アマテラス。
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艦内は静かだった。
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だが。
その静けさは、
安堵ではない。
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どこか。
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ほんの少しだけ、
噛み合っていない。
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照明が、
半拍遅れて明滅する。
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遠くの整備音が、
微妙にズレて聞こえる。
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艦そのものが、
同じ現実へ固定しきれていない。
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■ブリーフィングルーム
アムロが椅子へ座っている。
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肘を膝へ置き、
静かに息を吐く。
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■アムロ
「戻ったはずなのにな」
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■シャア・アズナブル
壁にもたれ、
目を閉じている。
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■シャア
「戻る、というのは便利な言葉だ」
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■アムロ
「違うのか」
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■シャア
「完全には、な」
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沈黙。
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言葉は成立している。
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だが。
意味だけが、
わずかに噛み合わない。
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理解の層が、
微妙にズレている。
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■ベルトーチカ・イルマ
同じ部屋にいる。
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少し離れた位置で、
二人を見ていた。
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帰ってきた。
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確かに目の前にいる。
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だが。
完全に戻ったとは、
どうしても思い切れない。
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■ベルトーチカ
「……おかしいわね」
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■アムロ
「何がだ」
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■ベルトーチカ
「全部」
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視線を落とす。
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■ベルトーチカ
「言葉は合ってるのに」
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「意味だけが、
少しずれてる」
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部屋が静まる。
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誰も否定できない。
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■アムロ
「そうかもしれないな」
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■ベルトーチカ
「そうかもしれないじゃないわ」
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「貴方達、
同じものを見てるはずなのに」
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「少しずつ違う場所を見てる」
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アムロは答えない。
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シャアが、
ゆっくり目を開く。
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■シャア
「揃っていないだけだ」
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■アムロ
「揃うのか?」
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短い沈黙。
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シャアは少しだけ笑う。
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■シャア
「人類がか?」
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さらに沈黙。
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■シャア
「無理だろうな」
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■アムロ
「だろうな」
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二人とも笑わない。
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だが。
否定的な空気でもなかった。
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■シャア
「だから面白い」
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ベルトーチカが顔を上げる。
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■シャア
「同じ景色を見ても」
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「同じ結論にはならん」
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■シャア
「理解し合えない」
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少し間。
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■シャア
「だから惹かれる」
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アムロが、
わずかに目を細める。
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■アムロ
「珍しい事を言うな」
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■シャア
「貴様と並んでいる時点で今更だ」
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ほんの少しだけ。
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昔ならあり得なかった空気が流れる。
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だが。
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その瞬間。
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照明が揺れる。
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半拍遅れて明滅。
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空気が軋む。
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全員が顔を上げる。
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■アムロ
「……来たな」
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■シャア
「ああ」
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遠く。
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どこかで。
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海鳴りのような振動。
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誰にも聞こえない。
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だが。
確かに存在する。
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■医療区画
レイジ・イルマ。
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天井を見つめている。
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目を閉じる。
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遠い。
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だが。
確かに近づいている。
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海鳴り。
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呼吸。
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深蒼。
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まだ届かない。
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だが。
届くと分かる。
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それだけだった。
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■アナハイム極秘工廠
未起動状態の
リヴァイブ・ガンダム。
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深蒼フレームが、
一瞬だけ脈動する。
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まるで。
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遠い海の呼吸へ、
応えたように。
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そして。
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どこかで。
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何かが、
静かに呼応し始めていた。