機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第6巻 第9章 「干渉圏」

■アマテラス

 

艦内の空気が変わっていた。

 

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温度ではない。

 

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音でもない。

 

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ただ。

 

情報の重さだけが増している。

 

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誰も口にはしない。

 

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だが。

 

誰もが無意識に呼吸を浅くしていた。

 

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何かが近づいている。

 

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理由は分からない。

 

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それでも。

 

艦全体がそれを感じていた。

 

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■医療区画

 

レイジ・イルマ。

 

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目を閉じたまま、

ベッドへ横たわっている。

 

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眠っているわけではない。

 

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意識だけが遠い。

 

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指先に、

深蒼の残光が微かに揺れる。

 

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■レイジ

 

「……触れてる」

 

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誰もいない。

 

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だが。

 

何かが触れ返してくる。

 

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白い残光。

 

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赤い揺らぎ。

 

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深蒼の海。

 

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それらが感覚の奥で交差する。

 

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■レイジ

 

「なんなんだよ……」

 

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返事はない。

 

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だが。

 

向こう側だけは、

確実に近づいていた。

 

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■アナハイム極秘工廠

 

深蒼フレーム。

 

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リヴァイブ・ガンダム。

 

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未完成の機体が、

静かに脈動している。

 

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■セイラ・マス

 

モニターを見つめる。

 

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■セイラ

 

「起動じゃない……」

 

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短い沈黙。

 

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■セイラ

 

「応答よ」

 

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■エリシア・マス

 

「誰に……?」

 

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その瞬間。

 

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外部センサーが一斉に揺れる。

 

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深蒼フレームが、

海鳴りのように明滅した。

 

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■エリシア

 

「空間干渉!?」

 

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■セイラ

 

静かに目を細める。

 

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■セイラ

 

「……見つけ始めたのね」

 

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■外縁宙域

 

戦闘は続いている。

 

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だが。

 

異変は確実に広がっていた。

 

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■Hi-νガンダム

 

白い機体が加速する。

 

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その周囲へ、

遅れた軌跡が残る。

 

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■アムロ・レイ

 

「……今のは」

 

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■ナイチンゲール

 

赤い巨影が回避する。

 

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だが。

 

その動きが一瞬だけズレる。

 

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■シャア・アズナブル

 

「来ているな」

 

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次の瞬間。

 

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白と赤が同時に加速する。

 

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ビーム。

 

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回避。

 

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再加速。

 

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通常なら噛み合わない軌道。

 

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だが。

 

二人は互いの動きを知っているように交差する。

 

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■アムロ

 

「右!」

 

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■シャア

 

「分かっている!」

 

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ナイチンゲールが踏み込む。

 

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その死角を使い、

Hi-νが反転加速する。

 

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二機の軌道が、

一つの戦術になる。

 

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■アムロ

 

「チィ……!」

 

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舌打ち。

 

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だが次の瞬間には、

もう立て直している。

 

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■シャア

 

「今のは危なかったな」

 

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■アムロ

 

「お前が遅い」

 

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■シャア

 

「貴様が速すぎるのだ」

 

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ほんの一瞬。

 

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笑うような空気。

 

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だが次の瞬間には、

再び戦場へ沈む。

 

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白と赤。

 

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本来なら、

決して並ばなかった残光。

 

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それが今。

 

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同じ方向を見ている。

 

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■ノーネームガンダム

 

白銀の機体。

 

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コルヴス・クロウが、

異常波形を見つめている。

 

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■コルヴス・クロウ

 

「干渉圏突入」

 

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「戦闘領域外からの影響を確認」

 

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コルヴスは沈黙する。

 

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観測波形が揺れる。

 

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本来存在しないはずの誤差。

 

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本来成立しないはずの接続。

 

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■コルヴス

 

「……始まったか」

 

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■アムロ

 

「時間じゃない……」

 

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■シャア

 

「ああ」

 

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少し間。

 

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■シャア

 

「向こう側が触れてきた」

 

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次の瞬間。

 

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世界が揺れる。

 

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空間そのものが、

わずかに軋む。

 

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ビームが遅れる。

 

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爆発が先に起きる。

 

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距離感覚が崩れる。

 

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敵が動いたのではない。

 

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戦場が変質していた。

 

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現実そのものが、

揺らぎ始めている。

 

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■アムロ

 

「……っ!」

 

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一瞬だけ呼吸が止まる。

 

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だが。

 

身体だけが先に動く。

 

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■シャア

 

「止まるな、アムロ!」

 

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■アムロ

 

「分かってる!」

 

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白と赤が再び加速する。

 

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戦場は、

まだ崩れていない。

 

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だが。

 

確実に。

 

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戦争の形だけが、

失われ始めていた。

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