■アマテラス・医療ブロック
簡易隔離区画。
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静かな部屋。
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さっきまで感じていた“何か”だけが、
まだ空気の奥に残っている。
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レイジは俯いたまま動かない。
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アムロは少し離れた場所に立っている。
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ドアの横には、
シャア。
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誰もすぐには口を開かなかった。
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やがて。
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■レイジ
「……親父は」
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アムロが視線を向ける。
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■レイジ
「怖くないのか」
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少し間。
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■レイジ
「ずっと、こんな事やってきたのか?」
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沈黙。
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アムロはすぐには答えない。
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視線だけが、
少し遠くを見る。
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■アムロ
「怖いさ」
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レイジが顔を上げる。
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■アムロ
「今でもな」
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静かな声。
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だが嘘はない。
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■アムロ
「撃たれる事より——」
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少し間。
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■アムロ
「誰かの痛みが流れ込んでくる方が、きつい時もある」
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レイジは黙って聞いている。
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■アムロ
「守れなかった声は、消えない」
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短い沈黙。
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■シャア
「ニュータイプは万能ではない」
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レイジが振り向く。
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ドアの横。
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シャアが静かにもたれている。
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■シャア
「戦争の生み出した、人類の悲しい変種かもしれんのだ」
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静かな部屋。
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その言葉だけが重く残る。
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■アムロ
「聞いていたのか」
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■シャア
「聞こえてきたのでな」
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少し間。
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■シャア
「先程まで憎み合い、殺し合っていた相手でも——」
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静かな声。
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■シャア
「今は、隣に立っている」
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レイジは黙って聞いている。
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■シャア
「私は、人類そのものを憎んでいたわけではない」
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少し間。
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■シャア
「ただ——」
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目を伏せる。
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■シャア
「愚かさを認識させる必要があると思っていた」
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その瞬間。
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■アムロ
「まだそんな事を思っているのか、シャア!」
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空気が張る。
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だがシャアは怒らない。
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むしろ、
少しだけ自嘲するように笑う。
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■シャア
「……私は随分、遠回りをしたらしい」
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短い沈黙。
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■シャア
「先程も言ったはずだ」
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静かな声。
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■シャア
「流れ込んできたのだ」
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少し間。
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■シャア
「お前達の想いが」
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レイジが見る。
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■シャア
「ブライト」
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■シャア
「ミライ」
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■シャア
「ベルトーチカ」
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■シャア
「ハサウェイ……」
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短い沈黙。
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■シャア
「……アルテイシア」
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その名だけ、
少しだけ静かになる。
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■シャア
「人類などという曖昧なものではなく」
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■シャア
「“人”として流れ込んできた」
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静かな部屋。
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■シャア
「ひとりひとりが違う」
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少し間。
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■シャア
「だから——」
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小さく笑う。
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■シャア
「そんな考えも、馬鹿らしくなってしまった」
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沈黙。
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レイジは二人を見る。
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アムロ。
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シャア。
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かつて殺し合ったはずの二人。
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なのに今は、
同じ場所に立っている。
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■レイジ
「……なんで」
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二人が見る。
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■レイジ
「なんで、そんな風に話せるんだ」
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短い沈黙。
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シャアは少しだけ目を細める。
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■シャア
「人はな——」
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小さく笑う。
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■シャア
「理解出来ないから、惹かれるのだ」
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アムロは何も言わない。
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だが、
否定もしなかった。
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その時。
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空間が微かに揺れる。
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レイジの表情が変わる。
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■レイジ
「っ……!」
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再び。
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“向こう側”が近づく。
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白い残光。
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赤い気配。
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今度は前よりはっきりしている。
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■アムロ
「来るぞ」
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アムロの声と同時。
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■レヴナント領域
観測波形が激しく乱れる。
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■オペレーター
「同期率限界突破!」
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■コルヴス・クロウ
目を細める。
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■コルヴス
「まだだ」
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だがその声とは裏腹に。
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ラプラス・コア反応は止まらない。
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■オペレーター
「位相固定不能!」
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■コルヴス
「……始まっているのか」
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初めて。
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コルヴスの声に、
わずかな焦りが混じる。
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■アナハイム極秘工廠
■リヴァイブ・ガンダム
深蒼フレームが強く発光する。
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機体周囲の空間が揺らぐ。
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■エリシア
「出力上昇が止まりません!」
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■セイラ
それでも目を逸らさない。
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■セイラ
「大丈夫」
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小さく呟く。
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■セイラ
「あの子は、一人じゃない」
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■アマテラス・医療ブロック
レイジの呼吸が乱れる。
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だが。
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今度は違った。
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肩に触れる感覚。
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アムロの手。
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そして。
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ドアの横で静かに立つシャア。
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もう、
一人ではない。