機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第2巻 第16章 「拒絶の理由」

■アマテラス艦橋

 

静かな艦橋だった。

 

 

誰も声を出さない。

 

 

ついさっき。

 

 

確かに届いた。

 

 

ブライト・ノアの声が。

 

 

だが。

 

 

それは再会じゃなかった。

 

 

「来るな」

 

 

その一言だけを残して。

 

 

再び遠ざかっていった。

 

 

 

ミライはモニターを見つめていた。

 

 

何も映らない。

 

 

変化もない。

 

 

それでも。

 

 

あの声だけが残っている。

 

 

 

「あなたらしいわ……」

 

 

誰にも聞こえない声。

 

 

長い付き合いだった。

 

 

だから分かる。

 

 

あの人は。

 

 

助けを求めるより先に。

 

 

誰かを守ろうとする。

 

 

 

■フィロメラ

 

レイジは苛立っていた。

 

 

理由は分かっている。

 

 

納得できないからだ。

 

 

 

「ふざけんなよ……」

 

 

 

拳を握る。

 

 

そこにいる。

 

 

生きている。

 

 

なのに。

 

 

来るなと言われた。

 

 

 

「助けに行こうとしてんだろ」

 

 

 

怒りというより。

 

 

悔しさだった。

 

 

 

■ブライト

 

遠い場所。

 

 

届かない場所。

 

 

 

ブライトは静かに目を閉じる。

 

 

疲れていた。

 

 

肉体ではない。

 

 

もっと深い場所が。

 

 

 

レイジの声は聞こえた。

 

 

ミライの気配も。

 

 

分かっている。

 

 

皆が迎えに来ようとしていることも。

 

 

 

だが。

 

 

それが駄目だった。

 

 

 

「まだだ……」

 

 

 

小さな呟き。

 

 

誰へ向けたものでもない。

 

 

 

レイジは若すぎる。

 

 

巻き込むには。

 

 

重すぎる。

 

 

 

ブライトは目を伏せた。

 

 

かつて。

 

 

自分は何度も若者を送り出した。

 

 

アムロも。

 

 

カミーユも。

 

 

ジュドーも。

 

 

 

そして。

 

 

多くを失った。

 

 

 

だから。

 

 

今だけは。

 

 

 

「来るな」

 

 

 

その言葉しか選べなかった。

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

ミライが静かに息を吐く。

 

 

レイジの怒り。

 

 

ブライトの拒絶。

 

 

どちらも理解できた。

 

 

だから苦しい。

 

 

 

「ブライトは……」

 

 

 

言葉が止まる。

 

 

 

「私たちを拒絶したんじゃない」

 

 

 

レイジが振り向く。

 

 

 

「守ろうとしたのよ」

 

 

 

静かな声だった。

 

 

 

レイジは反論しない。

 

 

できなかった。

 

 

 

分かってしまったからだ。

 

 

あの声には。

 

 

敵意なんて欠片もなかった。

 

 

 

ただ。

 

 

心配だけがあった。

 

 

 

■ベルトーチカ

 

艦内の窓際。

 

 

彼女もまた宇宙を見ていた。

 

 

 

ブライト。

 

 

ミライ。

 

 

レイジ。

 

 

 

皆が同じ場所へ向いている。

 

 

それが少し怖かった。

 

 

 

「本当に似てる……」

 

 

 

誰へ向けた言葉か。

 

 

自分でも分からない。

 

 

 

助けたいと思う人達は。

 

 

いつも自分を後回しにする。

 

 

 

それが。

 

 

たまらなく悲しかった。

 

 

 

■フィロメラ

 

レイジは静かに座り直す。

 

 

怒りは消えていない。

 

 

納得もしていない。

 

 

 

それでも。

 

 

ひとつだけ分かった。

 

 

 

ブライトは。

 

 

帰りたくないんじゃない。

 

 

 

帰れないんでもない。

 

 

 

自分達を巻き込みたくないだけだ。

 

 

 

「勝手だよな……」

 

 

 

苦笑する。

 

 

 

そして小さく呟く。

 

 

 

「でも」

 

 

 

視線を前へ向ける。

 

 

 

「迎えに行くからな」

 

 

 

それは決意というより。

 

 

約束だった。

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