機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第6巻 第20章 「託されたもの」

■アナハイム極秘工廠

 

巨大な海上プラント。

 

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夜明け前。

 

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薄蒼い光が、

静かな海面を揺らしている。

 

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工廠全体が、

まるで深海生物のように脈動していた。

 

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低い駆動音。

 

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遠くで鳴る搬送レール。

 

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そして——

 

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工廠中心区画。

 

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セキュリティ波形が一瞬だけ乱れる。

 

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■オペレーター

 

「外部搬送ユニット接近!」

 

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■オペレーター

 

「識別コード……ジョブ・ジョン!」

 

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警戒空気が走る。

 

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だが次の瞬間。

 

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■セイラ

 

「通しなさい」

 

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静かな声。

 

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それだけで、

区画全体の空気が変わる。

 

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■オペレーター

 

「……了解」

 

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■搬入ドック

 

重いロック解除音。

 

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隔壁がゆっくり開いていく。

 

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海風。

 

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冷たい潮の匂い。

 

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その奥。

 

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複数の輸送コンテナ。

 

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そして先頭に立つ男。

 

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■ジョブ・ジョン

 

「……やっと着いたな」

 

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疲労混じりの声。

 

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だが、

その目はまだ死んでいない。

 

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白い影が歩み寄る。

 

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■セイラ・マス

 

静かな足取り。

 

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その瞳だけが、

真っ直ぐコンテナを見ている。

 

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■セイラ

 

「遅かったわね」

 

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ジョブが小さく笑う。

 

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■ジョブ

 

「簡単な仕事じゃなかった」

 

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少し間。

 

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■ジョブ

 

「またお前と、

こんな物を運ぶ事になるとはな」

 

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セイラは答えない。

 

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ただ、

コンテナを見つめている。

 

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そこに漂う“気配”。

 

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微かな深蒼反応。

 

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まるで海の底で、

何かが呼吸しているようだった。

 

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■セイラ

 

「中身は?」

 

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ジョブは一瞬だけ間を置く。

 

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■ジョブ

 

「匿名依頼だ」

 

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少し間。

 

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■ジョブ

 

「ただし——」

 

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セイラを見る。

 

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■ジョブ

 

「“誰のものか分かるはずだ”と言われた」

 

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沈黙。

 

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セイラの目がわずかに細くなる。

 

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その瞬間。

 

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空気が揺れる。

 

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ほんの一瞬だけ。

 

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赤い残光のような感覚。

 

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セイラの呼吸が、

わずかに止まる。

 

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だが次の瞬間には消える。

 

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■セイラ

 

「……そう」

 

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ゆっくり、

コンテナへ歩いていく。

 

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その奥。

 

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深蒼のフレーム。

 

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まだ未完成。

 

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だが内部だけが、

静かに脈打っている。

 

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近づくだけで、

空気が重い。

 

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情報密度だけが、

異常に高い。

 

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まるで——

 

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“海そのもの”が

閉じ込められているようだった。

 

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■ジョブ

 

「輸送って感じじゃなかった」

 

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視線を落とす。

 

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■ジョブ

 

「ずっと、

何かを運ばされてる感じだった」

 

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セイラは静かに頷く。

 

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■セイラ

 

「ええ」

 

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小さく呟く。

 

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■セイラ

 

「これは兵器じゃない」

 

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深蒼のフレームを見る。

 

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■セイラ

 

「“継ぐもの”よ」

 

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静かな沈黙。

 

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そして。

 

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■セイラ

 

「ようやく——」

 

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小さく呟く。

 

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■セイラ

 

「目を覚ますのね」

 

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深蒼フレームが、

わずかに脈打つ。

 

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まるで、

その言葉へ応えるように。

 

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■一方・アマテラス

 

同時刻。

 

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誰も知らないまま。

 

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別の場所でも、

“接続”は続いている。

 

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深い海の底で。

 

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静かに。

 

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確実に。

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