機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第6巻 巻末外伝 ■アマテラスの日常 「赤いおっさん」

■アマテラス・MSドック

 

整備作業は続いていた。

 

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戦闘準備。

 

機体点検。

 

補給確認。

 

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忙しい。

 

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だが。

 

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整備士達の口だけは止まらない。

 

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■整備士A

 

「しかし本当に赤いな」

 

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■整備士B

 

「赤いですねぇ」

 

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■整備士C

 

「赤いな」

 

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少し離れた場所。

 

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■シャア・アズナブル

 

普通に歩いている。

 

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■整備士A

 

「目立つよなぁ」

 

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■整備士B

 

「絶対目立ちたい人ですよね」

 

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■整備士C

 

「たぶんそうだな」

 

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その時。

 

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■レイジ・イルマ

 

通りかかる。

 

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■レイジ

 

「何の話?」

 

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■整備士A

 

「あの人」

 

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シャアを見る。

 

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■レイジ

 

「ああ」

 

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■整備士B

 

「何で赤いと思う?」

 

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■レイジ

 

「知らん」

 

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少し考える。

 

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■レイジ

 

「目立ちたいんじゃね?」

 

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整備士達が吹き出す。

 

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■整備士C

 

「アハハハッそれだそれ!」

 

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■整備士A

 

「絶対それだ」

 

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■整備士B

 

「実に分かりやすい」

 

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そこへ。

 

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■セラーナ・カーン

 

資料を抱えて現れる。

 

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■整備士A

 

「あ、セラーナさん」

 

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■整備士B

 

「ちょっと教えてください」

 

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■セラーナ

 

「何でしょう」

 

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■整備士A

 

「何でシャアさんって赤いんですか?」

 

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■セラーナ

 

「ああ」

 

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理解したように頷く。

 

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■セラーナ

 

「一年戦争時代」

 

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整備士達が静かになる。

 

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■セラーナ

 

「シャア専用ザクⅡは高機動戦闘用に調整され——」

 

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■整備士達

 

「おおー」

 

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■セラーナ

 

「当時の戦果から赤い彗星と呼ばれ——」

 

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■レイジ

 

「へぇ〜」

 

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■セラーナ

 

「以後、象徴色として——」

 

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■レイジ

 

「なるほど」

 

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全員見る。

 

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■レイジ

 

「つまり赤いおっさんか」

 

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沈黙。

 

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■セラーナ

 

「違います」

 

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即答だった。

 

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■レイジ

 

「違うのか?」

 

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■セラーナ

 

「違います」

 

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その時。

 

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背後から声。

 

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■シャア

 

「誰が赤いおっさんだ」

 

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全員固まる。

 

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一拍。

 

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■整備士A

 

「あっ」

 

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■整備士B

 

「そうだ」

 

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■整備士C

 

「仕事中だった」

 

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三人同時に立ち上がる。

 

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■整備士A

 

「では失礼します!」

 

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■整備士B

 

「点検が!」

 

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■整備士C

 

「補給が!」

 

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脱兎の如く逃走。

 

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■シャア

 

「待て」

 

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誰も止まらない。

 

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むしろ加速した。

 

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■レイジ

 

「あいつら裏切ったぞ」

 

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■シャア

 

「最初から貴様も同罪だ」

 

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■レイジ

 

「赤いおっさん」

 

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■シャア

 

「やめろ」

 

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■レイジ

 

「赤いおっさん」

 

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■シャア

 

「やめろと言っている」

 

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セラーナも思わず口元を押さえる。

 

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■セラーナ

 

「ふふっ……」

 

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■シャア

 

「セラーナ君まで笑うのか」

 

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■セラーナ

 

「失礼しました」

 

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そう言いながら、

 

全く反省していなかった。

 

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ドックには笑い声が響く。

 

⸻

 

アマテラスは今日も平和だった。




■あとがき

第6巻『深蒼接続』。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

ここまで来ました。

アムロ・レイ。

シャア・アズナブル。

二人が、再びこの物語の中を歩き始めました。

⸻

この二人を書くというのは、
やっぱり特別です。

『機動戦士ガンダム:残響』という物語を始めた時から、
いつかここへ辿り着くことは決めていました。

けれど。

ただ二人を「復活」させたかったわけではありません。

アクシズ・ショックの向こう側へ消えた二人が、
もし何かを残していたなら。

それは何なのか。

記憶なのか。

想いなのか。

後悔なのか。

それとも。

誰かにもう一度会いたいという、
とても人間らしい願いなのか。

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だからこの巻では、

「帰ってきた」

という言葉を、
できるだけ簡単には使わないようにしました。

肉体がある。

声が聞こえる。

触れることができる。

だからといって、
それだけで本当に帰ってきたと言えるのか。

アムロも。

シャアも。

長い時間を残響として漂い、
本来なら存在しないはずの時間へ戻ってきた人間です。

なら。

彼らが本当に帰るべき場所とは、
いったいどこなのか。

それが、
この巻を書きながらずっと考えていたことでした。

⸻

そして。

第19章。

「帰る場所」。

個人的にも、
この巻の中でとても大切な章になりました。

アムロとベルトーチカ。

そしてレイジ。

戦争でもない。

ニュータイプでもない。

サイコフレームでもない。

ただ。

帰ってきた人を抱きしめる。

そこに待っていた人がいる。

それだけの場面です。

でも。

この作品で描きたい「帰還」は、
たぶんこういうことなんだと思います。

世界を救うことよりも。

奇跡を起こすことよりも。

「おかえり」と言える場所へ戻ってくること。

⸻

そして。

その光景を見ていた、
もう一人の男。

シャア・アズナブル。

「……帰る場所、か」

彼がそう呟いた意味については、
ここではあまり書かないでおきます。

彼にもまた。

失った人がいる。

置いてきた人がいる。

そして。

帰ることが出来なかった場所がある。

アムロとシャア。

同じアクシズ・ショックの中へ消えた二人でも、
背負っているものは同じではありません。

だからこそ。

この先、
二人が何を見るのか。

何を選ぶのか。

最後まで見届けてもらえればと思います。

⸻

そしてもう一つ。

第6巻では、
世界そのものにも変化が起き始めました。

現実と記録。

過去と現在。

生者と残響。

こちら側と向こう側。

これまで存在していた境界が、
少しずつ意味を失い始めています。

深蒼。

この言葉を巻タイトルにした理由も、
ここから少しずつ見えてくるはずです。

⸻

『機動戦士ガンダム:残響』は、

戦争に勝つためだけの物語ではありません。

失われたものを取り戻すだけの物語でもありません。

理解し合えなかった人達が。

それでも誰かに惹かれ。

何度すれ違っても。

最後には同じ場所へ帰ろうとする。

そんな物語です。

⸻

第6巻を終えて。

いよいよ物語は、
さらに深い場所へ向かいます。

アムロ。

シャア。

レイジ。

エリシア。

セイラ。

ベルトーチカ。

ブライト。

ミライ。

そして。

彼らを待つ、
まだ見えない残響。

⸻

ここまで来たら。

もう全員まとめて、
帰ってきてもらいましょう。

作者としては、

「一人残らず帰ってこい」

です。

……まあ。

素直に帰ってきてくれる連中なら、
そもそもこんな長い話にはなってないんですけどね。

特に赤い人。

あなたです。

⸻

それでは。

第6巻『深蒼接続』。

最後までお付き合いいただき、
本当にありがとうございました。

次巻。

さらに深い蒼の向こうで、
またお会いしましょう。

片蔵清優
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