静寂は続いている。
⸻
だが。
⸻
もう待っているだけではなかった。
⸻
何かが近付いている。
⸻
いや。
⸻
こちらを見ている。
⸻
⸻
■アマテラス艦橋
■ミライ
「状況変化は?」
⸻
■オペレーター
「外縁宙域レヴナント反応……
変化ありません」
⸻
一拍。
⸻
「ただし……」
⸻
言葉が止まる。
⸻
■ミライ
「ただし?」
⸻
■オペレーター
「何かがおかしいです」
⸻
⸻
セラーナが顔を上げる。
⸻
■セラーナ
「……変ね」
⸻
■レイジ
「またそれか」
⸻
■セラーナ
「見られてる」
⸻
空気が止まる。
⸻
■レイジ
「誰にだよ」
⸻
■セラーナ
「分からない」
⸻
一拍。
⸻
「でも」
⸻
「こっちを見てる」
⸻
⸻
■外縁宙域
何もない。
⸻
暗い宇宙だけが広がっている。
⸻
だが。
⸻
その奥で。
⸻
確かに何かが動いた。
⸻
⸻
■ブライト・ノア
そこに艦がある。
⸻
そう見える。
⸻
だが。
⸻
それが本当に艦なのか、
もう分からない。
⸻
壁の位置が変わる。
⸻
通路が伸びる。
⸻
瞬きをする度に、
景色がわずかに違う。
⸻
人の気配はある。
⸻
だが。
⸻
誰も固定されていない。
⸻
ブライトは目を閉じる。
⸻
そして。
⸻
ゆっくり開いた。
⸻
⸻
向こう側だけは、
変わらない。
⸻
⸻
■ブライト
(……そこにいるのか)
⸻
その瞬間。
⸻
空間がわずかに揺れた。
⸻
⸻
■アマテラス艦橋
全モニターが同時に乱れる。
⸻
■ミライ
「何!?」
⸻
■セラーナ
息を呑む。
⸻
■セラーナ
「見た」
⸻
■ミライ
「誰が?」
⸻
■セラーナ
「向こうが」
⸻
沈黙。
⸻
レイジの背筋が冷える。
⸻
⸻
■ブライト側
ノイズが走る。
⸻
無数の影が見える。
⸻
人ではない。
⸻
だが。
⸻
誰かだった。
⸻
輪郭だけが揺れている。
⸻
一つ。
⸻
また一つ。
⸻
静かに増えていく。
⸻
■ブライト
(……現実なのか)
⸻
答えはない。
⸻
ただ。
⸻
見られている感覚だけが残る。
⸻
⸻
■アマテラス艦橋
誰も声を出さない。
⸻
警報も鳴らない。
⸻
ログも正常。
⸻
だが。
⸻
全員が同じ事を感じていた。
⸻
見られている。
⸻
⸻
■セイラ通信
ノイズ混じりの声。
⸻
■セイラ
『来るわ』
⸻
■レイジ
「何がだよ」
⸻
■セイラ
『ブライトが見たもの』
⸻
短い沈黙。
⸻
『それが戻ってくる』
⸻
⸻
ミライが息を呑む。
⸻
セラーナは波形を見つめている。
⸻
■レイジ
「なんなんだよ……」
⸻
■セラーナ
「分からない」
⸻
一拍。
⸻
「でも」
⸻
「始まった」
⸻
⸻
■外縁宙域
空間が一度だけ収縮する。
⸻
その瞬間。
⸻
何もなかった場所に、
わずかな輪郭が生まれる。
⸻
レイジの瞳が揺れる。
⸻
セラーナが息を呑んだ。
⸻
■セラーナ
「……見えた」
⸻
⸻
■ブライト
(届くのか)
⸻
その問いは、
初めて誰かへ向けられた。
⸻
⸻
■アマテラス艦橋
■ミライ
「接続したの……?」
⸻
セラーナは首を振る。
⸻
■セラーナ
「まだ」
⸻
一拍。
⸻
「でも」
⸻
「入口は開いた」
⸻
■レイジ
「何の入口だよ」
⸻
セラーナは答えない。
⸻
答えられなかった。
⸻
ただ。
⸻
誰もいないはずの宇宙を見つめていた。