機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

128 / 130
■第6巻 第21章 「起動」

 

■アマテラス・ブリッジ

 

警報は、

すでに“日常”になりつつあった。

 

⸻

 

赤い警告灯。

 

⸻

 

断続的に鳴るアラート。

 

⸻

 

だが、

誰も慌ててはいない。

 

⸻

 

それは異常ではなく、

戦局変化として処理されていた。

 

⸻

 

■ブライト・ノア

 

メインモニターを見つめたまま、

低く言う。

 

⸻

 

■ブライト

 

「……来る」

 

⸻

 

その瞬間。

 

⸻

 

ブリッジ後方ハッチが開く。

 

⸻

 

■アムロ・レイ

 

「ブライト」

 

⸻

 

■シャア・アズナブル

 

「状況は?」

 

⸻

 

ブライトは一度だけ二人を見る。

 

⸻

 

そして即座に、

再びモニターへ視線を戻した。

 

⸻

 

■ブライト

 

「変化は三点だ」

 

⸻

 

指を動かす。

 

⸻

 

モニター上に、

複数波形が浮かび上がる。

 

⸻

 

■ブライト

 

「一つ、アナハイム極秘工廠の起動反応」

 

⸻

 

深蒼波形。

 

⸻

 

脈打つような反応。

 

⸻

 

■ブライト

 

「二つ、干渉波の再拡大」

 

⸻

 

外縁宙域。

 

⸻

 

歪む空間。

 

⸻

 

不安定化する位相層。

 

⸻

 

■ブライト

 

「三つ——」

 

⸻

 

少し間。

 

⸻

 

■ブライト

 

「この艦そのものが“同期対象”に入った」

 

⸻

 

沈黙。

 

⸻

 

ブリッジの空気が、

一段階重くなる。

 

⸻

 

■レイジ

 

「……艦が?」

 

⸻

 

ブライトは否定しない。

 

⸻

 

■ブライト

 

「外から見ているつもりでいるな」

 

⸻

 

ゆっくり視線を上げる。

 

⸻

 

■ブライト

 

「もう“中”だ」

 

⸻

 

短い沈黙。

 

⸻

 

誰も、

その言葉を否定できない。

 

⸻

 

■アムロ

 

目を細める。

 

⸻

 

■アムロ

 

「……まだ繋がってる」

 

⸻

 

⸻

 

■シャア

 

壁にもたれたまま、

静かに息を吐く。

 

⸻

 

■シャア

 

「やはり切れてはいないか」

 

⸻

 

その声に焦りはない。

 

⸻

 

むしろ。

 

⸻

 

理解してしまった者だけが持つ、

静かな落ち着きだった。

 

⸻

 

■シャア

 

「人類はいつもそうだ」

 

⸻

 

少し間。

 

⸻

 

■シャア

 

「境界を越えた瞬間から、

戻れなくなる」

 

⸻

 

⸻

 

■アマテラス・ブリッジ

 

その瞬間。

 

⸻

 

空間が、

わずかに揺れる。

 

⸻

 

“あの感覚”が戻ってくる。

 

⸻

 

耳鳴り。

 

⸻

 

潮騒。

 

⸻

 

深海のような圧迫感。

 

⸻

 

レイジが顔を上げる。

 

⸻

 

■レイジ

 

「っ……!」

 

⸻

 

呼吸が止まる。

 

⸻

 

■レイジ

 

「……また来てる!」

 

⸻

 

⸻

 

■アナハイム極秘工廠

 

海上プラント。

 

⸻

 

深蒼の光が、

再び強く脈動する。

 

⸻

 

■技術主任

 

「同期率上昇!」

 

⸻

 

■技術主任

 

「制御限界突破します!」

 

⸻

 

■エリシア・マス

 

「位相固定できません!」

 

⸻

 

だが。

 

⸻

 

誰も止めようとしない。

 

⸻

 

いや。

 

⸻

 

止めるという発想自体が、

すでに存在しなかった。

 

⸻

 

その中心。

 

⸻

 

■セイラ・マス

 

深蒼フレームを見つめている。

 

⸻

 

その光は、

まるで海の鼓動のようだった。

 

⸻

 

■セイラ

 

「……いい」

 

⸻

 

静かな声。

 

⸻

 

■セイラ

 

「そのまま」

 

⸻

 

コンテナ内部。

 

⸻

 

蒼い機体が、

呼吸するように応える。

 

⸻

 

⸻

 

■アマテラス・ブリッジ

 

ブライトが短く告げる。

 

⸻

 

■ブライト

 

「全員、警戒態勢」

 

⸻

 

だがそれは、

戦闘命令ではない。

 

⸻

 

“適応”の宣告だった。

 

⸻

 

⸻

 

■アムロ

 

小さく息を吐く。

 

⸻

 

■アムロ

 

「戦闘じゃない」

 

⸻

 

少し間。

 

⸻

 

■アムロ

 

「……始まりだ」

 

⸻

 

⸻

 

■シャア

 

目を細める。

 

⸻

 

■シャア

 

「ならば、なお厄介だな」

 

⸻

 

⸻

 

次の瞬間。

 

⸻

 

アマテラス全域から、

一斉にノイズが走る。

 

⸻

 

警報が消える。

 

⸻

 

音が消える。

 

⸻

 

呼吸音だけが残る。

 

⸻

 

そして——

 

⸻

 

世界は完全に“繋がった”。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。