機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

48 / 50
■第3巻 第5章 「視界深化」

静かだった。

 

 

どれほどの時間が過ぎたのか。

 

 

もう分からない。

 

 

呼吸をしているのか。

 

 

立っているのか。

 

 

それすら曖昧だった。

 

 

それでも。

 

 

ブライト・ノアは確かに存在していた。

 

 

■ブライト

 

沈黙。

 

 

何も変わらない。

 

 

そう思っていた。

 

 

だが。

 

 

最近になって気付いた。

 

 

何かが変わり始めている。

 

 

 

最初はノイズだった。

 

 

白。

 

 

黒。

 

 

揺らぎ。

 

 

意味を持たない断片。

 

 

だが。

 

 

今は違う。

 

 

そこには確かに、

 

何かがいる。

 

 

■ブライト

 

(……誰だ)

 

 

答えはない。

 

 

それでも。

 

 

気配だけは消えなかった。

 

 

 

遠く。

 

 

白い光が揺れる。

 

 

その隣。

 

 

赤。

 

 

静かな赤。

 

 

どこか懐かしい色だった。

 

 

■ブライト

 

(まさか……)

 

 

名前は出てこない。

 

 

だが。

 

 

記憶だけが反応していた。

 

 

 

視界の奥で何かが動く。

 

 

気配が増える。

 

 

揺れが広がる。

 

 

そして。

 

 

初めて。

 

 

向こう側が見えた。

 

 

 

■ブライト

 

(……そこにいるのか)

 

 

その瞬間。

 

 

空間がわずかに揺れた。

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

モニターが一瞬だけ乱れる。

 

 

■ミライ

 

「また……?」

 

 

セラーナは波形を見つめている。

 

 

■セラーナ

 

「見てる」

 

 

■レイジ

 

「誰が」

 

 

■セラーナ

 

「ブライト」

 

 

沈黙。

 

 

艦橋の空気が張り詰める。

 

 

■ミライ

 

「……届き始めてるのね」

 

 

セラーナは小さく頷いた。

 

 

 

■ブライト

 

気配が近付く。

 

 

白。

 

 

そして赤。

 

 

届きそうで。

 

 

届かない。

 

 

だが。

 

 

確かに存在している。

 

 

■ブライト

 

(届くのか……?)

 

 

初めてだった。

 

 

今までは。

 

 

届かない事すら分からなかった。

 

 

だが今は違う。

 

 

向こう側がある。

 

 

そして。

 

 

そこに誰かがいる。

 

 

 

ノイズが走る。

 

 

その奥。

 

 

かすかな声。

 

 

■セイラ

 

『ブライト』

 

 

ブライトの視線が揺れる。

 

 

■ブライト

 

(セイラ……?)

 

 

届かない。

 

 

返せない。

 

 

それでも。

 

 

声だけは確かだった。

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

レイジが突然顔を上げる。

 

 

■レイジ

 

「今……」

 

 

言葉が続かない。

 

 

モニターを見る。

 

 

何も映っていない。

 

 

だが。

 

 

確かに感じた。

 

 

向こう側からの視線。

 

 

■レイジ

 

「……見られた」

 

 

セラーナが静かに息を吐く。

 

 

■セラーナ

 

「そうね」

 

 

一拍。

 

 

「もう気付いてる」

 

 

 

■ブライト

 

視線の先。

 

 

白と赤が揺れている。

 

 

その向こう。

 

 

さらに誰かがいる。

 

 

まだ見えない。

 

 

だが。

 

 

もう独りではなかった。

 

 

■ブライト

 

(……届くのか)

 

 

その問いは。

 

 

初めて誰かへ向けられた。

 

 

 

■最後

 

誰も答えない。

 

 

だが。

 

 

向こう側にも、

 

確かに誰かがいた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。