■海岸線
白い機体が、
黒い海を背に立っている。
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フィロメラ。
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白銀の装甲。
赤く脈打つサイコフレーム。
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その姿は、
兵器というより。
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祈りに近かった。
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だが。
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優しくはない。
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そこには、
あまりにも多くの声が残っている。
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レイジは立ち尽くしていた。
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目の前には、
白いガンダム。
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背後には、
炎と悲鳴。
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海の向こうには、
黒い影の群れ。
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「……やめろ」
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声が漏れる。
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誰に向けたものか、
自分でも分からない。
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その時。
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後ろから声がした。
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「レイジ!」
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振り返る。
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ベルトーチカが立っていた。
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雨に濡れた髪。
震える指。
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けれど。
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その目だけは、
逸らしていなかった。
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「行かないで」
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レイジは動かない。
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ベルトーチカは続ける。
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「それは、
あなたの戦いじゃない」
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一拍。
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「あなたはアムロじゃない」
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声が震える。
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「だから」
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「アムロの代わりにならなくていい」
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レイジの胸に、
その言葉が刺さる。
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分かっている。
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自分はアムロじゃない。
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英雄でもない。
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誰かの代わりでもない。
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だけど。
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海岸線で爆発が起きた。
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炎。
悲鳴。
崩れる避難路。
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ジェガンが一機、
砂浜へ叩きつけられる。
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その向こうで、
黒い機体がただ前へ進む。
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殺意もなく。
怒りもなく。
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命令だけを残した死者のように。
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レイジの中で、
何かが静かに切れた。
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「じゃあ……」
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声は低かった。
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叫びではない。
怒りでもない。
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ただの問いだった。
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「じゃあ誰が守るんだよ」
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ベルトーチカは言葉を失う。
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その沈黙が、
答えになってしまった。
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■アマテラス艦橋
ミライは、
海岸線を見つめていた。
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レイジ。
ベルトーチカ。
フィロメラ。
赤い海。
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すべてが、
ひとつの場所へ集まり始めている。
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「止められないわね……」
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小さく呟く。
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隣でセラーナが目を細めた。
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「もう選んでいる」
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ミライは短く息を吐く。
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「彼が?」
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セラーナは、
海岸に立つ白い機体を見た。
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「違う」
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一拍。
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「選ぼうとしているの」
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■海岸線
フィロメラのコクピットハッチは、
開いたまま静止していた。
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中は空。
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だがレイジには分かる。
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呼ばれている。
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いや。
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待たれている。
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ずっと。
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十九年前から。
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あるいは、
もっと前から。
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「ふざけんなよ……」
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レイジは歯を食いしばる。
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「俺は知らねぇ」
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一歩。
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「アムロのことも」
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さらに一歩。
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「戦争のことも」
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赤い光が、
静かに脈打つ。
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「親父の代わりなんか、
できるわけねぇだろ……!」
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頭の奥へ、
深い記憶が流れ込む。
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宇宙。
アクシズ。
白い光。
人々の声。
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そして。
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『守れぇぇぇ!!』
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レイジは息を詰める。
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「……違う」
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涙が落ちる。
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「俺じゃない」
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フィロメラは答えない。
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命令もしない。
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ただ。
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そこにいる。
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待っている。
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ベルトーチカが一歩踏み出す。
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「レイジ……」
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その声は、
母の声だった。
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ようやく届いた声。
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十九年遅れた声。
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レイジは振り返らない。
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振り返れば、
戻ってしまう気がした。
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「ごめん」
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小さく呟く。
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「でも……」
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また爆発が起きる。
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レイジは顔を上げた。
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「もう、
見なかったことにはできない」
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フィロメラのサイコフレームが、
強く赤く輝く。
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その光は救いではない。
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優しさでもない。
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ただ。
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残響だった。
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守れなかった者達の声。
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終われなかった戦争の声。
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帰れなかった人達の声。
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その全てが、
レイジへ向かっていた。
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■アマテラス艦橋
ミライは目を閉じた。
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かつて。
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何度も若者を戦場へ送り出した。
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その痛みを、
今も身体が覚えている。
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「また私たちは……」
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続きは言葉にならない。
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セラーナが静かに言う。
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「違うわ」
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ミライが見る。
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セラーナは、
海岸のレイジを見ていた。
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「あの子は、
アムロになるために行くんじゃない」
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一拍。
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「あの子自身で、
行こうとしている」
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■海岸線
レイジは、
フィロメラの足元へ立った。
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見上げる。
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白い装甲。
赤い光。
開かれたコクピット。
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それは兵器だった。
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同時に、
墓標のようでもあった。
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「お前は……」
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レイジは呟く。
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「俺に何をさせたいんだよ」
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答えはない。
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ただ胸の奥へ、
感覚だけが流れ込む。
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——守れ。
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それは命令ではなかった。
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願いだった。
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レイジは目を閉じる。
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母の声。
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ミライの沈黙。
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セラーナの視線。
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ブライトという知らない名前。
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そして。
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アムロ・レイという、
重すぎる影。
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全部が、
背中にある。
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でも。
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「俺は……」
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レイジは目を開けた。
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「俺は、
アムロじゃない」
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フィロメラの赤い光が、
静かに揺れる。
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「それでも……」
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一歩。
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コクピットへ向かう。
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「今ここで逃げたら」
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さらに一歩。
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「俺は、
俺のままでもいられねぇ」
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ベルトーチカが口元を押さえる。
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もう止められない。
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止める言葉は、
もう届かない。
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レイジは、
コクピットへ手をかける。
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赤い光が、
彼の手を包む。
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熱はない。
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ただ、
悲しかった。
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あまりにも多くの声が、
そこに残っていた。
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レイジは低く呟く。
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「もう……戻れないよ」
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そして。
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フィロメラの中へ、
足を踏み入れた。
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サイコフレームが赤く燃える。
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海が鳴った。
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夜の黒い海が。
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低く。
深く。
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十九年前の光へ、
応えるように。