機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

146 / 146
■第6巻 第15章 「呼応」

アマテラス。

 

⸻

 

艦内は静かだった。

 

⸻

 

だが。

 

その静けさは、

安堵ではない。

 

⸻

 

どこか。

 

⸻

 

ほんの少しだけ、

噛み合っていない。

 

⸻

 

照明が、

半拍遅れて明滅する。

 

⸻

 

遠くの整備音が、

微妙にズレて聞こえる。

 

⸻

 

艦そのものが、

同じ現実へ固定しきれていない。

 

⸻

 

⸻

 

■ブリーフィングルーム

 

アムロが椅子へ座っている。

 

⸻

 

肘を膝へ置き、

静かに息を吐く。

 

⸻

 

⸻

 

■アムロ

 

「戻ったはずなのにな」

 

⸻

 

⸻

 

■シャア・アズナブル

 

壁にもたれ、

目を閉じている。

 

⸻

 

⸻

 

■シャア

 

「戻る、というのは便利な言葉だ」

 

⸻

 

⸻

 

■アムロ

 

「違うのか」

 

⸻

 

⸻

 

■シャア

 

「完全には、な」

 

⸻

 

⸻

 

沈黙。

 

⸻

 

言葉は成立している。

 

⸻

 

だが。

 

意味だけが、

わずかに噛み合わない。

 

⸻

 

理解の層が、

微妙にズレている。

 

⸻

 

⸻

 

■ベルトーチカ・イルマ

 

同じ部屋にいる。

 

⸻

 

少し離れた位置で、

二人を見ていた。

 

⸻

 

帰ってきた。

 

⸻

 

確かに目の前にいる。

 

⸻

 

だが。

 

完全に戻ったとは、

どうしても思い切れない。

 

⸻

 

⸻

 

■ベルトーチカ

 

「……おかしいわね」

 

⸻

 

⸻

 

■アムロ

 

「何がだ」

 

⸻

 

⸻

 

■ベルトーチカ

 

「全部」

 

⸻

 

⸻

 

視線を落とす。

 

⸻

 

⸻

 

■ベルトーチカ

 

「言葉は合ってるのに」

 

⸻

 

「意味だけが、

少しずれてる」

 

⸻

 

⸻

 

部屋が静まる。

 

⸻

 

誰も否定できない。

 

⸻

 

⸻

 

■アムロ

 

「そうかもしれないな」

 

⸻

 

⸻

 

■ベルトーチカ

 

「そうかもしれないじゃないわ」

 

⸻

 

「貴方達、

同じものを見てるはずなのに」

 

⸻

 

「少しずつ違う場所を見てる」

 

⸻

 

⸻

 

アムロは答えない。

 

⸻

 

シャアが、

ゆっくり目を開く。

 

⸻

 

⸻

 

■シャア

 

「揃っていないだけだ」

 

⸻

 

⸻

 

■アムロ

 

「揃うのか?」

 

⸻

 

⸻

 

短い沈黙。

 

⸻

 

シャアは少しだけ笑う。

 

⸻

 

⸻

 

■シャア

 

「人類がか?」

 

⸻

 

⸻

 

さらに沈黙。

 

⸻

 

⸻

 

■シャア

 

「無理だろうな」

 

⸻

 

⸻

 

■アムロ

 

「だろうな」

 

⸻

 

⸻

 

二人とも笑わない。

 

⸻

 

だが。

 

否定的な空気でもなかった。

 

⸻

 

⸻

 

■シャア

 

「だから面白い」

 

⸻

 

⸻

 

ベルトーチカが顔を上げる。

 

⸻

 

⸻

 

■シャア

 

「同じ景色を見ても」

 

⸻

 

「同じ結論にはならん」

 

⸻

 

⸻

 

■シャア

 

「理解し合えない」

 

⸻

 

少し間。

 

⸻

 

⸻

 

■シャア

 

「だから惹かれる」

 

⸻

 

⸻

 

アムロが、

わずかに目を細める。

 

⸻

 

⸻

 

■アムロ

 

「珍しい事を言うな」

 

⸻

 

⸻

 

■シャア

 

「貴様と並んでいる時点で今更だ」

 

⸻

 

⸻

 

ほんの少しだけ。

 

⸻

 

昔ならあり得なかった空気が流れる。

 

⸻

 

⸻

 

だが。

 

⸻

 

その瞬間。

 

⸻

 

照明が揺れる。

 

⸻

 

半拍遅れて明滅。

 

⸻

 

空気が軋む。

 

⸻

 

⸻

 

全員が顔を上げる。

 

⸻

 

⸻

 

■アムロ

 

