機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第3巻 第4章 「異常記録」

サイド6外周工廠ブロック。

 

S.N.R.I.暫定解析ユニット。

 

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工廠の音だけが響いている。

 

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金属を削る音。

 

溶接の光。

 

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いつも通りだった。

 

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だが。

 

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ジョブ・ジョンは端末の前から動けずにいた。

 

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■ジョブ・ジョン

 

「……なんだこれ」

 

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表示されているのは、

 

ただの業務ログだった。

 

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『対象:ブライト・ノア』

 

『状態:生存』

 

『位置:不明』

 

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それだけ。

 

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本来なら。

 

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だが。

 

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どこかがおかしい。

 

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■ジョブ

 

「気持ち悪ぃな……」

 

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画面が揺れる。

 

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表示が書き換わる。

 

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『状態:未確定』

 

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一拍。

 

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『状態:不明』

 

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そして。

 

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『状態:生存』

 

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■ジョブ

 

「おいおい……」

 

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端末を軽く叩く。

 

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変化はない。

 

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機械の故障とも違う。

 

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ログの破損とも違う。

 

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■ジョブ

 

「壊れてるなら直せる」

 

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一拍。

 

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「壊れてないなら放っとける」

 

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さらに一拍。

 

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「一番困るのは」

 

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「どっちか分からん時だ」

 

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ジョブは椅子へ深くもたれた。

 

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戦場は知っている。

 

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壊れた機体も。

 

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暴走したサイコミュも。

 

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見てきた。

 

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だが。

 

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こんな記録は見たことがない。

 

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■ジョブ

 

「戦争のデータじゃねぇな」

 

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一拍。

 

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「……そもそも戦争か?」

 

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その時だった。

 

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端末が反応する。

 

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未登録回線。

 

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ノイズ。

 

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短い沈黙。

 

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そして表示。

 

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『アマテラス』

 

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ジョブの眉が動く。

 

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■ジョブ

 

「誰が繋いだ」

 

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返事はない。

 

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モニターへ一瞬だけ、

 

赤い光が映る。

 

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ほんの一瞬。

 

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次の瞬間には消えていた。

 

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■ジョブ

 

「……疲れてるのか?」

 

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答えはない。

 

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だが。

 

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嫌な予感だけは消えなかった。

 

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ジョブは工廠の奥を見る。

 

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解体される機体。

 

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積み上がる残骸。

 

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終わった戦争。

 

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いや。

 

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終わったことにされた戦争。

 

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■ジョブ

 

「……厄介事か」

 

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ロッカーを開く。

 

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古いジャケット。

 

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擦り切れた部隊章。

 

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長い時間の匂い。

 

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それを手に取る。

 

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■ジョブ

 

「まだ俺を働かせる気かよ」

 

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苦笑する。

 

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だが。

 

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その顔に迷いはなかった。

 

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■工廠ドック

 

作業用シャトル。

 

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目的地入力。

 

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『アマテラス』

 

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ジョブの指が止まる。

 

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ほんの一瞬だけ。

 

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だが。

 

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迷わない。

 

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入力確定。

 

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■ジョブ

 

「行くか」

 

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シャトルが静かに離床する。

 

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■ジョブ

 

「現場を見ないと」

 

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一拍。

 

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「話にならん」

 

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工廠が遠ざかる。

 

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嫌な予感だけが、

 

ずっと残っていた。

 

■ジョブ

 

「現場を見ないと」

 

⸻

 

一拍。

 

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「話にならん」

 

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シャトルがゆっくり工廠を離れていく。

 

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窓の向こうでは、

 

解体途中のモビルスーツが静かに並んでいた。

 

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終わったはずの戦争。

 

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積み重なった記録。

 

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それでも。

 

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嫌な予感だけは、

 

いつまでも胸の奥から消えなかった。

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