機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第2巻 第14章 「微動」

■アマテラス艦橋

 

静かな時間だった。

 

 

誰も大きな声を出さない。

 

 

ブライトの声が届いてから。

 

 

艦橋の空気が、

少しだけ変わっていた。

 

 

沈黙は同じ。

 

 

だが。

 

 

諦めの沈黙ではない。

 

 

 

ミライはモニターを見つめていた。

 

 

ブライトの反応はない。

 

 

変化もない。

 

 

それでも。

 

 

目を離せなかった。

 

 

 

「変ね……」

 

 

小さく呟く。

 

 

誰に向けた言葉でもない。

 

 

 

「ずっと見てきたのに」

 

 

 

今までだって。

 

 

待つことには慣れていた。

 

 

帰りを待つことも。

 

 

無事を祈ることも。

 

 

 

なのに。

 

 

今は少し違う。

 

 

 

生きていると分かってしまったから。

 

 

 

■フィロメラ

 

レイジもまた黙っていた。

 

 

モニターを見る。

 

 

何も変わらない。

 

 

それでも視線を外せない。

 

 

 

「来るな、か……」

 

 

ブライトの声を思い出す。

 

 

あの言葉。

 

 

怒っていた訳じゃない。

 

 

追い返したかった訳でもない。

 

 

 

ただ。

 

 

心配していた。

 

 

 

それだけは分かった。

 

 

 

「勝手だよな」

 

 

苦笑する。

 

 

会ったこともない。

 

 

話したこともない。

 

 

それなのに。

 

 

妙に人間臭かった。

 

 

 

■セラーナ

 

後ろで静かに言う。

 

 

「似てるのかもね」

 

 

 

レイジが振り返る。

 

 

「誰と」

 

 

 

セラーナは少し考える。

 

 

そして。

 

 

「帰れなくなった人達」

 

 

 

レイジは意味が分からない。

 

 

だが。

 

 

なぜか胸に残った。

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

オペレーターが声を上げる。

 

 

「反応です!」

 

 

全員が顔を上げる。

 

 

だが大きな変化じゃない。

 

 

数字が少し揺れただけ。

 

 

本当にそれだけ。

 

 

 

それでも。

 

 

ミライは息を止めた。

 

 

 

「今……」

 

 

 

誰も答えない。

 

 

答えられない。

 

 

 

だが全員が思っていた。

 

 

今。

 

 

向こうもこちらを見た。

 

 

 

そんな気がした。

 

 

 

■ブライト

 

遠い場所。

 

 

届かない場所。

 

 

 

ブライトは静かに目を開く。

 

 

疲れた目だった。

 

 

それでも。

 

 

ほんの少しだけ。

 

 

表情が和らいでいた。

 

 

 

「……馬鹿だな」

 

 

 

誰へ向けた言葉なのか。

 

 

本人にも分からない。

 

 

 

ミライか。

 

 

レイジか。

 

 

それとも。

 

 

昔の自分か。

 

 

 

■レイジ

 

フィロメラの中で、

ゆっくり拳を握る。

 

 

怖さは消えない。

 

 

分からないことばかりだ。

 

 

それでも。

 

 

今は少しだけ違う。

 

 

 

「届くよな」

 

 

 

独り言。

 

 

誰も答えない。

 

 

 

だが。

 

 

フィロメラのサイコフレームが、

微かに白く脈動した。

 

 

呼吸みたいに。

 

 

穏やかに。

 

 

 

海鳴りは聞こえない。

 

 

それでも。

 

 

どこかで波の音がした気がした。

 

 

届かない場所。

 

 

帰れない場所。

 

 

その間で。

 

 

人だけが。

 

 

少しずつ近づき始めていた。

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