■アマテラス・MSドック
整備作業は続いていた。
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戦闘準備。
機体点検。
補給確認。
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忙しい。
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だが。
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整備士達の口だけは止まらない。
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■整備士A
「しかし本当に赤いな」
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■整備士B
「赤いですねぇ」
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■整備士C
「赤いな」
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少し離れた場所。
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■シャア・アズナブル
普通に歩いている。
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■整備士A
「目立つよなぁ」
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■整備士B
「絶対目立ちたい人ですよね」
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■整備士C
「たぶんそうだな」
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その時。
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■レイジ・イルマ
通りかかる。
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■レイジ
「何の話?」
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■整備士A
「あの人」
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シャアを見る。
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■レイジ
「ああ」
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■整備士B
「何で赤いと思う?」
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■レイジ
「知らん」
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少し考える。
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■レイジ
「目立ちたいんじゃね?」
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整備士達が吹き出す。
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■整備士C
「アハハハッそれだそれ!」
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■整備士A
「絶対それだ」
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■整備士B
「実に分かりやすい」
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そこへ。
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■セラーナ・カーン
資料を抱えて現れる。
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■整備士A
「あ、セラーナさん」
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■整備士B
「ちょっと教えてください」
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■セラーナ
「何でしょう」
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■整備士A
「何でシャアさんって赤いんですか?」
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■セラーナ
「ああ」
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理解したように頷く。
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■セラーナ
「一年戦争時代」
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整備士達が静かになる。
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■セラーナ
「シャア専用ザクⅡは高機動戦闘用に調整され——」
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■整備士達
「おおー」
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■セラーナ
「当時の戦果から赤い彗星と呼ばれ——」
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■レイジ
「へぇ〜」
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■セラーナ
「以後、象徴色として——」
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■レイジ
「なるほど」
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全員見る。
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■レイジ
「つまり赤いおっさんか」
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沈黙。
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■セラーナ
「違います」
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即答だった。
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■レイジ
「違うのか?」
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■セラーナ
「違います」
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その時。
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背後から声。
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■シャア
「誰が赤いおっさんだ」
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全員固まる。
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一拍。
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■整備士A
「あっ」
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■整備士B
「そうだ」
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■整備士C
「仕事中だった」
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三人同時に立ち上がる。
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■整備士A
「では失礼します!」
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■整備士B
「点検が!」
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■整備士C
「補給が!」
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脱兎の如く逃走。
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■シャア
「待て」
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誰も止まらない。
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むしろ加速した。
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■レイジ
「あいつら裏切ったぞ」
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■シャア
「最初から貴様も同罪だ」
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■レイジ
「赤いおっさん」
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■シャア
「やめろ」
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■レイジ
「赤いおっさん」
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■シャア
「やめろと言っている」
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セラーナも思わず口元を押さえる。
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■セラーナ
「ふふっ……」
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■シャア
「セラーナ君まで笑うのか」
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■セラーナ
「失礼しました」
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そう言いながら、
全く反省していなかった。
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ドックには笑い声が響く。
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アマテラスは今日も平和だった。
■あとがき
第6巻『深蒼接続』。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
ここまで来ました。
アムロ・レイ。
シャア・アズナブル。
二人が、再びこの物語の中を歩き始めました。
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この二人を書くというのは、
やっぱり特別です。
『機動戦士ガンダム:残響』という物語を始めた時から、
いつかここへ辿り着くことは決めていました。
けれど。
ただ二人を「復活」させたかったわけではありません。
アクシズ・ショックの向こう側へ消えた二人が、
もし何かを残していたなら。
それは何なのか。
記憶なのか。
想いなのか。
後悔なのか。
それとも。
誰かにもう一度会いたいという、
とても人間らしい願いなのか。
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だからこの巻では、
「帰ってきた」
という言葉を、
できるだけ簡単には使わないようにしました。
肉体がある。
声が聞こえる。
触れることができる。
だからといって、
それだけで本当に帰ってきたと言えるのか。
アムロも。
シャアも。
長い時間を残響として漂い、
本来なら存在しないはずの時間へ戻ってきた人間です。
なら。
彼らが本当に帰るべき場所とは、
いったいどこなのか。
それが、
この巻を書きながらずっと考えていたことでした。
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そして。
第19章。
「帰る場所」。
個人的にも、
この巻の中でとても大切な章になりました。
アムロとベルトーチカ。
そしてレイジ。
戦争でもない。
ニュータイプでもない。
サイコフレームでもない。
ただ。
帰ってきた人を抱きしめる。
そこに待っていた人がいる。
それだけの場面です。
でも。
この作品で描きたい「帰還」は、
たぶんこういうことなんだと思います。
世界を救うことよりも。
奇跡を起こすことよりも。
「おかえり」と言える場所へ戻ってくること。
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そして。
その光景を見ていた、
もう一人の男。
シャア・アズナブル。
「……帰る場所、か」
彼がそう呟いた意味については、
ここではあまり書かないでおきます。
彼にもまた。
失った人がいる。
置いてきた人がいる。
そして。
帰ることが出来なかった場所がある。
アムロとシャア。
同じアクシズ・ショックの中へ消えた二人でも、
背負っているものは同じではありません。
だからこそ。
この先、
二人が何を見るのか。
何を選ぶのか。
最後まで見届けてもらえればと思います。
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そしてもう一つ。
第6巻では、
世界そのものにも変化が起き始めました。
現実と記録。
過去と現在。
生者と残響。
こちら側と向こう側。
これまで存在していた境界が、
少しずつ意味を失い始めています。
深蒼。
この言葉を巻タイトルにした理由も、
ここから少しずつ見えてくるはずです。
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『機動戦士ガンダム:残響』は、
戦争に勝つためだけの物語ではありません。
失われたものを取り戻すだけの物語でもありません。
理解し合えなかった人達が。
それでも誰かに惹かれ。
何度すれ違っても。
最後には同じ場所へ帰ろうとする。
そんな物語です。
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第6巻を終えて。
いよいよ物語は、
さらに深い場所へ向かいます。
アムロ。
シャア。
レイジ。
エリシア。
セイラ。
ベルトーチカ。
ブライト。
ミライ。
そして。
彼らを待つ、
まだ見えない残響。
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ここまで来たら。
もう全員まとめて、
帰ってきてもらいましょう。
作者としては、
「一人残らず帰ってこい」
です。
……まあ。
素直に帰ってきてくれる連中なら、
そもそもこんな長い話にはなってないんですけどね。
特に赤い人。
あなたです。
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それでは。
第6巻『深蒼接続』。
最後までお付き合いいただき、
本当にありがとうございました。
次巻。
さらに深い蒼の向こうで、
またお会いしましょう。
片蔵清優