機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第7巻 第3章 「測定者」

■境界海域

 

深蒼の海が揺れている。

 

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だがその揺れは、

波ではない。

 

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“観測”そのものだった。

 

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■アマテラス隊各機

 

機体表面へ、

微細なノイズが走る。

 

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装甲ではない。

 

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存在そのものへ、

干渉が始まっていた。

 

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■システム

 

『識別領域、侵食中』

 

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■システム

 

『パイロット認識層へ接触反応』

 

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■レイジ・イルマ

 

顔を上げる。

 

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■レイジ

 

「認識層……?」

 

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■アムロ・レイ(通信)

 

落ち着いた声。

 

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■アムロ

 

「考えるな」

 

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■アムロ

 

「“自分が誰か”を固定しろ」

 

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■レイジ

 

息を呑む。

 

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その瞬間。

 

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視界の奥へ、

別の景色が混ざる。

 

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■海辺

 

風。

 

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白い光。

 

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潮の匂い。

 

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遠い記憶のような景色。

 

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■レイジ

 

「……え?」

 

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次の瞬間。

 

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映像が崩壊する。

 

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砂のように、

視界の奥から崩れていく。

 

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■警告音

 

鋭く鳴り響く。

 

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■システム

 

『認識汚染反応』

 

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■システム

 

『境界浸食率、上昇』

 

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■レイジ

 

呼吸が乱れる。

 

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■レイジ

 

「何だよ今の……!」

 

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■シャア・アズナブル(通信)

 

静かな声。

 

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■シャア

 

「覗かれたな」

 

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■レイジ

 

「覗かれた……?」

 

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■シャア

 

淡々と続ける。

 

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■シャア

 

「向こうは形を持たん」

 

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■シャア

 

「だから、

こちら側を読む」

 

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■アムロ

 

短く補足する。

 

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■アムロ

 

「認識を媒介にして侵入してくる」

 

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■レイジ

 

額へ汗が滲む。

 

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■レイジ

 

「じゃあ俺たちは……」

 

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■シャア

 

即答。

 

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■シャア

 

「測られている」

 

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■深蒼空間

 

赤い光群が広がっていく。

 

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その配置には、

規則性があった。

 

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まるで巨大な演算装置のように、

位置を変え続けている。

 

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■アムロ

 

目を細める。

 

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■アムロ

 

「配置が変わった」

 

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■シャア

 

即座に理解する。

 

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■シャア

 

「こちらを中心に、

再構築しているな」

 

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■レイジ

 

「再構築……?」

 

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■アムロ

 

低く言う。

 

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■アムロ

 

「世界の見え方を書き換えられてる」

 

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■空間

 

深蒼がさらに濃くなる。

 

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すると突然。

 

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“海”が現れる。

 

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■レイジ

 

目を見開く。

 

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■レイジ

 

「海……?」

 

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コクピットの外。

 

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宇宙ではない。

 

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波が揺れている。

 

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空がある。

 

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雲まで存在していた。

 

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■レイジ

 

「何で宇宙に海があるんだよ……!」

 

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■シャア

 

静かに呟く。

 

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■シャア

 

「“理解できる形”へ、

変換されたか」

 

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■アムロ

 

視線を動かさない。

 

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■アムロ

 

「近いな」

 

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■レイジ

 

「何が!?」

 

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■アムロ

 

短く答える。

 

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■アムロ

 

「境界が」

 

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■深蒼の海

 

波の奥。

 

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何かが立っている。

 

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人影。

 

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だが輪郭が定まらない。

 

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存在だけが、

海の向こう側に立っている。

 

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■レイジ

 

呼吸を忘れる。

 

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■レイジ

 

「あれ……」

 

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■シャア

 

目を細める。

 

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■シャア

 

「来るぞ」

 

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波が止まる。

 

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世界が、

一瞬だけ静止する。

 

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その沈黙だけが、

異様に深かった。

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