

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そこへ、

小さなひびが入る。

 

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■レイジ

 

「……来る」

 

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深蒼が跳ねる。

 

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その瞬間。

 

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遠く離れたリヴァイブ・ガンダムが、

微かに“応答”した。

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