■境界海域
深蒼の海が揺れている。
⸻
だがその揺れは、
波ではない。
⸻
“観測”そのものだった。
⸻
⸻
■アマテラス隊各機
機体表面へ、
微細なノイズが走る。
⸻
装甲ではない。
⸻
存在そのものへ、
干渉が始まっていた。
⸻
⸻
■システム
『識別領域、侵食中』
⸻
■システム
『パイロット認識層へ接触反応』
⸻
⸻
■レイジ・イルマ
顔を上げる。
⸻
■レイジ
「認識層……?」
⸻
⸻
■アムロ・レイ(通信)
落ち着いた声。
⸻
■アムロ
「考えるな」
⸻
⸻
■アムロ
「“自分が誰か”を固定しろ」
⸻
⸻
■レイジ
息を呑む。
⸻
その瞬間。
⸻
視界の奥へ、
別の景色が混ざる。
⸻
⸻
■海辺
風。
⸻
白い光。
⸻
潮の匂い。
⸻
遠い記憶のような景色。
⸻
⸻
■レイジ
「……え?」
⸻
⸻
次の瞬間。
⸻
映像が崩壊する。
⸻
砂のように、
視界の奥から崩れていく。
⸻
⸻
■警告音
鋭く鳴り響く。
⸻
■システム
『認識汚染反応』
⸻
■システム
『境界浸食率、上昇』
⸻
⸻
■レイジ
呼吸が乱れる。
⸻
■レイジ
「何だよ今の……!」
⸻
⸻
■シャア・アズナブル(通信)
静かな声。
⸻
■シャア
「覗かれたな」
⸻
⸻
■レイジ
「覗かれた……?」
⸻
⸻
■シャア
淡々と続ける。
⸻
■シャア
「向こうは形を持たん」
⸻
■シャア
「だから、
こちら側を読む」
⸻
⸻
■アムロ
短く補足する。
⸻
■アムロ
「認識を媒介にして侵入してくる」
⸻
⸻
■レイジ
額へ汗が滲む。
⸻
■レイジ
「じゃあ俺たちは……」
⸻
⸻
■シャア
即答。
⸻
■シャア
「測られている」
⸻
⸻
■深蒼空間
赤い光群が広がっていく。
⸻
その配置には、
規則性があった。
⸻
まるで巨大な演算装置のように、
位置を変え続けている。
⸻
⸻
■アムロ
目を細める。
⸻
■アムロ
「配置が変わった」
⸻
⸻
■シャア
即座に理解する。
⸻
■シャア
「こちらを中心に、
再構築しているな」
⸻
⸻
■レイジ
「再構築……?」
⸻
⸻
■アムロ
低く言う。
⸻
■アムロ
「世界の見え方を書き換えられてる」
⸻
⸻
■空間
深蒼がさらに濃くなる。
⸻
すると突然。
⸻
“海”が現れる。
⸻
⸻
■レイジ
目を見開く。
⸻
■レイジ
「海……?」
⸻
⸻
コクピットの外。
⸻
宇宙ではない。
⸻
波が揺れている。
⸻
空がある。
⸻
雲まで存在していた。
⸻
⸻
■レイジ
「何で宇宙に海があるんだよ……!」
⸻
⸻
■シャア
静かに呟く。
⸻
■シャア
「“理解できる形”へ、
変換されたか」
⸻
⸻
■アムロ
視線を動かさない。
⸻
■アムロ
「近いな」
⸻
⸻
■レイジ
「何が!?」
⸻
⸻
■アムロ
短く答える。
⸻
■アムロ
「境界が」
⸻
⸻
■深蒼の海
波の奥。
⸻
何かが立っている。
⸻
人影。
⸻
だが輪郭が定まらない。
⸻
存在だけが、
海の向こう側に立っている。
⸻
⸻
■レイジ
呼吸を忘れる。
⸻
■レイジ
「あれ……」
⸻
⸻
■シャア
目を細める。
⸻
■シャア
「来るぞ」
⸻
⸻
波が止まる。
⸻
世界が、
一瞬だけ静止する。
⸻
その沈黙だけが、
異様に深かった。