機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第6巻 第14章 「アマテラス通路」

整備音だけが遠くに響いている。

 

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白い通路。

 

無機質な照明。

 

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だが。

 

その光は、

わずかに遅れて点滅していた。

 

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世界の同期ズレが、

まだ完全には収まっていない。

 

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遠くで警報ノイズ。

 

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聞き取れない通信断片。

 

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艦そのものが、

不安定な現実を無理矢理維持している。

 

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その中を、

二つの影が並んで歩く。

 

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アムロ・レイ。

 

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シャア・アズナブル。

 

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靴音だけが、

やけに規則正しく響いている。

 

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短い沈黙。

 

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先に口を開いたのは、

アムロだった。

 

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■アムロ

 

「なぁ、シャア」

 

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■シャア

 

「なんだ」

 

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■アムロ

 

「もういいのか」

 

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シャアの視線が、

わずかに揺れる。

 

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■アムロ

 

「人類の粛正とか」

 

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歩く音だけが続く。

 

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遠くで、

整備アームの駆動音。

 

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誰かの怒鳴り声。

 

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そして、

通信ノイズ。

 

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世界はまだ、

完全に戦場のままだった。

 

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■シャア

 

「粛正……か」

 

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小さく息を吐く。

 

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■シャア

 

「ついさっきまで、

本気でやっていた気もするがな」

 

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■アムロ

 

「お前ならな」

 

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沈黙。

 

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■シャア

 

「だがな」

 

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少し間。

 

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通路照明が、

一瞬だけ遅れて明滅する。

 

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■シャア

 

「お前や、

あいつらの感情が同期してから」

 

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「そんなものは、

どうでもよくなった」

 

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アムロは何も言わない。

 

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ただ、

少しだけ視線を落とす。

 

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シャアが、

こんな言葉を口にする。

 

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昔なら、

想像もしなかった。

 

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■シャア

 

「ブライト」

 

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「ミライ」

 

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「ベルトーチカ」

 

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歩みは止まらない。

 

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だが。

 

言葉だけが、

わずかに遅れる。

 

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■シャア

 

「……アルテイシア」

 

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その名前だけ。

 

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ほんの少しだけ、

呼吸が乱れる。

 

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■シャア

 

「人類という言葉で括るには」

 

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「もう、

うるさすぎる」

 

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アムロが横目で見る。

 

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■シャア

 

「ひとりひとりが、

違う顔をしている」

 

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静かな間。

 

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遠くで、

警報が短く鳴る。

 

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すぐにノイズへ変わる。

 

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■アムロ

 

「……変わったな、お前も」

 

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■シャア

 

小さく笑う。

 

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「お前ほどではない」

 

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沈黙。

 

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だが。

 

その空気は、

かつてのような刺々しさを持っていない。

 

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■シャア

 

「エリシアか」

 

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ほんの一瞬だけ、

声が揺れる。

 

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■シャア

 

「……良く似ている」

 

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■アムロ

 

「誰にだ」

 

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シャアは答えない。

 

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視線だけが、

ほんの少し遠くへずれる。

 

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ララァ。

 

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セイラ。

 

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守れなかったもの。

 

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戻れなかった時間。

 

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その全てを、

飲み込むような沈黙。

 

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それ以上、

言葉は続かない。

 

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通路の奥で、

ドアが開く音。

 

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その瞬間。

 

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外縁宙域の戦況データが、

壁面モニターへ流れ込む。

 

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崩壊しかけた座標。

 

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深蒼ノイズ。

 

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接続誤差。

 

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世界はまだ、

戦場のままだった。

 

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だが。

 

この瞬間だけ。

 

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戦う理由が、

一段深い層へ沈んでいく。

 

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■シャア

 

「アムロ」

 

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■アムロ

 

「なんだ」

 

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■シャア

 

「戻るぞ」

 

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■アムロ

 

「……ああ」

 

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靴音が揃う。

 

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その瞬間。

 

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艦内照明が全て消える。

 

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完全な暗闇。

 

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■艦内放送

 

『深蒼反応急増!』

 

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『医療区画より異常同期反応!』

 

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『レイジ・イルマ反応増大!』

 

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アムロとシャアが同時に振り返る。

 

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■アムロ

 

「来たか」

 

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■シャア

 

「ああ」

 

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短い沈黙。

 

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■シャア

 

「今度はあの子達の番だ」

 

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二人は同時に走り出す。

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