機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第6巻 第15章 「呼応」

アマテラス。

 

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艦内は静かだった。

 

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だが。

 

その静けさは、

安堵ではない。

 

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どこか。

 

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ほんの少しだけ、

噛み合っていない。

 

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照明が、

半拍遅れて明滅する。

 

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遠くの整備音が、

微妙にズレて聞こえる。

 

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艦そのものが、

同じ現実へ固定しきれていない。

 

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■ブリーフィングルーム

 

アムロが椅子へ座っている。

 

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肘を膝へ置き、

静かに息を吐く。

 

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■アムロ

 

「戻ったはずなのにな」

 

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■シャア・アズナブル

 

壁にもたれ、

目を閉じている。

 

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■シャア

 

「戻る、というのは便利な言葉だ」

 

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■アムロ

 

「違うのか」

 

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■シャア

 

「完全には、な」

 

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沈黙。

 

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言葉は成立している。

 

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だが。

 

意味だけが、

わずかに噛み合わない。

 

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理解の層が、

微妙にズレている。

 

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■ベルトーチカ・イルマ

 

同じ部屋にいる。

 

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少し離れた位置で、

二人を見ていた。

 

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帰ってきた。

 

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確かに目の前にいる。

 

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だが。

 

完全に戻ったとは、

どうしても思い切れない。

 

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■ベルトーチカ

 

「……おかしいわね」

 

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■アムロ

 

「何がだ」

 

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■ベルトーチカ

 

「全部」

 

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視線を落とす。

 

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■ベルトーチカ

 

「言葉は合ってるのに」

 

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「意味だけが、

少しずれてる」

 

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部屋が静まる。

 

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誰も否定できない。

 

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■アムロ

 

「そうかもしれないな」

 

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■ベルトーチカ

 

「そうかもしれないじゃないわ」

 

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「貴方達、

同じものを見てるはずなのに」

 

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「少しずつ違う場所を見てる」

 

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アムロは答えない。

 

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シャアが、

ゆっくり目を開く。

 

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■シャア

 

「揃っていないだけだ」

 

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■アムロ

 

「揃うのか?」

 

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短い沈黙。

 

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シャアは少しだけ笑う。

 

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■シャア

 

「人類がか?」

 

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さらに沈黙。

 

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■シャア

 

「無理だろうな」

 

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■アムロ

 

「だろうな」

 

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二人とも笑わない。

 

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だが。

 

否定的な空気でもなかった。

 

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■シャア

 

「だから面白い」

 

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ベルトーチカが顔を上げる。

 

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■シャア

 

「同じ景色を見ても」

 

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「同じ結論にはならん」

 

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■シャア

 

「理解し合えない」

 

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少し間。

 

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■シャア

 

「だから惹かれる」

 

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アムロが、

わずかに目を細める。

 

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■アムロ

 

「珍しい事を言うな」

 

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■シャア

 

「貴様と並んでいる時点で今更だ」

 

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ほんの少しだけ。

 

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昔ならあり得なかった空気が流れる。

 

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だが。

 

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その瞬間。

 

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照明が揺れる。

 

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半拍遅れて明滅。

 

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空気が軋む。

 

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全員が顔を上げる。

 

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■アムロ

 

「……来たな」

 

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■シャア

 

「ああ」

 

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遠く。

 

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どこかで。

 

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海鳴りのような振動。

 

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誰にも聞こえない。

 

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だが。

 

確かに存在する。

 

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■医療区画

 

レイジ・イルマ。

 

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天井を見つめている。

 

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目を閉じる。

 

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遠い。

 

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だが。

 

確かに近づいている。

 

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海鳴り。

 

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呼吸。

 

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深蒼。

 

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まだ届かない。

 

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だが。

 

届くと分かる。

 

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それだけだった。

 

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■アナハイム極秘工廠

 

未起動状態の

リヴァイブ・ガンダム。

 

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深蒼フレームが、

一瞬だけ脈動する。

 

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まるで。

 

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遠い海の呼吸へ、

応えたように。

 

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そして。

 

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どこかで。

 

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何かが、

静かに呼応し始めていた。

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