機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

39 / 120
■第2巻 第17章 「拒絶の向こう側」

■外縁宙域

 

静かだった。

 

⸻

 

何も変わっていない。

 

⸻

 

そう見える。

 

⸻

 

だが。

 

⸻

 

一度でも届きかけたものは、

完全には元へ戻らない。

 

⸻

 

海鳴りみたいな違和感だけが、

まだ残っていた。

 

⸻

 

⸻

 

■アマテラス艦橋

 

誰も口を開かない。

 

⸻

 

ブライトの声は、

確かに届いた。

 

⸻

 

だが。

 

⸻

 

それは再会じゃなかった。

 

⸻

 

「来るな」

 

⸻

 

その一言だけを残して。

 

⸻

 

再び遠ざかっていった。

 

⸻

 

⸻

 

ミライはモニターを見つめていた。

 

⸻

 

何も映らない。

 

⸻

 

変化もない。

 

⸻

 

それでも。

 

⸻

 

あの声だけが残っている。

 

⸻

 

「あなたらしいわ……」

 

⸻

 

誰にも聞こえない声だった。

 

⸻

 

⸻

 

■フィロメラ

 

レイジは苛立っていた。

 

⸻

 

理由は分かっている。

 

⸻

 

分からないからだ。

 

⸻

 

「見えてたじゃねぇか……」

 

⸻

 

拳を握る。

 

⸻

 

「そこにいたじゃねぇか」

 

⸻

 

返事はない。

 

⸻

 

スクリーンには、

暗い宇宙だけが広がっている。

 

⸻

 

「なんで来るななんだよ……」

 

⸻

 

怒りより。

 

⸻

 

悔しさだった。

 

⸻

 

⸻

 

■セラーナ

 

静かに目を閉じている。

 

⸻

 

何かを感じている。

 

⸻

 

だが。

 

⸻

 

言葉にはしない。

 

⸻

 

レイジが振り返る。

 

⸻

 

「お前、

何か分かってんだろ」

 

⸻

 

セラーナは少しだけ考える。

 

⸻

 

そして。

 

⸻

 

「怖かったんだと思う」

 

⸻

 

レイジが眉をひそめる。

 

⸻

 

「ブライトさんが?」

 

⸻

 

セラーナは頷かなかった。

 

⸻

 

否定もしない。

 

⸻

 

「誰かを守ろうとする人は」

 

⸻

 

一拍。

 

⸻

 

「時々、

近づくなって言うから」

 

⸻

 

⸻

 

レイジは黙る。

 

⸻

 

理解はできない。

 

⸻

 

だが。

 

⸻

 

その言葉だけは、

胸のどこかへ残った。

 

⸻

 

⸻

 

■ブライト・ノア

 

遠い場所。

 

⸻

 

誰にも届かない場所。

 

⸻

 

ブライトは静かに目を閉じる。

 

⸻

 

レイジの顔が浮かぶ。

 

⸻

 

若かった。

 

⸻

 

まだ何も知らない。

 

⸻

 

だからこそ。

 

⸻

 

来てはいけない。

 

⸻

 

「……すまん」

 

⸻

 

その声を聞く者はいない。

 

⸻

 

⸻

 

■アマテラス艦橋

 

ミライは小さく息を吐く。

 

⸻

 

「ブライト」

 

⸻

 

長い付き合いだった。

 

⸻

 

だから分かる。

 

⸻

 

あの人は。

 

⸻

 

本当に拒絶したい時ほど、

優しくなる。

 

⸻

 

⸻

 

■外縁宙域

 

沈黙は続く。

 

⸻

 

だが。

 

⸻

 

それはもう、

最初の沈黙とは違っていた。

 

⸻

 

届かなかった。

 

⸻

 

それでも。

 

⸻

 

確かに一度、

互いを見た。

 

⸻

 

その事実だけは消えない。

 

⸻

 

海鳴りのように。

 

⸻

 

小さく。

 

⸻

 

深く。

 

⸻

 

残り続けていた。

 

⸻

 

レイジは静かに拳を握る。

 

⸻

 

理由はまだ分からない。

 

⸻

 

ブライト・ノアという人を、

ほとんど何も知らない。

 

⸻

 

それでも。

 

⸻

 

あの声だけは忘れられなかった。

 

⸻

 

来るな。

 

⸻

 

その言葉の奥にあったものを。

 

⸻

 

なぜか。

 

⸻

 

放っておけないと思ってしまった。

 

⸻

 

それが始まりだった。

 

⸻

 

まだ名前も付かない。

 

⸻

 

小さな決意の始まりだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。