静かだった。
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どれほどの時間が過ぎたのか。
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もう分からない。
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呼吸をしているのか。
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立っているのか。
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それすら曖昧だった。
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それでも。
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ブライト・ノアは確かに存在していた。
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■ブライト
沈黙。
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何も変わらない。
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そう思っていた。
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だが。
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最近になって気付いた。
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何かが変わり始めている。
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最初はノイズだった。
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白。
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黒。
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揺らぎ。
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意味を持たない断片。
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だが。
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今は違う。
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そこには確かに、
何かがいる。
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■ブライト
(……誰だ)
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答えはない。
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それでも。
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気配だけは消えなかった。
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遠く。
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白い光が揺れる。
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その隣。
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赤。
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静かな赤。
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どこか懐かしい色だった。
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■ブライト
(まさか……)
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名前は出てこない。
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だが。
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記憶だけが反応していた。
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視界の奥で何かが動く。
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気配が増える。
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揺れが広がる。
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そして。
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初めて。
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向こう側が見えた。
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■ブライト
(……そこにいるのか)
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その瞬間。
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空間がわずかに揺れた。
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■アマテラス艦橋
モニターが一瞬だけ乱れる。
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■ミライ
「また……?」
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セラーナは波形を見つめている。
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■セラーナ
「見てる」
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■レイジ
「誰が」
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■セラーナ
「ブライト」
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沈黙。
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艦橋の空気が張り詰める。
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■ミライ
「……届き始めてるのね」
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セラーナは小さく頷いた。
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■ブライト
気配が近付く。
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白。
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そして赤。
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届きそうで。
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届かない。
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だが。
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確かに存在している。
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■ブライト
(届くのか……?)
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初めてだった。
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今までは。
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届かない事すら分からなかった。
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だが今は違う。
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向こう側がある。
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そして。
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そこに誰かがいる。
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ノイズが走る。
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その奥。
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かすかな声。
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■セイラ
『ブライト』
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ブライトの視線が揺れる。
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■ブライト
(セイラ……?)
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届かない。
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返せない。
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それでも。
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声だけは確かだった。
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■アマテラス艦橋
レイジが突然顔を上げる。
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■レイジ
「今……」
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言葉が続かない。
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モニターを見る。
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何も映っていない。
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だが。
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確かに感じた。
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向こう側からの視線。
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■レイジ
「……見られた」
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セラーナが静かに息を吐く。
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■セラーナ
「そうね」
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一拍。
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「もう気付いてる」
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■ブライト
視線の先。
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白と赤が揺れている。
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その向こう。
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さらに誰かがいる。
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まだ見えない。
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だが。
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もう独りではなかった。
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■ブライト
(……届くのか)
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その問いは。
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初めて誰かへ向けられた。
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■最後
誰も答えない。
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だが。
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向こう側にも、
確かに誰かがいた。