■深蒼空間
静かだった。
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だがその静寂は、
“何もない”静けさではない。
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“見られている”
沈黙だった。
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■Hi-νガンダム
深蒼の海を、
滑るように進む。
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通常推進は、
ほとんど意味を失っていた。
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速度。
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方向。
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距離。
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その全てを、
感覚だけで維持している。
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■アムロ・レイ
静かに前を見る。
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■アムロ
「……近いな」
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■ナイチンゲール
紅い巨体。
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深蒼の中で、
異様な存在感を放っている。
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まるで、
この空間にだけ適応しているようだった。
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■シャア・アズナブル
目を細める。
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■シャア
「向こうも、
こちらを認識したか」
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■フィロメラガンダム
機体各部へ、
微細なノイズが走る。
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時折。
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白い装甲表面が、
わずかに“ズレる”。
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存在同期が、
追いついていない。
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■レイジ・イルマ
額へ汗を浮かべる。
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■レイジ
「くそ……」
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視界の奥。
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深蒼の海が揺れる。
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その中へ、
“赤”が灯る。
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一つ。
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また一つ。
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さらに。
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■レイジ
息を呑む。
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■レイジ
「……また、
あいつらかよ……!」
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■深蒼空間
赤い光が、
ゆっくりと人影へ変わっていく。
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輪郭が形成される。
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黒。
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深蒼。
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そして——
紅。
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■コルヴス・クロウ
静かに立っている。
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人間に見える。
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だが決定的に、
“何か”が違う。
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その存在だけが、
空間から切り離されていた。
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■シャル
少し後方。
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白い髪が、
深蒼の海に揺れている。
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瞳だけが、
異様に静かだった。
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■レイジ
喉が鳴る。
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以前遭遇した時の感覚が、
一気に蘇る。
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息苦しさ。
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認識のズレ。
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“覗かれる”感覚。
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■レイジ
「何なんだよ、
お前ら……」
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■コルヴス
静かに視線を向ける。
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怒気はない。
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殺意もない。
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だが——
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“深い”。
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底が見えない。
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■コルヴス
「境界固定個体……
確認」
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声が響く。
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耳ではない。
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頭の内側へ、
直接落ちてくる。
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■ジェガン隊
一機が、
わずかに機体を揺らす。
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■ジェガンパイロット
「うおっ!?」
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■ジェガンパイロット
「何だ今の声!?」
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■シャア
低く呟く。
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■シャア
「通信ではないな」
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■アムロ
視線を逸らさない。
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■アムロ
「直接干渉している」
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■シャル
静かにレイジを見る。
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その瞳だけが、
わずかに揺れる。
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■シャル
「……不安定」
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■レイジ
「は……?」
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次の瞬間。
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フィロメラ周囲の空間が、
一気に歪む。
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■警告音
激しく鳴り響く。
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■システム
『認識層侵食反応!』
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■システム
『境界固定率、急低下!』
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■レイジ
「うわっ!?」
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視界が揺れる。
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深蒼の海が、
“別の景色”へ変わり始める。
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空。
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波。
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誰かの影。
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記憶と現実の境界が、
崩れ始めていた。
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■アムロ
即座に叫ぶ。
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■アムロ
「レイジ!!」
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■シャア
目を細める。
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■シャア
「始まったか」
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■コルヴス
静かに呟く。
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■コルヴス
「接触開始」
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■深蒼空間
海が、
ゆっくりと口を開く。
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まるで、
世界そのものがレイジを呑み込もうとしていた。