サイド6外周工廠ブロック。
S.N.R.I.暫定解析ユニット。
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工廠の音だけが響いている。
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金属を削る音。
溶接の光。
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いつも通りだった。
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だが。
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ジョブ・ジョンは端末の前から動けずにいた。
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■ジョブ・ジョン
「……なんだこれ」
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表示されているのは、
ただの業務ログだった。
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『対象:ブライト・ノア』
『状態:生存』
『位置:不明』
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それだけ。
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本来なら。
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だが。
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どこかがおかしい。
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■ジョブ
「気持ち悪ぃな……」
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画面が揺れる。
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表示が書き換わる。
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『状態:未確定』
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一拍。
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『状態:不明』
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そして。
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『状態:生存』
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■ジョブ
「おいおい……」
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端末を軽く叩く。
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変化はない。
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機械の故障とも違う。
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ログの破損とも違う。
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■ジョブ
「壊れてるなら直せる」
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一拍。
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「壊れてないなら放っとける」
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さらに一拍。
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「一番困るのは」
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「どっちか分からん時だ」
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ジョブは椅子へ深くもたれた。
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戦場は知っている。
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壊れた機体も。
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暴走したサイコミュも。
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見てきた。
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だが。
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こんな記録は見たことがない。
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■ジョブ
「戦争のデータじゃねぇな」
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一拍。
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「……そもそも戦争か?」
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その時だった。
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端末が反応する。
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未登録回線。
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ノイズ。
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短い沈黙。
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そして表示。
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『アマテラス』
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ジョブの眉が動く。
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■ジョブ
「誰が繋いだ」
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返事はない。
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モニターへ一瞬だけ、
赤い光が映る。
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ほんの一瞬。
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次の瞬間には消えていた。
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■ジョブ
「……疲れてるのか?」
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答えはない。
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だが。
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嫌な予感だけは消えなかった。
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ジョブは工廠の奥を見る。
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解体される機体。
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積み上がる残骸。
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終わった戦争。
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いや。
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終わったことにされた戦争。
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■ジョブ
「……厄介事か」
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ロッカーを開く。
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古いジャケット。
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擦り切れた部隊章。
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長い時間の匂い。
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それを手に取る。
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■ジョブ
「まだ俺を働かせる気かよ」
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苦笑する。
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だが。
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その顔に迷いはなかった。
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■工廠ドック
作業用シャトル。
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目的地入力。
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『アマテラス』
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ジョブの指が止まる。
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ほんの一瞬だけ。
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だが。
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迷わない。
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入力確定。
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■ジョブ
「行くか」
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シャトルが静かに離床する。
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■ジョブ
「現場を見ないと」
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一拍。
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「話にならん」
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工廠が遠ざかる。
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嫌な予感だけが、
ずっと残っていた。
■ジョブ
「現場を見ないと」
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一拍。
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「話にならん」
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シャトルがゆっくり工廠を離れていく。
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窓の向こうでは、
解体途中のモビルスーツが静かに並んでいた。
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終わったはずの戦争。
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積み重なった記録。
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それでも。
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嫌な予感だけは、
いつまでも胸の奥から消えなかった。