機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第7巻 第4章 「深蒼出撃」

■アマテラス・ドック

 

赤い警告灯が静かに回転している。

 

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その光は、

機体だけではなく、

空間そのものを染めていた。

 

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深蒼の揺らぎ。

 

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まるで海底へ沈められたような圧迫感が、

艦全体を包み込んでいる。

 

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■整備デッキ

 

各機の固定ロックが、

順次解除されていく。

 

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■整備主任

 

「各機最終チェック終了!」

 

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■整備主任

 

「境界干渉域突入シークエンスへ移行!」

 

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■第1カタパルト

 

Hi-νガンダム

 

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蒼白の機体表面へ、

深蒼の光が淡く流れている。

 

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まるで空間そのものと、

共鳴しているようだった。

 

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■コクピット内部

 

アムロ・レイが、

静かに目を開く。

 

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呼吸は乱れていない。

 

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恐怖も。

 

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迷いも。

 

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存在していなかった。

 

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ただ——

 

“行く”

 

という覚悟だけがある。

 

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■システム

 

『サイコミュ同期安定』

 

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■システム

 

『境界認識固定完了』

 

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■アムロ

 

静かに前を見る。

 

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■アムロ

 

「Hi-νガンダム、アムロ出る」

 

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■カタパルト

 

ロック解除。

 

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Hi-νが、

蒼い残光を引きながら、

深蒼空間へ射出される。

 

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その瞬間。

 

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空間が“沈む”。

 

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推進ではない。

 

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深い海へ落ちていく感覚。

 

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重力ではなく、

世界そのものが下へ流れていく。

 

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■第2カタパルト

 

ナイチンゲール

 

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巨大な紅い機体。

 

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その輪郭だけが、

時折ノイズのように揺れる。

 

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完全には、

この世界へ固定されていない。

 

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■コクピット内部

 

シャア・アズナブルが、

静かに目を細める。

 

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モニターの外。

 

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宇宙ではない。

 

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深蒼の海が広がっている。

 

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■シャア

 

「ララァ……」

 

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短い沈黙。

 

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■シャア

 

「まだ、

お前はそこにいるのか」

 

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ナイチンゲールが、

微かに発光する。

 

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まるで応えるように。

 

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■シャア

 

静かに操縦桿を握る。

 

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■シャア

 

「ナイチンゲール、

シャア・アズナブル出る」

 

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■カタパルト

 

紅い巨体が射出。

 

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深蒼空間を、

紅い残光が切り裂く。

 

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■第3カタパルト

 

フィロメラガンダム

 

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白と蒼を基調とした機体。

 

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白い装甲奥で、

赤い燐光が微かに脈動している。

 

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だがその周囲だけ、

空間が不安定に歪んでいた。

 

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まだ完全には、

この領域へ適応し切れていない。

 

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■コクピット内部

 

レイジ・イルマが、

深く息を吸う。

 

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額には汗。

 

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指先も震えている。

 

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それでも、

視線だけは前を向いていた。

 

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■通信回線

 

ブライト・ノアの声。

 

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■ブライト・ノア

 

「各機、聞け」

 

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ドック全体が静まり返る。

 

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誰も喋らない。

 

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警報音だけが、

海鳴りのように響いている。

 

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■ブライト

 

「この先は通常宙域ではない」

 

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■ブライト

 

「常識も、

距離も、

時間も保証されん」

 

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短い沈黙。

 

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■ブライト

 

「だが——」

 

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低い声が続く。

 

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■ブライト

 

「必ず帰還しろ」

 

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■ジェガン隊

 

次々と返答。

 

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■ジェガン隊

 

「ジェガン1、了解!」

 

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■ジェガン隊

 

「2番機、出るぞ!」

 

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■ジェガン隊

 

「死ぬなよ、お前ら!」

 

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笑う声。

 

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だが誰も、

本当に笑ってはいない。

 

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その笑いは、

恐怖をごまかすためのものだった。

 

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■レイジ

 

震える手で操縦桿を握る。

 

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モニターへ映る深蒼。

 

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怖い。

 

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本能が拒絶している。

 

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だが——

 

逃げない。

 

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■レイジ

 

「フィロメラ——」

 

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一瞬だけ息が止まる。

 

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だが次の瞬間。

 

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その目が、

真っ直ぐ前を向く。

 

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■レイジ

 

「レイジ・イルマ……

出ます!!」

 

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■フィロメラガンダム

 

白蒼の軌跡を描き、

深蒼空間へ飛び込む。

 

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その瞬間。

 

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レイジの視界から、

“上下”が消える。

 

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呼吸だけが残る。

 

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世界の輪郭が、

ゆっくり溶けていく。

 

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■深蒼空間

 

三機。

 

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そしてジェガン隊が、

ついに境界海域へ踏み込む。

 

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その瞬間——

 

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海の奥。

 

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無数の赤い光が、

一斉に開眼する。

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