機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第3巻 第3章 「視線反転」

静寂は続いている。

 

 

だが。

 

 

もう待っているだけではなかった。

 

 

何かが近付いている。

 

 

いや。

 

 

こちらを見ている。

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

■ミライ

 

「状況変化は?」

 

 

■オペレーター

 

「外縁宙域レヴナント反応……

 

変化ありません」

 

 

一拍。

 

 

「ただし……」

 

 

言葉が止まる。

 

 

■ミライ

 

「ただし?」

 

 

■オペレーター

 

「何かがおかしいです」

 

 

 

セラーナが顔を上げる。

 

 

■セラーナ

 

「……変ね」

 

 

■レイジ

 

「またそれか」

 

 

■セラーナ

 

「見られてる」

 

 

空気が止まる。

 

 

■レイジ

 

「誰にだよ」

 

 

■セラーナ

 

「分からない」

 

 

一拍。

 

 

「でも」

 

 

「こっちを見てる」

 

 

 

■外縁宙域

 

何もない。

 

 

暗い宇宙だけが広がっている。

 

 

だが。

 

 

その奥で。

 

 

確かに何かが動いた。

 

 

 

■ブライト・ノア

 

そこに艦がある。

 

 

そう見える。

 

 

だが。

 

 

それが本当に艦なのか、

 

もう分からない。

 

 

壁の位置が変わる。

 

 

通路が伸びる。

 

 

瞬きをする度に、

 

景色がわずかに違う。

 

 

人の気配はある。

 

 

だが。

 

 

誰も固定されていない。

 

 

ブライトは目を閉じる。

 

 

そして。

 

 

ゆっくり開いた。

 

 

 

向こう側だけは、

 

変わらない。

 

 

 

■ブライト

 

(……そこにいるのか)

 

 

その瞬間。

 

 

空間がわずかに揺れた。

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

全モニターが同時に乱れる。

 

 

■ミライ

 

「何!?」

 

 

■セラーナ

 

息を呑む。

 

 

■セラーナ

 

「見た」

 

 

■ミライ

 

「誰が?」

 

 

■セラーナ

 

「向こうが」

 

 

沈黙。

 

 

レイジの背筋が冷える。

 

 

 

■ブライト側

 

ノイズが走る。

 

 

無数の影が見える。

 

 

人ではない。

 

 

だが。

 

 

誰かだった。

 

 

輪郭だけが揺れている。

 

 

一つ。

 

 

また一つ。

 

 

静かに増えていく。

 

 

■ブライト

 

(……現実なのか)

 

 

答えはない。

 

 

ただ。

 

 

見られている感覚だけが残る。

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

誰も声を出さない。

 

 

警報も鳴らない。

 

 

ログも正常。

 

 

だが。

 

 

全員が同じ事を感じていた。

 

 

見られている。

 

 

 

■セイラ通信

 

ノイズ混じりの声。

 

 

■セイラ

 

『来るわ』

 

 

■レイジ

 

「何がだよ」

 

 

■セイラ

 

『ブライトが見たもの』

 

 

短い沈黙。

 

 

『それが戻ってくる』

 

 

 

ミライが息を呑む。

 

 

セラーナは波形を見つめている。

 

 

■レイジ

 

「なんなんだよ……」

 

 

■セラーナ

 

「分からない」

 

 

一拍。

 

 

「でも」

 

 

「始まった」

 

 

 

■外縁宙域

 

空間が一度だけ収縮する。

 

 

その瞬間。

 

 

何もなかった場所に、

 

わずかな輪郭が生まれる。

 

 

レイジの瞳が揺れる。

 

 

セラーナが息を呑んだ。

 

 

■セラーナ

 

「……見えた」

 

 

 

■ブライト

 

(届くのか)

 

 

その問いは、

 

初めて誰かへ向けられた。

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

■ミライ

 

「接続したの……?」

 

 

セラーナは首を振る。

 

 

■セラーナ

 

「まだ」

 

 

一拍。

 

 

「でも」

 

 

「入口は開いた」

 

 

■レイジ

 

「何の入口だよ」

 

 

セラーナは答えない。

 

 

答えられなかった。

 

 

ただ。

 

 

誰もいないはずの宇宙を見つめていた。

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