■工業コロニー群外周
巨大工廠ブロック。
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無数の金属群が、
静かに稼働している。
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だが。
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その静けさは、
通常の工業音とは違っていた。
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低い振動。
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わずかな軋み。
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海鳴りのような共鳴。
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まるで。
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世界そのものが、
重くなっている。
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■ジョブ・ジョン
端末を見つめている。
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受信ログは正常。
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輸送コードも問題ない。
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だが。
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内容だけが、
どこか現実感を失っている。
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匿名ラベル。
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未登録構造番号。
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発信元空白。
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本来なら、
絶対に通るはずのないデータ。
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なのに。
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誰も止めていない。
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■ジョブ
「……気持ち悪ぃな」
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少し間。
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■ジョブ
「最初から、
通ることになってたみてぇだ」
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背後の整備員達を見る。
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■ジョブ
「全部まとめろ」
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■整備員
「全部ですか?」
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■ジョブ
「ああ」
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「どうせもう、
誰かが決めてる」
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誰が。
とは言わない。
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言えない。
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ジョブ自身、
分かっていないからだ。
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■ジョブ
「アナハイムへ運べ」
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「俺も後から行く」
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整備員達が動き始める。
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コンテナ群。
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匿名ラベル。
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中身を知る者はいない。
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だが。
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その全てが、
一つの場所へ向かっている。
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■ジョブ
コンテナを見送る。
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■ジョブ
「輸送じゃねぇな……」
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少し間。
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■ジョブ
「呼ばれてる」
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その瞬間。
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工廠全体が、
わずかに軋む。
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低い振動。
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遠い海鳴り。
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ジョブが顔を上げる。
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■ジョブ
「……なんだ今の」
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誰も答えない。
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だが。
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空気だけが変わっていた。
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■海沿い居住区画
夜。
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静かな部屋。
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窓の外には黒い海。
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■セイラ・マス
端末を閉じる。
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部屋が静まる。
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画面には、
無数の構造データ。
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リヴァイブ計画。
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未完成。
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未接続。
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未定義。
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■エリシア・マス
「間に合うの?」
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長い沈黙。
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セイラは答えない。
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ただ。
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窓の外を見る。
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夜の海。
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深い蒼。
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■セイラ
「分からないわ」
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エリシアが目を見開く。
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初めて聞く言葉だった。
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■セイラ
「まだ完成していないもの」
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少し間。
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■セイラ
「でも——」
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視線は海の向こう。
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■セイラ
「世界の方が急いでいる」
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沈黙。
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その言葉だけが、
部屋へ残る。
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■アマテラス
通信は崩れている。
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言葉が届かない。
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意味が定着しない。
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■ブライト・ノア(断片)
『アムロ!!』
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■ベルトーチカ・イルマ(断片)
『お願い……!』
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波形が崩れる。
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意味が消える。
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■通信士
「意味変換不能!」
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■通信士
「文章構造維持できません!」
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誰も何も出来ない。
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ただ。
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何かが近づいている事だけは分かる。
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■医療区画
レイジ・イルマ。
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静かに目を開く。
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■レイジ
「……また増えてる」
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深蒼の波。
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海鳴り。
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呼び声。
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拳を握る。
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だが。
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まだ動けない。
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身体ではない。
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存在そのものが、
追いついていない。
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■レイジ
「呼んでるなら……」
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少し間。
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■レイジ
「繋げよ」
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返事はない。
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だが。
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深蒼だけが、
わずかに揺れる。
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■外縁宙域
白と赤の戦闘は続いている。
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だが。
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それはもう、
戦闘ではなかった。
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現象。
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遅延。
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維持。
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決着だけが発生しない空間。
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■コルヴス・クロウ
「未識別接続増加」
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「戦域外因子進行中」
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■オペレーター
「模写同期維持不能!」
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■コルヴス
沈黙。
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そして。
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初めて僅かに眉を動かす。
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■コルヴス
「……模写では追いつかないか」
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■ラプラス・コア
長い沈黙。
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そして。
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■ラプラス・コア
「想定内」
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世界はまだ固定されていない。
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だが。
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起動だけは近づいている。
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まだ動いていない。
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まだ完成していない。
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それでも。
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世界そのものが、
その存在を必要とし始めていた。