■アナハイム極秘工廠
巨大な海上プラント。
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夜明け前。
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薄蒼い光が、
静かな海面を揺らしている。
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工廠全体が、
まるで深海生物のように脈動していた。
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低い駆動音。
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遠くで鳴る搬送レール。
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そして——
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工廠中心区画。
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セキュリティ波形が一瞬だけ乱れる。
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■オペレーター
「外部搬送ユニット接近!」
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■オペレーター
「識別コード……ジョブ・ジョン!」
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警戒空気が走る。
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だが次の瞬間。
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■セイラ
「通しなさい」
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静かな声。
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それだけで、
区画全体の空気が変わる。
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■オペレーター
「……了解」
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■搬入ドック
重いロック解除音。
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隔壁がゆっくり開いていく。
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海風。
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冷たい潮の匂い。
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その奥。
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複数の輸送コンテナ。
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そして先頭に立つ男。
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■ジョブ・ジョン
「……やっと着いたな」
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疲労混じりの声。
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だが、
その目はまだ死んでいない。
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白い影が歩み寄る。
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■セイラ・マス
静かな足取り。
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その瞳だけが、
真っ直ぐコンテナを見ている。
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■セイラ
「遅かったわね」
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ジョブが小さく笑う。
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■ジョブ
「簡単な仕事じゃなかった」
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少し間。
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■ジョブ
「またお前と、
こんな物を運ぶ事になるとはな」
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セイラは答えない。
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ただ、
コンテナを見つめている。
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そこに漂う“気配”。
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微かな深蒼反応。
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まるで海の底で、
何かが呼吸しているようだった。
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■セイラ
「中身は?」
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ジョブは一瞬だけ間を置く。
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■ジョブ
「匿名依頼だ」
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少し間。
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■ジョブ
「ただし——」
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セイラを見る。
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■ジョブ
「“誰のものか分かるはずだ”と言われた」
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沈黙。
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セイラの目がわずかに細くなる。
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その瞬間。
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空気が揺れる。
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ほんの一瞬だけ。
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赤い残光のような感覚。
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セイラの呼吸が、
わずかに止まる。
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だが次の瞬間には消える。
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■セイラ
「……そう」
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ゆっくり、
コンテナへ歩いていく。
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その奥。
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深蒼のフレーム。
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まだ未完成。
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だが内部だけが、
静かに脈打っている。
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近づくだけで、
空気が重い。
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情報密度だけが、
異常に高い。
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まるで——
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“海そのもの”が
閉じ込められているようだった。
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■ジョブ
「輸送って感じじゃなかった」
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視線を落とす。
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■ジョブ
「ずっと、
何かを運ばされてる感じだった」
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セイラは静かに頷く。
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■セイラ
「ええ」
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小さく呟く。
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■セイラ
「これは兵器じゃない」
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深蒼のフレームを見る。
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■セイラ
「“継ぐもの”よ」
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静かな沈黙。
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そして。
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■セイラ
「ようやく——」
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小さく呟く。
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■セイラ
「目を覚ますのね」
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深蒼フレームが、
わずかに脈打つ。
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まるで、
その言葉へ応えるように。
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■一方・アマテラス
同時刻。
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誰も知らないまま。
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別の場所でも、
“接続”は続いている。
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深い海の底で。
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静かに。
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確実に。