■アマテラス艦橋
静かだった。
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誰も声を出さない。
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ブライト・ノアは見えている。
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だが。
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届かない。
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その事実だけが、
艦橋の空気を重くしていた。
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ミライはモニターを見つめる。
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そこに映る艦影。
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遠い。
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だが。
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見失ってはいない。
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それだけが救いだった。
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■フィロメラ
レイジは前方を睨んでいた。
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何度見ても同じだ。
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いる。
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確かにいる。
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それなのに。
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届かない。
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「……なんなんだよ」
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小さな呟き。
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怒りではない。
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悔しさだった。
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助けたい。
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ただそれだけなのに。
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フィロメラのサイコフレームが脈動する。
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白。
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そして赤。
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二つの光。
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混ざらない。
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だが。
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同じ方向を見ていた。
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■どこか
静寂。
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アムロは目を開く。
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何もない空間。
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だが。
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感じる。
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ブライトがいる。
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届かない場所で。
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まだ立っている。
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「……いたな」
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その言葉だけだった。
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少し離れた場所。
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シャアが小さく笑う。
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「やっと気付いたか」
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アムロは振り向かない。
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「うるさい」
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シャアは肩をすくめる。
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「相変わらずだな」
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二人は同じ方向を見る。
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それ以上の言葉はない。
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必要なかった。
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■外縁宙域
その瞬間。
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世界が揺れた。
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大きな変化ではない。
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ほんの一瞬。
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呼吸みたいな揺れ。
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■アマテラス艦橋
オペレーターが息を呑む。
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「反応……!」
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続く言葉が出ない。
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説明できない。
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だが。
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確かに変わった。
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ミライは目を細める。
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長く閉じていた扉が。
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少しだけ動いた気がした。
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■ブライト・ノア
遠い場所。
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届かない場所。
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ブライトは静かに目を開く。
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そして。
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ほんの僅かに笑った。
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疲れ切った顔。
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それでも。
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安心したような笑みだった。
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「……来る気か」
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誰も答えない。
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だが。
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答えは分かっていた。
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■フィロメラ
レイジは前を見る。
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「行けるのか」
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■ミライ
静かに頷く。
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「まだ届かない」
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沈黙。
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誰も反論しない。
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出来ない。
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それが事実だから。
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ミライは前を見る。
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そして。
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小さく笑った。
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「でも」
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一拍。
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「帰る道は見えた」
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艦橋が静かになる。
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歓声はない。
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誰も笑わない。
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それでも。
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少しだけ呼吸が軽くなる。
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■外縁宙域
閉ざされていた世界。
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届かなかった場所。
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帰れなかった人。
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だが。
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初めて。
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そこへ向かう道だけが見えた。
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海鳴りが聞こえる。
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深く。
静かに。
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まるで。
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誰かが帰りを待っているように。
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■機動戦士ガンダム:残響
第2巻『境界観測』完