アマテラス。
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艦内は静まり返っている。
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だが。
その静けさは、
“停止”ではない。
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何かが始まり。
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そして全員が、
それを待っている。
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昨日まで艦内を覆っていた、
微細なズレ。
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照明の遅延。
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通信ノイズ。
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音の重なり。
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それらは、
ゆっくりと消え始めていた。
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だが誰も、
安心はしていない。
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むしろ逆だった。
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“揃い始めた”事そのものが、
不気味だった。
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■ブリーフィングルーム
沈黙。
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誰も口を開かない。
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だが空気だけが、
昨日とは違っている。
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“ズレ”ていた感覚が。
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今は、
ゆっくりと同じ方向へ揃い始めている。
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■アムロ
「……レイジは?」
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■ベルトーチカ
「医療ブロック」
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少し迷う。
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■ベルトーチカ
「……でも、
たぶん寝てないわね」
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アムロは、
何も言わず立ち上がる。
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その動きに、
ベルトーチカが振り向く。
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■ベルトーチカ
「アムロ?」
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■アムロ
「様子を見る」
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短い沈黙。
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■シャア
「甘いな、アムロ」
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アムロは立ち止まらない。
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■アムロ
「そうかもな」
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少し間。
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その背中へ。
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シャアが、
静かに言葉を落とす。
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■シャア
「……そういうところだぞ、お前は」
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その声には、
皮肉も敵意もない。
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ただ。
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長い時間を経てなお、
変わらないものを見るような響き。
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■アマテラス・通路
静かな通路。
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アムロの足音だけが響く。
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照明は正常。
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空調も正常。
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だが。
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静かすぎる。
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まるで艦全体が、
息を止めているようだった。
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アムロの表情は険しい。
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だが焦ってはいない。
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むしろ。
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“確かめに行く者”
の顔だった。
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■アマテラス・医療ブロック
簡易隔離区画。
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消灯された室内。
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心拍モニタだけが、
静かな光を刻んでいる。
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レイジは、
ベッドへ腰掛けたまま俯いていた。
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昨日まで感じていた違和感。
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だが今は違う。
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静かすぎる。
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何かが、
来る直前の静けさ。
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■レイジ
「……なんなんだよ」
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返事はない。
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だが次の瞬間。
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空気が揺れる。
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レイジが顔を上げる。
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白い残光。
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赤い気配。
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視界の奥で、
一瞬だけ交差する。
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■レイジ
「っ……!」
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誰かがいる。
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だが姿は見えない。
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■???
「焦るな」
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レイジの目が見開かれる。
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■レイジ
「誰だ!」
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沈黙。
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今度は別の気配。
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■???
「まだ揃っていない」
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■レイジ
息を呑む。
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声ではない。
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頭の中でもない。
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“感覚そのもの”が、
流れ込んでくる。
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温度。
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感情。
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焦燥。
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静けさ。
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その全部が、
境界なく触れてくる。
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■レイジ
「……っ!」
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頭を押さえる。
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だが苦痛ではない。
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むしろ。
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“近い”。
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その瞬間。
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ドアが開く。
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■アムロ
「レイジ!」
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レイジが振り向く。
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だがその瞳は、
まだ揺れている。
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アムロは、
すぐには近づかない。
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一瞬だけ迷う。
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自分が今、
何を言うべきなのか。
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何を触れれば、
壊さずに済むのか。
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その迷いが、
ほんのわずかに表情へ出る。
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それから、
ゆっくり近づく。
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■アムロ
「聞こえたのか」
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■レイジ
「……わからない」
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呼吸が乱れている。
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■レイジ
「でも、
誰かいた」
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アムロの表情が、
わずかに変わる。
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■アムロ
「そうか」
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少し間。
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■レイジ
「怖くは、ない」
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アムロは、
静かにレイジを見る。
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■レイジ
「でも——」
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拳を握る。
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■レイジ
「戻れなくなる感じがする」
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沈黙。
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アムロは答えない。
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ただ。
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ゆっくりと、
レイジの肩へ手を置く。
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その手は、
戦場を知っている手だった。
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失う事も。
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帰れなくなる事も。
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全部知っている手。
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■アムロ
「なら、戻って来い」
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レイジが目を見開く。
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■アムロ
「何処まで行ってもいい」
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少し間。
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■アムロ
「でも」
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■アムロ
「戻る場所だけは忘れるな」
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レイジの呼吸が、
少しだけ落ち着く。
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その瞬間。
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■レヴナント領域
観測波形が乱れる。
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■オペレーター
「同期値急上昇!」
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■コルヴス・クロウ
「来たか」
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その声には、
待っていた響きがある。
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■オペレーター
「固定不能!」
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■コルヴス
目を細める。
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■コルヴス
「接続が始まった」
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空間が揺れる。
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戦場ではない。
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“存在同士”が、
繋がり始めている。
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■アナハイム極秘工廠
■リヴァイブ・ガンダム
深蒼フレームが脈打つ。
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周期が、
揃い始めている。
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■エリシア
「反応パターン変化!」
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■セイラ
機体を見つめたまま呟く。
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■セイラ
「……見つけたのね」
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その声は、
母親のものだった。
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■アムロ
静かに目を閉じる。
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■アムロ
「始まったな」