機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

136 / 139
■第7巻 第5章 「再接触」

■深蒼空間

 

静かだった。

 

⸻

 

だがその静寂は、

“何もない”静けさではない。

 

⸻

 

“見られている”

 

沈黙だった。

 

⸻

 

⸻

 

■Hi-νガンダム

 

深蒼の海を、

滑るように進む。

 

⸻

 

通常推進は、

ほとんど意味を失っていた。

 

⸻

 

速度。

 

⸻

 

方向。

 

⸻

 

距離。

 

⸻

 

その全てを、

感覚だけで維持している。

 

⸻

 

⸻

 

■アムロ・レイ

 

静かに前を見る。

 

⸻

 

■アムロ

 

「……近いな」

 

⸻

 

⸻

 

■ナイチンゲール

 

紅い巨体。

 

⸻

 

深蒼の中で、

異様な存在感を放っている。

 

⸻

 

まるで、

この空間にだけ適応しているようだった。

 

⸻

 

⸻

 

■シャア・アズナブル

 

目を細める。

 

⸻

 

■シャア

 

「向こうも、

こちらを認識したか」

 

⸻

 

⸻

 

■フィロメラガンダム

 

機体各部へ、

微細なノイズが走る。

 

⸻

 

時折。

 

⸻

 

白い装甲表面が、

わずかに“ズレる”。

 

⸻

 

存在同期が、

追いついていない。

 

⸻

 

⸻

 

■レイジ・イルマ

 

額へ汗を浮かべる。

 

⸻

 

■レイジ

 

「くそ……」

 

⸻

 

⸻

 

視界の奥。

 

⸻

 

深蒼の海が揺れる。

 

⸻

 

その中へ、

“赤”が灯る。

 

⸻

 

一つ。

 

⸻

 

また一つ。

 

⸻

 

さらに。

 

⸻

 

⸻

 

■レイジ

 

息を呑む。

 

⸻

 

■レイジ

 

「……また、

あいつらかよ……!」

 

⸻

 

⸻

 

■深蒼空間

 

赤い光が、

ゆっくりと人影へ変わっていく。

 

⸻

 

輪郭が形成される。

 

⸻

 

黒。

 

⸻

 

深蒼。

 

⸻

 

そして——

 

紅。

 

⸻

 

⸻

 

■コルヴス・クロウ

 

静かに立っている。

 

⸻

 

人間に見える。

 

⸻

 

だが決定的に、

“何か”が違う。

 

⸻

 

その存在だけが、

空間から切り離されていた。

 

⸻

 

⸻

 

■シャル

 

少し後方。

 

⸻

 

白い髪が、

深蒼の海に揺れている。

 

⸻

 

瞳だけが、

異様に静かだった。

 

⸻

 

⸻

 

■レイジ

 

喉が鳴る。

 

⸻

 

以前遭遇した時の感覚が、

一気に蘇る。

 

⸻

 

息苦しさ。

 

⸻

 

認識のズレ。

 

⸻

 

“覗かれる”感覚。

 

⸻

 

⸻

 

■レイジ

 

「何なんだよ、

お前ら……」

 

⸻

 

⸻

 

■コルヴス

 

静かに視線を向ける。

 

⸻

 

怒気はない。

 

⸻

 

殺意もない。

 

⸻

 

だが——

 

⸻

 

“深い”。

 

⸻

 

底が見えない。

 

⸻

 

⸻

 

■コルヴス

 

「境界固定個体……

確認」

 

⸻

 

⸻

 

声が響く。

 

⸻

 

耳ではない。

 

⸻

 

頭の内側へ、

直接落ちてくる。

 

⸻

 

⸻

 

■ジェガン隊

 

一機が、

わずかに機体を揺らす。

 

⸻

 

■ジェガンパイロット

 

「うおっ!?」

 

⸻

 

■ジェガンパイロット

 

「何だ今の声!?」

 

⸻

 

⸻

 

■シャア

 

低く呟く。

 

⸻

 

■シャア

 

「通信ではないな」

 

⸻

 

⸻

 

■アムロ

 

視線を逸らさない。

 

⸻

 

■アムロ

 

「直接干渉している」

 

⸻

 

⸻

 

■シャル

 

静かにレイジを見る。

 

⸻

 

その瞳だけが、

わずかに揺れる。

 

⸻

 

⸻

 

■シャル

 

「……不安定」

 

⸻

 

⸻

 

■レイジ

 

「は……?」

 

⸻

 

⸻

 

次の瞬間。

 

⸻

 

フィロメラ周囲の空間が、

一気に歪む。

 

⸻

 

⸻

 

■警告音

 

激しく鳴り響く。

 

⸻

 

■システム

 

『認識層侵食反応!』

 

⸻

 

■システム

 

『境界固定率、急低下!』

 

⸻

 

⸻

 

■レイジ

 

「うわっ!?」

 

⸻

 

⸻

 

視界が揺れる。

 

⸻

 

深蒼の海が、

“別の景色”へ変わり始める。

 

⸻

 

空。

 

⸻

 

波。

 

⸻

 

誰かの影。

 

⸻

 

記憶と現実の境界が、

崩れ始めていた。

 

⸻

 

⸻

 

■アムロ

 

即座に叫ぶ。

 

⸻

 

■アムロ

 

「レイジ!!」

 

⸻

 

⸻

 

■シャア

 

目を細める。

 

⸻

 

■シャア

 

「始まったか」

 

⸻

 

⸻

 

■コルヴス

 

静かに呟く。

 

⸻

 

■コルヴス

 

「接触開始」

 

⸻

 

⸻

 

■深蒼空間

 

海が、

ゆっくりと口を開く。

 

⸻

 

まるで、

世界そのものがレイジを呑み込もうとしていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。