「……来たな」

 

⸻

 

⸻

 

■シャア

 

「ああ」

 

⸻

 

⸻

 

遠く。

 

⸻

 

どこかで。

 

⸻

 

海鳴りのような振動。

 

⸻

 

誰にも聞こえない。

 

⸻

 

だが。

 

確かに存在する。

 

⸻

 

⸻

 

■医療区画

 

レイジ・イルマ。

 

⸻

 

天井を見つめている。

 

⸻

 

⸻

 

目を閉じる。

 

⸻

 

遠い。

 

⸻

 

だが。

 

確かに近づいている。

 

⸻

 

海鳴り。

 

⸻

 

呼吸。

 

⸻

 

深蒼。

 

⸻

 

まだ届かない。

 

⸻

 

だが。

 

届くと分かる。

 

⸻

 

それだけだった。

 

⸻

 

⸻

 

■アナハイム極秘工廠

 

未起動状態の

リヴァイブ・ガンダム。

 

⸻

 

深蒼フレームが、

一瞬だけ脈動する。

 

⸻

 

まるで。

 

⸻

 

遠い海の呼吸へ、

応えたように。

 

⸻

 

⸻

 

そして。

 

⸻

 

どこかで。

 

⸻

 

何かが、

静かに呼応し始めていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

機動戦士ガンダム 不死鳥戦記(作者:だいたい大丈夫)(原作:ガンダム)

宇宙世紀0079。ジオン公国の有力名家フロートニック家の長男、カリス・ジークフリード・フロートニック(16歳)は、実家の財力で少尉任官し、私兵を率いてルウム戦役へ出陣した。▼「金の力で遊んでいるお坊ちゃん」と、同期のシャア・アズナブル中尉から冷酷に嘲笑されるカリス。しかし、初陣の激戦の最中、彼は敵の射線が光の道筋として見える「ニュータイプ」の力に覚醒する。▼…


総合評価:715/評価:7.07/連載:46話/更新日時:2026年09月23日(水) 00:13 小説情報

【完結】黒いガンダムの宇宙世紀(作者:いずりょう)(原作:ガンダム)

U.C.0070、地球。▼三歳のレン・イズミは、前世で三十五年間を生きた記憶を取り戻す。自分が生まれたのは、人類が宇宙へ進出した未来――宇宙世紀。▼そして九年後には、ジオン公国と地球連邦による一年戦争が始まる。▼レンは原作はある程度知っている。▼ジオン軍のモビルスーツ コロニー落とし サイド7への襲撃▼アムロ・レイがガンダムへ乗り、ホワイトベースの戦いが始ま…


総合評価:1767/評価:6.97/完結:103話/更新日時:2026年08月17日(月) 18:00 小説情報

妹に撃たれない方法(作者:Brooks)(原作:ガンダム)

ア・バオア・クーでキシリアに射殺されたギレン・ザビは、目を覚ますとジオン・ダイクン逝去の当日に戻っていた。次は絶対に妹に殺されたくない。その一点だけを現実的な目標に定めた彼は、戦争より先に家族会議を整え、暗殺より先に議事録を作り、歴史より先に妹の機嫌を取りにかかる。しかし未来を知るのは彼だけではなかった。動乱へ傾くサイド3で、兄妹は奇妙な休戦に踏み込む。笑え…


総合評価:597/評価:5.88/完結:226話/更新日時:2026年05月06日(水) 19:56 小説情報

白き流星の羽搏き(作者:丸亀導師)(原作:ガンダム)

宇宙世紀0079人類の半数を死に至らしめた、一年戦争。▼その戦争の最中、英雄として撃墜王として名を知らしめた少年、アムロ・レイ。▼0087彼は再びモビルスーツを駆り、自らの護るべき者達の為に立ち上がる。▼


総合評価:4961/評価:8.8/連載:136話/更新日時:2026年10月21日(水) 09:53 小説情報

低ランクの冒険者でも最上級のダンジョンに挑むのは自由です。(作者:駄文亭)(原作:ソードワールド1.0)

王都オランの孤児院で育った十五歳の少年、ロック。▼両親も財産も後ろ盾もない彼は、身一つで金を稼ぐために狩人の技を学び、若くして一人前のハンターとなった。▼器用で両手利き。▼剣にも魔法にも盗賊技術にも才能を示し、冒険者訓練所では上級職から始めるよう勧められる。▼だがロックは、それを断った。▼彼が目指すのは、強い戦士でも高位の魔術師でもない。▼罠を見抜き、▼鍵を…


総合評価:154/評価:7.67/連載:94話/更新日時:2026年10月23日(金) 07:34 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>